心の健康観察アプリ運用で説明会 積極的な声かけ等支援を 札幌市教委 実践事例等解説
(札幌市 2024-05-27付)

 札幌市教委は22日、心の健康観察アプリ「シャボテンログ」の本格運用に先立ち、第1回オンライン説明会を開催した。各校の管理職や実務担当者らが参加し、アプリの運用方法や実践事例などを学んだ。シャボテンログを提供するスタンドバイ(株)の谷山大三郎代表取締役は、児童生徒が入力したデータを踏まえ、積極的な声かけなどの支援を行う重要性を伝えた。

 市教委は、いじめの未然防止、早期発見などに役立てるため、心の健康観察アプリとしてスタンドバイ社の「シャボテンログ」を全市立学校の1人1台端末に導入。6月から本格運用する予定となっている。

 末原久史児童生徒担当課長は開会あいさつで、アプリの主な仕様を説明し「普段、自分からなかなか声を出せないような児童生徒を何とか一人でも救ってあげたい」と導入の経緯を伝えた。

 その上で「養護教諭、SC、SSWも含めた全ての教職員で、各学校に応じた組織的な活用方法を相談し、2学期からの全校における本格実施に向け準備を」と呼びかけた。

 児童生徒担当課の湯澤将武児童生徒担当係長がアプリの運用やスケジュールについて説明したあと、谷山代表取締役がデータの活用について講義。

 シャボテンログで目指すこととして「いじめの行為ではなく、苦痛の兆候を捉える」「被害者が頑張らなくても支援を受けられる」「教員ができる効果的な手だてを増やす」の3点を提示した。

 導入校の児童生徒に「シャボテンログ」を利用して良かったことを質問したところ「自分の心身の状態への気付きが促進された」「相談ツールができたことで安心感が生まれた」などを実感する割合が高かったという。

 相談するハードルが高い児童生徒にとっては「相談の成功体験こそがSOSの出し方に関する教育になる」と強調。

 その場で解決しなかったとしても、その後のケアが充実するなど「相談して良かった」という経験を積み重ねていくことで「子どもにとって相談が身近になり、早期発見につながるのでは」と期待した。

 また、いじめリスクアセスメントアンケートによるいじめ被害回答状況と教員との接触頻度の変化を分析したデータを提示し、いじめが解消・軽減した場合に教師の接触頻度の上昇が顕著だったことを紹介。

 この結果から、多職種連携を積極的に行うこと、声かけの回数を増やすこと、担任のみならず複数の教員が関わることの重要性を伝えた。

 アプリの活用事例に触れる中で「いじめの事案を一つの問題と捉えるのではなく、学級経営・学校経営の土台づくりと捉えることが大事だと学んだ」と述べた。「子どもたちが安心して学べる環境づくりのためにも、いじめ問題に取り組んでいきたい」と力を込めた。

 また、昨年10月からモデル校としてシャボテンログを導入している北辰中学校の渡辺景子教諭が実践内容や成果を報告。

 相談先を選んでSOSを出せる「話したいボタン」について、導入当初は興味本位で押す生徒が見られたが「現在は週に1、2回程度」と報告。修学旅行での入浴や「ラインで既読スルーされている」など身近な相談もあり「小さな内容でも相談していいんだという意識につながっているのでは」と述べた。

 活用を通して「スクールカウンセラーや保健室につながりやすくなった」「相談したいと意思表示しているので本題に入りやすくなった」「見た目では分からない心身の不調に気付くことができた」などの成果を実感していると伝えた。

 一方「データの量が多いので、見逃さないシステムを作ることが大事になる」と話した。

(札幌市 2024-05-27付)

その他の記事( 札幌市)

元校長の“学校アップデート!” №7 育ちの過程を踏まえた教育活動

学校アップデートイラスト  1年間を四つの育ちの過程に分け「2期4節」のそれぞれの節に目標を設定して教育活動を展開している小学校が多いと思います。1節を4、5月の2ヵ月で設定しているにもかかわらず「1節は何月から何月...

(2024-05-29)  全て読む

子の声聴き学校づくりを 山根教育長就任あいさつ

山根直樹教育長  25日付で就任した札幌市教委の山根直樹教育長は同日、就任あいさつを発表した。課題探究的な学習や自治的な活動、ICTの効果的な活用を推進しながら「常に子どもの声を聴き、一人ひとりが“自分が大...

(2024-05-28)  全て読む

豊平小など99校で空調 6年度公立学校等施設整備計画 札幌市教委

 札幌市教委は、6年度公立学校等施設整備計画を公表した。豊平小学校など99校で空調設置を行うことなどを掲げた。  計画は、義務教育諸学校の施設費の国庫負担等に関する法律第12条第4項の規定...

(2024-05-28)  全て読む

市立小 国の専科指導教員加配状況 教科担任制23人増、40人 持ちコマ数軽減など期待 札幌市教委

表.8  札幌市教委は、市立小学校における国の専科指導教員の加配状況をまとめた。国が当初の計画を1年前倒ししたことに伴い、教科担任制推進分は前年度比23人増の40人となった。市教委は、教育の質の向上...

(2024-05-28)  全て読む

連続受賞を目指したい 札幌市教委 雪かきチョボラ 簾舞中など4校で表彰式

雪かきチョボラ太平南小  札幌市教委は5月、5年度雪かきチョボラ・雪遊びチャレンジで学校賞を受賞した4校への表彰式を執り行った。20日、簾舞中学校(川島直之校長)に対する表彰では、生徒たちが表彰状と副賞を受け取り「...

(2024-05-28)  全て読む

札幌市P協 優良PTA表彰21校1園〈下〉

▼啓明中学校PTA  コロナ明けとともに環境ボランティア、制服リサイクル、学校祭バザーなど活動を再開している。さらに、コロナ禍で進んだ情報共有のアイテムを活用し会員の参加意欲を高めている。...

(2024-05-27)  全て読む

2定札幌市議会 きょうから代表質問 いじめ防止対策など 山根新教育長の所信も

 札幌市議会第2回定例会の代表質問が、きょう27日から始まる。市いじめの防止等のための基本的な方針の改定を踏まえた教育環境づくりの取組や、山根直樹新教育長の所信などについて質疑が行われる。 ...

(2024-05-27)  全て読む

札幌市スポーツ協が報告 スキー連盟 4人が認定選手に ジュニアアスリート発掘PJ

 札幌市スポーツ協会は、さっぽろジュニアアスリート発掘プロジェクトの5年度活動報告をまとめた。  札幌市から次世代のトップアスリートの輩出を目指し、ジュニア選手の発掘・育成を図る「さっぽろ...

(2024-05-27)  全て読む

札幌市P協 優良PTA表彰21校1園〈上〉

札幌市P協PTA表彰  札幌市PTA協議会は、5年度優良PTA表彰園・校を決定した。21校1園が栄に浴した。20日に札幌サンプラザで開かれた総会終了後、表彰式を挙行。中野吉朗会長(当時)が代表者に表彰状を手渡し、...

(2024-05-24)  全て読む

「したい」を引き出して 健やかな体育成へ説明会 愛媛大・日野氏と道教大・中島氏討論 札幌市教委

健やかな体パネルディスカッション  札幌市教委は21日、市内のちえりあで6年度「健やかな体」の育成に係る説明会およびパネルディスカッションを開催した。愛媛大学の日野克博教授と道教育大学札幌校の中島寿宏教授がパネリスト登壇し、...

(2024-05-24)  全て読む