2定道議会一般質問(6月30日)の質問・答弁概要(道議会 2015-09-02付)
二定道議会本会議(六月三十日開催)における笠井龍司議員(自民党・道民会議)、太田憲之議員(自民党・道民会議)の一般質問、および柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。
【早期離職問題について】
笠井議員 道労働局によると、二十七年三月に道内の高校卒業の生徒の就職決定率は九六・八%で、五年度以来の高水準となっており、また、道内の労働需給も着実に改善の状況にある。
しかし、近年、本道の雇用環境の中で、若年層の失業問題がクローズアップされている。特に、道内における、高校卒業者の就職三年以内に仕事を辞めてしまう離職率は五〇%となっており、全国平均の四〇%を一〇ポイントも上回っていると聞く。
最近の景気回復を背景に、将来の中核社員としての新卒採用のニーズは高まっているにもかかわらず、入社後、早期に離職してしまうという現実は、改善の兆しがみえない。
こうした中、道経済部では、前年度、「新規高卒者等地域産業職場定着促進事業」において、「職場定着に向けた離職状況調査」を実施し、三月に結果を公表した。
若年者に対する就職支援の充実のために、早期離職問題に対して、経済行政と教育行政が力を合わせていくべきと考える。
そこで、この報告書を踏まえながら伺う。
調査結果では、企業から教育機関への要望として、「社会人としてのマナーを身に付けさせてほしい」「職業意識や就業意識を身に付けてほしい」との二点が挙げられている。高校では、進路指導において、生徒に社会人としてのマナーや職業意識、就業意識を身に付けさせるために、どのように取り組んでいるのか伺う。また、このことを含め、早期離職問題について、道教委として、今後どのように取り組むのか教育長に伺う。
柴田教育長 早期離職問題に関し、高校における進路指導などについて。道内の各学校では、生徒の社会人としてのマナーを身に付けさせるとともに、職業意識や就業意識を醸成するため、学校の教育活動全体を通じてキャリア教育を推進しており、多くの学校では、地元の企業等の協力を得ながら、外部講師を活用した職業講話、インターンシップや職場見学会などの取組を実施しており、道教委としても、生徒に対する面接指導等のための「進路相談員」の派遣や「インターンシップ受入可能事業所一覧」の作成・配布などを通じて、学校における取組を支援をしてきている。
しかしながら、依然として高卒者の離職率が高い状況にあることから、道教委としては、これまでの取組を一層充実させるとともに、「就職指導の改善に関する研究指定校事業」において、早期離職問題などの課題の分析に取り組むほか、知事部局と連携し、職業や働くことの意義などについての理解を深める「就職促進マッチング事業」の実施回数や受入企業数を拡充するなどして、高卒者の職場定着に向けた取組の充実に努めていく考えである。
【国際理解教育・英語教育】
太田議員 道では、二十九年までの概ね三年間の計画として道総合教育大綱を定めているが、未来を拓く人材の育成という柱の中のグローバル人材の育成について伺う。
道としても、世界で活躍できる人材の育成に力を入れるべく方策を示そうとしているが、文部科学省でも、二十五年の英語教育改革実施計画では、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックを見据えて、新たな英語教育が本格展開できるよう、体制整備を含めて二十六年度から逐次改革を推進していくとしている。
そこで、本道における国際理解教育・英語教育についての道教委としての考えを順次伺う。
まず、国際理解教育について。
文科省では、二十五年十二月に、初等中等教育段階からのグローバル化に対応した教育環境づくりを進め、小・中・高校を通じた英語教育改革を計画的に進めるために、英語教育改革実施計画を策定している。
文科省の中では、グローバル化とは、情報通信技術の進展、交通手段の発達による移動の容易化、市場の国際的な解放等によって、人、物材、情報の国際的移動が活性化して、様々な分野での国境の意義が曖昧になるとともに、各国が相互に依存し、他国や国際社会の動向を無視できなくなっている現象ととらえることができるとしている。
特に、グローバル化は教育と密接なかかわりをもっている。国際化は、グローバル化に対応していく過程ととらえることができ、教育分野では、諸外国との教育交流、外国人材の受け入れ、グローバル化に対応できる人材の養成などの形で、国際化が進展している。
本道は、人口五百四十万人の、世界からみると非常に小さな地域であるが、日本という国の中で、最も訪れたい場所の上位に位置している地域として、国際化、グローバル化を進める必要があり、海外から受け入れる体制はもとより、こちらから外に出て行くような人材を育成するための教育が必要だと考えるが、国際理解教育にかかわる道教委の取組について伺う。
柴田教育長 国際理解教育・英語教育に関し、国際理解教育にかかわる取組について。グローバル化が進展する中、本道の将来を担う子どもたちに国際理解教育などを通して、豊かな国際感覚を身に付けさせ、国際社会において主体的に行動できる資質能力を育成することが大切であると考えている。
このため、道教委では、これまで、カナダ・アルバータ州との間で高校生の交換留学を行ってきたほか、幼児や小学生がオールイングリッシュで外国人と活動し、宿泊生活を送る「ジュニア・イングリッシュキャンプ」をはじめ、小・中学生を対象とした「イングリッシュキャンプ」や、高校生を対象とした「スーパー・イングリッシュキャンプ」などを実施してきた。
