高・特配置計画案に道高教組と道教組 子らの意見尊重し柔軟に検討して 道独自の20人学級導入を(関係団体 2024-06-12付)
道高教組(尾張聡中央執行委員長)と道教組(中村哲也執行委員長)は10日、道教委が示した公立高校配置計画案および公立特別支援学校配置計画案に対する声明を発表した。道教委「これからの高校づくりの指針」改定版に触れ「指針を機械的に運用することは、子どもの実情を無視し、教育の機会均等、子どもの学習権を奪うことである」と指摘。7月に予定されている地域別検討協議会では「子ども・保護者・地域の意見を尊重し、指針改定版に固執しない柔軟な検討を進めるべき」とし、道独自の20人学級導入など、本道の実態を踏まえた現実的な少人数学級への転換の実現などを訴えた。
声明の概要はつぎのとおり。
道教委は4日、2025~27年度の公立高等学校配置計画案と25年度公立特別支援学校配置計画案を発表した。
高校配置計画案には、27年度に南茅部高校を募集停止、北見商業高校、釧路江南高校を1学級減、市立札幌藻岩高校、市立札幌啓北商業高校を再編し、新設校にするなどの案が示されている。
今回の高校配置計画案は、昨年に道教委が新たに示した「これからの高校づくりに関する指針」改定版(指針)もこれまでと同様に40人学級で計算された数の論理で学校・学級を削減していく方向を示したものであり、わたしたちは配置計画案の抜本的な見直しを強く求めていく。
【1 地域の声を尊重し、説明責任を果たせ。南茅部高校募集停止には断固反対する】
道教委は、5月に全道各地で行われた第1回地域別検討協議会で、これまでの「望ましい学級規模を4~8学級」とする方針を撤回し、1学年1学級校がおよそ60校存在する現状に対し「小規模校のメリットを最大限に活用」し、「多様な学習ニーズに対応」と、その存在価値を認める姿勢を示した。
そこには、これまで小規模校の存続に関して意見を発してきた保護者や地域の関係者などの願いに応えようとする道教委の姿勢の変化が見られ、高く評価できることと考える。
しかし、地域連携校を「2年連続1学年1学級が10人以下ならば再編整備」とする指針を機械的に運用することは、子どもの実情を無視し、教育の機会均等、子どもの学習権を奪うことである。南茅部高の募集停止は、進路選択の幅を狭めるだけではなく、遠距離通学によって経済的、身体的負担を増やすことになり、この案は撤回すべきである。
7月に開催される第2回協議会では、道教委は当事者である子ども・保護者・地域の意見を尊重し、指針改定版に固執しない柔軟な検討を進めるべきである。同時に、「子どもの権利条約」を生かす立場から、生徒会などを通じて「配置計画」への子どもの意見表明の機会を保障することも併せて求める。
【2 道教委は「高校の魅力化」競争を煽るな。生徒の願いによりそう学校こそ求められる】
文部科学省の調査では22年度小・中学校の不登校児童生徒数が前年度を5万人以上上回り、約29万9000人と過去最多であり、小中高の自殺者も400人を超える。さらに、高校の不登校も21年度以降増加率18%台で推移し、6万人を超えている。不登校児童生徒数が全ての学校段階で増加し続けていることが明らかにされ、極めて大きな課題となっている。
こうした状況にあって、生き残るために「進学希望者の支援」を主とした「生徒から選ばれる高校づくり」のPRを学校と地域に求めることが学校設置者としての道教委の役割ではないはずである。入学生の人数による基準で統廃合案を出し、そのための「魅力化」競争を煽ることで北海道の高校が守れないことは明白である。それは減る一方の中卒者をお互い取り合って生き残り競争を強いるだけである。
長年にわたって、小規模校は一人ひとりの生徒と向き合う教育実践を積み重ねてきた。今求められる学校は、全ての生徒たちが安心して学校生活を送られる学校であり、生徒の願いに真摯に向き合える学校である。
実際に、地域別検討協議会に参加した地域の教育委員会や学校長の多くからは、地域に根差した小中高の共同の教育実践が報告され、道教委の学力競争重視による「魅力化」との乖離(かいり)が明らかになっている。
【3 地域の高校教育を守る施策を】
