学校教育充実へ全力 道中学校長会総会・研修会 赤岩会長あいさつ
(関係団体 2016-05-11付)

道中総会会長あいさつ概要
赤岩輝雄会長

 六日に開かれた道中学校長会第八十九回総会・研修会における赤岩輝雄会長=写真=のあいさつ概要はつぎのとおり。

 ことしは、道中学校長会にとって創立七十年目の節目の年を迎えるが、創立以来、「中学校長の職能向上」と「北海道中学校教育の振興」を目的として、時代時代の課題に向き合い、たゆまぬ歴史を刻んできた本会の会長職の任に就くに当たり、大変光栄なことであると同時に、職責の重さをひしひしと感じている。微力ではあるが、副会長の皆さんをはじめ、運営委員・理事・幹事の皆さん、そして何よりも全道二十地区の校長会、五百九十六人の会員の皆さんの支援と協力をいただきながら、道中学校長会の歴史と伝統を引き継ぎ、諸課題に対し全力で取り組んでいく。

 皆さんもご存じのとおり、国の第二期教育振興基本計画では、これまでの各学校における生徒の「生きる力」の育成を目指し、地域に開かれた特色ある学校づくりを進めてきた取組から、実社会とのかかわりをさらに重視し、個人の自立と様々な人々との協働に向けた力や、困難に直面しても諦めることなく臨機応変に行動する力などの「社会を生き抜く力」を育成することが求められている。

 併せて、教育改革が急ピッチで進められ、次期学習指導要領の改訂に向けた中教審の論点整理に基づく具体の議論や、「チームとしての学校」に向けた具体的な改善策、あるいは、地域と連携した「地域学校協働活動」の推進に向けた制度設計等の答申が矢継ぎ早に発表されている。

一方で、道内では地域の人口減と少子化の影響、確かな学力や体力の定着・伸長に向けた喫緊の課題への対応、命を大切にする指導と一体化したいじめや不登校、ネットモラルといった問題状況の改善等々、教育に関する課題は山積している。

私たち校長には、こうした中学校教育の現状と課題を踏まえ、「社会を生き抜く力を身に付け、未来を切り拓く日本人を育てる中学校教育」の実現を目指し、新しい時代に求められる学校づくりに向けてこれまで以上にリーダーシップを発揮し、特色ある教育活動の一層の充実に努める責務がある。

 また、校長会の使命である「教育の質の向上」を目指し、学校改善に全力を注ぎ、学校力の向上を図らねばならない。これまでの各地区、各学校での実践とその成果を十分踏まえ、保護者・地域の理解と協力を得るとともに、教育関係機関・関係団体と協働し、「チーム北海道」の意識に立って、引き続き粘り強く、確実に取組を進めていく。

この思いから、昨年度「連携し、前進する道中」を合い言葉に活動してきた成果を受け継ぎ、さらに「つながり、ひらく道中」を合言葉に本年度の諸活動の一層の充実を図りたいと考えているので、支援、協力をよろしくお願いしたい。

つぎに、本年度の本会の活動を推進するに当たって、三点について述べる。

一点目は、「社会で自立して生きていく上で必要な学力や体力の向上」について。

各学校では自校の学力向上プランを立案し、学力向上への取組を粘り強く継続してきている。まだまだ厳しい状況にあるが、子どもたちの基礎学力には改善の兆しがみえつつある。私たちは、このことをしっかりと受け止め、自信をもって現在の取組をさらに継続するよう努めていきたいと思う。

 日々の授業の質の向上に努め、子どもたちにとって、一時間一時間の授業が「分かる・できる・楽しい」授業となり、達成感や成就感を得て、つぎの学びへの意欲をもつことができるための取組が必要である。

この授業のイメージとして、文部科学省初等中等教育局教育課程課の合田哲雄課長は「クラスで、ただ座っているだけの〝お客さん〟が一人もいない授業。すべての子どもがそれぞれの観点や力量に応じて必死で考え、取り組んでいる授業」と説明し、それは「習得・活用・探究というプロセスを見通して授業をしたり、子どもたちに自らの学びを振り返らせたりする中で、子どもたちに必死で考えさせる」ことから生まれると強調している。この授業のイメージは、「主体的・対話的な深い学び(アクティブ・ラーニング)」にほかならない。

子どもたちがアクティブ・ラーナーになり得る授業の改善と教師力の向上を基本とした学校改善を積極的に推進することが総合的な学校力を高めることになる。

ところで、昨年出版され話題になった『学力の経済学』の中で、教育経済学者の中室牧子氏は、自制心ややり抜く力といった「非認知能力」はIQや学力テストで計測される「認知能力」の形成に一役買っているだけではなく、人生の成功において極めて重要であると紹介している。

