2定道議会本会議(6月24日)質問・答弁の概要
(道議会 2015-08-25付)

 二定道議会本会議(六月二十四日開催)における金岩武吉議員(北海道結志会)、森成之議員(公明党)、真下紀子議員(日本共産党)の代表質問、および高橋はるみ知事、柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。

【コミュニティ・スクール】

金岩議員 地域に密着した教育を進める際には、学校、家庭、地域社会が一体となって推進するという言葉や考え方を、これまで何度も聞いてきた。しかし、学校と学校を取り巻く地域との連携は、なかなか容易ではないのが今日の現状ととらえている。

 政府の教育再生実行会議は三月初旬、すべての公立小・中学校に地域住民らが学校運営に参加するコミュニティ・スクール制度の導入を求める提言を安部首相に提出した。地域活性化に大きな役割を果たすことを狙いとするものであるが、制度導入以降十年以上たちながら、本道におけるコミュニティ・スクールの導入は進んでいないのが現状である。この状況を踏まえると、開かれた学校づくりを進めるために、多くの学校に積極的にコミュニティ・スクールを導入すべきであると考えるが、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 コミュニティ・スクールについて。コミュニティ・スクールは、地域住民が学校運営に参画し学校と地域が力を合わせて子どもの成長を支えることによって、「地域とともにある学校づくり」や地域コミュニティづくりを進める上で、有効な手立てであると認識している。

 二十七年四月の指定状況は、公立小・中学校が三十五校となっており、さらに、本年度は三十八校が、国の促進事業を活用して、導入に向けた体制づくりを進めている。

 今後は、市町村教委や学校はもとより、PTAや社会教育関係者、まちづくりの関係団体などへの啓発活動を強化するほか、先進地から講師を招いた説明会や指定校の実践の成果などについて情報交換を行う協議会を開催するなど、導入の拡大に向けて取り組んでいく。

【スポーツの振興について】

金岩議員 スポーツ振興法が施行されて、五十年の節目を迎えたが、国は、スポーツ関連の行政機構を一つにまとめるスポーツ庁の設置を決めた。

 高橋知事も、スポーツ選手の強化を図ると表明しているが、どのように取り組むのか、知事の考えを伺う。

 道民のだれもが、スポーツ活動に親しみ、生涯にわたって心身ともに健康で充実した生活を送ることができるようにするためには、子どもたちが運動に親しみ、体力を向上させることのできる教育環境づくりを進めることが大切であると考えるが、教育長の見解を伺う。

高橋知事 スポーツの振興について。国では、スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、二十三年にスポーツ基本法を制定し、このたび、スポーツ庁の設置を決定した。

 道では、二十四年度に、学校教育との連携を生かしつつ、ジュニアから大学生、そして、世界を目指すレベルまで、一貫した選手の育成強化を円滑に行うことができるよう、知事部局に、スポーツ行政を総合的に推進できる体制を整備し、海外コーチの招へいやオリンピックメダリストによる指導など、様々な取組を進めている。

 今後は、東京オリンピック・パラリンピックに向け、JOC(日本オリンピック委員会)と連携し、企業と選手の就職マッチングを実施するとともに、引き続き、国や競技団体などと連携を図りながら、本道から、世界の舞台で活躍できる選手を輩出できるよう、選手の育成強化に取り組んでいく考えである。

柴田教育長 子どもの体力向上について。体力は、健康の維持のほか、意欲や気力など精神面の充実にも大きくかかわり、あらゆる活動の基盤となるものである。

 このため、子どもたちに、学校教育活動や家庭生活を通じて、運動や外遊び、スポーツの楽しさを実感させ、運動習慣の定着や生活習慣の改善を図ることが重要と考えている。

 道教委では、手軽な運動を通じて体力の向上につなげる「一校一実践」など、各学校における創意工夫を生かした取組や体力にかかわる全国調査の結果に基づく授業改善等に向けた取組の推進に努めているほか、家庭や地域と連携し、放課後や休日等に運動をする機会の確保や、望ましい生活習慣の定着に向けた取組を進めており、今後とも、こうした取組を充実させ、子どもたちの体力を高めるための教育環境づくりに努めていく。