配置計画に求められることは、これ以上学校を減らさないための施策である。全ての学校は、そこにいる生徒たちが必要としている学校である。少子化が進む中で学校を残すためには、「生徒から選ばれる高校づくり」として魅力化競争を学校現場に押し付けるのではなく、一人ひとりの子どもに寄りそうために、小規模校の良さを認め、少人数学級をさらに進めていく施策に転換すべきである。
道教委は、募集した学級数に対し入学者数が足りていない場合に「自然減」としている。毎年3月にその発表があり、23年度には18校で学級減が行われた。突然の学級減は教職員数の減少や予算措置の変更など、教育条件が大きく低下することとなり、学校運営体制や人事異動にも影響することから、学校現場は常にその影に脅かされている。
成り行きまかせの適正配置計画でなく、入学生数にかかわらず、配置計画で示した学級数は維持することを強く求める。
今後、28年度以降の中卒者もより一層減少する状況が続き、特に28年度は各学区で大幅な中卒者の減少が起こってくる。このまま指針改定版に基づいた配置計画が続くと、募集停止や学級削減など子どもたちの教育を受ける権利が脅かされる事態がさらに進んでいくことになる。これでは道教委が求める「多様化・特色づくり」「高校の魅力化」さえも失われ、地域は疲弊するばかりであろう。
地域別検討協議会でも学級定員の縮小を求める意見が出され、それに対し道教委は「国に要望する」との返答しかされないが、まさに今求められていることは、道教委として学級定員の縮減を知事に要望し、そして鈴木知事は道独自の少人数学級を決断することである。
【4 特別支援学校設置基準の制定を踏まえ、教室不足解消も含めた配置計画の策定を求める】
公立特別支援学校配置計画案において、視覚障害は、普通科が1学級8人の定員減、肢体不自由は、職業学科が1学級8人の定員減、普通科(重複)が1学級3人の定員減となっている。一方、知的障害は職業学科が2学級16人の定員増、普通科が2学級16人の定員増、普通科(重複)が7学級21人の定員減となっている。
教室不足が深刻な併設高等部は、全体で5学級減となっているものの、その内訳の多くは普通科(重複)学級減の影響であり、募集人数は5人の減であり、24年度の計画と比較すると、ほぼ横ばいの状態だ。
さらには、道教委が計画案と共に示した、知的障害特別支援学校高等部の職業学科等の配置の見通しでは、28年度に道央圏で8学級相当の定員の確保が必要としており、小中学部や併設高等部の増加が加われば、今後数年先もさらに多くの教室が必要となる。
22年4月に施行された特別支援学校設置基準は、「児童・生徒数の上限」「備えるべき特別教室などの施設・設備」「通学時間の上限」が規定されないなど、教室不足解消と教育環境改善という制定の趣旨に照らすとあまりに不十分と言わざるをえないものであった。とはいえ、設置基準は、そこで学ぶ子どもたちの教育条件改善の足がかりにしなければならず、とりわけ教室不足解消は喫緊の課題である。
しかし、今回の特別支援学校配置計画案でも、高等部の学級数の増減は示されているものの、小中学部も含めた教室不足解消に関する計画について一切触れられていない。
文科省は、20年度から24年度までの期間を「集中取組期間」とし、国庫補助の引き上げなどを行い、教室不足の解消に向けた取組を集中的に行うよう要請しているが、文科省がことし3月に公表した「公立特別支援学校における教室不足調査の結果について(23年10月1日時点)」によると、北海道の不足教室が102教室と21年の調査結果と比較すると4教室しか減少していない。にもかかわらず、道教委は「既存施設等の活用による対応を検討」と、これまでの対応を抜本的に改めようとしていない。
道教委は、「既存施設への詰め込み」はやめ、本来あるべき単独校舎による新増設の計画を示すべきだ。この後も当事者の声、学校の実態をよく踏まえ、特別支援学校の過大・過密の解消、小中学部も含めた教室不足解消の道筋を明らかにするとともに、狭あい化・教室不足が深刻な自治体との連携をはかりつつ、それらの早急な実行を強く求めるものである。
(関係団体 2024-06-12付)
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