本年度は、通学型のイングリッシュミーティングの実施によって、さらにこうした取組の拡充を図るとともに、新たに、国際的な視野を広げ、コミュニケーション能力を養うため、高校生がICTを活用して海外の青少年と交流するフォーラムを開催するなどして、国際理解教育のさらなる充実を図っていく考えである。
太田議員 これまでの小学校および中学校における英語教育の課題について。
道として、二十五年第三回定例会や二十六年第一回定例会において、小学校からの英語教育への拡充についての答弁があったが、義務教育修了段階での、生徒の英語力確保という観点から、現在、どういった点が課題かと考えているか伺う。
例えば、小中高一貫した英語力の確保。小中高一貫して学習到達目標を決め、英語によるコミュニケーション能力を養っていく必要があると考えている。そのためには、英語を習得するための時間数の確保が非常に重要となってくるが、一般的に、英語のような外国語を習得するには、日本人は約一千五百時間の学習時間が必要と言われており、中・高での総授業時間だけでは八百時間、自宅学習も含めると一千二百時間程度との試算なので、この差を埋めるべく、学習時間の確保をどう解決していくかも問題ではないかと考えている。
また、英語教員やALTの指導体制の強化も常に言われているし、ICTの活用も挙げられるかと思う。
ICT活用の効果は、外国語教育に非常に有効だと考えている。特に、ALTが多くの時間、授業に参加できない学校にとっては、ICT機器の映像や音声を通して、児童生徒の興味・関心を高めながら学ぶことは、外国語の音声に慣れ親しませる上で重要であり、こういったものの効果的な活用も重要になってくると考えるが、ICTの活用について、どのように考えるか伺う。
柴田教育長 小・中学校の英語教育における課題について。本道の小・中学校においては、外国語活動や英語の時間に、生の英語にふれることができるよう、ALTや英語に堪能な地域人材を活用した学習が行われている中、ALT等の活用時間を十分に確保できないという課題もあるものと認識している。
こうした課題に対応するため、ICTを効果的に活用している学校もみられ、例えば、電子黒板を活用してDVDなどの教材を視聴し、音声やリズムに慣れ親しんだり、コンピュータを使用して映像と音声を繰り返し流し、発音を練習したりするなどの学習活動が進められている。
道教委としては、こうしたICTを活用した取組は、子ども一人ひとりの英語に対する興味や関心を高め、コミュニケーション能力を育成する上で効果的であると考えており、今後、ICTをより効果的に活用できるよう、教員研修の充実や、先進的な事例の普及などの取組を進めていく考えである。
太田議員 高校教育における英語教育の充実について。
小中高一貫した学習到達目標が必要とされているかと思うが、その達成状況を把握・検証することも必要でないかと思う。
第二期教育振興基本計画で、生徒に求められている英語力の目安として、中学校卒業で英検三級程度、高校卒業で二級程度とされている。文科省の計画では、今後、中学校で準二級程度、高校で準一級程度という案も出てきている。
また、外部検定経験等の活用も言われており、英検はもちろんだが、リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの四技能をはかり、大学の入試にも活用されてきているGTEC・フォー・スチューデントといった外部試験も活用してはどうかという案も出ている。
このような外部検定試験などを用いて英語力を把握する必要があると考えているが、受験料がかかることから、すべての高校に受験させるのは難しいのが現実である。学習到達目標の達成状況を把握・検証することと、高校の英語教育の充実に向けた道教委の取組について伺う。
柴田教育長 高校における英語教育について。国においては、全国の高校三年生を対象とした英語力調査において、聞く、話す、読む、書くの四技能すべてに課題があったことから、本年六月に、「生徒の英語力向上推進プラン」を策定した。
このプランでは、今後、国が生徒の英語力に関する目標を示し、都道府県は、その目標を踏まえて、都道府県ごとに目標を設定し、公表することとされており、国では現在、具体的な目標や調査方法等を検討していると承知している。
道教委としては、今後、国が示す目標等を踏まえ、有識者を交えた会議において、生徒の英語力の達成目標を設定するとともに、この目標の達成に向け、これまでの取組の検証や小・中・高の各段階を通じた英語教育の充実方策について検討を行い、生徒の英語力向上の取組を推進していく考えである。
太田議員 英語教員の指導力向上について。
生徒の英語力向上を図るためにも、英語教員の英語力・指導力の向上は極めて重要とされている。
教員に求められる英語力についても、英検準一級程度以上が目標に掲げられている。生徒だけではなく、教員にも、英検やTOEFLなどのスコアで把握できる形の必要な英語力の確保が重要だと考えている。また、単に英語力だけでなく、外国語として英語を教えるための指導力の育成も重要になっていると考えている。
英語圏では、TESLと呼ばれる第二言語としての英語教授法といったプログラムがあり、これらを学ぶことも考えていく必要があるのではないかと考えるが、英語教員の指導力向上に向けた取組について伺う。
