上川管内5年度教育推進の重点 学び伸ばし守り支えて 高・特校長会議で岸本局長(道・道教委 2023-04-28付)
岸本亮局長
【旭川発】上川教育局は18日、上川合同庁舎で管内高校・特別支援学校長会議を開いた。岸本亮局長が5年度管内教育推進の重点を説明し「学びを伸ばす」「学びを守る」「学びを支える」の3つのキーワードで整理した「SDGs・ESDの推進」「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」など11項目18点を解説。教育活動の一層の充実に向けて理解と協力を求めた。
教育推進の重点の概要はつぎのとおり。
【はじめに】
このたび、道教委では、新しい「北海道教育推進計画」を策定し、これまでの基本理念「自立」と「共生」を継承しつつ、本道における教育課題の解決と地域創生の実現に向けて、5年度からの5年間で目指す教育の全体像を示したところである。
管内においては、新たな道推進計画のスタートとなる本年度、前年度から取り組んできた「安心・安全」「学力向上」のテーマを継承・発展させ、推進計画から特に推進すべき取組を「学びを伸ばす」「学びを守る」「学びを支える」の3つのキーワードで整理した11項目18点に「伸ばす」「守る」「支える」の質を高める「ICT利活用の推進」に係る3点を加えて「上川まなびフォーカス」として示した。
【学びを伸ばす~学力・体力向上に関わる取組】
まず、生徒の学力と体力の向上に係る取組については「学びを伸ばす」とのキーワードで5項目7点を示した。
▼SDGs・ESDの推進
環境問題をはじめ世界規模の様々な課題が生じる中、その解決に向けた世界共通の目標「SDGs」が掲げられているが、道民のSDGs認知度は約4割にとどまっているという調査結果がある。
また、学習指導要領では、生徒が持続可能な社会の創り手となることが期待されると示されている。
こうしたことから、各教科において、これまでの教育活動を生かしつつ、SDGs・ESDと関連付けを図りながら生徒に世界や地域の課題を自分事として捉え、解決に向けて考え、行動する力を育むことが大切であると考える。
そこで、各学校においては、SDGs・ESDの推進に向け、特に―
▽持続可能な社会の創り手を育む主体的・対話的で深い学びの実現
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては、地域の施設や人材などの教育資源を活用した体験的な学習活動を促進するとともに、指導主事の学校運営指導や教科指導訪問における指導助言のほか、SDGsに係る研究などに取り組むスーパーサイエンスハイスクール指定校の先進事例の普及・啓発などに努めていく。
▼新しい時代に必要となる資質・能力の育成
生涯にわたって自立して生き抜くために、変化が激しく予測困難な時代の中でも通用する確かな学力を身に付けることができるよう、基礎的・基本的な知識と技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力などを育むとともに、主体的に学習に取り組む態度を養い、個性を生かし多様な人々との協働を促す教育の充実が求められている。
また、4年度から学習指導要領が年次進行で実施され、ICTを適切に活用しながら、多様な生徒を誰一人取り残すことなく育成する「個別最適な学び」と、生徒の多様な個性を最大限に生かす「協働的な学び」の一体的な充実を図ることで、学習指導要領に示された資質・能力の育成を着実に進める必要がある。
こうしたことから、小学校から高校までの12年間を見通し、義務教育段階の学びを踏まえた高校段階での継続的な検証改善サイクルの確立を推進するとともに、スクール・ミッションに基づいて各学校が策定するスクール・ポリシーに示された育成を目指す資質・能力を教科等横断的に育成する取組の推進などを通じて、生徒の資質・能力の育成を図ることがより一層大切であると考える。
そこで、各学校においては、新しい時代に必要となる資質・能力の育成に向け、特に―
▽教科等横断的に資質・能力を育成する校内体制の構築
▽主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては、教育局主幹による学校経営訪問において、組織的な教育活動の検証と改善について指導助言するとともに、指導主事の学校運営指導において、授業改善や指導方法、指導体制の工夫への指導助言などに努めていく。
▼STEAM教育の推進
AIやIoTなどの急速な技術の進展によって、社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日においては、これまでの文系・理系といった枠にとらわれず、各教科の学びを基盤としつつも、様々な情報を活用してそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けられるよう、その資質・能力を育成する教科等横断的な教育であるSTEAM教育の推進が求められている。
こうしたことから、各学校においては、各教科での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくため、ICTの効果的な活用を促進しながら、各教科や総合的な探究の時間等において、教科等横断的・探究的な学習の充実を図ることが大切だと考える。
そこで、各学校においては、特に―
▽教科等横断的な学習や探究的な学習等の実践
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては「S―TEAM教育推進事業」において、ITやデータサイエンスに関する講師の派遣や、「探究チャレンジ上川」の実施によって、地域や実社会での問題発見・解決につなげる教科等横断的な取組や探究のプロセスを踏まえた学習活動への支援などに努めていく。
▼体力・運動能力の向上
