道議会文教委員会の質問・答弁概要(28年5月10日)
(道議会 2016-07-12付)

 道議会文教委員会(五月十日開催)における丸岩浩二委員(自民党・道民会議)、佐野弘美委員(日本共産党)、山崎泉委員(北海道結志会)、加藤貴弘委員(自民党・道民会議)の質問等、および杉本昭則教育部長、梶浦仁学校教育監、村上明寛総務政策局長、北村善春学校教育局長、加賀学施設課長、伊賀治康教職員課服務担当課長、河原範毅高校教育課長、川端雄一学校教育局参事(生徒指導・学校安全)の答弁の概要はつぎのとおり。

◆施設整備予算の緊急要望

丸岩委員 多くの学校は避難所として指定されており、四月十四日に発生した熊本地震では、今も多数の方が学校等の避難所で不自由な生活を余儀なくされている。

 熊本県の例によるまでもなく、災害発生の際には、地域の方々が学校に避難してくることが予想されることから、学校施設を整備・充実していくことは大変重要な施策であると考える。

 こうした中、二十八年度の学校施設整備にかかる百五十一の事業が、現在、未採択であることは、非常に問題であると考えるが、未採択事業のうち、老朽化した施設の改築、または、防災機能強化など、特に学校が安心安全な避難所としての役割を果たす上で必要不可欠な事業の未採択は、どのくらいの市町村で何校となっているのか伺う。

加賀施設課長 改築事業などの未採択状況について。建築後の経過年数等によって老朽化した、構造上危険な状態にあると判定された学校を改築する「危険改築事業」においては、八市町で小学校七校、中学校四校、耐震性能を評価する指標、いわゆるIs値が〇・三未満と診断された学校を改築する「不適格改築事業」においては、七市町で小学校六校、中学校三校が未採択となっている。

 また、経年による施設設備の劣化や機能低下を改修する「大規模改造事業」のうち、外壁や屋根、天井等の老朽化改修においては、十一市町で小学校九校、中学校三校、教室や屋内運動場の暖房設備を新設、または、更新する空調設備改修においては、八市町で小学校八校、中学校六校、さらに、体育館の吊り天井等の非構造部材の落下を防止する「防災機能強化事業」においては、七市町で小学校八校、中学校一校が未採択となっている。

丸岩委員 事業を計画しながら採択されなかった市町村は、今後、どのように対応していくことになるのか、昨年度の状況について伺う。

 また、その状況について、道教委としてどのような認識をもっているのかも、併せて伺う。

村上総務政策局長 未採択事業にかかる市町村の対応などについて。二十七年度は、未採択百九事業のうち八十四事業については、市町村の予算や地方債の増額によって事業を実施しているが、残る事業については、取り止めが二十事業、二十八年度への変更が五事業となっている。

 道教委としては、学校は、子どもたちが一日の大半を過ごし、災害発生時には避難所となることから、安全安心な施設の整備は、最優先で取り組まなければならない課題であると考えており、国の財政状況によって、市町村の負担増や事業の見直しなどが行われることは、当該年度のみならず、将来的な整備計画にも大きな影響を及ぼすものと認識している。

 このため、今般、国に対し、財源確保に向けた緊急要望を実施することとしたものであり、今後も、市町村が計画しているすべての事業が円滑に実施できるよう、道市長会や道町村会、全国公立学校施設整備期成会等とも一層連携を図りながら、様々な機会をとらえ、働きかけていきたいと考えている。

―指摘―

丸岩委員 答弁では、今回未採択となった事業は、国の補正予算によって対応するものを除けば、地方公共団体の負担増によって対応するか、事業規模の縮小、または、先送りによる対応をせざるを得ないとのことであったが、その場合、市町村の負担増や整備内容の後退が懸念される。大変憂慮すべき事態であると、あらためて認識せざるを得ないが、もう一つの重大な影響として、いわゆる受注機会の減少に伴う道内の建設業への悪影響について指摘をしたい。

 現在、道内の建設業は、東日本大震災の復興や東京で開催予定のオリンピック・パラリンピックなど、道外の建設需要の高まりから、人材が多く流出することに加え、若者の建設業離れによって担い手が不足するという大変深刻な状況に追いやられている。

 今回の事案が、これに追い打ちをかけるような事態となれば、各地域において、社会資本整備や冬期間の除雪、また、災害発生時における初動対応にも大きな力を発揮している地元の建設業の経営自体に大きな影響が及ぶと言わざるを得ない。

