日高教育研究所5年度教育講演会 学習者が自立する授業を 山中道教大准教授が講演
(関係団体 2023-06-07付)

日高教育研究所教育講演会
山中准教授がオンラインで講演した

 【苫小牧発】日高教育研究所・教職員研修センター(櫻井亮所長)は5月31日、オンラインで5年度教育講演会を開催した。道教育大学旭川校の山中謙司准教授が「自立した学習者の育成に向けた授業改革」と題し講演した。「一つの答えに向かう教育から脱却しないと、自ら考え価値を創造する人材には育っていかない」と指摘し、一人ひとりが自分の疑問や問題を自分なりに解決する授業を提唱。そのための教師の役割や手だてなどを具体的に説明した。

 講演会は、新しい時代に必要となる資質・能力の育成を図るための基本的な考え方・内容・進め方・児童生徒理解についての研修を行い、教職員の資質および指導力の向上に資することが目的。43人が参加した。

 はじめに櫻井所長があいさつ。「一人ひとりの子を主語にする学校教育の姿を共有し、共に目指していく上で貴重な時間になると思う」「授業観を変える、新しいことを学ぶことはとてもエネルギーのいることだが、私たち教師が変わり続けることで、これからの世界を生きる子どもたちに必要な力を育てるという、教師の思いをかなえることができると思う」などと述べた。

 続いて、元国研学力調査官・教育課程調査官で、道教育大旭川校学校臨床准教授兼教育学部准教授の山中氏が「自立した学習者の育成に向けた授業改革」と題し講演した。

 山中氏は「これまではみんなで一つのことを解決する授業だったが、子ども一人ひとりの疑問や調べたいことをもとに個別の問題を学習する形に変えていきたい」と提案。「調べ方もそれぞれで良い。全て認めること。ただ、子どもたちは個々の問題に向かっているが、大きなくくりでみるとみんな一つのテーマに沿って学習している、というスタイルが望ましい」と述べた。

 また「一つの答えに向かう教育から脱却しないと、自ら考え価値を創造する人材には育っていかない」と指摘し「明治の学制以来、授業ではずっと教師が前面に出ていたが、そうではなく、子どもが主体となって学習していると、教師はどこにいるのか分からない。そんな、子どもの学習の伴走者となること」「これまでの古い授業観を脱却し、自立した学習の機会を保障し、全ての子の可能性を引き出す授業を」と訴えた。

 授業改善の視点としては「子どもにとってやりがいのある、目的意識の生みやすい、かつ指導内容に沿うような教材との出合いを設定する」「子の多様な考えを引き出す。まとめるのではなく、引き出しながら展開していく」「子どもの生活経験や既有知識を推定し、考えるための材料(教材)を見極めて提供する」「資質・能力は口頭で伝えて身に付くものではない。具体的な活動の中に埋め込み、何の役に立つか自覚できるようにすること」などの点を伝えた。

 講演後の質疑応答では「一人ひとりが個別に追究する良さは分かるが、時数や教科書の量、入試との兼ね合いもあり、いつもそういう授業をするわけにはいかない。単元ごとに重点を置くなどの方法で良いか」「同一の目標から個別の目標に切り替えるタイミングは」など多数の質問が寄せられた。

 これに対し山中氏は「現状の時数では難しく、単元ごとの重点化で構わない。とにかく、困難だからといって何もしなければ明治からの教育が何も変わらない。少しずつでも変えていくこと。そうすると、令和の教育が大きな転換点だったということになる」「全国1の先進校でも全ての授業で行ってはいない。この単元ではマイプラン学習をやっていくよという感じで圧倒的に従来型の方が多い。少しずつ無理のない範囲で行ってほしい」などと答えた。

(関係団体 2023-06-07付)

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