根室市 5年度教育行政方針 学力向上へ補助教員確保 花咲港小でインクルーシブ教育
(市町村 2023-05-10付)

根室市波岸克泰
波岸教育長

 【釧路発】根室市教委の波岸克泰教育長は、5年度教育行政方針において、子ども一人ひとりに応じたきめ細かな学習指導の実現に向けて、独自加配などを講じ学力向上等補助教員の確保に努めていくこととした。このほか5年度から、インクルーシブ教育を柱とした新たな教育スタイルを創出する学校として、花咲港小学校を位置付けるとともに道立特別支援教育センターとの連携体制を構築することで、障がいの種類や程度に応じた専門的な教育を受けられる環境づくりに努めていく。

 執行方針の概要はつぎのとおり。

【持続可能な社会の創り手を育てる学校教育の充実】

 レゴブロック型の資質・能力を育成する教育の充実と、障がいのみならず人種の別や男女差、性についての指向性、社会的地位や背景の違いなど、あらゆる差別を乗り越えて、一人ひとりの個性と価値観を認め、自分らしくあるための選択や決定を尊重するインクルーシブ教育を実現し、知識および技能や思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等の資質・能力の育成に向け、取組を進めていく。

 市の若手教員で組織する「授業改善推進チーム」については、授業力向上に向けた「新しい形の学び」をテーマに研究・実践することとしており、教員の積極的な授業改善の取組を後押しする。また、校長・教頭・教諭の代表と教育委員会で組織する「学力向上プロジェクト推進会議」や、市全体の教育課題の解決に向けた教員による研修組織「根室市学校連携教育研究会」への支援継続など、児童生徒に対する指導方法をさらに工夫・充実させ、市全体の学力向上等につなげていく。

 このほか、国や道からの教員加配に加え市街地区中学校への市独自加配や学力向上等補助教員の確保に努め、個に応じたたきめ細かな学習指導に努める。

 市内唯一の高校である根室高校については「北海道根室高等学校教育振興会」を通じて、パソコン貸与や資格取得等への交付金支給および「総合的な探究の時間」で展開される地域巡検などの教育活動への支援を継続する。また、新たに一人ひとりの進路実現に向けて個別最適な学びを保障するAI学習教材を導入するほか、JR通学をしている高校生への定期券購入費の全額を助成。市長部局が取り組む路線バス利用促進事業と併せ、居住地によって生じる経済的な負担格差の解消につなげるなど支援拡充に努める。

 道立特別支援学校の設置については、市独自の取組として花咲港小学校を障がいのある子どもも、ない子どもも共に学ぶことができるインクルーシブ教育を柱として、新たな教育スタイルを創出する学校と位置付けるとともに、道立特別支援教育センターとの連携体制を構築し、障がいの種類や程度に応じた専門的な教育を受けられる教育環境の整備を進める。

 教育の情報化に向けては「全国学力・学習状況調査」のオンライン実施など、国による教育のICT化の推進などの動向を注視しつつ、デジタル教科書の本格導入に向け協議を進める。

 また、5年度から小中学生が家庭学習においても、タブレットを活用してAI学習教材等に取り組めるよう、小学生から高校生まで一貫して、学校・過程でICTを活用して学びを深める体制を整え、新たな価値を創出する「教育DX」を推進していく。

 このほか教員のICT教材の活用能力向上に向けた研修機会の確保や、子どもたちのネットモラル教育の充実、さらにはタブレット端末を活用した不登校等の児童生徒に対する学びの保障に努めるなど、きめ細かな支援や対応を図り「令和の日本型学校教育」が目指す「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現に向け取り組んでいく。

 なお、学校教育の情報化推進の方向性については国の施策展開も踏まえながら「仮称・第2期根室市教育情報化推進計画」の5年度策定を目指す。

 このほか、コロナ禍で制限された生活に起因する子どもたちの対人関係のトラブルやいじめ問題などに迅速に対応するため、市独自のカウンセリング体制の整備・充実に努めていく。

