札幌市教委が生徒指導研開催　「学校全体で問題共有を」　滋賀県立大・福井特任教授が講演

（市町村 2015-07-30付）

　札幌市教委は二十七・二十八日の二日間、北海道自治労会館で生徒指導研究協議会を開催した。初日は市立学校の校長や教頭のほか、児童生徒の保護者やスクールカウンセラーなど約三百五十人が参加。滋賀県立大学の福井雅英特任教授が基調講演を行い、子ども一人ひとりの発達援助を基本とするほか、教師一人が抱え込むのではなく、学年・学校全体で問題を考えていくよう求めた。

　冒頭、須藤勝也児童生徒担当課長があいさつ。いじめ防止にかかわる国の動向や、岩手県や川崎市の事件についてふれ、「子どもの安全確保に向けて、学校や教育委員会の対応が求められている。学校が未然防止や適切な対応を進めることができるよう支援体制を充実させたい」と強調した。自殺予防のカリキュラム、スクールソーシャルワーカーやセラピストの配置など教育委員会の取組について説明したほか、「生徒指導上の喫緊の課題について、今回の講演や研究協議等を通して今後に生かしてほしい」と呼びかけた。

　続いて、滋賀県立大学の福井教授が「命を大切にする指導」について講演した。福井教授は「子どもにとって何をいじめと受け止めるのか。子どもの置かれた状況を理解することが必要」と説明。加害者がいじめを行う背景も含めて理解し、問題を解決していかなければならないことを強調した。

　また、教員生活を振り返り、社会ではテストや競争などによって子どもたちが自己否定感を強めてしまうことから、その子どものペースに合わせた指導など一人ひとりの発達援助を基本とするよう求めた。

　岩手の中学二年生の事件について、生活記録ノートなど生徒個人と教師の対応では、周囲の生徒との事実確認がなかったことから、学級で問題を共有する視点をもつことを求めたほか、ほかの教員との連携がなかったことにもふれ、「学年や学校全体でささいなことでも問題を共有し、検討できるようなカンファレンス方式で問題解決に取り組む必要がある」と述べた。

　川崎の中学二年生の事件については、「その子の生活環境や家庭の問題をみなければ、その子の苦労に心を寄せることはできない」として、「福祉行政や民生委員など関係機関との連携が必要」と述べた。

　午後からは、「不登校の未然防止と対応の在り方～教育相談体制の充実」について研究協議を行ったほか、札幌市児童相談所相談判定一課の勘野公平課長が「児童虐待の現状と対応における課題」について講義した。

　二日目は、防災教育や学校いじめ防止基本方針の策定、ＳＳＷの活用について理解を深めた。

(市町村 2015-07-30付)