【小中一貫教育について】

金岩議員 道は、中高一貫のモデル校を道内に設置しているが、その後の実績は伸びず、市町村の子ども人口が減少傾向にあることから、今後は、小中一貫校への移行が有力のようにも考えられる。小中一貫教育について、教育長はどのように考えているのか、見解を伺う。

柴田教育長 小中一貫教育について。小学校と中学校が目指す子ども像を共有し、九年間を通じた教育課程を編成し、系統的な教育を行うことは、義務教育の目的や目標に掲げる資質や能力、態度をより良く養う上で、意義のあることであり、本道の大きな課題である学力や体力、生活習慣の改善に資することはもとより、いじめや不登校の未然防止、教職員の指導力向上などの観点からも成果が期待できるものと認識している。

 先週、国会において、市町村教育委員会等の判断で小中一貫教育を行う学校を設置できる改正学校教育法が成立しており、道教委では、今後、国の制度改正の内容を踏まえつつ、二十六年度からすべての管内で実施している「小中連携、一貫教育実践事業」において、小中一貫教育の導入に向けて取組を進めている事例や道外の先進的な事例を取りまとめ、情報提供するなどして、市町村教育委員会の取組を支援していく考えである。

【18歳選挙権と学校現場とのかかわり】

金岩議員 十八歳選挙権と学校現場とのかかわりについて。

 選挙権が現行の二十歳から十八歳に引き下げる公職選挙法の改正案が今国会で成立した。早ければ、来年夏の参議院選挙から導入される見通しである。七十年ぶりの選挙権の見直しで、影響が大きいとの見方がある。

 とりわけ、教育現場で選挙権をもつことになる高校生の政治に対する関心をどう養っていくのかが課題だと指摘する声がある。高校生ばかりでなく、中学生のうちから、学校教育の中で、社会参加や選挙の意義など選挙に関する「主権者教育」が必要だという意見や考え方もある。

 学校で、政治に対する関心を高める指導について充実させることが重要と考えるが、教育長はどのように受け止めているのかお聞かせいただきたい。

柴田教育長 政治に対する関心を高める指導について。現行の学習指導要領においては、中学校では、民主政治の推進と国民の政治参加との関連や選挙の意義について考えさせること、また、高校では、選挙などに着目して、主権者としての政治参加の在り方について考察させることとなっている。

 道教委としては、わが国の将来を担う中学生・高校生に対し、良識ある公民として必要な政治的教養を身に付けさせることは重要と考えており、今後、選挙の仕組みなどをまとめた指導資料の配布や、教育課程研究協議会等を通じて、選挙の意義や主権者としての政治参加の在り方などについて理解を深めさせるよう、各学校に対して指導助言を行うとともに、国の動向を注視しつつ、選挙管理委員会と連携した啓発活動を推進していく考えである。

―再質問―

金岩委員 国や地方自治体の議員選挙で棄権率が高いのは、若い世代が多いと言われている。特に、大学生は、就職活動や学習などに時間が取られるほか、休日ぐらいはゆっくりしたいと選挙を棄権することもあるかもしれない。

 しかし、一番気がかりなのは、選挙には全く関心をもたない若い人への対応である。公職選挙法の改正によって、選挙権が十八歳の高校生にまで引き下げられ、来年夏の参議院選挙から実施されることも想定される。

 今後、学校での対応をどうするのか、早急に結論を出すことも必要と考えるが、再度、教育長の考えを伺う。

柴田教育長 十八歳からの選挙権に関する各学校への指導助言について。国では、文部科学省が総務省と連携して、ことしの夏をめどに、選挙等に関する高校用の副教材や教師用指導資料を作成すると伺っている。

 道教委としては、今後、国が作成する指導資料等の内容を踏まえ、早急に、道内の各高校向けの指導資料を作成し、配布するとともに、指導主事による学校教育指導や教育課程研究協議会等を通じて、各学校に対して指導助言を行っていく考えである。