 また、学校の教育活動全体を通じて、ジェンダー平等への理解を促し、一人ひとりの児童生徒があらゆる他者を価値ある存在として尊重し合えるよう教育の充実に努めていく。

 子どもたちの基本的な生活習慣の確立に向け、各家庭でゲーム機や携帯などの使用時間を決める「スイッチオフ22」運動やネットトラブルの加害者・被害者とならないようインターネット等の利用に関する家庭内でのルール作りなどについて啓発促進に取り組んでいく。

 ふるさと学習については、北方領土返還要求運動原点の地として領土問題に対する正しい理解と認識に向け取り組むとともに、4年度小学校で実施した姉妹都市黒部市との「オンライン交流授業」を継続発展。それぞれの自然や歴史、産業など地域の持つ魅力や特性について学ぶ機会のさらなる拡充に努め、郷土ねむろを愛する教育を実践していく。

 防災・減災教育の充実に向けては、自らの命を守るために必要な知識・能力などが身に付くよう市長部局や防災関係機関、地域と学校が参画するコミュニティ・スクール等と連携しながら、子どもたちの防災リテラシーの一層の向上を図る。

【社会構造の変化の中で持続的で魅力ある学校教育を実現する教育環境の充実】

 一人ひとりの個性、能力、適性などに応じて自らの力を伸ばすことができる教育環境の整備を計画的に進めるために、5年度「仮称・根室市立学校適正配置計画」の策定に着手する。この中で、歯舞学園(2年度開校)、海星学校(5年度開校)の取組の経過や成果を踏まえ、小学校校舎・体育館改修および中学校校舎の移転・改築に着手する落石地区や、中学校校舎の改築に向けた基本設計に着手する厚床地区など、他の学校への義務教育学校制度の導入について検討・協議を重ねる。

 加えて、老朽化が進む市街地校についても必要な改修を適宜進めていく。アスベスト含有等の課題から延期している旧花咲小校舎の解体については、石綿含有調査の結果を踏まえ校舎解体設計に取り組む。

 コミュニティ・スクールについては、4年度全ての中学校区で組織化。円滑な行動に向け、コミュニティ・スクールアドバイザーによる支援を継続するほか、全国組織との交流機会を通じ、取組の充実を図る。

 学校給食については、4年度設置した「根室市学校における給食に関する検討委員会」において施設の在り方、安全性、食育の充実などについて意見が出されていることを踏まえ、市長部局との協議を進め早急に将来の方向性について検討していく。

 また、子どもたちの健やかな成長に向け、児童生徒の学校給食費の無償化を継続するとともに、「ふるさと給食」を実施し食育の充実を図る。

 全国的に教員不足が深刻化していることから、将来の教員確保につなげるため、相互協力協定を締結している北海道教育大学と連携し、複式教育を学ぶ教育実習生の受け入れや、大学生による小中学生を対象とした交流授業の実施検討など、根室市の教員確保に向け、大学との連携を強化するとともに「学校における働き方改革のための業務改善計画」に基づいて、校務支援システムによる教員在校等時間の把握・管理に努めるなど校長会や道教委とも連携し、教員の働き方改革を着実に進めていく。

【社会教育・生涯学習活動の充実と文化・スポーツの振興】

 子どもたちの社会教育事業への主体的な参加を奨励する「ねむろわんぱくチャレンジ」については、昨年のリニューアル以降多くの子どもたちの参加があったところであり、引き続き、対象事業の拡充を図るなど、経験を通じた成長を後押ししていく。

 社会体育施設については、パークゴルフ場管理棟・コミュニティハウス建て替えに向けた基本設計に着手するとともに、市営球場の整備、総合運動公園スケートリンク周辺の改修など、スポーツに触れ合う機会の拡充に向け、環境整備に取り組んでいく

 また、市民要望が多く寄せられている「仮称・根室市総合体育館」については、建設に向けた向けた基本構想に着手。市民の皆さんとの議論を重ね実現につなげていく。

(市町村 2023-05-10付)

その他の記事( 市町村)

中標津町 5年度教育行政方針 社会科副読本を改訂 端末の持ち帰り拡充へ

中標津町教育長山田康司  【釧路発】中標津町教委の山田康司教育長は、5年度教育行政方針において、ふるさと教育のより一層の充実に向けて、独自の社会副読本「私たちの町 中標津」の全面改訂を完了させるとともに、ふるさとへ...

