帯広市教委の教育行政執行方針―八鍬教育長説明 地域全体で未来拓く人材育成 帯広版アクティブ・ラーニング推進
(市町村 2016-03-25付)

帯広市教委八鍬祐子
帯広市教委・八鍬祐子教育長

 【帯広発】帯広市教委の八鍬祐子教育長=写真=は二十三日、市議会予算審査特別委員会で二十八年度教育行政執行方針を説明した。小・中学校において、義務教育九年間を見通した、おびひろっ子を育む九年教育プログラムや、体験・創造活動などを通じて主体的・協働的に学ぶ帯広版アクティブ・ラーニングを教育活動全般に効果的に取り入れる。また、地域ぐるみで子どもを応援する取組を支えるため、こども学校応援地域基金を創設するとともに、動物園の飼育環境の改善や展示動物の充実などを図るため、おびひろ動物園ゆめ基金の創設などを行う考えを示した。 

 執行方針の概要はつぎのとおり。

▼基本的な考え方

 個人の能力を最大限伸ばし、国や社会の担い手として必要な力を育むことを目指す教育の目的は、いつの時代にあっても変わらないが、グローバル化や高度情報化などが急速に進展している今日の社会情勢の中で、子どもたちを取り巻く環境は大きく変化している。こうした中で子どもたちの成長を見据えながら、ますます複雑化する諸課題に向き合うためには、これまで以上に地域ぐるみで子どもたちを育んでいくことが大切であると考える。

 また、多様な価値観や生き方が存在する今日の社会にあっては、人々が相互にかかわり合いながら社会に参画し、生涯にわたって、多様な学習機会を選択して学び、その成果を広く地域に還元できる生涯学習社会の構築が求められている。

 こうしたことから、十勝・帯広の豊かな自然や先人が培ってきた英知、開拓の歴史など、かけがえのない財産や資源を活用し、地域社会全体で、未来を拓く人材の育成に取り組むことが重要であり、持続可能で活力あるまちづくりにもつながるものと考える。

 そのため、引き続き、帯広市教育基本計画の基本理念である「ふるさとの風土に学び 人がきらめき 人がつながる 帯広の教育」の実現に努め、帯広らしい教育を進めていく。

▼取組の方向性

 教育基本計画では、基本理念を実現するために、「次代を担う人づくり」「ともに学びきずなを育む地域づくり」の二つの基本目標と「基本目標を実現するための基盤づくり」を掲げている。

▽次代を担う人づくり

 知識・技能の習得や豊かな心の育成などに取り組み、知・徳・体の調和がとれ、人間を尊重し自然と共生する人づくりを進める。

 また、小・中学校において、義務教育九年間を見通した、おびひろっ子を育む九年教育プログラムや、体験・創造活動などを通じて主体的・協働的に学ぶ帯広版アクティブ・ラーニングを教育活動全般に効果的に取り入れるとともに、生涯にわたる多様な学習や文化、スポーツに親しむ機会の提供を行う。

▽ともに学びきずなを育む地域づくり

 ふるさとの理解の促進や、きずなづくり・まちづくりに取り組み、人と人とがつながり、ともに役割を果たしていく協働の地域づくりを進めるため、十勝・帯広の自然や歴史、文化などの地域資源を生かした教育や交流を推進し、その成果を広く地域に還元するとともに社会での活躍につなげられるよう、支援を行う。

▽基本目標を実現するための基盤づくり

 学校・家庭・地域のさらなる連携促進や学校施設の改修など教育環境の充実に取り組み、帯広市の教育を支える基盤を一層強固なものにしていく。

 また、地域ぐるみで子どもを応援する取組を支えるため、こども学校応援地域基金を創設するとともに、動物園の飼育環境の改善や展示動物の充実などを図るため、おびひろ動物園ゆめ基金の創設などを行う。

▼主な取組

◇次代を担う人づくり

▽知識・技能の習得

 全国学力・学習状況調査結果の分析に基づき、児童生徒に対して課題分野の繰り返し学習を徹底するなど、学校・家庭・地域が一体となって基礎学力の定着に向けた取組を進める。

 また、児童生徒一人ひとりが、将来、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現できるよう職業観・勤労観などを育むとともに、高度情報化社会の中で主体的に活躍できるよう情報活用能力や情報モラルの向上を図る。

 帯広南商業高校においては、地元で活躍する民間人によるビジネス基礎講座を行うなど、地域の求めに応じた人材を育てるため、実践的教育を進める。

 また、市民の幅広い学習要望に応えるため、市民大学講座や社会教育施設の特色を生かした講座などを開催し、多様な学習機会を提供する。

▽豊かな心の育成

 学校における道徳教育の充実に取り組むほか、こころの教室相談員や家庭訪問相談員などによる教育相談体制の充実を図り、悩みや不安を抱える児童生徒や保護者一人ひとりに寄り添いながら、いじめや不登校などの未然防止および早期解決に努めるとともに、いじめ非行防止サミットなど、児童生徒が自ら考え行動する取組を支援する。

 また、市図書館および学校図書館において、魅力ある蔵書の整備を進めるとともに、読み聞かせなどの様々な取組を行い、読書活動の機会を提供するほか、幅広い層を対象に優れた芸術・文化にふれる機会を提供するため、札幌交響楽団特別演奏会などを開催する。

▽健やかな体づくり

 市民自らの発想で地域に密着したスポーツ活動の機会をつくっていく総合型地域スポーツクラブの活動支援や、フードバレーとかちマラソン大会の開催支援などによって、スポーツへの参加機会の充実を図る。