 そうした面からも、各自治体の整備計画を円滑に推進するために必要となる財源の確保に向け、市町村とも連携しながら、今回の要望だけではなく、あらゆる機会を通じて、国に強く働きかけをしていくことが重要であると考えるので、今後、しっかりとした対応をお願いする。

◆体罰の実態把握について

丸岩委員 対象者が約五十六万人に対して、約三十九万人の回答であったという報告があった。回答率は約七割程度にとどまっている。この内訳について伺う。

伊賀教職員課服務担当課長 回答率の内訳について。教職員、スクールカウンセラーは約四万人中、一〇〇%の回答となっており、保護者は約三十四万人中、約二十三万人で六八・六%、生徒は約十八万人中、約十二万人で六二・九%となっている。

丸岩委員 教職員やスクールカウンセラーの全員が回答している一方で、保護者は約七割、生徒は約六割と大変低いものになっている。

 保護者や児童生徒にとっては、学校や先生に遠慮するといった理由もあり、答えづらいということも考えられるが、保護者、児童生徒の回答率が低いことについて、道教委はどのような認識をしているのか伺う。

村上総務政策局長 回答率について。調査票については、封筒に入れたまま回収した上で、教育局や市町村教委が開封するとともに、無記名で提出しても差し支えないこととし、児童生徒が学校生活を送る上で不利益になることのないよう、プライバシー保護に十分配慮し、回答しやすく、工夫している。

 しかしながら、回収の方法によっては、生徒が調査票を提出する際に、他の生徒に提出したことを見られる場合が考えられることや、保護者の調査票とともに封筒に入れる際、保護者に記載内容を見られる場合もあることから、調査票の提出を敬遠することなどが考えられると認識している。

 同調査は、体罰事故の実態の把握と事故防止の周知徹底を図ることを目的としているが、未回答者については、体罰の有無が確認できないこととなることや、実態を把握した上で、体罰を防止するための指導や研修を行う必要があることから、道教委としては、引き続き、調査の実施方法の工夫改善に努め、さらに実態が把握できるよう取り組んでいきたい。

丸岩委員 体罰については、その発生の都度、事実関係を確認しながら、事故の報告書が道教委に提出されると承知しているが、今回、把握された体罰の三分の一に当たる十件は、この調査がなければ把握することができなかったものである。

 なぜ、その十件は事故報告がなかったのか。また、それは、学校現場の認識が低いというか、甘いと考えられるが、道教委としての考えを伺う。

村上総務政策局長 新たに把握された体罰について。今回の調査で新たに十件の体罰が把握されたが、調査を実施するまで体罰が把握されていなかった要因としては、体罰を行った教職員が、この程度の行為であれば体罰には該当しないと判断したものが七件、謝罪して児童生徒や保護者から理解が得られれば体罰に該当しないという誤った考えをもっていたものが二件、体罰として校長に報告されたものの、体罰の相手方である児童生徒の保護者の理解が得られたため、校長が市町村教委へ報告しなかったものが一件となっている。

 道教委としては、十件もの体罰が事故報告されていなかったことについては、教職員の体罰に対する認識がいまだに不十分であると言わざるを得ず、大変遺憾であると考えている。

 今後は、体罰防止に関する研修などによって、体罰に対する認識を深めさせる取組を一層徹底するよう、指導していきたい。

丸岩委員 打撲や鼓膜の損傷といったけがのあったものが合計八件あった。前回の調査と比較しても四件の増ということであるが、児童生徒にけがを負わせるまでの体罰を行う要因について、道教委の認識を伺う。

伊賀教職員課服務担当課長 けがを負わせた体罰について。指導に当たり感情的になったことが要因とされているものが、八件のうち七件あり、二十七年度において行われた体罰防止に関する校内研修等のうち、自分の中に生じた怒りの対処法を段階的に学ぶことができるアンガーマネジメントなど、感情をコントロールする方法の説明・指導を行った学校が六七・六%にとどまっていることから、そうした感情をコントロールする方法が教職員に十分に浸透していないものと考えている。

丸岩委員 体罰防止に関する校内研修が現在も行われているのにもかかわらず、けがをさせるという体罰が増加している。教職員に対する指導は、より丁寧に行うべきと考える。道教委は、今後、教職員に対して、どのような指導をしていくのか伺う。

