日高管内5年度教育推進の重点 学習状況適切に見取って 指導と評価の一体化が大切(道・道教委 2023-04-18付)
行徳義朗局長
【苫小牧発】日高教育局は11日、浦河町総合文化会館で5年度管内公立小・中学校長会議を開催した。管内の校長が一堂に会する中、行徳義朗局長が管内教育推進の重点を説明。学力向上、生徒指導・教員育成、地域連携の3つを重点とし、学力向上については、授業改善のための指導と評価の一体化へ「適切な評価方法で子どもの学習状況を見取る」ことの大切さを訴えた。また、家庭学習の充実や、いじめの積極的な認知と早期対応の徹底などについて具体例を示しながら着実な取組を求めた。
5年度日高管内教育推進の重点はつぎのとおり。
【5年度日高管内教育推進の重点について】
現在、人口減少社会やSociety5・0の到来、グローバル化の進展などによって、人々の価値観や生活様式、ワークスタイルが大きく変化している。
このような変化の激しい時代において、子どもたちが、夢や希望を持ち、様々な困難を乗り越え、多様な人々と協働しながら持続可能な社会の創り手として成長していくことができるよう、教育活動を推進することが求められている。
こうした中、道教委では、これまでの「自立」と「共生」という基本理念を継承しつつ、本道における教育課題の解決と地域創生の実現に向けて、5年度から5年間の道教育推進計画を策定し、北海道が目指す教育の全体像を示した。
本推進計画では「可能性を引き出す教育の推進」「質を高める環境の確立」「地域と歩む教育の実現」の3つを施策の柱に、22の施策項目を設定し、10年後を見据えた施策の方向性に向かって個別・具体の取組を推進することとしている。
日高管内においても、こうした施策の柱に沿った取組を推進するため、管内の実情を踏まえて文言を整理しつつ、つぎの3つの重点を設定したことから、各学校において確実な推進をお願いする。
【重点1 子ども一人一人が資質・能力を確実に身に付ける教育の推進】
本年度の管内教育推進の重点の1つ目は「子ども一人一人が資質・能力を確実に身に付ける教育の推進」である。
子どもたちが、生涯にわたって自立して生き抜くため、変化が激しく予測困難な時代の中でも通用する確かな学力を身に付けることができるよう、基礎的・基本的な知識および技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等を育むとともに、主体的に学習に取り組む態度を養い、個性を生かし多様な人々との協働を促す教育の充実が求められている。
特に、子どもたちが、学習指導要領で育成を目指す資質・能力を身に付けるため、学校においては、カリキュラム・マネジメントに基づき、教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくことなどを通して、組織的かつ計画的に教育活動の質の向上を図るとともに、子どもの望ましい生活習慣や学習習慣の定着に向けた取組を推進していくことが求められている。
そのため、校長の皆さまにはつぎの3点に意を用いていただくようお願いする。
▼指導と評価の一体化による授業改善
子ども一人ひとりに確かな学力を身に付けるためには、教育活動の根幹である「学習指導」と「学習評価」において、授業で子どもの学習状況を評価し、その結果を子どもの学習や教師による指導の改善等につなげ、学校全体として組織的かつ計画的に教育活動の質の向上を図ることが求められている。
各学校においては、学習指導要領に示す各教科の目標に照らして、子どもが「おおむね満足できる」状況となるよう、学習指導要領を踏まえた評価規準を設定するとともに、適切な評価方法によって子どもの学習状況を見取り、一人ひとりのつまずきに応じてきめ細かく指導するなど、指導と評価の一体化による授業改善を図り、子どもが確実に資質・能力を身に付けることができるようお願いする。
▼組織で取り組む検証改善サイクルの確立
教育課程の実施状況を評価し、不断に見直していくためには、各種調査結果やデータ等を活用して、子どもや学校の実態を定期的に把握するとともに、教育課程の実施状況を確認・分析し、課題を明らかにするなど、全教職員で教育課程を改善することが求められている。
