留萌管内5年度教育推進の重点 未来を創造する子育成 家庭・地域との協働など柱に(道・道教委 2023-04-18付)
川村秀明局長
【留萌発】留萌教育局の川村秀明局長は12日、留萌市中央公民館で開催した管内公立学校長会議において本年度の管内教育推進の重点を説明した。重点的に取り組む項目として「未来の留萌を創造する子どもたちの育成」「安心・安全な教育環境の構築」「家庭・地域との協働の推進」の3つの柱を提示。児童生徒の健やかな成長に向け、市町村教委や学校などとの連携によって一層取り組む方針を示した。
川村局長の説明概要はつぎのとおり。
【はじめに】
前年度は「学校・家庭・地域社会が協働し、ふるさとの未来を創る子どもを育む取組の推進」をテーマに子どもの健やかな成長に向けて学校・家庭・地域社会が協働し、予測困難な時代においてふるさとの持続可能な未来を主体的に創る子どもを育んでいけるよう皆さんが先頭に立って創意工夫ある教育活動を展開していただいた。
とりわけ、今なお続く新型コロナウイルス感染症によって3年以上の長きにわたってこれまで経験のない教育活動を余儀なくされたが、皆さんの懸命な尽力によって子どもの学びが保障された。心から感謝申し上げる。
教育局では引き続き、令和の日本型学校教育の実現を目指すとともにこれまでの管内における取組の成果と課題を踏まえ、さらに実効性のある施策を展開するなど各学校の課題解決に向けて全力を挙げて取り組んでいく。
【本年度のテーマ設定】
5年度の管内教育推進のテーマについては昨今の情勢のほか、前年度までの取組の成果や課題および学習指導要領やこのたび改定された道教育推進計画をもとに設定した。
まず、社会情勢としては新型コロナがことし5月から「5類」に移行することに伴い、今後はアフターコロナを見据えながら教育活動を展開していく必要がある。
中でも子どもたちの学びの保障については、オンライン化などこの3年間の新たな成果を踏まえつつ、対面活動の再開などによって学びの質を最大限向上させることが必要。
また、学習指導要領の前文ではこれから目指す社会は「持続可能な社会」であることが明確に示されており、学校教育においては、児童生徒一人ひとりがあらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようその資質・能力を育成することが求められる。
こうしたことから、道教委においては持続可能な社会の創り手を育むことを目指した主体的・対話的で深い学びの実現による授業改善や地域の施設や人材等の教育資源を活用した体験的な学習活動の推進を図っている。
このような中、各学校等においては各市町村が目指す地域創生の取組と方向性を同じくして学校、家庭、地域社会が一層協働を図り、明るく豊かな未来を創ることができる子どもを育んでいく必要がある。
このようなことを踏まえ、5年度の管内教育推進のテーマを「子どもたちの学びを確実に保障する環境の構築~未来の困難を乗り越え、豊かな人生を切り拓く子どもたちの育成」とした。
【管内教育推進の重点について】
本テーマの実現を目指し、重点的に取り組む項目として3つの柱を示したので柱ごとに説明する。
▼柱Ⅰ 未来の留萌を創造する子どもたちの育成
管内においてはコロナ禍により今までに経験のない対応が求められる中「ICT活用などによる授業改善の取組」「子どもが主体的に体力向上に取り組めるよう各学校が創意工夫を凝らした1校1実践の取組」「校内研修体制の充実」など各地域や学校の実情を踏まえた創意工夫ある取組を行ってもらった。
また、特別な教育的支援を必要とする子どもへの対応については「個別の指導計画」の作成はもとより、関係機関等と連携した「個別の教育支援計画」の作成といったきめ細かな支援に向け、取組を着実に進めていただいている。
一方で管内の学力状況は依然として全国と比較して差が見られるほか、特別支援においてはさらなる学校間連携が必要といった課題も見られる。
これらの成果や課題を踏まえ、本年度の重点的な取組として5点示した。
1点目は個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実によって学習指導要領の理念の実現を目指すため「ICT環境の適切な活用による、主体的・対話的で深い学びの実現」とした。
