道議会文教委の質問・答弁概要(28年3月23日)(道議会 2016-06-30付)
道議会文教委員会(三月二十三日開催)における佐々木恵美子委員(民主党・道民連合)の質問、および道教委の山本広海教育部長、桜井康仁教育政策課長、赤間幸人高校教育課長、竹林亨学校教育局参事(生徒指導・学校安全)、道総務部の佐藤則子学事課長の答弁の概要はつぎのとおり(役職等はいずれも当時)。
◆北星学園余市高校について
佐々木委員 北星学園余市高校は、様々な悩み、課題を抱えている生徒を多く受け入れている。全国から子どもたちが入学し、校長先生をはじめ教職員が一丸となって、また、地域の方が一緒になって、生徒と正面から向き合って人間関係の構築に欠けている子どもの教育を行っている。
こういう学校は、四ヵ所ほど全国にあるが、その中でも、下宿の方々も一体となって地域が連携し生徒を支えるという、全国的にも例のない、特色のある学校である。
そういう状況の中で、現在、設置者である北星学園は、来年度の入学者が九十人に達しない場合は、三十年度からの入学生の募集を停止する方向性を決定したと伺っている。
学校法人としては、この四月の入学者数によって、募集停止するとの方針であるが、これまでの北星余市高の生徒数の推移について伺う。
佐藤学事課長 北星余市高の生徒数について。各年度の五月一日現在の在籍数をみると、昭和六十三年度以降、全国から中退者や不登校者を受け入れ、平成十年度には六百八十八人の生徒が在籍していたが、その後、十五年度には三百八十四人、二十年度には二百七十七人、二十五年度には百八十七人と減少し、本年度は定員四百二十人に対し百六十八人、充足率四〇%となっている。
佐々木委員 受け入れする生徒が減少してきている状況だと思う。学事課としては、どのような要因によるものと考えているのか。
佐藤学事課長 生徒数減少の要因について。北星余市高の設置者である北星学園では、急激な少子化に加え、通信制高校をはじめ全国的に不登校や中退となった生徒を受け入れる学校が増えてきたことなどが生徒数減少の要因と考えており、学事課としても、これらの要因が影響したものと考えている。
佐々木委員 学校法人が今回の方針を決定したあと、学事課にも訪問して、いろいろと相談しているようであるが、どのようにこれまで対応してきたのか。
佐藤学事課長 学事課の対応について。学校法人理事から、北星余市高を存続させることが学校法人にとって財政的負担が大きいことや、一学年九十人の生徒が確保されないと北星余市高が目指すシステム的な教育ができないことなど、今回の方針決定に至った理由を確認するとともに、生徒、保護者、教職員等の理解を得るよう努めることや、在校生や今後入学する生徒への教育内容に影響が出ないよう助言した。
また、地元へ与える影響を考慮し、余市町をはじめ、寮や下宿などの関係者にも、学校法人の考え方などを丁寧に説明するよう助言した。
佐々木委員 基本的にこれしかしていないということ。
学事課のはじめの考え方は、「北星余市高がなくなっても、通信制があるから、受け皿があるから大丈夫」という感じだった。
道が所管する通信制高校は何校あるか。どの程度、生徒が在籍しているのか。
佐藤学事課長 道が所管する通信制高校の生徒数について。学事課が所管する私立の通信制高校は六校あり、このうち、三以上の都道府県で教育活動を行う広域の通信制四校には一万七千八百二十人が、その他の通信制二校には八百十一人が、六校合計では一万八千六百三十一人が在籍している。
六校合計一万八千六百三十一人のうち、道内に居住する生徒は二千三百六十六人となっている。
また、道立の有朋高校には、実施校である有朋高、および全道三十二校の協力校を合わせ、三千五百七人が在籍している。
佐々木委員 通信制に対して、学事課は、どういう思いをもっているか。本当に北星余市高がなくなったあと、全日制高校がなくなったあと、通信制の受け皿として大丈夫なのか。そもそも、通信制高校と全日制高校とは、基本的に違う。
通信制高校では、道内の高校からどのくらい受け入れているか、併せて、私立の通信制高校の中退者の受入と、転入・編入の人数はどのくらいいるのか、状況を伺う。