各学校においては、組織的・計画的に教育活動の質の向上を図ることができるよう、適切な数値目標を設定し、取組スケジュールによって各種調査等による年複数回の検証を行うなど、PDCAサイクルによる取組を確立するとともに、こうした取組を教職員間で共通理解し、取組状況の振り返りを日常的に継続するなど、学校全体で徹底して検証改善サイクルの実質化・迅速化を図るようお願いする。
▼望ましい生活習慣、学習習慣の確立
子どもたちが夢や目標を実現し、将来自立して生きていくためには、学校において、子どもの発達の段階を考慮して、言語活動など学習の基盤をつくる活動を充実するとともに、家庭との連携を図りながら、子どもの望ましい生活習慣、学習習慣を確立することが求められている。
各学校においては、特に家庭学習の充実が図られるよう、家庭学習のポイント等の提示をはじめ、家庭学習の手引の発行、好事例を掲載した「家庭学習コーナー」の設置、ICT端末の活用、家庭学習と学校での学習の関連を図る指導の工夫、小学校と中学校が連携した取組など、子ども一人ひとりに学習内容が確実に定着するようお願いする。
【重点2 子どもの学びを保障し、質を高める環境の確立】
本年度の管内教育推進の重点の2つ目は「子どもの学びを保障し、質を高める環境の確立」である。
子どもたちの多様化が進み、様々な困難や課題を抱える子どもが増える中、学校教育には、子どもの発達や教育的ニーズを踏まえつつ、一人ひとりの可能性を最大限伸ばしていく教育が求められている。
また、学校教育の成否は、教員の力に大きく依存していることは言うまでもなく、今後「令和の日本型学校教育」を実現するため、教員の負担に十分に配慮するとともに、時代の変化に応じた高い資質・能力を身に付け、子どもへの深い教育的愛情を常に持ち続ける教員を育成することが求められている。
そのため、校長の皆さまにはつぎの3点に意を用いていただくようお願いする。
▼安心して学ぶためのいじめ防止等の取組の充実
子ども一人ひとりの可能性を最大限に伸ばしていくために、生徒指導上の課題の増加、外国人子ども数の増加、通常の学級に在籍する障がいのある子ども、子どもの貧困の問題等によって多様化する子どもたちへの対応も含め、学校が安心して楽しく通える魅力ある環境となるよう、学校関係者が一丸となって取り組むことが求められている。
各学校においては、全ての子どもたちが安全かつ安心して学ぶことができるよう、共感的理解を持って生徒理解を深めるとともに、教職員と子ども、子ども同士が共感的で温かな人間関係を築き、支持的風土による学級経営の充実を図ること。
特に、いじめの問題については、児童生徒間の「からかい」や「嫌がらせ」なども含め、いじめを積極的に認知し、その解決に向けた学校いじめ対策組織による早期発見、早期対応を徹底するなど、生徒指導の充実を図り、子どもが安心して自分の力を発揮できるようお願いする。
▼効果的な教育活動を行うための働き方改革の推進
教育の質を向上し「令和の日本型学校教育」を実現する教職員集団を形成するためには、管理職が在校等時間の客観的な把握をはじめとする勤務時間管理を徹底することや、その状況を踏まえ、学校および教師が担う役割分担・適正化などに積極的に取り組むことが求められている。
各学校においては、教職員一人ひとりが専門性を生かした業務にしっかりと向き合うことができるよう、教職員の在校等時間の状況把握はもとより、ICTを活用した業務の効率化、「複数顧問」や外部指導者の導入など部活動における負担軽減、定時退勤日の確実な実施、コアチームによる効果的な取組の推進など、学校の教育目標の実現に向け、効率的・効果的に教育活動の質の向上を図る働き方改革を推進するようお願いする。
▼教員の資質・能力の向上を図る意図的、計画的な研修の充実
教員一人ひとりが高い資質・能力を身に付けるためには、学校教育を取り巻く環境の変化を前向きに受け止め、教職生涯を通じて探究心を持ちつつ主体的に学び続け、一人ひとりの教師の個性に即した「個別最適な学び」、校内研修等の教師同士の学び合いなどを通じた「協働的な学び」を充実させることが求められている。
各学校においては、教員一人ひとりが個別最適な学び、協働的な学びを通して、資質・能力を高めていくことができるよう、改訂された「北海道における教員育成指標」および「北海道教職員研修計画」を踏まえ、研修履歴等を活用した対話に基づく受講奨励を適切に行うとともに、管内はもとより道内・外の先進的な教育実践を視察参観するなど、「新たな研修制度の下」、意図的、計画的に教員の資質・能力の向上を図るようお願いする。