伊賀教職員課服務担当課長 今後の指導について。道教委としては、今回、把握した学校における研修等の状況を踏まえ、各学校において、教職員に対し、道教委が二十五年六月に作成した学校教育指導資料を活用して、あらためて、体罰によらない指導や、アンガーマネジメントなど感情をコントロールする方法の説明・指導を行うなど、より効果の高い研修等の徹底に取り組んでいきたいと考えている。

丸岩委員 今回、報告のあった三十一件のうち、以前、体罰によって処分を受けたことのある教職員によるものは、どれくらいあったのか。こうした体罰を繰り返す教職員には、今後、どのように対応するのか伺う。

村上総務政策局長 懲戒処分を受けた者の体罰事故について。今回、報告のあった三十一件のうち、以前、体罰によって処分を受けたことのある教職員は中学校男性教諭の一人で、当時の処分内容は減給一ヵ月となっている。

 道教委では、これまでも、過去に体罰を行った教職員が、再び体罰を起こした場合は、処分歴に応じて、懲戒処分の量定を加重するなど、厳正に対処してきており、今回、体罰を繰り返したことが判明した教員の事故についても、こうした考え方に基づいて、被害生徒の状況など、詳細な事実確認を行い、厳正に対処していく。

丸岩委員 体罰は、一度行っただけでも重大な違法行為である。にもかかわらず、再度、体罰を行った教職員がいるという報告があった。道教委として、このことをどのように受け止めているのか。また、今後、体罰の再発防止に向け、処分を受けた教職員に対して、どのように取り組んでいくのか伺う。

杉本教育部長 体罰を行った教職員への対応について。体罰を行った教職員に対しては、厳正に対処することはもとより、再び体罰を行うことがないよう取り組む必要がある。

 こうしたことから、道教委では、これまで、体罰が発生した学校においては、再発防止に向けた具体的な方策を講じることはもとより、所属職員全員を対象とした校内研修と併せて、所属長が個々の教職員の法令順守に対する意識を高める個別研修を充実させるなど、体罰に対する認識を深めさせる取組の徹底について指導してきた。

 こうした中、過去に体罰を行った教職員が、再び体罰を行った事案が生じたことは、大変重く受け止めている。

 今後は、これまでの取組に加え、道教委として、市町村教委と連携し、体罰を行った教職員に対し、体罰発生の背景や傾向も踏まえた個別の研修を行うとともに、所属する学校の管理職に対しても、取組の徹底について個別に指導するなど、体罰の防止に向け、鋭意取り組んでいく考えである。

―指摘―

丸岩委員 ただいまの議論を通じて、やはり現場の状況をしっかりと把握することがいかに大事であるか、さらには、調査報告、アンケートの回答率がもっと上がるように、調査方法を検討していくべきではないかと思う。

 報道によると、大阪市内の中学校の教員が、ソフトボール部の女子部員九人に対し、指導として殴るなどの体罰を六十回以上も繰り返していたことが明るみになった。

 大阪市といえば、四年前には、高校生が部活動中に体罰を受け自殺したという問題が発生したのにもかかわらず、体罰が繰り返し行われている。

 一方、本道においては、以前、体罰によって処分を受けたことのある教職員が体罰事故を起こしており、体罰の再発防止のための取組を一層徹底する必要があると感じている。

 道教委は、体罰防止に関する研修を通じ、体罰に対する認識を深めさせる取組を一層徹底する、さらには、過去に体罰を行った教職員が、再び体罰を行うことがないように、体罰を行った教職員に対し個別の研修を行うとともに、所属する学校の管理職に対しても個別に指導するなど鋭意取り組むべきと考える。

 過去に体罰を行ったか否かにかかわらず、二度と体罰が発生しないよう、実効性の高い研修の在り方を検討すべきことを指摘する。

◆体罰の実態把握について

佐野委員 すでに報告されていた二十一件に対し、調査で初めて明らかになったものが十件。これは、年に一度の調査がされるまで発見されなかった、あるいは、報告されなかったものである。

 その理由としては、「この程度であれば体罰に該当しないと思った」とか、「当事者の理解が得られたので解決済みであり、報告の必要がないと思った」などといったことが以前から挙げられているが、こういった認識の誤りや認識不足が依然としてなくならない実態を踏まえると、この三十一件のほかにも発覚していない事例があるのではないかと心配である。

