文科省「SPH指定」目指す札幌工業高 先端技術への則応力育成 新たな指導体制構築の試金石に
(学校 2016-12-22付)

 文部科学省「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)」事業の二十九年度指定に向け、札幌工業高校(池田尚志校長)は、CIMを導入した人材育成プログラムの開発を検討している。研究のコンセプトは、国土交通省が提唱する生産性向上と魅力ある建設現場を目指す取組「i―Construction」(=i―Con)に対応できる人材の育成。研究期間は三年間。土木科の生徒を対象に、ICT導入が進む建設現場に即応できる、基礎的な技術を学ぶ授業の構築を目指す。

 文科省では、科学技術の進歩に伴い、専門高校などが産業間で必要な専門知識や技術の高度化に対応するため、二十六年度からSPH事業を展開している。

 指定を受けると、現行教育課程の基準によらないカリキュラムの編成・実施が可能となる。事業は原則三ヵ年。指定校は期間内に、大学や研究機関、企業等と連携しながら研究開発を進めることができる。

 全国から提出された企画提案書を審査し、省内の企画評価会議の選定結果を踏まえ、指定校を決定する流れ。文科省の二十九年度当初予算案をみると、新規採択枠は八校程度。

 全国の工業科設置校は約六百校あり、同校は二十八年度事業への申請に続いての挑戦となる。

 同校が目指す研究は、建設現場で導入が進む三次元データを用いたCIMや、ICTを活用して高効率・高精度な成果品を目指す情報化施工に対応できる人材の育成だ。長期インターンシップでの構造物設計・施工の実践、大学・研究機関・企業による出前授業・講演などを行うことで、先端技術の基礎・基本の定着を目指す。

 同校では、研究に取り組む意義を、「高校の工業教育における先導性・新規性は極めて高い。(今回の研究内容は)工業高校での指導体制構築に向けて重要な試金石となる」と説明する。

 団塊世代の大量離職と技術者の高齢化によって、建設業界の担い手確保は喫緊の課題。道内は、少子高齢化が全国よりも十年進行していると言われ、早急な対応が迫られている。

 i―Conはこうした担い手不足解消に向けて、生産性の向上を目指すツールとして、業界の注目を集める。ことし、石狩湾新港と新千歳空港の物流拠点を結ぶ、道央圏連絡道路改良工事が国交省初の指定を受けた。

 現場では、データがインプットされたICTブルドーザを経験の浅いオペレーターが操作。自動制御によって熟練者と変わらない出来形と効率の良い作業が行われていた。

 産官挙げての生産性向上に向けた取組はまだ始まったばかり。システムの普及には、ICT機械の高額な費用とともに、技術者の養成が大きな、かつ喫緊の課題として立ちはだかる。同校の試みは、建設生産の先端技術に携わる人材育成の新たな取組として、建設業のみならず、道内産業界の関心を集めている。

※キーワード

▽CIM=三次元データモデルの導入・活用によって、土木施工の効率化・高度化を図る取組。国交省は本年度、建設現場の生産性向上のため、工事が完成するまでの全プロセスでICTを活用する「i―Construction」に乗り出している。

(学校 2016-12-22付)

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