【教育大綱の策定について】

森議員 先般、本道における教育施策について、その目標や方針となる「北海道総合教育大綱」の骨子案が示された。

 学力向上やいじめ問題など、多様化する様々な課題がある中、北海道が持続可能な活力ある地域として輝くためには、将来の北海道を担う子どもたちの教育は極めて重要であると考えるが、今後、どのような考え方で大綱を取りまとめるのか、知事および教育長の所見を伺う。

高橋知事 教育大綱の策定について。本年四月の法改正に基づき、新たに策定する大綱には、知事部局と教育委員会を通じた教育施策について、その目標や根本となる方針を総合的に定めていく考えであり、六月十七日に開催した総合教育会議において、教育委員会の方々と骨子案についての意見交換を行った。

 北海道の未来を担う子どもたちが、自立して生きていくために必要な学力、体力を身につけるとともに、互いを尊重し、ともに助け合う豊かな心をもった人間に育ってほしいと考えており、大綱を、これからの北海道における教育施策の基本となるものとして、道議会での議論等を踏まえ、策定していく考えである。

柴田教育長 教育大綱について。北海道が持続可能な活力ある地域として発展し続けるためには、将来を担う心身ともに健やかな人材の育成が不可欠であり、教育がその基盤として重要な役割を果すものと考えている。

 こうした考えに基づき、第一回総合教育会議では、子どもたちの社会で活きる力の育成、未来を拓く人財の育成、地域の教育力の向上と生涯学習の振興などを柱とする大綱骨子案について意見交換を行った。

 道教委としては、本道における教育施策の基本となる大綱の策定に当たり、子どもたちがたくましく成長し、より良い未来を生きるための教育環境づくりに向けて、知事が主宰する総合教育会議において、十分議論していきたいと考えている。

【自然・歴史・文化の継承】

真下議員 教育長は、行政執行方針で「ふるさと北海道に誇りをもつ」と述べた。しかし、北海道が永久凍土に恵まれた湿潤型植生という比類なき自然のもとで、縄文時代、続縄文時代を経て、擦文時代、アイヌ文化時代となる固有の歴史を刻んできたことを取り上げている教育現場は少ないと聞く。知事は、「北海道百五十年」と言っているが、北海道特有の壮大な自然・歴史・文化について、教育の場では、どのように継承しようとしているのか教育長に伺う。

柴田教育長 北海道の自然や歴史などに関する教育について。本道の未来を担う人材を育てる上で、北海道ならではの豊かな自然や歴史、文化、産業などに親しみ、理解を深める教育を充実させることは、極めて重要であると認識している。

 道内の各学校においては、学習指導要領に基づき、社会科や総合的な学習の時間などを通して、子どもたちが北海道の歴史や自然などについて理解を深める学習を行っており、こうした学習を一層充実させるため、道教委では、昨年度から、本道の歴史、文化等に関する効果的な指導の在り方を研究する「北海道ふるさと教育・観光教育等推進事業」に取り組んでいる。

 今後は、本道特有の歴史等について、その研究成果を実践事例集にまとめ、ウェブページに掲載するなどして、各学校が継続して活用できるよう取り組んでいく。

【アイヌと和人の歴史等】

真下議員 先ほど申し上げた明治維新以降のアイヌと和人の歴史については、「先住民族の権利に関する国際宣言」や「アイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議」が採択されたという歴史的事実をしっかりと踏まえた上で、子どもたちに教え、つぎの世代へ継承していくべきと考えるが、道教委では、アイヌと和人の歴史にどのように向き合い、継承していく考えか伺う。

柴田教育長 アイヌの人たちの歴史などについて。学校教育において、先住民族であるアイヌの人たちが、自然などとのかかわりの中で育んできた歴史や文化などについて、子どもの発達の段階に応じて、正しく理解させることが重要であると認識している。

 現在、道内の学校では、社会科などで、アイヌの人たちの歴史や文化などに関する学習を行っているほか、博物館や郷土資料館などを活用した体験活動を取り入れている学校もあり、道教委としては、こうした取組が一層充実するよう、教員研修の工夫改善に努めるとともに、先ほど申し上げた推進事業における実践事例の提供などを通して、各学校での指導が適切に行われるよう支援をしていく考えである。

(道議会 2015-08-25付)

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