部活動地域移行へ国の支援拡大を 道都市教委連等6年度文教要望・下(関係団体 2023-06-16付)
◆教員加配措置、支援員増員を
【特別支援教育の振興充実について】
▼児童生徒が就学可能な特別支援学校の拡充
特別な支援を必要とする児童生徒の増加に伴い、通学可能な特別支援学校に就学を希望する保護者のニーズが高まっていることから、障がいの種別に応じた地域への分校の新設、基礎的環境整備を伴った既存校への障がいの種別の追加等について検討されたい。
▼遠隔地に居住する児童生徒等への支援
遠隔地に居住する児童生徒が特別支援学校へ通学できるよう、スクールバスの運行路線拡大を図られたい。
また、遠隔地居住者がスクールバスと寄宿舎の利用を選択・併用できるよう、弾力的な運用を図られたい。
さらに、やむを得ず通学の手段として民間事業者等を利用する場合は、保護者の経済的負担が大きいことから、特別支援教育就学奨励費の拡充や新たな通学費助成制度の確立など、制度の充実を図られたい。
▼特別支援教育推進のための教員の加配措置―重点
特別支援学級担当教諭の配置について、現在の児童生徒8人に1人という配置基準では十分に対応しきれていない状況にあることから、特別支援学級を設置する場合には、児童生徒の障がいの種別にかかわらず、1学級当たり最低でも2人の教員を配置するよう国に要望されたい。
また、学校教育法施行令第22条の3の基準に該当する児童生徒が入級する場合や肢体不自由学級に児童生徒が複数在籍する場合については、教員に係る負担が特に大きくなることから、加配措置を行うよう、引き続き国に要望されたい。
さらに、個々の教育ニーズに対応できるよう、特別支援教育コーディネーター担当教員を定数配置上での配置とするよう措置されたい。
▼専門的知識を有する特別支援学級担当教諭の採用、育成の促進
特別支援学級では、専門性の高い教員の配置が望ましいことから、特別支援学校教諭免許状所有者の採用や専門的知識を有する教員育成の一層の促進を図られたい。
▼インクルーシブ教育推進に当たっての教員の増員
インクルーシブ教育推進については、障がいのある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮が求められ、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することの確保が必要である。
そのためには、障がいの有無にかかわらず、子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援が必要であり、学校における支援体制の構築が必要不可欠である。このことから、通常の学級においても、教員の増員等の必要な措置を講じられたい。
▼特別支援学校教諭免許状取得講習の拡大―重点
特別支援教育に係る学校経営を考慮し、特別支援学校教諭免許状取得講習の開催地、開催方法、人数枠の拡大などについて、引き続き検討されたい。
▼通級指導担当教員等の適正配置および配置基準の緩和―重点
通級指導担当教員について、義務標準法の改正による加配定数の基礎定数化が8年度までに段階的に実施される見通しであるが、児童生徒のニーズに対応した多様な学びの場の整備のため、各市が計画的に通級指導教室を開設できるよう、道教委として、法令に従い定数化を行った上で実情に見合った年度ごとの具体的な配置計画を示していただきたい。
また、LD、ADHD、高機能自閉症等の児童生徒への支援など、特別支援学級の弾力的な運用を推進するため、特別支援学級・院内学級教員の配置基準のさらなる緩和を図るとともに、実情と配置基準が合うよう柔軟な措置を講じられたい。
▼教育上特別な支援を必要とする幼児が就園する公立幼稚園への国庫補助の実施
特別な支援を必要とする幼児が就園する公立幼稚園についても、私立幼稚園と同様に国庫補助の対象とされるよう国に要望されたい。
▼市町村配置の支援員や補助員等に係る財政措置の拡充―重点
支援員や補助員等については、合理的配慮、基礎的環境整備を充実させるために必要不可欠なものであるが、厳しい財政状況の中では、市町村における独自配置が進まない現状にあることから、国庫補助制度の創設、または財政措置の拡充が十分に図られるよう、さらなる増額を引き続き国に要望されたい。
▼高校へ通学する生徒に対する支援策の充実
高校に通う生徒が、学校において特別な支援を必要とする場合、安心して教育が受けられるよう、公立高校に対しては支援員の配置、私立高校に対しては支援員配置に係る財政措置等の措置を講じるよう、引き続き国に要望されたい。
▼特別支援教育の質の向上に係る研修の開催および連携協力に必要な旅費等の財政措置の拡充
地域の関係機関との連携を深め、特別支援教育の質の向上を図るため、各振興局において、特別支援教育SVを中心とした研修会を開催されたい。