 実際、ある市町村において、子どもが体罰を受けていると、親が学校長や教育委員会に訴えたのにもかかわらず、状況がなかなか改善されず、その子の苦痛が続いたという例を承知している。

 そこで伺うが、事例のように、学校や市町村教委に訴えても解決しない場合、道が相談に応じる体制が必要ではないか。道教委の対応について伺う。

伊賀教職員課服務担当課長 体罰に関する相談への対応について。各学校では、児童生徒の悩みなどの把握に努め、体罰についても、管理職などが、児童生徒や保護者からの相談に応じており、市町村教委などとも連携を図りながら対応している。

 道教委における相談窓口としては、昨年十月に「北海道子ども相談支援センター」を開設して、いじめや不登校、体罰など、学校等で生じる問題について、児童生徒や保護者から、電話やメール、来所によって、直接相談を受けている。

 こうした相談窓口のほか、道教委の関係部署に、直接、寄せられた体罰の相談に対しては、市町村教委や学校と連携しながら詳細な事実確認を行い、問題の解決に当たるとともに、体罰を行った教職員に対しては、厳正に対処している。

―意見―

佐野委員 体罰に限らず幅広く相談に答えられる体制と周知が欠かせないと思う。困ったときに相談できるよう、さらに周知して取り組んでいただきたい。

佐野委員 体罰はあってはならない人権侵害であり、教育とは対極にあるもの。したがって、体罰に至った経緯を明らかにし、必要な研修や処分をすることはもちろん大切である。だが、個人の責任を追及するだけで、体罰をなくすことはできるのか。

 誰も最初から体罰で児童生徒を従わせようと思って、教員になるわけでは決してないはず。先生の指導力向上や、指導が難しい場合に一人で抱え込まないようなサポート体制、先生を追い込まないような、密室にならないような教育の体制が必要ではないか。

 そのためには、多忙すぎて疲弊する教育現場を改善し、一人ひとりの児童生徒とじっくり向き合うことのできるような教育現場にすることが、教育にかかわる人すべての願いではないか。

 このように課題は幅広くあると考えるが、体罰をなくすために、道教委としてどのように取り組んでいくのか、決意を伺う。

村上総務政策局長 今後の取組について。体罰は、児童生徒に対して、肉体的苦痛を与えるだけではなく、その心に消えることのない深い痛みや傷を残し、保護者、地域住民の学校に対する信頼を著しく損なうものである。

 道教委としては、教職員一人ひとりに、体罰に対する認識を深めさせるとともに、アンガーマネジメントなど感情をコントロールする方法の説明・指導を行うなど、より効果の高い研修等を徹底していく。

 また、児童生徒の問題行動に対しても、決して体罰によることなく、学校組織として毅然とした対応と粘り強い指導を行うことが大切であり、教職員同士が互いに話し合い、指導方法に悩んでいる教職員に協力できる職場づくりや教職員間の相互の連携などによる指導体制の充実について、市町村教委などに働きかけていきたい。

―意見―

佐野委員 一番心配しているのは、この三十一件が氷山の一角ではないかということ。児童生徒の声を真っ先に受け止めることができるのは学校である。教育現場が密室にならないよう、また、様々な課題にじっくり取り組むためにも、一見体罰とは離れてしまうようだが、行き届いた教育環境の整備が急務であると考える。

 児童生徒が安心して学ぶことのできる教育の充実を求める。

◆体罰の実態把握について

―意見―

山崎委員 未回答部分については、去年、私も質問させていただいた。空封筒でも提出する親がいれば未回答率は上がってくる。また、体罰を訴えたけれども改善しなかったということでは、非常に問題だと思っている。そんなことは、絶対あってはならないこと。

 感情をコントロールする研修を行うということだが、感情が高ぶったのはなぜかということが一番重要なことではないか。例えば、子どもが言うことを聞かないから、感情が高まっただとか、いろいろな要素がある。要は、指導力の問題がある。そこを改善をしなければ、また同じように、感情が高ぶることの繰り返しで体罰をする。

 そういった根本的な原因をきちんと解決していかなければ、「感情だけをコントロールしなさい」「体罰だけをしないようにしなさい」。これだけが強制的にやられるのであれば、余計なことはしないという、指導力のない、無気力先生が増えていくだけではないかと懸念する。

