「分からない」と言える学習環境整備 進んで学び合う子育成 札幌有明小 公開授業研(札幌市 2024-09-26付)
音読を通して話し合う授業を公開
札幌市立有明小学校(松田慎一郎校長)は20日、同校で公開授業研究会を開いた。研究主題「進んで聴き合い学び合う子」のもと、“教え合い”から“学び合い”への転換を目指す研究の成果を披露。小規模特認校の特色を生かし、多様な児童が「分からない」と素直に言える学習環境を整備した。
小規模特認校の同校は、校区外から多様な児童が通学している。自然の豊かさを生かした教育活動やペア・グループ活動を中心とした学校生活で、児童が日常の生活の中で助け合い、仲間意識を育める環境を構築している。
「一人残らず子どもの学ぶ権利を保障し、その学びの質を高めること」「学びの質と平等の同時研究」を目指す研究は4年度から開始。
当日は国語、算数、体育の3授業を公開した。うち3年生の国語「ちいちゃんのかげおくり」(児童数16人)は鎌田誠也教諭が指導。児童が自ら文学の世界を描くため、話し合い活動を中心に友人同士が学び合う授業を工夫した。
教室では児童が4人一グループで作品を音読。主人公の心情や疑問点について「ちいちゃんはどうして自分の家が分かったと思う?」「これは誰のせりふなんだろう」などと友人と話し合った。
各グループの話し合いの様子を聞いた鎌田教諭は、ある児童が感じている疑問点を全体で共有。児童が課題を乗り越えられるよう「この場面から音読してみて」と促し、音読を繰り返すことでほかの児童が相手の読みの世界に入り込んで考えを聞き合えるようにした。
公開授業のリフレクションでは、道教育大学非常勤講師の三井哲氏がスーパーバイザーを務めた。三井氏は鎌田教諭の授業について、学びに入ることが難しい児童への対応や一人ひとりの児童の疑問に注目した支援の工夫を評価した。
◆「学びの共同体」実践へ 東大・佐藤名誉教授が講演
研究会では東京大学の佐藤学名誉教授が「学びにおける探究と協同~イノベーションへ」と題し、同校の学びを講評。自身が提唱する「学びの共同体」の実践に向けて課題の設定方法などを講義し、今後の授業づくりのヒントを提示した。
佐藤名誉教授は子どもたちの対話を重視した授業改革「学びの共同体」に関する実践を深めてきた。
講演では同校の印象について「個性と多様性があふれる子どもたちが安心して教室に居られる学校」と話し、日頃から児童同士が対話を生み出すことのできる教育活動の成果をたたえた。
鎌田教諭の授業に関しては「しっかり子どもたちを受け止め、繊細な関わり方ができている」と講評。一人ひとりに寄り添い見守る姿勢や声のトーンの低さなどの「静かさ」が、児童にとって落ち着いて学習に向き合える環境につながるとした。
学びの共同体が目指す対話型授業は「聴き合い、学び合うことが理想」とした上で「話し合い、教え合うだけになってしまう授業は、課題設定が優しすぎる」と指摘。挑戦できる課題設定を推奨した。
教科書が示す課題を超えた「ジャンプの課題」が学力を引き上げるために重要だとし、各教科における具体的な課題例を提示。体育のリレーにおけるバトン練習では「スムーズにバトンを手渡すことに着目するのではなく、スピードに焦点を当てた課題を与える」などの例を挙げ、一人ひとりの学びの質の向上に向けて課題設定の発想を転換するポイントを教示した。
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佐藤名誉教授講演
(札幌市 2024-09-26付)
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