佐藤学事課長 中退者等の受入について。学事課が所管する私立の通信制高校六校に確認したところ、直近の二十六年度一年間で、三千二百八十三人の転入と編入の生徒を受け入れており、このうち、道内の公立高校からは四百二人を、道内の私立高校からは百六十四人を受け入れているとのことである。
また、有朋高では、二十六年度一年間で二百十人の転入の生徒を受け入れており、このうち、道立高校からは百六十六人を受け入れている。
―再質問―
佐々木委員 転入と編入は違う。分けて調べているのか。
佐藤学事課長 私立の通信制高校への転入者と編入者について。この人数については、各通信制高校における年度途中の転入・編入の状況を把握するために、このたび初めて学事課が調査したものであり、転入・編入別の数値は調査していない。
なお、転編入者のうち、退学、帰国子女など、その理由から編入と考えられる人数は百三十三人となっている。
佐々木委員 通信制の高校は、どのような教育が行われているのか。
佐藤学事課長 通信制高校の教育内容について。文部省令である高校通信教育規程においては、「通信教育は、添削指導、面接指導および試験の方法により行うものとする」と規定され、添削指導や面接指導の回数等は高校学習指導要領に定められている。
添削や面接など、教育の方法は、全日制や定時制の課程と異なるものの、学習指導要領に基づく内容を学習することとなっており、必履修教科・科目や卒業に要する単位数などは何ら異なることはない。
なお、面接指導については、自宅学習を中心としながら、週末を活用し行う場合や夏季・冬季などに集中的に行う場合のほか、毎日通学するコースを設け、補習的授業や添削課題の補助指導などとともに、平日に行う場合などがあり、生徒が自分に合ったペースで学習することが可能なものとなっている。
佐々木委員 通信制高校は、高校の卒業の資格を取りたい子どもたちにとって、必要な単位を取得させ、高校卒業資格を与えるといった一定の役割を果たしていることは認める。しかし、現在、北星余市高に通っているような子どもたちの受け皿にはならない。
このような状況の中で、私立学校を所管する学事課として、北星余市高の果たしてきた役割をどのように認識しているのか。併せて、道として、存続に向けて支援はできないのか伺う。
佐藤学事課長 北星余市高に対する支援などについて。私立学校については、設置者である学校法人がそれぞれの建学の精神に基づき、管理・運営を行うこととされており、それぞれの学校が特色ある教育を行っているが、北星余市高においては、高校と下宿関係者等町民が一体となって、様々な問題を抱える子どもたちに寄り添い、人間関係を再構築するための、他に例をみない取組を行ってきたものと考えている。
今回の北星学園の方針について、学事課としては残念に思うが、当該法人が設置者として、学校経営の見通しや、教育理念などに基づき判断したものと考えている。
学事課としては、私立学校の自主性を重視しながら、各私立高校に対して、必要な支援を行ってきており、北星余市高に対しては、管理運営費補助金において、教職員人件費や物件費のほか、特色教育加算メニューとして、中退者、不登校生徒の受入など、特色ある教育活動に対しても助成するとともに、過疎区域対策費、小規模校経営改善促進費を別途助成してきており、さらなる支援を行うことは困難と考えている。
佐々木委員 北星余市高においては、道内からも多くの生徒を受け入れてきた経過・実績があるが、道教委として、このような高校の必要性をどのように認識しているのか伺う。
桜井教育政策課長 北星余市高について。同校は、全国各地から多数の不登校経験者や高校中退者を積極的に受け入れる全日制普通科の学校として、教師が可能な限りきめ細かに生徒に接しながら、多くの生徒が地域の寮・下宿で共同生活をすることで、集団生活の中での人間形成を主眼とした教育を行っていると伺っている。
同校は、昭和四十年の開校以来、これまで七千人を超える卒業生を社会に送り出してきており、不登校経験をはじめとして、様々な理由によって、他の高校等で学業を続けることが難しい生徒の教育において、全国的にも有数の学校として、大きな役割を果たしていると認識している。