 また、栄養教諭や食育指導専門員などが連携し、学校で給食指導や食育出前授業を行い、食に関する指導の充実を図るとともに、家庭への働きかけを行う。

 学校給食センターでは、地場産食材を活用した新メニューの開発や食物アレルギーへの対応などに取り組み、安全・安心でおいしい給食の提供に努める。

 そのほか、胃がんなどのリスクの抑制につなげるため、中学三年生を対象としたピロリ菌検査を新たに実施する。

▽人間を尊重し自然と共生する人づくり

 様々な機会を通して、人権や福祉、男女共同参画に関する教育・学習活動を進めるほか、グローバル化に対応し、国際社会に貢献できる人材を育成するため、小・中学校への外国語指導講師の派遣などを行い、国際理解の促進や外国語によるコミュニケーション能力の向上を図る。

 また、環境に優しい活動を自ら進んで実践できるよう、出前講座や体験学習を実施し、自然環境や動植物への理解と関心を深める取組を進める。

◇ともに学びきずなを育む地域づくり

▽ふるさとの理解の促進

 小・中学校においては、十勝・帯広の自然や歴史、産業、アイヌ民族の文化などについて学ぶため、郷土体験学習など、発達段階に応じた体験学習などを進める。

 また、百年記念館の博物館講座など各種講座を開催するとともに、図書館の郷土資料展示コーナーの活用や中城ふみ子賞の実施など、地域特性を生かした取組を行うほか、地域の歴史的建造物の利活用を検討するなど、ふるさとの魅力の再発見や理解を深めるための学習機会を提供する。

▽きずなづくり・まちづくり

 百年記念館など社会教育施設において、ボランティアを養成する各種講座を開催するとともに、その学びを生かせる活動の場を提供するほか、地区生涯学習推進委員会が企画・運営するコミュニティー講座を支援するなど、生涯学習を通じた市民主体のまちづくりを促進する。

 また、日ごろの文化活動の成果を発表・鑑賞できる、おびひろ市民芸術祭を開催するほか、スポーツを通じたにぎわいや交流を促進するため、関係団体などと連携し、スポーツ合宿・大会の誘致を進めるとともに、フードバレーとかちマラソン大会の開催支援や二〇一七冬季アジア大会スピードスケート競技の開催など、国内外の人々が十勝・帯広を訪れる機会を創出する。

◇基本目標を実現するための基盤づくり

▽学校・家庭・地域の連携

 地域ぐるみで子どもを育む機運の醸成やしくみづくりのため、こども学校応援地域基金プロジェクトを促進し、様々なボランティア団体などの活動を緩やかにくくり、横のつながりを深めるほか、地域住民によるICT機器を活用した学習支援の推進など、学校・家庭・地域が相互に連携する取組を支援する。

 さらに、各学校のホームページにおいて積極的な情報発信を行うとともに、学校評議員に学校運営に関する幅広い意見を求めるなど、地域とともに歩む学校づくりを進める。

 また、家庭教育を支援するため、図書館でのおはなし会や動物園での親子による体験プログラムなど、親子がふれあう多様な機会を提供する。

▽教育を支える人材の育成

 教員に対して夏季および冬季休業中の各種講座や 二十一世紀教師塾など研修の場を提供するとともに、公開研究会の開催などを通じて、教員一人ひとりの人間力・指導力の向上を図る。

 また、市民の自主的な学習活動を支援する生涯学習指導者のさらなる活用を図るため、指導者登録制度の周知や登録者数の増加に向けて、新たな人材発掘に努めるほか、スピードスケートの競技力向上を目的とした、ほっとドリームプロジェクト事業において競技者ならびに指導者の育成などに取り組む。

▽教育環境の充実

 学校施設においては、トイレの洋式化を進めるほか、計画的な修繕などによって機能維持を図るとともに、長寿命化計画策定に向けて検討を進める。

 社会教育施設においては、トイレの洋式化を進めるほか、計画的な修繕に努めるとともに、新総合体育館の整備に向け、用地取得やPFI方式による取組を進める。

 また、図書館では全国に登録されているデジタル録音図書などの貸出ができるサピエ図書館事業を導入し、視覚障害者へのサービス拡充を図る。

▽教育機会の確保

 家庭の経済的負担を軽減するため、就学援助費の支給を行うほか、清川地区のスクールバスを更新する。

 また、特別な配慮を必要とする児童生徒一人ひとりに応じた指導や支援を行うため、特別支援学級の開設および増設を行うとともに補助員の増員など、特別支援教育の充実を図る。

▽よりよい教育のための仕組みづくり

 小・中学校や幼稚園、保育所などを中学校区ごとに一つの家族のようにとらえるエリア・ファミリー構想による連携体制を強化し、子どもの学びや育ちについて共通の認識をもち、発達段階に応じた適切な指導に取り組む。

 小・中学校の適正規模・適正配置については、広く市民の意見を聞きながら、基本的な方針を策定していく。

 また、図書館、百年記念館、動物園、児童会館において、共通テーマに基づく四館連携事業を引き続き実施し、魅力ある学習機会を提供するなど、社会教育施設の利用を促進する。

 さらに、市ホームページなどによって教育行政に関する情報提供の充実に努めるとともに、総合教育会議などを通して、市長と、地域の教育について課題や方向性を共有し、今後もより一層、開かれた教育委員会づくりを進めていく。

(市町村 2016-03-25付)

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