インサイドリポート 物価高騰等で姉妹都市交流に影響 高いニーズの一方で 子の体験機会確保に影 生徒派遣 保護者負担2倍に(札幌市 2023-12-20付)
札幌大通高で行われたグラント高との交流
円安の進行や物価高騰、不安定な国際情勢が、コロナ禍を経て再開しつつある姉妹都市交流に影を落としている。札幌市で取り組むシンガポールやアメリカへの生徒の派遣事業は、航空運賃の高騰によって保護者負担がコロナ禍前の約2倍に。ウクライナ侵攻の余波でロシアとの交流自体が白紙になるなど、子どもたちの体験機会確保に影響が出始めている。
札幌市とシンガポールは中学生を交互派遣しており、学校の体験入学やホームステイを行っている。本年度は12人を札幌市から派遣。コロナ禍前だった元年度派遣時に約2週間で1人当たり約12万円だった費用は、約20万円に膨らんだ。全額保護者負担だが、4年ぶりの派遣ということもあって応募者数は例年どおりだった。
市担当者は「コロナ禍で往来が難しかった反動もあり“海外経験をさせたい”と願う保護者のニーズは高い」ことを要因に挙げる。
札幌市立高校・特別支援学校長会と札幌国際プラザは平成23年度から、アメリカ・ポートランド市のグラント高校との交流事業を続けている。例年、市立高校8校から2人ずつ派遣し、グラント高からは20人ほどが札幌市を訪れる。
来年度は平成30年以来、相互派遣を再開する方向で調整を進めている。一方で、航空便の燃油サーチャージが高騰。札幌国際プラザの試算では、10日間で1人40万円以上の自己負担になり、コロナ禍以前の2倍以上に跳ね上る。校長会は「今後、金銭的に余裕のある家庭の生徒しか参加できなくなるのでは」と危惧する。
札幌国際プラザの担当者によると、仮に滞在日数を減らしたとしても航空運賃がネックとなり、全体的な費用はさほど変わらないという。「なんとか費用を抑えつつ、子どもたちが交流を深められる方法を探りたい」と頭を悩ませる。
不安定な国際情勢も影響を与えている。札幌市、ロシア・ノボシビルスク市、韓国・大田広域市の3都市の交流は、各市の持ち回りで実施している。ことしはノボシビルスク市が担当だったが、市からの提案はなく、交流事業は中止となった。札幌市は「今後の見通しが立てられない」として、新年度予算要求への計上を見送った。
札幌市が4年度に実施した国際交流・多文化共生に関する市民アンケートで「市が今後行っていく必要がある国際協力の取組」を尋ねると「次世代を担う青少年が国際的な視野を広げる機会となる交流」を求める回答が全体の約半数を占めた。国際感覚を備えた人材育成への関心の高さがうかがえる。
札幌市は「子どもたちの姉妹都市交流はかけがえのない経験になるはず。本人の努力と関係ないところで成長機会を失ってはならない」と交流維持を模索する。
(札幌市 2023-12-20付)
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