札幌市P協28年度要望に対する札幌市教委の回答 国、道に少人数学級実現求める 部活動外部指導者制度を拡充
(市町村 2016-01-06付)

 札幌市PTA協議会(川端美樹会長)は昨年十月二十七日に、札幌市教委に対して二十八年度札幌市文教施策に関する要望書を提出。十二月十五日には市教委の長岡豊彦教育長から川端会長に対して回答書が手渡された。

 二十八年度札幌市文教施策に関する要望内容と回答はつぎのとおり。

◆学校教育に関して

▼少人数学級に関して

▽落ち着き、安心して学べる環境づくりのため、小・中学校全学年において少人数学級の早期実施を要望する。

〈回答〉少人数学級についてはこれまでも、国および北海道教育委員会に対して要望しているところである。今後も国や北海道教育委員会の動向を注視しつつ、強く要望していきたいと考えている。

▼教員に関して

▽少人数指導の実現を図るため、教職員・加配教員(TT)の増員を希望する。

〈回答〉加配教員の配置については、北海道教育委員会の基準により行っている。各学校の事情を踏まえ、北海道教育委員会に加配を要望しており、今後とも強く要望していきたいと考えている。

▽専門的な視野からの指導充実のため、小学校における専門教科教員の増員を希望する。

〈回答〉教員の配置については、北海道教育委員会の定めた教職員定数配置基準により行っている。なお、本年度は専科加配として理科で二人、外国語(英語)で二人を配置している。

▼英語教育に関して

▽英語教育の充実とコミュニケーション能力の向上のため、ALT派遣時間の増加と増員を希望する。

〈回答〉本市のALT(外国語指導助手)については毎年、計画的に増員を進め、二十七年度は補正予算の配当によって年度途中から十五人を増員し、総数九十三人となっている。

 小学校については、教員を対象とした研修等の実施によって、ALTのより効果的な活用を図っているところである。中学校については、通年配置校を六校から十六校に増加したところである。今後についても、小学校および中学校におけるALTの活用の充実を図っていく。

▼スクールカウンセラーに関して

▽問題の早期対応のため、スクールカウンセラーの拡充、常勤化を希望する。

〈回答〉スクールカウンセラーについては、早期からの相談を充実するため、小学校への配置が少なくとも週一回の勤務ができるよう、今後、段階的に配置時間の拡充に努めていく。

▼特別支援に関して

▽支援を必要とする児童生徒にすみやかに対応するため、支援学級の設置およびまなびの教室の増設を希望する。

〈回答〉障がいのある児童生徒が、できるだけ身近な地域で専門的な教育を受けられる環境づくりを目指し、対象児童生徒の増加に合わせて、特別支援学級の整備を進め、現在、小・中学校の七割以上に支援学級を設置しており、引き続き、開設を進める。

 また、発達障がいに対応した「まなびの教室」は、二十一年から順次増設しており、現在、小学校八校、中学校三校に設置。今後も教室の整備・拡充を進める。

 なお、通級指導教室の教員は国から都道府県に対して定数に加えて措置される、いわゆる加配となっており、計画的な教室の拡充は困難な状況であることから、今後もまなびの教室の拡充のため、加配教員のさらなる配置について、国に要望していく。

▼学びのサポーター・相談支援パートナーに関して

▽支援を必要とする児童生徒が年々増加していることから、学び・相談支援パートナーの増員とさらなる利用時間の拡大を希望する。

〈回答〉学校生活上の支援を必要とする児童生徒に対しては、学びのサポーターの活用が大変効果的である。

 これまですべての小・中学校に配置可能な予算の確保や活用時間数等も各学校の実情に応じて弾力的な運用に努めてきたところである。

 本年度からは、一校当たりの年間活用時間数を今後四年間で段階的に増加することや、肢体不自由児への身体介助を専門に行う介助アシスタントを新設したこと、さらに市立高校への配置を開始したことにより、校内支援体制をより一層充実している。

 相談支援パートナーについては、各学校の支援体制のもと、不登校状況の子どもに対して、よりきめ細かな支援を実施しており、不登校状況の改善に効果をあげていることから、今後も、各学校の状況に応じた効果的な運用の在り方などについて工夫・改善を図りながら、運用時間の拡充を目指していく。

▼学校図書に関して

▽子どもたちの読書意欲向上のため、司書の配置を希望する。

〈回答〉二十五年度から中学校一校に学校司書を配置してきたが、二十七年十月から中学校十校に配置している。今後、中学校全校への配置を目指し、段階的に学校司書の配置を進めていく。

▼スキー授業、校外学習に関して

▽家庭や学校の経費負担を軽減するため、スキー授業および校外学習への援助を希望する。

〈回答〉校外における体験活動は、子どもたちに社会性や豊かな人間性などを育む上で大変有効な活動であると考えている。

 二十六年四月に国が定めた新運賃・料金制度や、貸切バスの減便などによってバスの確保が困難になっていることについて、学校は大変苦慮しているところであるが、札幌市の財政状況から経費的支援は難しいため、保護者の負担増に配慮し、計画的に実施するよう各学校に働きかけている。

なお、スキーリサイクル事業については、市民から提供いただくスキーセットの回収数を増やすため、回収協力いただく業者との交渉を継続するなどして、事業の拡充に努めていく。

