本道教育の充実に寄与 道小第5回理事研・松井会長あいさつ
(関係団体 2016-01-20付)

 道小学校長会第五回理事研修会(十四日付1面既報)における松井光一会長のあいさつ概要はつぎのとおり。

 私たち校長は、学習指導要領改訂にかかわる確かな情報を積極的に集め、新たな教育課程編成に向けてのグランドデザインを教職員に示すことができるように準備を進めていくことが必要である。

 全連小としても、各学校において新しい教育課程を編成する際に、参考となる資料として、前回の指導要領改訂時に作成配布した、『展望と計画』のような資料を届けられるように検討を進めている。

 その『展望と計画』の目次の中に、「学校の取組等」と「今後の展望と計画作成に当たって」の部分が、校長が知りたい必要な部分と思われる。私自身もこの資料の作成にかかわるので、こんな情報が知りたいという要望があったら、遠慮なく教えてほしい。

 きょうは、会長あいさつとして、五点にわたってお話する。

 一点目は、来年度の課題について。全連小の大橋明会長は、来年度の活動の検討課題として三つ指摘している。この検討課題を踏まえ、道小としての課題を考えてみる。

 一つ目は、「学習指導要領改訂をはじめとする教育改革の動向」を踏まえることが必要である。あとで述べる中央教育審議会の各答申をはじめとする、学習指導要領の改訂の動向について、アンテナを高くしていかなければならない。

 二つ目は、「教職員定数改善をはじめとする教育諸条件の整備」。これは本年度、道小と道中、加えて道教委、道P等の教育関係諸団体が、心を一つに「チーム北海道」として、ずっと取り組んできたことである。教職員定数の改善はもちろん、ほかの教育諸条件の整備等についても意見表明をしていかなければならない。

 三つ目は、「道小組織の強化と活性化」である。政令指定都市への税源移譲や会員減による財政面の問題もある。道小組織の凝集性を高めるということを大切にし、道小の在り方、活性化を考えて進むことが課題である。

 この三つを読み替えると一つ目は、教育改革の動向から、これからの時代を予測し、その本質を見定めていくという点で、「未来を見据え」という意味になる。

 二つ目は、この教育諸条件に対する動きとして、チーム北海道を標ぼうしてきたということにつながる。

 三つ目は、道小が一丸となって、二十九年問題や三十年全国大会など、大きな課題に取り組んでいくことになる。全道の校長先生方が、その存在感をあらためて感じられるよう進んでいくことが大切である。

 その上でも、二十七年度のキャッチフレーズ、「未来を見据え、チーム北海道として進む道小」をさらに具現化していくことが重要である。

 大きな二点目は、第八期中教審の審議状況についてである。

 昨年十二月下旬に、第百四回中教審総会が行われ、答申案等の検討とともに、うち二本は、今、答申として発表されホームページ上にアップされている。

 一つ目は、「これからの学校教育を担う教職員の資質向上」。二つ目は、「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」。三つ目は、「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方について」である。

 二十七年四月の諮問を受け、中教審生涯学習分科会の学校地域協働部会と、中教審初等中等教育分科会の地域とともにある学校の在り方に関する作業部会が、今回は合同で検討を行い、一つの答申として発表された。

 この答申については、いままで学校は、地域の支援をいただくというかたちで運営されてきたが、これからは地域をつくっていく側の立場として、つまり対等の立場で、学校と地域が連携・協働していくということを示すと思われる。全連小では、新たな学校の負担にならないということを重点的に配慮するよう要請してきている。

 「チーム学校」の理念と、「学校と地域の連携・協働」の理念をかけ合わせれば、コミュニティ・スクールと、地域学校協働本部との連携・協働となるイメージ図が描かれている。

 三点目は、文部科学省初等中等教育局教育課程課の合田哲雄課長の話について。改訂作業を担当し、学習指導要領改訂のキーマンである合田課長の話は、分かりやすい上に、重要なポイントが満載である。例えば、「カリキュラム・マネジメントとはどのようなものか。それを進めていくためには学校は何を始めれば良いのか」という、まさに、全連小でこれから作成する展望と計画に乗せたい内容であるが、「カリキュラム・マネジメント」を可視化し、自覚的に実践していくという具体が書かれてる。

教育課程の構造理解して

 四点目は、全連小元会長・寺崎千秋氏の講演「学習指導要領改訂と各県の取組」と題して昨年末行われた内容について。

 未来にどんな変化が起きるのか。二〇五〇年の世界人口は九十六億人で現人口の一・四倍。もっとも人口成長の著しい地域は、アフリカとインドで、アフリカの平均年齢が二十五・七歳。

 同年の日本の人口は推計で九千七百万人。日本は、ベトナムよりも人口の少ない国になり、GDPは中国、インドの十二分の一未満になる。

 同年の日本の総人口の平均年齢は五十三・四歳。人口の四割が六十五歳以上。

 二〇五〇年までに日本の居住地域の二〇%が、「人の住まない地域」となり、六〇%の地域で人口が半減。人口の四割が、“おひとりさま”になる。

 二〇一〇年に一秒でダウンロードできたのは、新聞四分の一日分。二〇五〇年には、一秒で新聞三・五億年分をダウンロードできるようになる。

 二〇三〇年に二〇一一年で入学した子どもの六五%は今ない職業につく。

 小学校の先生は残るが、中学校の先生は知識理解を教えるだけなら残らない。中学校は生徒指導の部分が残る。今後十~二十年で、五〇%の仕事が自動化される。

 その要因や背景は、科学技術の進歩、グローバル化、知識基盤社会、少子高齢化である。

 こういう時代になるという情報を、皆さんに伝えていくことが必要である。

 この流れを踏まえて今度の改訂の学習指導要領では、資質・能力の育成を重視する方向で行くことになっている。そういう中で中教審が論点整理を出したわけである。

 論点整理は、土台のようなものであって、これから、その上にどういう柱が立ってどういう壁が作られていくということが行われるということである。

 この論点整理の中に出てきたのが、まず、育成すべき資質・能力である。

 ①何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)②知っていること、できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)③どのように、社会・世界とかかわり、より良い人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)―の三点が育成すべき資質・能力である。

