国研 小学校学習指導要領調査 教育課程の学校裁量拡大 授業時数調整など 7割賛意(国 2024-07-12付)
国立教育政策研究所は、4年度小学校学習指導要領の実施状況調査(速報版)をまとめた。教科等間の授業時数の調整など、教育課程に関する学校裁量の拡大に7割の小学校が賛意。「主体的・対話的で深い学び」をはじめ、学習指導要領が提唱する概念に多くの学校が効果を実感している一方、教職員の多忙化や人員の不足など、実現を阻む壁もあらためて浮き彫りになった。
調査は、小学校学習指導要領の次期改訂に向け、各教科等の目標や内容に照らした児童の学習の実現状況について調査研究を行い、検討の基礎となる客観的データを得て、教育課程の基準に関する課題の有無、内容を検証することがねらい。10日の有識者検討会で速報版を報告した。
調査時期は5年2月6日~3月3日。全公立小学校の約7%に当たる1170校を無作為に抽出した。中学校のデータは参考値としてまとめている。
各教科の調査結果を分析した結果、事実的な「知識」の定着は一定程度見られる一方で、概念としての習得、日常生活や現実の事象と関連付けて理解することに課題があると指摘。具体的な問いの発見には定着が見られるものの、目的に応じた課題解決、考えや根拠を明確に説明する点にも課題があるとした。
教育課程全体に関するアンケート調査結果をみると、学習指導要領の趣旨・内容の実現に向けた取組による変容は「教員の授業改善の意識の向上」が88・6%、「指導力の向上」が73・1%と高い。一方、「教育課程のPDCAサイクルの推進」「児童生徒の学力向上」は4割だった。
学習指導要領の基本的概念に関しては、教育課程や学習指導の改善に良い効果を与えたとの回答が多かった。特に「主体的・対話的で深い学び」「資質・能力の三つの柱」「見方・考え方の提示」は「大変効果的だった」「まあ効果的だった」を含めて9割以上と高い。
学習指導要領の趣旨実現を妨げる要素は「教職員の多忙化」が73・1%、「人員確保(支援員など)」が72・4%と高い。研修時間の確保、特別な配慮を必要とする児童生徒への指導体制も大きな課題となっている。
教育課程編成に関する学校裁量の拡大に関しては、小学校の71・2%、中学校の79・5%が賛成。取り組んでみたい内容は「年間授業時数を確保した上で教科間の授業時数の調整を可能にする」が最も多かった。
国研は現在、ペーパーテストの結果をもとに教科ごとの具体的な分析作業を進めており、今後の教育課程等の在り方を検討するエビデンスとする。中学校調査は5年度に実施済み、高校調査は6年度に実施予定で、これらの結果に関しても分析を行って順次取りまとめる予定。
この記事の他の写真
(国 2024-07-12付)
その他の記事( 国)
経産省 最新の民間サービス紹介 7日に札幌で体験会 業務省力化へ先進事例等
経済産業省は、7日午後1時からグランドメルキュール札幌大通公園で学校活動支援サービス体験&研修会in札幌を開く。学校業務を効率化・省力化する民間教育サービスが体験できるブースを設置。道教委...(2024-08-05) 全て読む
文科省 7年度概算要求検討事項 被災地支援D―EST 処遇改善、人員体制充実など
文部科学省は7年度予算概算要求における主要検討事項をまとめた。中教審特別部会の提言に基づき、教職調整額の改善など教員の処遇改善や人員体制の充実に必要な経費を求める。被災地を支援する新たな枠...(2024-08-05) 全て読む
中教審特別部会 答申案を了承 「新たな職」8年度から任用 教師確保環境整備へ工程表
中教審の質の高い教師の確保特別部会は26日、答申案「“令和の日本型学校教育”を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策」を了承した。教師を取り巻く環境整備に向け、国や地方...(2024-07-30) 全て読む
文科省の生成AIガイドライン 秋以降改訂へ議論開始 授業・校務利用促進へ検討
文部科学省は25日、初等中等教育段階における生成AIの利活用に関する検討会議の初会合を開き、生成AI利用に関する暫定的なガイドライン改訂に向けた議論を開始した。加速度的に進む生成AIの社会...(2024-07-26) 全て読む
文科省 児童生徒の自殺予防 健康観察システムを整理 リスク早期発見へ活用を
文部科学省は12日付で、児童生徒の自殺予防を呼びかける通知を全国の都道府県・指定都市教委に送付した。学校の長期休業明けに自殺者数が増加する傾向にあることから、保護者、地域住民、関係機関と連...(2024-07-17) 全て読む
道内の4年度地方教育費 微減の7700億円 学校教育増、社会教育減に
文部科学省は5年度地方教育費調査(4会計年度)の中間報告を公表した。道内の公立学校・教育委員会が支出した教育費の総額は7700億1734万円で、前年度から0・05%減少。コロナ禍が明けて学...(2024-07-08) 全て読む
スポ庁 中学生の自主学習用に 動画サイト 7年3月公開 端末で視聴 運動部活動等支援へ
スポーツ庁は、運動部活動・地域クラブ活動を支援するため、自主学習用の動画コンテンツを7年3月ごろに公開する。各スポーツ関係団体等の協力のもと、競技の基礎的・専門的知識や技術が習得できる動画...(2024-07-03) 全て読む
文科省 通学路の合同点検調査 道内対策率 96・5% 道路管理者の対策は9割以下
文部科学省は6月28日、通学路における交通安全確保に向けた取組状況(3月末現在)を公表した。札幌市を含む道内で安全対策が必要とされた個所の96・5%で対策が完了。暫定的な安全対策措置を含め...(2024-07-02) 全て読む
経産省「未来の教室」公募開始 民間サービスでDX推進 教育資金調達実証に着手
経済産業省は、6年度「未来の教室」実証事業の公募を開始した。民間企業など外部リソースを活用した教育DXの事例創出に取り組むほか、学校外において学びの場を提供する「学びのサード・プレイス」、...(2024-06-27) 全て読む
骨太の方針が閣議決定 教調整額 10%以上に引上げ 学級担任手当など給与改善
政府は21日、経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針)を閣議決定した。教職調整額の水準を10%以上に引き上げることを明記。学級担任や管理職手当などの給与体系を改善するほか、新たな...(2024-06-25) 全て読む