体力は、人間の活動の源であり、健康の維持のほか、意欲や気力といった精神面の充実に大きく関わり、まさに生きる力を支える重要な要素であるが、本道の児童生徒の体力は「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の体力合計点において、全国平均を下回っており、当管内でも、小学校女子は全国平均を上回っているものの、小学校男子、中学校男女で全国平均を下回っている。
こうしたことから、運動機会の提供などによる運動習慣の定着のほか、各学校の体力・運動能力の課題や子どもの実態を踏まえた体力向上、そして、運動やスポーツをすることが好きな生徒の育成を目指した保健体育授業の改善・充実などの取組を展開することが大切だと考える。
そこで、各学校においては、特に―
▽課題や子どもの実態を踏まえた体力向上の取組の充実
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては、生徒同士が協働的に関わる中で楽しさや達成感を感じ、自ら進んで運動に親しむことができる資質・能力を育成する保健体育授業の改善のため、保健体育科の指導主事による教科指導訪問や、保健体育科の教員を対象にした教科指導力の向上に向けた研修会の充実などに努めていく。
▼特別支援教育の推進
特別支援教育に関する理解の高まりや、障がいのある子どもの就学先決定の仕組みに関する制度の改正によって、特別な支援を必要とする生徒の数が増加傾向にある。
こうしたことから、個別の教育支援計画作成率の向上や個別の指導計画に基づく生徒への支援、校内研修の実施により特別支援教育の充実を図ることが大切だと考える。
そこで、各学校においては、特に―
▽切れ目のない一貫した指導や支援の充実
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては「上川管内特別支援連携協議会」の協議内容も踏まえながら、特別支援学校などと連携し、きめ細かな教育相談体制の充実に向けた支援のほか、多様な学びの場における個々の障がいの状態に応じた指導や支援の充実などに努めていく。
【学びを守る~安心な学校に関わる取組】
続いて、生徒が安心して学ぶことができる安心な学校づくりについて「学びを守る」とのキーワードで、2項目4点を示した。
▼いじめ防止の取組の充実
いじめへの対応については、初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けて取り組まれているが、いじめの重大事態については件数の増加傾向が見られる。
こうしたことから、いじめの早期発見・早期対応に向けた生徒指導体制の充実を図るとともに、全ての生徒が「いじめは絶対に許さない」という意識を持ち、望ましい人間関係を構築するなど、子どもが主体的に取り組むいじめの未然防止に向けた取組の一層の充実が必要である。
そこで、各学校においては、特に―
▽未然防止の促進
▽早期発見・早期対応に向けた生徒指導体制の充実
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては、生徒会活動での主体的ないじめ防止活動の促進や、学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の充実への支援、「からかい」や「嫌がらせ」なども含めていじめを積極的に認知し、その解決に向けた学校いじめ対策組織による早期発見・早期対応の徹底、学校のいじめ対応に係る責務理解を深める研修の充実などに努めていく。
▼不登校生徒への支援の充実
不登校生徒への支援は、全ての生徒が安心して教育を受けられるようにすることや、不登校生徒の休養の必要性を踏まえた学習支援を行うことなどが求められているが、不登校生徒数は高水準で推移している。
こうしたことから、学校と関係機関との連携を強化し、多様で適切な教育機会の確保に努めるとともに、全ての子どもたちにとって、互いの良好な人間関係や教職員との信頼関係が構築され、安心感と充実感が得られる魅力ある学校づくりを推進することが大切だと考える。
そこで、各学校においては、特に―
▽魅力あるより良い学校づくりの推進
▽不登校の子どもを支援する体制の強化
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては、生徒が主体的に取り組む協働的な活動を通して、互いに活躍する場面をつくる「絆づくり」の促進や、学校、家庭、関係機関が連携した「児童生徒理解・支援シート」を活用した取組への支援、予兆への対応を含めた初期段階からスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとの連携による教育相談体制の整備などに努めていく。
【学びを支える~地域連携に関わる取組】
社会に開かれた教育課程の趣旨を踏まえ、学校と地域の連携について「学びを支える」とのキーワードで、2項目3点を示した。
▼地域と学校の連携・協働の推進
近年、地域社会のつながりや支え合いの希薄化による地域の教育力の低下のほか、学校が抱える課題の複雑化・困難化が指摘されており、そうした課題を解決するためには、地域と学校が目標を共有し、共に子どもたちや地域の未来を考えていく必要がある。
こうしたことから「地域とともにある学校づくり」と「学校を核とした地域づくり」の実現に向け、学校と地域が取組を理解し合う「コミュニティ・スクール」の設置などによって、地学協働の一層の推進を図ることが大切だと考える。
そこで、各学校においては、特に―
▽主体的に地域に関わる生徒の育成
▽学校と地域をつなぐ人材の配置・育成の推進
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては「上川未来人プロジェクト」によって、地域課題探究型の学習活動を進め、地域と学校に向け、地域課題の解決や地域創生に関わる学習成果について情報交換の場を設けることなどに努めていく。