▼武道に関して

▽専門知識をもった外部サポーターの積極的な導入など、武道学習の安全性の確保を希望する。

〈回答〉柔道をはじめとする武道の授業を安全に実施するため、柔道指導の専門家などを講師とする実技講習も含めた研修会を行うとともに、柔道などの事故防止に向けた通知を複数発出し、安全管理の徹底を図っているところである。

 また、武道の授業における外部人材の活用については、関係団体との情報交流を行ってきており、今後の連携の在り方などについて検討を進めている。

▼部活動に関して

▽部活動のさらなる充実を図るため、部活動指導者の待遇改善と外部顧問の増員を希望する。

〈回答〉外部指導者については、各学校において必要に応じて確保し、教育委員会としても、傷害保険を適用するなど支援をしているところである。

 また、本年度から顧問がいなくても土日の活動ができる特別外部指導者の制度を新設し、次年度以降も拡充に努めていく。

 教員に対して支給する部活動の指導に関する手当は、北海道で定めた条例、規則等に基づいて支給しており、二十七年一月より手当額が改定されている。

▼いじめ問題に関して

▽いじめ根絶のため、調査回数の拡大など取組の強化を希望する。

〈回答〉いじめの問題については、未然防止と早期発見、早期対応が重要であり、各学校においては「悩みやいじめに関するアンケート調査」の実施などを通して、いじめの早期発見、早期対応に努めているところである。

▼安全・安心に関して

▽安心して通学できるよう季節に応じた通学路の安全確保を希望する。

〈回答〉道路管理者や警察などの関係機関に対して、通学路の状況に応じた安全対策を講じるよう、引き続き要請していくなど、通学路の安全確保に向けた取組を続けていく。

▽多種多様な犯罪が増加している中、安全な学校生活が送れるよう、防犯カメラの設置を希望する。

〈回答〉学校における防犯カメラについては、不審者への対策や施設の器物損壊が相次ぐなどの場合に設置している。当面はこれまでと同様に、学校からの相談に個別に対応していくことを考えている。

▼幼稚園に関して

▽働く人だけでなく誰もが利用しやすくなるよう、預かり保育料の見直しを希望する。

〈回答〉全区(清田区を除く)実施から一年半が経過し、各園の利用実績などを検証している。幼児や保護者にとってより良い預かり保育になるよう、引き続き検証を続けていく。

▼子どもの居場所づくりに関して

▽利用する児童の安全面を考えて、全校の校内にミニ児童会館の開設を希望する。

〈回答〉札幌市は一中学校区に一館を基本として児童会館を整備し、校区内に児童会館のない小学校には、余裕教室などを活用したミニ児童会館を整備してきたことによって、二十七年度現在、児童会館百四館、ミニ児童会館九十四館を整備している。

 今後は、小学校の改築とあわせて、既存の児童会館およびミニ児童会館を小学校と複合化した新しい児童会館として再整備していく。

◆施設設備に関して

▼学校設備に関して

▽子どもたちの健康に配慮したトイレの洋式化および全個室化を希望する。

〈回答〉現在、トイレは全面改修により、「暗い・臭い・汚い」という、いわゆる3Kの解消と同時に洋式化を図っているが、本年度から便器の洋式化のみの改修も取り入れ、洋式化のスピードアップを図っている。個室化については、コストやスペースの問題があり、現時点では考えていない。

▽避難場所として誰もが安全かつ円滑に利用できるようにするため、トイレのバリアフリー化を希望する。

〈回答〉改築やトイレの全面改修の際、多目的トイレの整備を行っているほか、車いすを使用する児童生徒が転入学した際には、その都度整備を行っている。

▼予算に関して

▼教育関連予算に関して

▽教育活動に支障をきたさないためにも、予算の維持・増額を希望する。

〈回答〉本市の厳しい財政状況の中、教育委員会としても、より充実した教育環境の実現を目指し、今後とも必要な予算の確保のため、関係機関に働きかけている。その際には、貴協議会や教育現場などからの意見を反映させたいと考えているので、今後とも理解と協力をお願いする。

▼読書活動推進事業に関して

▽児童生徒に豊かな読書環境を提供するため、読書活動推進事業にかかる予算の維持・増額を希望する。

〈回答〉本市の厳しい財政状況の中においても、子どもたちの読書活動を活発なものとできるよう、今後も必要な予算の維持、確保に努め、学校図書館の蔵書充実を図っていく。

 また、地域に学校図書館を開放する「学校図書館地域開放事業」をさらに進め、子どもと地域の読書活動の推進および相互交流を図っていく。

▼PTA活動に関して

▽現状の基盤維持および強化のため、本年度と同様の助成を希望する。

〈回答〉貴協議会が行う学校・家庭・地域等との連携による教育力向上の取組、子どもの健全育成のための諸事業は、本市の社会教育施策に大きく寄与しており、今後もその支援を継続していきたいと考えている。

 一方で、本市の財政状況も厳しさを増していることから、今後、自主財源の確保や組織運営の効率化などの財政基盤の強化について、貴協議会の協力をいただきたいと考えている。

(市町村 2016-01-06付)

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