2点目はスタートカリキュラムの充実による幼稚園と小学校の連携充実、全国学力・学習状況調査の結果を小・中学校が連携して分析し、課題解決を図る取組や検証改善サイクルの一層の充実を目指すため「学校段階間の接続を意識した教育課程の編成・実施による幼児教育から高校教育までの円滑な接続」とした。
3点目は各種調査等の結果を活用し、体育・保健体育の授業改善および各学校の児童生徒の実態や特色を生かした取組の推進を目指すため「運動機会を充実させ学校教育全体で取り組む、体力・運動能力の向上」とした。
4点目は特別支援教育について教育関係者の専門性の一層の向上および専門的な関係機関との連携を図り、切れ目のない一貫した支援と児童生徒一人ひとりの教育的ニーズを踏まえた支援の充実を目指すため「個別の教育支援計画の活用による幼児期から就労までの切れ目のない特別支援教育の充実」とした。
5点目は教師自らが主体的な学びによる研究と修養に努め、教職員集団が互いに知恵と工夫を出し合い、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実する方策などを追求するため「教員同士の協働的な学びの促進などによる令和の日本型教育を力強く実践する人材の育成」とした。
これらの推進のため、教育局では「ICTを活用した個別最適な学びや協働的な学びの充実や主体的・対話的で深い学びの実現に向け、課題の明確化や取組の具体化など授業改善に向けた指導助言の充実・学校力向上に関する総合実践事業における包括的な学校改善の取組への支援」「今後作成いただく、5年度学力向上ロードマップを踏まえ、EBE協議会等を活用し、管内全体での検証改善サイクルの取組や異校種間連携の推進」「スタートカリキュラムを含め、幼稚園と小学校の接続を見通した教育課程の編成、実施に係る情報提供や指導助言」「高校におけるCBA調査や全国学力・学習状況調査の結果等を踏まえた授業改善の取組について共通理解を図り、必要な取組の重点化を図るEBE協議会の実施」などに取り組んでいく。
また、体力・運動能力の向上に関わっては体育の授業改善および体力向上の一層の充実に向けた1校1実践等、運動機会の充実に向けた指導助言を行うとともにエキスパート教員を活用した研修会の実施などに取り組んでいく。
特別支援教育の充実に関わっては教員の資質・能力の向上に向けて児童生徒一人ひとりの障がいの状態等に応じた授業改善に係る支援を行うことや留萌管内特別支援連携協議会において切れ目のない一貫した支援等について協議し、特別支援教育の推進に向けた関係機関とのより一層の連携などに取り組んでいく。
「人材の育成」については学校の実態を踏まえた校内研修の支援、参加者のニーズを踏まえた各種研修会の充実、道外出身の若手教職員対象の研修会の実施などに取り組んでいく。
▼柱Ⅱ 安心・安全な教育環境の構築
管内においては「生徒指導の3つの機能を生かした望ましい人間関係を築く取組」「いじめの未然防止にかかる児童生徒の主体的な取組」「不登校児童生徒へのきめ細かな支援」など、子どもが安全・安心に学校生活を送ることができる学校づくりを着実に進めてもらった。
また、教職員に係る時間外在校等時間の公表や教職員の不祥事根絶に向けては校内で不祥事防止のための意識共有を図る場を設定するなど各学校で指導を徹底してもらっている。
一方でいじめの認知について0件の学校が増えてきているほか、時間外在校等時間についても前年度より増加しているという課題もある。
これらの成果および課題を踏まえ、重点的な取組として6点示した。
1点目は各教科における自己肯定感の醸成や学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の一層の推進を目指すため「他者と互いに協力し合い、認め合うことを実感させる道徳教育の充実」とした。
2点目は全教職員がいじめの積極的な認知に努め、学校が確実かつ組織的にいじめ問題に対応し、いじめの未然防止、早期発見・早期対応の取組のさらなる充実を目指すため「学校いじめ対策組織を機能させたいじめの未然防止・早期対応の徹底」とした。
3点目は児童生徒の実態に応じた個々の学びを保障する授業づくり、困ったときや不安なときにいつでもSOSを発信できる雰囲気のある学級づくり等を通じて、全ての児童生徒が安心して豊かな学校生活を送ることができる魅力ある学校づくりに向け「人間関係や仲間づくりの促進などによる不登校の未然防止・早期対応の徹底」とした。