▼生涯学習・社会教育の振興
地域と歩む持続可能な教育を実現するためには、道民が生涯を通じて活躍することができるよう、必要なときに必要な知識や技術を身に付けて成長し、他者と協働しながら様々な社会的変化を乗り越えて、自らの可能性を最大限伸ばしていくことが必要である。
こうしたことから、社会人の学び直しや多様な背景を持つ人々のニーズに応じた生涯にわたる学習機会の提供のほか、多様な方々が主体的に社会に参画できる社会的包摂の実現に向けた取組の推進が大切だと考える。
そこで、各学校においては、特に―
▽生涯にわたる学習活動の推進
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては、社会教育主事による関係団体の活動、人材育成、組織マネジメント、方向性などへの指導助言の充実などに努めていく。
【「学びを守る、支える」に関わる取組】
また、「上川まなびフォーカス」では「学びを守る」「学びを支える」のどちらにも関連する項目として、2項目4点を示した。
▼安全・安心な教育環境の構築
近い将来に発生が懸念される巨大地震や激甚化・頻発化する自然災害のほか、学校における活動中や登下校中の事件・事故、SNSの利用による犯罪など、生徒の安全を脅かす様々な事案も次々と顕在化している。
こうしたことから、子どもたちが生き生きと活動し、安心して学べるようにするために、安全の確保が保障されることが不可欠との前提に立ち、地域の実態を踏まえた避難訓練を取り入れた1日防災学校の実施のほか、自ら危険を予測し回避する危機対応能力や規範意識の育成、学校、家庭、地域、関係機関が連携した効果的な安全教育の推進が大切だと考える。
そこで、各学校においては、特に―
▽交通安全・防犯・防災教育の推進
▽安全確保や災害対応体制の確立
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては、家庭、地域、防災関係機関との連携による避難所設営体験のほか、非常食調理などの体験活動を核とする「1日防災学校」の取組の推進や「学校安全計画」「危機管理マニュアル」に基づく安全体制の見直しと構築への支援などに努めていく。
▼働き方改革の推進
学校における働き方改革の目的は「教員のこれまでの働き方を見直し、自らの授業を磨くとともに日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで、自らの人間性や創造性を高め、生徒に対して効果的な教育活動を行うことができるようになること」です。
こうしたことから、引き続き、教職員が本来の業務に専念できる環境の整備や学校サポート体制の充実を進めることが大切だと考える。
そこで、各学校においては、特に―
▽本来担うべき業務に専念できる環境の整備
▽部活動指導に関わる負担の軽減
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては、働き方改革の手引「Road」の積極的な活用を促進するとともに、教育局主幹による学校経営訪問における指導助言のほか、教職員に代わって指導を行う「部活動指導員」の配置の推進などにより「北海道における部活動の在り方に関する方針」に基づく取組の支援に努めていく。
【ICT利活用の促進】
加えて、学びを「伸ばす」「守る」「支える」の質を高める取組として、「ICT利活用の推進」に係る3点を示した。
学習指導要領では、情報活用能力が言語能力などと同様に「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けられている。
こうしたことから、各学校においては、ICT環境の充実や教員のICT活用指導力の向上などによって、生徒の学習への興味・関心を高めるとともに、教育の質を向上させて、情報活用能力の育成を図ることが必要である。
そこで、各学校においては、特に―
▽ICTを適切に活用した個別最適・協働的な学びの充実
▽情報活用能力の育成に資する実践の普及・啓発
▽教員のICTの効果的な活用に向けた取組の充実
―について、取組を推進していただくようお願いする。
教育局としては、指導主事による協働的な学びと個別最適な学びの一体的な充実や、不登校生徒へのICTを活用した適切な支援などへの指導助言のほか、ICT教育推進課と連携した、オンラインを活用した時間や場所を限定しない研修機会の充実などに努めていく。
【むすびに】
5年度の管内教育の推進に向けた「上川まなびフォーカス」について、説明申し上げた。
人口減少や少子高齢化の進行、情報技術やグローバル化の進展、産業構造の変化、経済格差の拡大や二極化などによって、人々の価値観や生活様式、ワークスタイルが大きく変わり、従来の知識や経験だけでは最適解を見いだすことが難しい時代となっている。
このような中、生徒が、未来において様々な困難を乗り越え、豊かな人生を切り拓いていくためには、自らの良さや可能性を認識し、自己肯定感を高めていくとともに、全ての人を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら持続可能な社会の創り手として成長できるよう、学校・家庭・地域・行政が役割と責任を果たし、相互に連携・協働していくことが一層求められている。
5年度の上川管内教育の推進に向け「学びを伸ばす・守る・支える」を合言葉に、教育局、学校が力を合わせて、教育活動の一層の充実を図っていきたいと考えている。
校長の皆さんの一層の理解と協力をいただくようお願い申し上げる。
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上川局高校長会議
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