十勝管内5年度教育推進の重点 子の可能性引き出す教育 学びの機会保障し質向上へ
(道・道教委 2023-04-17付)

十勝教育局長・新山知邦
新山知邦局長

 【帯広発】十勝教育局の新山知邦局長は、13日に幕別町内の十勝教育研修センターで開かれた管内小中学校長会議において、5年度管内教育推進の重点を説明した。前年度の管内教育の推進状況を踏まえ「子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育の推進」をはじめとする3つの柱のもと、22の施策項目を提示。各重点の目標達成に向け、効果的な取組の普及や指導助言、各所における活動の支援を進める意向を示した。

 新山局長による説明概要はつぎのとおり。

【はじめに】

 管内教育推進の重点は、平成30年度から「十勝らしい一人一人の学びの実現」をテーマと設定し「十勝はひとつ 子どもたちのために」を合言葉に教育局、市町村教委、学校が一体となった取組を進めている。

 現在、人々の価値観や生活様式、ワークスタイルは大きく変化しており、今後「SDGs・ESDの推進によって持続可能や社会の実現」「主体的に学習に取り組む態度を養い、多様な人々との協働を促す教育」「専門性の高い特別支援教育やキャリア教育、道徳教育等の充実や体力」「運動習慣等の定着」「ICTを活用した教育や、働き方改革の推進」「学校を核とする地域づくりや生涯にわたる学びの場の充実」などが求められている。

 管内においては、前年度の状況において「学力向上などにおいて、検証改善サイクルが確立された」「授業改善が進んだ」「いじめの積極的な認知が進んだ」「働き方改革が一定程度推進された」「学校運営協議会の設置が進んだ」などの成果があった一方、「よくわかる授業の一層の推進」「不登校児童生徒の増加傾向」「家庭学習の推進」「義務教育9年間を通じた教育課程編成」「社会教育活動等における人材育成」などが課題となっている。

 そのような状況の中、本年度の重点については①子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育の推進②学びの機会を保障し質を高める環境の確立③地域と歩む持続可能な教育の実現―の3つの構成とした。

【重点1 子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育の推進】

 一人一人の児童生徒が、自分の良さや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き持続可能な社会の創り手となることができるよう、学校は、子どもたち一人一人の可能性を引き出す教育を一層推進することが求められている。

 そのため、学校は、新しい時代に必要な資質・能力や社会に羽ばたく力、健康でたくましい体、豊かな人間性を育むことが重要。

 こうしたことから、各学校では、新しい時代に必要な資質・能力を育むため、「1人1台端末を活用した個別最適な学びと協働的な学びの充実」など、4点の取組を進めるようお願いする。

 また、社会に羽ばたく力を身に付けさせるため「ふるさと教育、キャリア教育の充実」など、3点の取組を進めるようお願いする。

 十勝教育局では、小中高を対象とした各種会議や研修会の開催、組織力向上に関するアンケートの実施と分析結果の提供など、学校の取組を支援する。

 さらに、健康でたくましい体をつくるために学校保健委員会の活性化による感染症対策や健康教育の推進、豊かな人間性を育む取組として、組織的・計画的な道徳教育の推進体制の整備などを進めるようお願いする。

 教育局では、管内の状況を踏まえた効果的な取組の普及や、道徳教育の指導体制に係る学校の課題等に応じた指導助言など、学校の取組を支援する。

【重点2 学びの機会を保障し質を高める環境の確立】

 当たり前のように存在していた学校に通えない状況が続いた中で、子どもたちや各家庭の日常において学校がどれだけ大きな存在であったのかということが、あらためて浮き彫りになり、学校は、全ての子どもたちが安心して楽しく通える魅力ある環境であることが、あらためて求められている。

 また、学校が抱える課題が複雑化し、教師の勤務の長時間化が指摘される中、

教職員が心身共に健康を保ち、誇りとやりがいを持って働くことができる環境の整備を図り、子どもたちに対して、効果的で質の高い教育活動を持続的に行うことができるようにすることが求められている。

 そのため、学校は、安心して過ごせる居場所をつくるとともに、子どもの学びをつなぎ、信頼される学校づくりに取り組むことが重要。

 こうしたことから、各学校では「安心して過ごせる居場所づくり」のために、学校いじめ対策組織によるいじめの積極的な認知と早期の組織的な取組など、4点の取組を進めるようお願いする。

 また、子どもの学びをつなぐため「各地域等における小中および中高連携の推進」など、3点に取り組むようお願いする。

 さらに、信頼される学校をつくるため「働き方改革の一層の推進に向けた本来担うべき業務に専念できる環境の整備」など、3点に取り組むようお願いする。

 教育局では、生徒指導に関する協議会や研修会の開催、関係機関等との連携による管内の生徒指導体制の整備、校種間の接続に関する事業成果や取組の普及、働き方改革に関する情報提供や経験年数に応じた研修会の実施など、学校の取組を支援する。

【重点3 地域と持続可能な教育の実現】

 学校を取り巻く課題は複雑化・困難化しており、こうした課題に対応しつつ、未来を担う子どもたちの成長を支えるこれからの時代に対応した新しい学校教育を実現するためには、学校・家庭・地域住民等が相互に連携・協力して、持続可能な教育を行うことが求められている。

 そのため、学校は「家庭と連携して子どもの学びを支える」とともに「活力ある地域づくり」や「文化施設等を活用した学校教育、社会教育を推進する」ことが重要。

 こうしたことから、各学校では、家庭や地域と連携して子どもの学びを支えるため「望ましい学習習慣・生活習慣の確立に向けた家庭や地域との連携の推進」「コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的な推進によるPDCAサイクルの確立」など、5点の取組を進めるようお願いする。

 教育局では、学校等のニーズに応じた社会教育主事による学校訪問の実施やコミュニティ・スクールに関する好事例等の提供など、学校の取組を支援する。

 また、少子高齢化・人口減少の進展など、社会を取り巻く環境の変化によって、社会教育の担い手の減少や地域コミュニティーの低下などが指摘されており、社会教育の指導者の育成や社会教育施設等の機能の充実が求められている。

 そのため、活力ある地域づくりや文化施設を活用した学校教育、社会教育を推進することが重要であり、地域課題の解決に向けた活動への支援など、教育委員会の取組を支援する。

【おわりに】

 教育は、子どもたち一人一人の人格の完成を目指すものであり、子どもたちが将来にわたって幸福な生活を営んでいく上で不可欠。社会の急激な変化の中で、学校教育はあらためて学校で学ぶことの意義に立ち返り、学習機会と学力を保障すること、全人的な発達・成長を保障すること、身体的・精神的な健康を保障することが求められている。

 校長の皆さま方には、学校教育が果たすべき役割を踏まえ、管内教育のより一層の充実に向けて、3つの重点の具体の取組を学校経営に適切に位置付け、家庭や地域とも連携を図りながら、十勝らしい一人一人の学びの実現を図る取組を推進していただくようお願いする。

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十勝局R5管内教育推進の重点
十勝管内教育推進の重点

(道・道教委 2023-04-17付)

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