4点目は学校においてGIGAスクール構想が進展し、児童生徒の1人1台端末の活用が進む中で教職員が校務においてICTを十分に活用できるようになることを目指すため「ICTの積極的な活用による働き方改革の推進」とした。
5点目は教職員の法令順守の意識を一層高め、学校への信頼を維持・向上することを目指すため「実効的な校内研修等の実施による服務規律や法令順守の徹底」とした。
6点目は学校における様々な課題に対し、教職員が協働性を発揮し、互いが信頼し合える職場環境の構築を目指すため「職員相互が信頼し合い支え合う心理的安全性が高い職場の構築」とした。
これらの推進のため、教育局としては「絆づくりメッセージコンクールやどさんこ☆子ども地区会議等の実施によって児童生徒がいじめの未然防止や安心・安全な学校生活を送るために必要なことを主体的に考え、行動する機会の提供」「いじめの未然防止を目指した取組や積極的認知による早期発見・早期対応を組織で確実に実行することができるよう、局独自のいじめ問題対応研修会の実施などに取り組んでいく。
不登校児童生徒への支援については学びの保障に向けた学習支援や教育相談など、ICTを活用した多様な教育機会の確保、中1ギャップ問題未然防止事業等の成果の普及、自己存在感を与え、共感的な人間関係を育成し、自己決定の場を与える教育活動の充実に向けた指導助言などに取り組んでいく。
また、教職員に関わっては「全道、全国における働き方改革の優良事例など先進校の取組成果の普及」「服務規律や法令順守に係る事例提供や校内研修の支援」などに取り組んでいく。
▼柱Ⅲ 家庭・地域との協働の推進
これまで留萌管内では「総合的な学習の時間等において地域の良さや可能性について子どもに気付きを与え、地域の課題に向き合う学習の実施」「地域への愛着や地域の将来を創る意識を醸成するための多様な体験活動」などを着実に進めていただいている。
一方で留萌地域に「誇り」や「良さ」を感じていない生徒が5割を超えるといった課題も見られる。
これらの成果や課題を踏まえ、重点的な取組として4点示した。
1点目は地学協働の観点から地域の人材や企業・団体等との連携を一層深め、地域の可能性や課題を掘り起こし、探究的な学びのさらなる充実を目指すため、「SDGs・ゼロカーボンの実現などの地域課題探究型の学習活動による主体的に地域に関わる児童生徒の育成」とした。
2点目は学校が抱える課題の本質と解決策について学校運営協議会の熟議を通じて共通の目標を設定し、実効性が高まることを目指すため「学校運営協議会の効果的な運営などによる地域とともにある学校づくりの推進」とした。
3点目は地域と学校との連絡調整や情報の共有、地域住民への呼びかけができる人材などの発掘や育成を目指すため「学校と地域をつなぐコーディネーターの発掘・育成による地学協働の推進」とした。
4点目は望ましい生活習慣の定着を図り、家庭学習や読書の推進などを通して子どもたちの学ぶ意欲を高めることを目指すため「学校・家庭・地域の連携による規則正しい生活と学習意欲の向上の推進」とした。
これらの推進のため、教育局としては「北大や留萌振興局と連携し、探究的な学びの一環として、留萌高校においてSDGs・ゼロカーボンプロジェクトを実施」「局独自事業であるオロロンリレーションプロジェクトにおいて子どもが地域に愛着や誇りを持てる企画の展開」「各学校の探究学習の支援」「学校運営協議会の在り方等に関する助言」「地域の企業等と連携した地元産業を知る取組」「管内PTA連合会などとの連携による望ましい生活習慣等の啓発や周知」などに取り組んでいく。
【結び】
人口減少や少子高齢化の進行、情報技術やグローバル化の進展、人々の価値観や生活様式、ライフスタイルが大きく変わり、従来の知識や経験だけでは解を見いだすことが難しい時代となっている。
子どもたちが未来において様々な困難を乗り越え、豊かな人生を切り拓いていくためには自らの良さや可能性を認識し、自己肯定感を高めていくとともに、全ての人を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら持続可能な社会の創り手として成長できるよう、教育局、市町村、関係機関等と一体となりながら教育活動を推進していく必要がある。
教育局では管内の子どもの健やかな成長に向け、市町村教委や学校との連携を一層強めていくので皆さんの理解と協力をお願いする。
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