 そして、「人から学び、獲得するものである」非認知能力を培い、鍛える場としての学校の意義を指摘している。ここには、私たち校長が子どもたちの学力の向上について考える際に、落としてはならない貴重な示唆があると私は受け止めている。中室氏は、本年度の道中学校長会研究大会上川・旭川大会に記念講演の講師として招く。私たちの学びの機会として今から楽しみにしている。

本道の子どもたちの体力・運動能力の状況については、全国調査の結果から一部で改善がみられるものの、全国平均を下回る状況が続いており、改善に向けた具体的な対応が求められている。

 体力は、あらゆる活動の源として、健康の維持のほか、意欲や気力の充実にも大きくかかわっており、子どもたちの体力・運動能力に対する興味・関心を高め、運動する機会を少しでも増やし、習慣化させていく全校的な、さらには地域ぐるみでの取組や環境づくりが子どもたちの「生きる力」を向上させることにつながるものと考える。

 二点目は、「いじめ・不登校への対応と命を大切にする指導の推進」について。

いじめ・不登校に対する取組や命を大切にする指導については、これまで以上に危機感をもち、全教職員が生徒の状況を的確に把握するよう努め、その兆候を見逃さず、未然防止と迅速な対応に努める必要がある。同時に、日ごろから「豊かな心」を育成するための道徳教育の充実や生徒の心に染みる取組を積極的に推進することが大切である。

昨年十一月に実施された文科省主催の「いじめの防止等に関する普及啓発協議会」に参加した際、文科省初等中等教育局児童生徒課生徒指導室の平居秀一室長が、二十六年度問題行動等調査に実態に即した認知件数が計上されていなかった事例があったことから、「初期段階のいじめやごく短期間のうちに解消したいじめについても漏れなく計上すること」と強調していた。

各学校は、「いじめはどの学校にもある」という認識のもと、「いじめは絶対に許さない」という考えに立ち、各学校の「いじめ防止基本方針」に基づく取組を強化していくとともに、家庭、地域との連携をさらに深めていくことが極めて重要である。

 特に、近年重大視されているネットトラブルの問題に対しては、保護者も巻き込んで、情報機器の正しい利用を啓蒙する受動的学習・研修にとどまらず、ネットの有効活用を考えさせる能動的学習・研修に取り組むことが、情報モラルを育んでいく上で効果的であると考える。

不登校についても、スクールカウンセラーの活用、関係機関との連携を積極的に行い、個々の生徒に応じた組織的な取組を通して解消に努めていきたい。

命を大切にする指導では、いかなる理由があろうと児童生徒が自ら命を絶つという事故が起きることのないよう、教職員一人ひとりがゲートキーパーとしての自覚をもち、生徒を見守っていくことが重要である。

 三点目は、「本会の活動の在り方と経費縮減および組織運営の見直し」について。

会員数の減少に伴う会費収入の減少に対応する活動の在り方および二十九年度県費負担教職員の制度の見直しに伴う本会組織の在り方について検討することを目的とした「道中学校長会組織検討委員会」を二十六年度に立ち上げ、すでに、経費縮減を図るための事業の見直し、会則改正や道中事務局幹事の札幌市校長以外の比率を上げる等の答申をし、昨年度の総会で承認をいただき、施行した。

 その後も、さらなる経費縮減に向けた活動全般の見直しや、事務局役員・幹事の構成について検討を続け、二月に行われた第六回理事研修会でまとめの答申をし、承認していただいた。

なお、組織検討委員会は、本年度十一月に開催する第五回理事研修会で最終答申をすることになっているが、組織運営の在り方について見直されることが見込まれており、各地区の校長会および会員の皆さんに理解と支援をお願いすることになろうかと思う。理事研修会での報告のほかにも、地区教育経営研修会等の場で、直接、経緯の説明をするなど、情報を正しく伝えられるように努めていく。

今後も各地区校長会との一体化を図ることを大切にしながら、特に道小学校長会とは情報の共有化を図るとともに、双方の組織運営に支障をきたさないよう情報交流に努めるとともに、全日中・全連小、札幌市小学校長会・中学校長会等とも広く情報交流を行い、「スクラップ・アンド・ビルド」の精神で時代に合った組織改革を進めていく。

先般、熊本・大分地方を襲った大地震は三週間が経った今も余震が続き、復旧にはまだ時間がかかる状況である。被災された地域の皆さんには心よりお見舞い申し上げる。

 本会としても全日中より熊本県中学校長会へ見舞金を送るという決定の連絡を受けたあとに、会長名で熊本県中学校長会にお見舞いのメールをお送りしている。一日も早い平常な教育活動が再開されるよう、今後とも全日中と連携して支援に協力していきたいと考えている。

結びになるが、私たち校長は、学校教育が本道の今後の発展の基盤となるとの認識のもと、その充実、課題解決に向かい、その先頭に立って全力で取り組む決意である。

(関係団体 2016-05-11付)

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