 そういった部分も含めて、ぜひ、検証していただきたい。

◆今春高卒者の就職決定状況

丸岩委員 公立高校卒業者就職決定状況について報告を受けた。未決定の生徒がどのくらいいるのか。そして、未決定の生徒のうち、一回も受験をしていない、いわゆる「ゼロ回受験者」はどのくらいいるのか伺う。

河原高校教育課長 就職の決定状況について。道内の公立高校において、就職を希望し就職が決まらないまま卒業した生徒は、二十六年度は三百八人、二十七年度は二百十九人となっている。そのうち、一回も就職試験を受験していない生徒は、二十六年度は九十七人、三一・五%、二十七年度は七十六人、三四・七%となっている。

丸岩委員 未決定者の中に、一度も受験をしていない生徒が、意外にも多いという感想をもった。受験しなかった理由としては、どのようなものがあるのか伺う。

河原高校教育課長 受験しなかった理由について。ことし三月末に、道教委で実施した就職決定状況の調査においては、「希望した職種がなかった」や「自分が何をしたいのかはっきりしなかった」などが主な理由であった。

丸岩委員 この「ゼロ回受験者」を減らすために、生徒や保護者に対し、道教委として、今後、どのように取り組んでいくのか伺う。

北村学校教育局長 生徒や保護者に対する取組であるが、道教委では、これまで、生徒が適切な指導や支援を受けて、職業理解を深め、意欲的に進路希望の実現に向けて努力することができるよう、企業や業種の理解促進などを図る「就職促進マッチング事業」「インターンシップ推進事業」をはじめ、進路指導の充実および雇用対策の円滑な推進を図る「高校進路指導対策会議」等の実施、各教育局の進路相談員による学校への求人情報の提供などに取り組んできたほか、道経済産業局等と合同で雇用要請を行うとともに、道労働局や知事部局が行う「就職面接会」等への生徒の積極的な参加について、学校に働きかけてきている。

 今後においても、就職試験を一回も受験しなかった理由を詳細に分析するなどして、就職指導の改善を図るとともに、引き続き、知事部局等と連携して、きめ細かな就職支援の一層の充実を図り、一人でも多くの生徒が就職できるよう努めていく。

◆学校事故対応に関する指針

加藤委員 全国の学校においては、学校管理下における様々な事故や不審者による事件、自然災害に起因する死亡事故などが依然として発生している。

 こうした中、文部科学省はことし三月三十一日付で「学校事故対応に関する指針」を公表したが、この指針では、主にどのような内容が示されているのか伺う。

川端学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 指針に示された主な内容について。同指針は、二十六年度に国が設置した「学校事故対応に関する調査研究」有識者会議において、学校の危機管理の在り方や、再発防止を含む事故を未然に防ぐ取組、調査組織の必要性など、学校事故対応の在り方について検討が行われ、ことし三月、取りまとめられたものである。

 具体的には、「事故発生の未然防止および事故発生に備えた事前の取組」「事故発生後の取組」、事実関係を整理するための基本調査など「調査の実施」「再発防止策の策定とその実施」「被害児童生徒等の保護者への支援」の五つの項目が示されている。

加藤委員 指針に示された内容の中には、「事故発生の未然防止および事故発生に備えた事前の取組」の必要性が示されているとのことであるが、道内においても、児童生徒への声かけやつきまといなどの事案が増加傾向を示しているように思われる。

 そこで、学校事故の未然防止について、これまで道教委および学校では、どのような取組が行われているのか伺う。

川端学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 学校事故の未然防止について。道教委としては、これまでも、学校が様々な危機に対して児童生徒が犯罪被害、自然災害等の危険から自ら身を守ることができるよう、地域の自然条件や学校の活動場面に応じ、警察や地域の防犯団体と連携した防犯教室の開催や、避難訓練、防災教室等を開催するよう市町村教委や学校に働きかけるとともに、二十五年三月には、『学校危機管理の手引』を作成・配布するなどして、学校安全教育の充実に取り組んできた。

 道内の二十六年度における学校の取組については、警察や地域の関係機関と連携した防災訓練等は、すべての学校で実施されているものの、防犯教室および防犯訓練は、小学校が六割程度、中学校や高校においては四割にとどまっており、防犯についての取組に課題があると認識している。