柴田教育長 英語教員の指導力向上に向けた取組について。道教委ではこれまで、初任段階教員研修や十年経験者研修等において、英語担当教員を対象に、英語力や指導力の向上に取り組んできており、さらに、十三年度からは、アルバータ州立大学の教授を講師として招へいし、英語を第二言語として身に付けるための多様な活動を取り入れた体系的な教授法を習得する研修を実施しており、これまで延べ一千人を超える教員が受講している。
また、二十六年度から国が実施している「英語指導力向上事業」の研修に教員を派遣し、研修を修了した教員が英語教育推進リーダーとして、道内すべての学校に研修の成果を還元する取組を継続的・計画的に進めてきている。
道教委としては、こうした研修の取組状況を踏まえながら、なお一層、英語担当教員の英語力や指導力の向上が図られるよう研修の改善・充実に努めていく。
太田議員 高校生の留学促進について。
人生において多感な時期に海外での経験を積むことは、国際社会で活躍できる人材を育成する上でも、また、多様な価値観を理解する上でも重要であると考えている。
海外での経験は、単に行った本人だけではなく、そのほかの生徒にとっても、実際に海外での経験を積んだ生徒が身近にいることは大きなモチベーションになると考えられている。
高校の三年間を見越して、大体一学級一人ぐらい海外での経験を積んだ生徒であれば、ほかの生徒もそういったことをイメージできるようになるのではないかと考える。高校生の留学を促進することは、グローバル人材育成に必要であると考えるが、道教委の考えを伺う。
柴田教育長 高校生の留学について。国際社会で活躍できる人材を育成するとともに、本道のグローバル化を推進する人材を育成する観点からも、高校生の海外留学は意義があるものと考えている。
これまで、道教委では、六年度から、アルバータ州との間で交換留学を行い、これまでの間、本道からは百六十人の高校生を派遣し、アルバータ州からは百六十四人の高校生を受け入れてきた。
また、二十四年度からは、国の事業を活用し、留学する道内の高校生に対する留学支援金の給付を行うとともに、留学に関心のある高校生や保護者などを対象に、留学経験者による体験講話や留学相談などを行う「留学フェア」を、毎年度、全道六会場で開催している。
今後とも、こうした取組について、道内の公立や私立学校に広く周知して、海外留学を希望する生徒を積極的に支援していきたいと考えている。
太田議員 国際バカロレアについて。
国際バカロレア、IBと言われるものは、国際バカロレア機構が実施する国際的に認められている大学入学資格の一つである。
グローバル化に対応できるスキルを身に付けた人材を育成するため、国際バカロレアは、年齢に応じてPYP(=プライマリーイヤーズプログラム)、MYP(=ミドルイヤーズプログラム)、DP(=ディプロマプログラム)の三つのプログラムが用意されている。
これらの特徴だが、これまでの日本における学習プログラムが、学習イコール暗記であり、暗記自体が目標だったとすると、この国際バカロレアのプログラムは、知識ではなく、未知の問題に対する考え方を応用できる概念を教える探究型カリキュラムと言われている。
日本の教育との違いを感じるかもしれないが、よくみると決してそうではなく、国際バカロレアのカリキュラムの趣旨は、学習指導要領と全くかい離したものではない。思考力・判断力・表現力等の育成をはじめ、学習指導要領が目指す生きる力の育成や、日本再生戦略が掲げる課題発見・解決能力や論理的思考能力、コミュニケーション能力など、重要な能力・スキルの確実な修得に資するものとされている。
文科省においても、国際バカロレアの認定校を二百校まで増やす方針をすでに打ち出している。
また、札幌市の取組として、札幌市教委は、ことし四月に開校した札幌開成中等教育学校について、国際バカロレア、IBの認定を目指す方針を明らかにしている。実現すれば、公立の中高一貫校として全国で初めてとなる。同校では、すべての生徒を対象にMYPを導入するほか、DPは高校二、三年生に当たる五、六年生による選択制で実施したい方針としている。
今後、IB認定を想定して、カリキュラムの構築や指導者確保などに取り組み、二十九年度までの認定取得を目指していくものとしている。
非常に難しく、ハードルが高いことは理解しているが、道教委としても、国際バカロレアの導入について検討することを教育行政執行方針で言っていたが、その点について、具体的にはどのように考えているのか伺う。
柴田教育長 国際バカロレアについて。グローバル化に対応した資質や能力の育成を重視し、国際的に通用する大学入学資格が取得可能となる国際バカロレアの導入は、グローバルに活躍できる人材を育成する上で有効なものと考えている。
このため、道教委では、授業や試験の一部を日本語でも実施可能とする「日本語ディプロマプログラム」による国際バカロレアの導入について検討を行う委員会を昨年五月に、庁内に設置して、他都府県の検討状況などの調査を行ってきた。
本年度は、検討委員会に、新たに研究チームを設置し、人材の確保や教育課程の編成など、導入にかかる課題の整理や解決方策について、検討を進めることとしており、こうしたチームによる検討結果を踏まえるとともに、現在、国が行っている国際バカロレアの科目の導入に関する検討などの動向を注視しつつ、調査研究に取り組んでいく考えである。
(道議会 2015-09-02付)
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