元校長の“学校アップデート!” №9 役割意識で動く職員を育てる
(札幌市 2024-06-26付)

 「その仕事は、私の仕事ではありません」。職場には、分担された仕事以外の業務は、自分の仕事ではないと思っている職員がいるものです。学校の業務の中には、分担されていないけれど誰かが行っている業務や、学校の教育目標の実現に向けて創造性を発揮して新たにつくり出していく業務があります。管理職は、どの職員も学校の教育目標の実現に向けて主体的に取り組んでほしいと願っていますが、そもそも「校務分掌=役割分担」なので、分担した業務に取り組めば良いという仕組みが学校の中に存在するのです。

 では、どうすれば分担された仕事以外にも目を向けて主体性を発揮して取り組む職員を育むことができるのでしょうか。

 役割分担とは「仕事などを分けて受け持つ」という意味です。ともすると「これはAさんの役割だから、自分の役割ではない」と考え、自分の役割のみを果たせば良いと受け取られがちな言葉です。本来、役割分担とは「集団活動を効率的に運営するために人類が生み出した知恵」なのです。あくまでも目的を実現するための手段です。分担された役割に取り組むことが目的ではないからこそ、他者の役割に対して協力することが求められるのです。

 子どもたちが「それは、私の仕事ではありません」と言った時、どの先生も「自分の仕事ではなくてもやりなさい」と指導します。実は、先生たちは子どもたちに対して「役割分担」で動くのではなく「役割意識」で動くように指導しています。

 役割分担と役割意識は異なります。役割意識とは、決められた役割だけに取り組めば良いのではなく「目的の実現のために自分にできることは何か」という意識のことです。もちろん分担された役割に責任を持って取り組むことが大切ですが、他者の役割や分担されていない新たな役割にも目を向けて協働性を発揮して主体的に取り組むことが大切です。分担された仕事には終わりがありますが、役割意識に終わりはないのです。

 子どもたちに役割意識を理解させる方法として、「運動会であなたの出番は何分ですか」と問いかけてみると良いです。ほとんどの子どもは自分が参加した競技の時間のみを答えますが、運動会を成功させることが役割なので、運動会の開催時間が3時間ならば「自分の出番は3時間」というのが役割意識です。この問いかけは、清掃活動でも学習発表会でも使えます。

 役割意識で動く子どもを育むと、入学式の準備で分担された役割に取り組んでいる新6年生の子どもたちが最後に集まる場所は、最後まで仕事をしている子どもたちがいる場所になります。「終わったら体育館に集まってください」と指示しなくても良いのです。

 このような役割意識を発揮して主体的に活動する子どもたちを育む学校にしていくと「その仕事は、私の仕事ではありません」と言う職員はいなくなり、職員も役割意識を発揮して取り組むようになります。子どもへの指導を通して、職員の意識を変えるのです。職員の役割は、教務部や行事部などの業務ではなく「より良い学校をつくること」です。

北原徹也(北海道特別活動研究会顧問、元札幌市立平岸西小学校長)

(札幌市 2024-06-26付)

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