また、各市が、特別な支援が必要と考えられる子どもについての実態把握や具体的な支援を行うための派遣手当のほか、特別支援学校同士が行う連携協力に必要な旅費等の財政措置を講じられたい。
▼特別支援学校高等部における受け入れ体制の整備
特別支援学校高等部への進学希望が増加している中、生活圏から離れた学校に入学せざるを得ない生徒が多数いる。また、送迎負担の増大もあって、近隣の学校への進学希望がますます大きくなっている。
特別支援教育の基本方針では「できる限り身近な地域において指導や支援を受けられる体制を整備すること」や「知的障害高等養護学校への進学希望者の増加傾向に対応するため、既存校の増築や新設校の整備に努めること」が示されていることからも、今後も各地域の生徒の進学動向等に応じた定員増や、未配置地域の解消など地域の実態に応じた特別支援学校の設置拡大を図られたい。
▼医療的ケアを必要とする児童生徒の特別支援学校等への受け入れ体制の整備
医療的ケアを必要とする児童生徒が、身近な地域において指導や支援を受けられるよう、特別支援学校や特別支援学級等における看護師の配置の充実および財政的支援を図るとともに、体温管理や移動支援等が必要な児童生徒が安心して生活できるよう、空調・エレベーターの設置など、施設環境の充実を図られたい。
◆就学援助の財源措置拡充
【学校教育の振興充実について】
▼全国学力・学習状況調査等の学力向上策の推進
全国学力・学習状況調査については、北海道の地域特性に応じた対応を含め、各市および学校において、今後の改善点への問題意識を持つことができるような工夫を継続されたい。
また、学力向上策の推進に当たっては、各市の意見を十分に尊重していただきたい。
特に、ほっかいどう「学力・体力向上運動」の推進に当たっては、より一層地域の声や学校の声を汲み取っていただきたい。
▼就学援助の財源措置拡充―重点
法律の定めによって自治体が行う就学援助の充実を図るとともに、自治体間で就学援助の内容に差が生じることのないよう、基準を明確にした制度改正および財源措置の拡充について、引き続き国に要望されたい。
また、要保護・準要保護者への就学援助において、生活保護基準の見直しの影響が生じないよう適切な財政措置を講じられたい。
特に、家庭でのオンライン学習の際に発生する通信費の取り扱いについて、現行では要保護世帯へは実費で支給されているものの、準要保護世帯に対する統一的な支援策は示されていないため、準要保護世帯の負担増とならないよう、必要な財政措置をとるよう国に要望されたい。
▼幼児教育の無償化の適正実施
幼児教育の無償化の実施に当たっては、事業の適正な実施や自治体の健全な財政運営に支障を来さないよう、引き続き適切な財政措置を講じられたい。
▼中学校の全道大会・全国大会に対する引率教員の旅費の充実
新学習指導要領において、部活動が学校教育の一環として教育課程との関連が図られるよう示されていることからも、中学校の体育および文化的諸行事への生徒派遣に係る引率教員の旅費については、全道大会・全国大会を含む全ての行事について、適切な予算措置を講じられたい。
また、引率教員数については、出場種目数や男女の構成等の諸条件に応じて、柔軟な措置を講じられたい。
▼生徒指導等に係る教員の旅費の十分な確保
家庭訪問など、校外において生徒指導を行う際に発生する生徒指導旅費や、校外で教育活動等を実施する際に発生する校外学習指導旅費については、配分額が少額であり、捻出に苦慮していることから、現場の実態を把握の上、十分な予算措置を講じられたい。
また、教員が各教科における専門性を高めることができるよう、研究会・研修会等に出席するための旅費についても、教員の自己負担が生じることのないよう、十分な予算措置を講じられたい。
▼学校におけるNHK放送受信料の免除措置の継続
小・中学校、幼稚園、特別支援学校における学校教育放送番組の一層の利用促進を図るため、NHK放送受信料の免除措置が継続されるよう、引き続き国に要望されたい。
▼地域にとって重要な役割を果たしている小規模高校の存続
小規模高校の配置については、これからの高校づくりに関する指針に基づき、つぎのことについて特段の配慮を願いたい。
▽職業学科の学級減や配置については、地域産業の特性や産業人材育成の観点を踏まえ、学校が地域経済において果たしている役割や子どもの選択肢として果たすべき役割などを考慮し、広域的・長期的な視点から、関係市町村との十分な協議の上、対応すること
▽人口減対策や「地方創生と教育」の観点において、小規模の高校が地域の中核的存在(生涯学習・キャリア教育の拠点)として、異校種連携を進めるなど、魅力ある、地域に信頼される高校像を創造・提案すること
▽教育行政に留まらず、まちづくりや地域づくりの観点からも、知事部局を含めた北海道全体としての取組によって、地域の様々な課題を認識した中長期的な配置計画策定に努めること