佐々木委員 道立高校において、ここ五ヵ年の中途退学者数の推移がどうなっているか伺う。中途退学後、他の道立高校へ転入している生徒数、有朋を含めてである。そのうち、道立の通信制高校に転入している生徒数やその他、私学に転入している状況について伺う。
竹林学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 中途退学者数等の推移について。国の「児童生徒の問題行動等調査」における本道の公立高校のこの五年間の中途退学者数と、そのうち、私立学校を含む別の高校への入学や就職などの進路変更を希望していた者の割合は、二十二年度において、中途退学者数は一千八百八十人で、進路変更を希望していた者の割合は、そのうちの三九・八%、同じく、二十三年度は一千七百三十五人で、そのうちの三八・六%、二十四年度は一千七百二十一人で、そのうちの三九・九%、二十五年度は一千七百六十四人で、そのうちの四七・六%、二十六年度は一千四百六十五人で、そのうちの五五・八%となっている。
この調査では、二十五年度から新たに、通信制課程の生徒も中途退学者数等の調査対象に追加されたため、単純な比較はできないが、全日制課程および定時制課程のみの中途退学者数でみると、この五年間は徐々に減少している傾向にある。
また、道立高校から道立高校の通信制課程に転入した生徒数は、二十三年度は百七十五人、二十四年度は百八十六人、二十五年度は百五十六人、二十六年度は百六十六人、二十七年度は百七十一人であり、公立高校から私立高校の通信制課程に転編入した生徒数は、学事課から答弁があったとおり、二十六年度、四百二人となっている。
― 再々質問 ―
佐々木委員 転入とは、今の学校に在籍をしながら転入試験を受けて合格すれば転入する、不合格の場合は今の学校のまま退学しないでそのまま移るというもの。編入は、在籍している学校を一度辞めてから編入先の学校に、今の学校の単位を捨てながら退学していく。
私学の答弁は、転入と編入という言い方をしている。道立高校は、転入という言い方しかしていない。要するに、道立高校での中途退学は、全部、転入なのか。
赤間高校教育課長 転入学と編入学について。道立高校の通信制課程へ転入した生徒について答弁申し上げたが、委員から指摘があった有朋高について、他の高校を中途退学したあと、有朋高通信制課程に入学した生徒の中で、前の在籍校で修得した単位を認められている生徒を有朋高では編入学として数えている。
先ほどの数字は、転入学の生徒であったが、中途退学したあと、有朋高通信制に入学している生徒の数があるので、こちらの方を答える。
ほかの高校を中途退学したあと、有朋高通信制課程に入学した生徒の中で、前の在籍校で修得した単位を認められている生徒数は、二十三年度は、全入学者数七百十六人のうち九十七人、二十四年度は、六百九十人のうち七十一人、二十五年度は、六百六十二人のうち九十八人、二十六年度は、六百二十人のうち八十三人、二十七年度は、五百六十五人のうち七十一人となっている。
佐々木委員 道立学校においても、入学後の学校生活等になじめなく、不本意入学などもあって、就学の継続に困難を抱える生徒が多数いると認識している。
不登校になった生徒に対して、もしかしたら、安易に道立もしくは私立の通信制の高校への転入を勧めている実態があるという話を伺っている。学校として、どのような指導や支援が行われているのか伺う。
赤間高校教育課長 中途退学者に対する指導について。中途退学の背景には、学業不振、学校生活や学業への不適応、進路変更など、様々な理由があるが、中途退学は、生徒の将来にかかわる重大な事柄であり、高校においては、生徒一人ひとりにしっかりと寄り添い、課題を一つずつ解決しながら、親身になって支援していくことが極めて大切であると考えている。
道内の各高校においては、これまでも、中途退学の未然防止のため、習熟度別指導や少人数指導などの個に応じた学習指導、卒業の意義や将来の進路などについて考えさせる教育相談などに取り組んできているが、様々な理由によって、退学を申し出てきた生徒には、保護者はもとより、関係機関等とも連携して、生徒一人ひとりの状況に応じた面談等を行っている。