(2023-05-17)  全て読む

愛別町 5年度教育行政執行方針 学校間連携を推進 チャレンジゼミに新視点を

愛別町教育長馬場信明  【旭川発】愛別町教委の馬場信明教育長は、5年度教育行政執行方針で、中学生対象の愛別チャレンジゼミを民間学習塾の協力を得ながら学校と連携して実施し、新たな学びの視点を取り入れながら、学習習慣...

(2023-05-17)  全て読む

栗山町 5年度教育行政執行方針 高専一貫教育を推進 部活動地域移行へ協議開始

栗山町教育長吉田政和  【岩見沢発】栗山町教委の吉田政和教育長は、第1回定例町議会で5年度教育行政執行方針を説明した。中学校部活動の地域移行に向けた協議を始めるとともに、部活動等を通して、心身のバランスの取れた成...

(2023-05-12)  全て読む

様似町 5年度教育行政執行方針 小中一貫相互授業推進 小学校教科担任制に注力

様似町教育長秋山寛幸  【苫小牧発】様似町教委の秋山寛幸教育長は、5年度教育行政執行方針で、学校種の垣根を越えた教職員による指導体制を図る「小中一貫相互授業」や、小学校における教科担任制の充実に注力する考えを示し...

(2023-05-11)  全て読む

上士幌町教委 体力向上PJの成果 体力テスト全種目 過去の全国平均超 継続的な運動機会創出し

 【帯広発】上士幌町教委は、帯広畜産大学人間科学研究部門の村田浩一郎准教授による協力のもと「子どもの体力向上プロジェクト」に取り組んでいる。体操教室、地元スポーツ少年団による体験会など、10...

(2023-05-10)  全て読む

千歳市教委 給食センター建替 39億円に 8年度着工 将来の子ども減少等踏まえ

 千歳市教委は、老朽化が進む市学校給食センターの建て替えに向けた基本構想を改訂した。児童生徒の将来的な減少数や調理場のレイアウト変更などを考慮し、総事業費を当初予算の約50億円から約39億円...

(2023-05-10)  全て読む

えりも町 5年度教育行政執行方針 庶野小で完全給食実施 えりも高の実践等理解を

えりも町川上松美  【苫小牧発】えりも町教委の川上松美教育長はこのほど、5年度教育行政執行方針を説明し、庶野小学校で完全給食をスタートすることを表明した。これで町内全小・中学校で給食実施となる。また、えりも高...

(2023-05-10)  全て読む

寿都町 5年度教育行政執行方針 公設民営塾の取組充実 寿都高存続へ魅力発信も

寿都町有田千尋  【小樽発】寿都町教委の有田千尋教育長は5年度教育行政執行方針において、公設民営塾での塾体験コース開設を継続し、基礎学力の強化を図るとした。また公設民営塾での個別指導の充実など、寿都高校存続...

(2023-05-10)  全て読む

喜茂別町 5年度教育行政執行方針 タブレットで授業改善 小中一貫見据え在り方検討

喜茂別町細田典男  【小樽発】喜茂別町教委の細田典男教育長は5年度教育行政執行方針において、タブレット等の活用による授業改善を進めるほか、小中一貫教育を見据えた義務教育の在り方について検討していくとした。 ...

(2023-05-10)  全て読む

1市4町1村で会長交代 留萌管内市町村校長会 5年度役員

 【留萌発】留萌管内8市町村における各校長会の5年度役員が決まった。留萌市や小平町、羽幌町、初山別村、遠別町、天塩町の1市4町1村で会長が交代した。  本年度役員はつぎのとおり。=敬称略=...

(2023-05-08)  全て読む