【重点3 子どもの成長を支える連携・協働の推進】
子どもが生涯にわたって自立して生き抜く資質・能力を身に付けるため、幼小、小中、中高といった学校段階間の接続や連携の強化、望ましい学習習慣・生活習慣の定着に向けた家庭、地域との連携等の取組を充実させることが求められている。
また、学校がその目的を達成するため、学校や地域の実態等に応じ、教育活動の実施に必要な人的または物的な体制を家庭や地域の人々の協力を得ながら整えるなど、家庭や地域社会との連携および協働を深めることが求められている。
そのため、校長の皆さまにはつぎの2点に意を用いていただくようお願いする。
▼幼小中高の学びの連続性の確保
教育活動の一貫性や連続性、継続性を確保し、教育の質を向上させていくためには、幼小中高の園、学校種間の学びを円滑に接続した教育課程を編成することが求められている。
各学校においては、学校種間の連携が充実したものとなるよう、具体的な子どもの姿を明確にしたスタートカリキュラムを各園と小学校が協働して見直したり、キャリア・パスポートを活用し、子どもがどのような資質・能力を身に付けたのかを学校種間で共有したりするとともに、特別支援教育に関しては、個別の教育支援計画を活用し、切れ目のない一貫した指導や支援を展開したりするなどして、全ての子どもが自分の持ち味や良さを発揮し続けることができるようお願いする。
▼家庭・地域で育てる体制の充実
子どもたちの豊かな成長を支えていくためには、学校と家庭、地域が連携・協働して、育むべき子どもの資質・能力や学校の取組・課題を共有するとともに、地域主体の活力ある取組を推進することが求められている。
各学校においては、家庭・地域と学校とが協働して課題を解決することができるよう、学校運営協議会の機能を生かして、育成を目指す子どもの姿や学校の取組・課題を共有し、共通の目的を設定し、それぞれが役割に応じて主体的に取り組むなど、多様な人材による学校運営への参画を通じて、地域と共に未来を担う子どもたちの豊かな成長を支える学校づくりをお願いする。
なお、本年度から始まる、部活動の地域移行は、生徒の望ましい成長のために、地域の持続可能で多様な環境の一体的な整備により、地域の実情に応じスポーツ・文化芸術活動の最適化を図り、体験格差を解消することを目指すものであることに鑑み、各中学校においては、各町教育委員会と情報共有を図りながら、生徒、保護者が不安を感じることがないように対応をお願いする。
【終わりに】
平成8年7月の中教審答申「21世紀を展望したわが国の教育の在り方について」では「今後における教育の在り方の基本的な方向」として、
―我々は、教育における「不易(時代を超えて変わらない価値のあるもの)」と「流行(時代の変化とともに変えていく必要があるもの)」を十分に見極めつつ、子どもたちの教育を進めていく必要がある。―という一節がある。
本年度、3つの重点に共通し、文頭に「子ども」という言葉を位置付けた。これは、学習指導要領に、一人ひとりの子どもを主語にする学校教育の目指すべき姿が具体的に示されていることを踏まえたもので、いわゆる「不易」に当たる部分と考える。
一方で、主体的・対話的で深い学びの実現や、ICT環境を適切に活用した「個別最適な学び」と「協働的な学び」の充実、働き方改革の推進、教育環境の体制整備など、新たな教育計画のもとで、新しい時代が求める教育を着実に推進するなど、いわゆる「流行」に当たる部分も着実に推進していく必要がある。
校長の皆さまには「不易と流行」のバランスを図りつつ、学校のあるべき姿を自問し、常に改善しようとする課題意識を持って、学校経営の最高責任者としてのリーダーシップを存分に発揮していただくようにお願いする。
日高教育局としても、町教育委員会や学校、校長会、教頭会、関係する教育機関や団体等と連携を図り、本重点に基づき確かな成果を目指す実効性の高い教育を推進してまいりたいと考えており、皆さまの理解と協力をお願いする。
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(道・道教委 2023-04-18付)
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