▼道立高校および生徒に対する支援
道立高校およびその生徒に対しては、各自治体が独自の支援を行うなどして地元高校の維持・活性化を図っているが、今後は道教委において活性化事業に取り組むなど、自治体間の競争を招かない方策を検討されたい。
また、地域連携特例校や小規模校などを優先し学校運営協議会の設置が進められているが、地域と学校が連携して、一体となった学校づくりを進めるため、地域が希望する場合は学校の規模にかかわらず、学校運営協議会を設置されたい。
▼公立夜間中学の設置への支援
今後、道内において、公立夜間中学の設置の在り方について検討するに当たり、教員の確保や設置に係る財政的な支援などについて、道教委が主導的な役割を担って進められたい。
▼北方領土問題に関する学習の充実
児童生徒が北方領土への関心を高め、正しい知識を身に付けることができるよう、学習指導要領における記載内容の充実を含め、北方領土に関する学習の充実を国に要望されたい。
▼教育支援センター(適応指導教室)およびフリースクール等への支援の充実―重点
不登校児童生徒に対して学校以外の学びの場を確保するため、教育支援センター(適応指導教室)等の設置・運営について、委託事業を含む補助制度の創設をはじめとする財政支援の拡充や、教員の派遣制度の確立、教育支援センター(適応指導教室)およびフリースクール等民間施設に通う児童生徒の負担軽減となるよう交通費等の経済的支援制度の拡充などについて、引き続き国に要望されたい。
▼学校の安全体制の強化
現在、国の事業である学校安全体制整備推進事業等によって、各市では地域ぐるみで児童の安全を守る取組を行っているが、児童に対する被害防止教育の推進や、登下校時間帯の通学路における警察等のパトロール強化の要請など、子どもたちが安心して通学できる体制の整備を講じられたい。
▼携帯電話やインターネットの利用による有害情報や被害から子どもを守る取組の推進―重点
携帯電話やインターネットを介して子どもがいじめや犯罪、トラブルに巻き込まれる問題が深刻化していることから、これらの問題から子どもを守るための啓発活動など、全道的な取組を一層推進するとともに、情報モラルに関する総合的な専門職の養成や配置等の措置を講じられたい。併せて、保護者への啓発活動の一層の取組を図られたい。
また、子どものネットトラブルや犯罪被害の未然防止等の観点から、有害情報に対するフィルタリングサービスの提供義務の拡大等について、法整備が図られるよう引き続き国に要望されたい。
◆栄養教諭の定数改善等要望
【学校保健および学校給食の振興充実について】
▼学校の感染症対策の充実
新型コロナウイルス感染症対策について、各学校では児童生徒が安全に学校生活を送ることができるよう、文部科学省の学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアルに基づき、手洗いおよび換気の徹底や清掃・消毒等による衛生環境の維持などの対応を続けており、また、今後も感染の再拡大や新たな変異株の発生等を考慮する必要がある。
そのような状況を踏まえ、新型コロナウイルスを始めとした学校における感染症対策に対し、必要に応じて機動的な財政支援を講じられるよう国に要望されたい。
▼フッ化物洗口に係る経費負担
フッ化物洗口については、道歯科保健推進計画に基づき、全小学校での実施を推進しているところであるが、薬剤や消耗品等の直接的経費だけでなく、運搬費用等についても自治体の負担となっているほか、実施に際しての学校現場の負担も大きいことから、指定校や新規実施校に限らず、全ての実施校に対する支援措置を講じられたい。
▼学校給食施設・設備に係る交付金等の充実
食の安全への注目が高まっている中、つぎのことについて特段の配慮を願いたい。
▽給食施設・設備の大型化やドライシステム化などの整備等に当たり、これまでの補助基準面積内で建築することは難しく、超過負担が生じていることから、交付金の充実について、引き続き国に要望すること
▽大型機械に依存している共同調理場においては、多額の費用を要するため、更新が遅滞していることから、既存老朽大型機械等の更新に関する補助制度の創設を国に要望すること
▽食物アレルギー対策等を実施する際の設備整備に対して、支援措置の拡充を国に要望すること
▽学校給食施設が広域化している実情を踏まえ、市町村および一部事務組合等が共同調理場を整備する場合においても、道地域づくり総合交付金の対象事業に加えること
▼栄養教諭の定数改善および旅費等の予算の確保
学校における食に関する指導のさらなる充実が求められているが、アレルギー対応が必要な児童生徒数や担当学校数の増加などによって、栄養教諭の業務負担は増大している。また、現行の配置基準では、市の児童生徒数や調理施設数によって、栄養教諭1人当たりの児童生徒数に大きな不均衡が生じている。
