体力向上・肥満予防が学力向上をサポート　道教育大「中学生の学業成績と体力・体格の相関関係研究結果」

（学校 2016-06-06付）

　道教育大学は、中学生における学業成績と体力・体格の相関関係に関する研究結果を発表した。研究結果をみると、男子においては「体力が低いと学業成績も低かった」、女子では「肥満傾向の生徒は、そうではない生徒よりも学業成績が低かった」と確認した。その上で、運動・スポーツを通した体力向上・肥満予防が、「学力向上をサポートする身体的要因である」との結論を示した。

　同大では、わが国において、学業成績と体力レベルおよび体格などととの関連性が未解明であることに着目。今回、日本の教育システムにおいて、家庭環境や塾の利用の有無などの影響を除いて分析することとした。

　研究対象は、道内の中学生三百十五人を抽出した。保健体育を除く八教科の五段階評定合計点を学業成績、新体力テスト八種目の各記録を十段階得点に換算した数値を体力レベルとし、その合計点を評価した。

　また、体格は、ＢＭＩを算出し、男女別に上位一五％の範囲を肥満傾向と位置付けた。

　その結果、

▽男子

・体力が低いと学業成績も低い

・二時間以上ゲーム等をしている生徒は、体力レベルに関係なく学業成績が低い

▽女子

・体力と学業成績の関連性はなかった

・肥満傾向の生徒は、そうではない生徒よりも学業成績が低かった

　―との結果を示した。

　その上で、「運動やスポーツを通じた体力向上・肥満予防が、学力向上をサポートする身体的要因である」と結論付けた。

　同大の研究概要はつぎのとおり。

▼背景

　運動や体力向上によって認知機能（脳機能）が高まることが、高齢者だけではなく子どもにおいても報告されている。

　塾利用や長時間のゲーム利用（スクリーンタイム）は認知機能を使用する活動であるが、座って行う活動（座位活動）のため身体活動度は低くなり、体力向上につながらない活動になる。

　日本においては、学業成績と体力レベルや体格（肥満傾向：肥満者は体力が高くない）などとの関連性については未解明で、日本の教育システムにおいて学業成績と体力や体格に関連性がみられるかどうかを、学業成績に関連する諸要因の影響を除いて検討した研究がない。

▼研究手法

▽道内の中学生三百十五人のデータを分析

▽学業成績

　保健体育を除く八教科（国語、社会、数学、理科、英語、美術、音楽、技術家庭）の五段階評定の合計点（八～四〇点）を使用した。

▽体力レベル

　新体力テスト八種目の各記録を十段階得点に換算し、その合計点（八～八〇点）を用いた。

▽体格

　身長と体重から体格指数（ＢＭＩ）を算出し、男女別にＢＭＩの上位一五％の範囲の生徒を肥満傾向と分類した。

▼成果

▽男子生徒

　体力レベルが高くなると学業成績も向上するという関係性が認められた。

　ただ、それらの背景には、肥満傾向や家庭環境、塾の利用の有無、二時間以上のスクリーンタイム（ゲーム等の使用）の有無などの影響があるかもしれないので、それらの影響を除いた分析を再度行った。

　その分析でも、男子生徒では体力レベルと学業成績には、「一方が高くなると一方も高くなる」という関係性が認められた。

▽女子生徒

　肥満傾向生徒では体力が低く、学業成績も低い傾向があった。家庭環境や塾利用、二時間以上のゲーム等使用が学業成績に影響するのでそれらの影響を除く分析を行った結果、男子生徒とは異なり、体力レベルの高低ではなく、肥満傾向があると学業成績が低くなっていた。

▼今後への期待

　今回の分析結果は、横断分析という研究デザインのため因果関係、つまり体力向上や肥満改善が学力向上につながるということを示すものではない。

　ただ、体力を高めることや肥満とならないようにすることは学力向上を支える身体的要因、つまり中学生時期には適切な運動やスポーツが脳機能の発達もサポートすることを示す。

(学校 2016-06-06付)