加藤委員 事故発生の未然防止および事故発生に備えた事前の取組が、様々な形で行われていることは分かったが、防犯教室や防犯訓練を実施している学校の割合が、全体的に低い状況だと思う。

 このことに対し、道教委として、これまでの取組と、実施率を高めていくために、今後、どのように取り組んでいくのか伺う。

川端学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 防犯教室等の実施にかかる取組について。二十六年度時点で、中学校および高校においては実施率が低いことから、道教委としては、効果的に実施している取組例をホームページに掲載するなどして、適切に実施するよう働きかけてきた。

 今後においては、実施に向けての課題をあらためて整理し、学校が取り組みやすい防犯教室等の実施方法や実施形態の参考例を周知するなどして、すべての学校において、防犯教室および防犯訓練が確実に実施されるよう指導していく。

加藤委員 指針では、被害生徒の保護者への支援についても示されている。実際に事故が発生した場合、学校は保護者等に対して十分な説明や支援をする責任があると考える。

 道教委においては、事故等が発生した場合の保護者への対応について、これまで、どのように学校等を指導してきたのか。また、本方針を踏まえ、今後、どのように対応していくのか伺う。

川端学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 保護者への支援について。各学校においては、被害児童生徒等の保護者に対し、学校が知り得た事実関係のすべてを知らせ、家庭と連携を図ったきめ細かな指導を行うことが重要であることから、学校管理下での事件・事故が発生した場合の保護者への対応方法を記載した『学校における危機管理の手引』を市町村教委や学校に配布し、その積極的な活用について指導してきている。

 道教委としては、同指針を踏まえ、今後、学校事故における被害状況に応じた保護者への対応方法のポイント等を整理した資料を作成し、各種会議や管理職を対象とした研修会等で配布するなどして、指導助言していく。

加藤委員 今回の指針で述べられている学校の危機管理の目的は、児童生徒の生命や心身等の安全を確保することであるが、神奈川県藤沢市での白血病の生徒に対する教師の暴言や、広島県府中町での誤った認識に基づく指導による生徒の自殺など、その目的を著しく損なってしまう事例の発生が後を絶たない。

 こうした問題を未然に防止する観点から、特に、学年進行や人事異動の時期において、校内での児童生徒に関する情報の共有や管理が非常に大切であると考えるが、このことに対する道教委としての認識と、今後、どのように取り組んでいくのか伺う。

川端学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 児童生徒の情報共有等について。学校における個人情報の取扱いについては、個人情報の管理責任者を明確にすることや、学校の情報運用方針を成文化することなどを行い、情報が漏洩することのないよう情報の管理・保管に関する整備に努めることが必要と考えている。

 道教委では、昨年十二月に広島県府中町において、中学三年生が自ら命を絶つという痛ましい事案などの発生を踏まえ、児童生徒の指導に必要な情報管理の徹底や情報の引継ぎのポイントなどについて、具体の対応方法を新たに記載した『学校における危機管理の手引』の追録版をことし四月に作成し、市町村教委や学校に配布するとともに、ホームページにも掲載した。

 今後は、指導主事等による教育委員会や学校への訪問、各種会議、研修会等において、配布した追録版を活用しながら、教職員の危機管理に関する対応能力の向上や組織的な対応と必要な情報の管理の徹底について、市町村教委や学校に対して指導助言を行っていく考えである。

加藤委員 学校管理下においては、様々な事故が発生しており、学校の危機管理においては、学校だけで対応するのではなく、教育委員会との密接な連携が大切になると考えるが、このことに対する道教委の見解を伺う。

梶浦学校教育監 事故対応における学校と教育委員会との連携について。学校における危機管理は、危機を予知・回避するとともに、危機発生時には、被害を最小限にとどめるなどの適切な対応をとることが必要であり、そのためには、平素から教育委員会と学校が緊密な連携体制を構築していることが重要であると考えている。

 道教委では、これまでも、市町村教委や学校に対し、学校において重大な事件・事故が発生した場合、教育委員会への迅速な報告や、その後の対応方針の検討など、学校と教育委員会が連携して対応するよう指導してきており、今後においても、同指針の内容などを踏まえ、学校と教育委員会との連携による、事件・事故災害の発生原因の究明や安全対策の検証はもとより、児童生徒に対する心のケアや保護者への十分な説明がなされるよう、指導主事等による教育委員会や学校への訪問を通じて、指導助言していく考えである。

(道議会 2016-07-12付)

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