そのため、栄養教諭が専門的立場から食に関する指導をより効果的に行えるよう、共同調理場方式を採用している市も含め、栄養教諭の配置等定数の改善および指導に係る旅費等の予算措置を講じられたい。
▼食物アレルギー対応食の提供等に必要な学校生活管理指導表の文書料に係る補助制度の創設
学校給食での食物アレルギー対応食の提供や学校生活上で食物アレルギーに係る配慮・管理が必要な場合、医師が記載した学校生活管理指導表の提出が必要であるが、記載に係る文書料は、保護者負担となっていることから、学校生活管理指導表の提出が必要な全ての児童生徒の文書料に係る補助制度の創設等の措置について、引き続き国に要望されたい。
▼学校健康診断情報の本人への提供の円滑な推進への支援
国においては、自身の健康管理等に役立てるためPHR(Personal Health Record)を推進する方針が決定されており、学校健康診断情報についても、マイナポータルでの閲覧を6年度中に本格実施することとしている。
学校健康診断情報が本人に円滑に提供できるよう、道内の多くの自治体が利用している統合型校務支援システムについて、システム改修など迅速な対応を図られたい。
また、校務支援システム未導入の自治体の負担増とならないよう、国に対し適切な支援を求められたい。
【その他文教施策の充実について】
▼国指定文化財の保存管理費用に対する助成の拡大
国指定文化財の保存に当たり、つぎのことについて国に要望されたい。
▽文化財の保存整備事業については、補助金による助成が大きな財源となっているため、今後とも事業の実施に支障が生じることのないよう、国庫補助金の充実を図ること
▽国指定文化財については、建造物の保存修理に係る調査工事について対象外のものがあることから、その対象を拡大すること
▽史跡の維持管理経費は面積に応じて負担が変わることから、面積を考慮した交付税措置など負担軽減を図ること
▽記念物に係る国庫補助事業について、財政再建団体または過疎地域をその区域とする市町村である場合の補助率を、文化財建造物に係る国庫補助事業と同様に65%とすること
▼道立図書館の図書資料費の確保
道立図書館は、道民や市町村立図書館の期待に応えられるよう十分な資料費を確保するなど、今後も道全体の文化水準の向上を図られたい。
▼社会教育施設の改修に係る補助制度の創設
生涯学習を一層推進するために、社会教育施設の整備に対する助成制度および起債制度の拡充を図るとともに、老朽化した社会教育施設を安全・安心な施設として提供し続けるために、長寿命化改修および備品更新に対する支援制度の創設について、引き続き国に要望されたい。
▼へき地等学校に対する支援制度の充実
へき地児童生徒援助費等補助金の補助内容の一つであるスクールバス等購入費の拡充について、引き続き国に要望するとともに、スクールバス運営費についても補助対象とするよう国に要望されたい。また、北海道の地域性に応じた新たな補助制度を創設されたい。
▼地域学校協働活動の促進
地域学校協働活動の一層の促進のため、地域での活動を安心して積極的に行えるよう、補助率拡大などの財源措置の拡充について、引き続き国に要望されたい。
▼部活動の地域移行に向けた支援―重点
部活動の地域移行に向け、幅広い受け皿を用意し、指導者を確保・継続するために、つぎのことについて特段の配慮を願いたい。
▽指導者報酬を含めた部活動の地域移行に係る経費に関する財源負担の在り方を明確にするとともに、保護者の負担を抑えられるよう、国による支援の拡大を要望すること
▽地域の企業・団体等からも寄付や支援等が得られるよう、部活動の地域移行に関する地域理解が進むよう広く周知徹底すること
▽活動拠点の幅を広げるため、道立高校の施設を地域へ開放するとともに、必要な施設整備を行うこと
▽中体連等の大会参加基準について、地域部活動や合同チームでの参加ができる基準の見直し等について検討するとともに、引き続き関係団体に働きかけること
▼地方財政措置の増額―重点
学校運営に関する経費については地方財政措置が講じられており、各自治体においても経費の節減に努めているが、喫緊の課題への対応や、コロナ以降顕著になった物価や人件費等の高騰によって、年々教育予算を圧迫している状況にある。
こうした中、GIGAスクール構想による電子機器の導入に伴い学校における光熱水費の負担が増加していることや、委託業者の労働環境を守るため適切な対価を支払う必要があることから、人件費、光熱水費、委託料等の積算の適切な見直しおよび地方財政措置の拡充を行うよう強く要望されたい。
(関係団体 2023-06-16付)
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