道教委としては、引き続き、単位認定の弾力的な運用や、生徒の望ましい人間関係構築に向けた指導の充実など、生徒の中途退学の未然防止に向け、教員を対象とした生徒指導研究協議会や教育課程研究協議会などにおいて、しっかりと指導していく考えである。
佐々木委員 仮に、北星余市高が存続できない状況になると、これまで北星余市高に通っていたような子どもたちの受け皿はどうなるのか。また、道立学校において、北星余市高のような教育ができる状況があるのか。どのように考えているか。
現在、道立高校に在籍している生徒が、家庭の事情等によって、自立支援施設や児童養護施設に入所している場合もあると思う。どのように入所施設と連携しながら必要な支援や配慮をしているのか伺う。
赤間高校教育課長 福祉関係の機関との連携・協力について。自立支援施設や児童養護施設に入所している生徒は、複雑な事情を抱えていることが多くあり、学校は、こうした生徒の置かれている環境や心情を理解し、安心して学習できる良好な教育環境を整える必要があると考えている。
このため、現在、自立支援施設や児童養護施設に入所している生徒が在籍している学校においては、放課後学習会を実施するなどして、学習支援に取り組んでいるほか、教員が定期的に施設を訪問して生徒の生活の状況を把握したり、施設や地域の社会福祉協議会と情報交換を行ったりするなど、関係機関と密接に連携・協力して、生徒を支援している。
道教委としては、今後、あらためて、校長会議等において、児童養護施設等との連携の重要性とこうした生徒に対する理解や配慮について説明するとともに、これらのことについて、すべての教職員に周知するよう指導していく考えである。
佐々木委員 私はかねがね、福祉と教育とがしっかりと連携を取ってやってほしいと言ってきている。しかし、ポジションが学事課だとか、道教委だとか、道保健福祉部などとなかなか動いてくれない。それで、今、最悪の状況にまで来ている。
北星余市高においては、これまでの議論のとおり、様々な課題を抱える子どもたちに対し、地域と一体になって取り組む教育を実施している。道内の子どもの受け皿の中では貴重である。
道教委として、今後、北星余市高を支援するのか、しないのか伺う。
山本教育部長 北星余市高への支援について。今般、これまで顕著な実績のある北星余市高の運営について、学校法人・北星学園が今後の方向性を示したことについては、法人として、学校や地域の関係者と丁寧に意見交換を重ね、長年にわたって検討した結果としての判断があったものと受け止めている。
道教委としても、そうした中、今後の北星余市高の教育活動については、過日、法人や学校の関係者から話を伺ったが、不登校など様々な理由によって、ほかの学校で学業を続けることが難しい生徒の教育に、全国的にも有数な学校として大きな役割を果たしており、支援の必要性は認識している。こうしたことから、あらためて職員を北星余市高に派遣するほか、地元自治体の関係者や同校を支える地域の方々と意見交換を行い、どのような支援が可能か、話し合っていきたい。
― 指 摘 ―
佐々木委員 各分野で、縦割りになっているが、しっかりと連携をとっていただいて、受け皿も必要だし、ここで培った学校現場のノウハウ、同時に、地域の方々や下宿、里親、保護士、民生委員が長年の経験によって、いろいろな子どもを支えた、そういうノウハウの火を消さないでいただきたい。
北海道の貧困対策や子ども・子育て対策、子どもたちの教育政策を含めて、連携をとっていただいて、万が一の状況があったとしても、しっかりと連携をとっていただいて、受け皿的なものは絶対キープしていただきたい。
そのためにも、北星学園で、三間口が難しいのならば、間口減しながらも、道立や私学、通信が連携し、知恵を出しながら、そして、文部科学省とも膝を交えながら、貧困の子どもたちを支える対策を北海道からつくっていただくようにお願い申し上げる。
(道議会 2016-06-30付)
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