第４７回「東レ理科教育賞奨励作」　江差高・河田教諭が受賞　モーター製作指導、高く評価

（学校 2016-04-06付）

受賞した河田教諭

　【江差発】公益財団法人東レ科学振興会が顕彰する二十七年度第四十七回「東レ理科教育賞奨励作」の受賞者に江差高校の河田淳一教諭が選ばれた。河田教諭による「銅線五本でできるモーターの製作指導」（高校物理）の実践が高く評価された。

　東レ理科教育賞（文部科学省後援）は、創意工夫によって著しい教育効果を挙げた指導、工夫、実践例などを表彰するもの。理科教育上、広く普及を奨励する「東レ理科教育賞奨励作」には全国で三人の教員が選ばれ、道内からは河田教諭が選ばれた。

◆物理法則　理解しやすく

　受賞した河田教諭が製作したのは、住宅の配線に使われるＶＶＦケーブルを用いたモーター。不安定な仕様のクリップモーターに不満を覚えていた河田教諭は、剛性の高いＶＶＦケーブルを使ったモーターの製作を思いついた。授業でモーターを製作した生徒は、コイルの巻き数によって回転子の動きが変わることを目の当たりにし、物理の法則に対する理解を深めていた。

　河田教諭は、二十五年四月から江差高校で物理を担当。「自然界は不思議に満ちている。その不思議にふれてほしい」との思いで教壇に立っている。

　電流と磁場と力の関係を表す「フレミング左手の法則」を説明するため、実験ではクリップモーターがよく使われている。単三電池の両端にセロハンテープでクリップをとめ、エナメル線を巻いてつくった回転子をクリップの間に通すという作り。河田教諭によると「不安定で弱々しい」。

　クリップモーターが壊れやすいこともあり、河田教諭はより剛性の高いＶＶＦケーブルを使ったモーターの製作を検討。二十六年夏、ケーブルの剛線で単一電池を保持できるようにした試作品を完成させた。

　ところが、エナメル線を巻いたコイルが過熱。そこでコイルが加熱しすぎないよう、コイルを二個に増やし、熱が分散するようにした。

　二十七年七月に十分使えると判断した河田教諭は、物理の工作実験の時間でＶＶＦケーブルモーターの作り方を指導。道具はペンチ、材料はＶＶＦケーブル、エナメル線、単一電池と低コスト。コイルを最低八十回巻くように指示したところ、百回以上、中には百五十回巻く生徒もいた。

　河田教諭は「クリップモーターの実験では、右ねじの法則の理解にはつながらないが、ＶＶＦケーブルモーターなら、フレミング左手の法則に加え、右ねじの法則も理解しやすい」とメリットを説く。コイルの巻き数によって磁力線の強さも変わるので、多く巻いた生徒ほど、回転子が勢いよく回る様子を目の当たりした。

　今回の受賞を振り返り、河田教諭は「他人が考える以上の実験をするため、常に〝安くできるか〟〝簡単にできるか〟〝より生徒が楽しめるか〟を意識して日々の授業実践に当たっている。お金をかけずとも、アイデアと工夫次第で新しい教材はつくれる」と話している。

◆ＶＶＦケーブルモーター

　受賞作品の概要はつぎのとおり。

　　　　　　　　◇　　　　　◇　　　　　◇

　高校で取扱う電磁気では、モーターと発電機の原理の理解が重要な課題となっている。これを達成するために、永久磁石と回転軸受けにクリップを使ったモーター（クリップモーター）の製作がよく行われる。

　永久磁石の代わりにコイルを巻いて電磁石とするモーターも提案されているが、コイルを鉄心に巻いて磁場を大きくする設計が多く、高校の学習範囲で鉄心の役割を理解することはできない。

　また、高価な電池ホルダーが使われており、ホルダーとモーター部の配線、鉄心を組み合わせるために全体の一体感、堅牢さはない。

　提案も電磁石を使ったモーターであるが、剛性の高い銅線を使うことにより、単一電池を支持でき、電池とモーターが丈夫な一体となる設計となっている。また、一対の電磁石も空心で同軸に配置され、磁場の向きが分かりやすく、動作原理を理解しやすくなっている。

　単三電池から単一電池に替えて内部抵抗を下げ、電流を増やし、空心の電磁石の弱い磁場を補っている。工作もペンチ一本でできるため、だれでも一回の授業時間で失敗なく作れる。電池の極性、電磁石の巻き方、回転子のコイルの巻き方などを変えての授業展開が可能である。

この記事の他の写真

ＶＶＦケーブルを使ったモーター

(学校 2016-04-06付)