 論点整理で重視されているものは、キーワードとして、「社会に開かれた教育課程」「アクティブ・ラーニング」「カリキュラムマネジメント」の三つである。

 社会に開かれた教育課程については、社会を枠組みの中に入れて学校の教育課程を考えるということであり、教育課程は学校の中だけではなく社会と共有していくという考え方と押さえている。

 アクティブ・ラーニングのとらえ方は、「課題の発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」と言われている。

 アクティブ・ラーニングは今の学習指導要領、総則の中でも要素は全部出ているということで、それをやればアクティブ・ラーニングができることになっている。しかし現実にはできていないという調査結果がある。

 この調査によると、教員の三割はできないといっているし、よくできるというのは五%しかいないわけである。そうなると、これから三・四年かけて力を付けていかなければならない。そうしないとつぎの改訂の時にアクティブ・ラーニングの「ア」の字もないことになる。

 そこで寺崎氏は、教育課程の構造をしっかり理解することが大切であると述べている。つぎの教育課程もおそらく基本的にはそうだと思う。

 先ほど述べた育成すべき資質・能力ともリンクするのであるが、簡単に言えば「分かる・できる・つかう・つくる」であるといっている。

 「分かる・できる」というのは、基礎的・基本的な知識技能をしっかり身に付けるということである。つまり、何を知っているか何をできるかというのは「分かる・できる」ということである。

 そして、分かる・できることをどうつかうか。分かる・できる「つかう」と、活用するということである。

 さらに、「分かる・できる・つかう」をもとにして、新たな知をつくる、自分たちの学習をつくる、学校生活をつくる。「つくる」は、まさに知の創造である。

 つぎに、カリキュラムマネジメントについてである。

 アクティブ・ラーニングとカリキュラムマネジメントは車の両輪であると最近よく言われる。大事なことは、編成実施評価改善をして、つぎの年、子どもが良くなっているかということである。良くなっていなければ何の意味もなかったということになってしまう。

 皆さんの学校が、例えば「実行する子どもを育てよう」とか、「思いやりのある子どもを育てよう」ということであれば、その教育目標実現のために、カリキュラムを編成するわけであるから、思いやりのある子どもを育てるためには、それぞれ教科でどういうことを大事にするのか、実行とは、考えるとはどういうことを大事にするのかを考えて、カリキュラムをつくり、そのためにどういうふうに各教科ごと横にそろえるか、内容はどうするのか、指導方法はどうそろえるのかということで、カリキュラムをつくることになる。

 ある事例で説明する。どんな学校にしたいか問うと、「こんな学校をつくりたい。あんな学校をつくりたい」と、四つも五つも出てくるのである。「幾つの学校つくるんだ」と思うわけである。気持ちは分かるけれども。この中で一番つくりたい学校は何なのかと聞くと、「子どもが楽しく学べる学校」だとする。だったらほかのものは消してしまえということである。これが結局八ヶ岳型になる。あれもこれも、みんな日本の先生って一生懸命やるから、でも、あれもこれもやるからエネルギー分散で、あれもこれも適当なところで終わる。だから変わらない。

 これをやるんだという、富士山型、全部のエネルギーをそこに集中してやれば、学校は変わる。これは一つというところでやると、先生方のエネルギーが全部そこへ集中していくので、それが子どもの姿で変わってくるのが目に見えてくる―という話だった。

 五点目は、今後の見通しについて。

 文科省の予定でいうと、二十九年の三月までに指導要領を改訂する。約一年である。そして三十~三十一年と移行措置をやって三十二年小学校全面実施となる。

 問題はこの期間をただずるずると過ごすのか、しっかりと学習をして、教師の授業力を高めて、全面実施にこたえられるような教師力を付けて、出発できるかということであると、先ほどの寺崎氏は指摘している。

 今、校長が行うことは、来年度の学校経営方針作成に当たっての見直しに、先ほどの観点をもってきて始めてみることである。論点整理、ほかの答申等の資料の熟読も必要になる。

 私は、年頭に当たって、「一寸千貫」の心をもつことが大切であると道通の新春メッセージに書いた。「一寸千貫」という言葉には、一寸(約三・三㌢㍍)の細い柱であっても、真っすぐにして正しく立てれば、一千貫(約三千七百五十㌔㌘)の重さにも耐えられるという意味がある。

 「一寸千貫」には、胸を張って前を見て、姿勢を整え真っすぐに立つ外見の姿と、物事を真っすぐに見据えて正しく生きる内面の心姿を一つにして正しく立てば、人の世の荒波においても、決して苦境・逆境にくじけることなく耐えしのぐことができる、といった教えが込められていると言われている。

 本会も、「正論をもって正道を歩む」という結成以来の理念をもとに、教育改革の荒波に、真っすぐに立ち向かっていく「一寸千貫」の心で新しい年を進んでいきたいと思う。

 今後とも、「未来を見据え、チーム北海道として進む道小」というキャッチフレーズを掲げ、子どもたちの成長と本道の教育に責任をもつ校長会として、本道小学校教育の推進および充実・発展に寄与していく決意である。

(関係団体 2016-01-20付)

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