道議会決算特別委の質問・答弁概要(28年11月10日)(道議会 2017-02-09付)
決算特別委員会(二十八年十一月十日開催)における勝部賢志委員(民進党・道民連合)の質問、および柴田達夫教育長、梶浦仁学校教育監、磯貝隆之学校教育局特別支援教育担当局長、桜井康仁教育政策課長、原光宏教職員課長、鈴木淳義務教育課長、谷垣朗義務教育課教育環境支援担当課長、山本純史特別支援教育課長の答弁概要はつぎのとおり。
◆教職員の旅費について
勝部委員 学校には教職員が出張などでかかる経費について旅費が配分されている。その主なものは、「管理運営旅費」「修学旅行引率旅費」「校内教職員研修促進費」「生徒指導旅費」等と承知している。
もともと潤沢な予算ではなかったが、道財政の厳しさから年々、全体の予算は減ってきており、少ない予算の中で工夫してやりくりしているのが現状と認識している。
そのような中で、学校の統廃合などで校区が広がったことに伴い、家庭訪問の範囲が広がり、それを自腹で賄っているという現場の声を聞く。また、自主的な研修にも積極的に行きたいが、多忙でその時間的な余裕がないという声や、配分の予算が少なくて、行きたい場所に行けないという声なども聞こえてくる。
予算の増額は引き続き努力されるべきと考えるが、併せて、運用上の工夫改善も必要ではないかという考えから、以下、数点伺う。
それぞれの旅費の目的などの基本的な考え方について伺う。
谷垣義務教育課教育環境支援担当課長 それぞれの旅費の目的等について。教職員の旅費は、学校教育における教育活動を実施するために必要な経費であり、学校運営や教職員研修、教育課程の実施など、教育活動に支障が生じないよう必要な予算の確保に努めている。そのうち、「学校管理運営旅費」は、教育局や市町村教育委員会が主催する各種会議や事務打ち合わせなど、各学校の管理運営にかかる出張に要する経費について、「修学旅行引率旅費」は、見学旅行や宿泊研修の引率に要する経費について措置しているものである。
また、「校内教職員研修促進費」は、各学校が組織的・計画的に設定する研究課題や、地域の教育課題に基づく調査研究に要する経費について、「生徒指導旅費」は、児童生徒の指導に当たって、学校と家庭が連携を図るための家庭訪問や、校外指導等に要する経費について措置しているものである。
勝部委員 管理運営旅費は、立地条件などによって配分の額が変わってくるということだが、一校当たりの平均額でいうと、小学校で約五万円、中学校で約六万五千円と聞いている。
また、修学旅行の引率費は、小学校・中学校で泊数が違うが、一人当たりで例えば、小学校であれば二万九千五百円、中学校では三泊四日で教職員一人当たり六万七千九百円。これはほぼ修学旅行にかかる経費と同等ぐらいの額かと思う。生徒指導旅費は家庭訪問に要する旅費だということだが、小学校では一校当たり一千百円。中学校では三千円。
校内教職員研修費は教職員が自主的に研修するための旅費ということだが、一人当たり平均五千円から六千円ぐらいが配分されているということである。
わずかな予算を、それぞれ学校でやりくりしながら支出しているということだが、それぞれの運用上、留意していることや工夫していることがあれば、聞かせていただきたい。
谷垣義務教育課教育環境支援担当課長 旅費の運用について。旅費の執行に当たっては、各市町村教育委員会や学校に対して、予算の執行管理を適切に行い、計画的かつ効果的な執行に留意するよう指導している。
また、各種の旅費については、毎年、年度の途中で執行状況を調査しており、その結果、不用額が見込まれる市町村や学校がある場合は、配分額を減額し、不足が見込まれる市町村や学校に再配分するなど、効率的な執行に努めている。
―再質問―
勝部委員 先ほど配分される金額についてふれたが、例えば、家庭訪問の旅費は、小学校でいえば一校当たり一千百円。実際このような額で賄いきれるのかという素朴な疑問がわいてくる。
旅費の規程によれば、四㌔㍍以内は外勤として処理されるので、旅費は支給されないということだが、地域によっては学校の統廃合で校区が非常に広くなり、四㌔㍍以上家庭訪問にかかるという実態がある。そういった学校では、この一千百円では到底賄いきれないと思うが、このような場合はどのように対処しているのかを伺う。
谷垣義務教育課教育環境支援担当課長 旅費の運用について。当初想定していなかった理由などによって、配分された旅費を超えて対応しなければならない事案が生じた場合は、市町村や学校に配分された旅費全体の範囲内で、調整して執行するなどの弾力的な運用を可能としているほか、そうした調整が困難で、旅費の追加配分について要望があった場合には、道全体の執行状況なども勘案した上で追加配分を行うなど、教育活動の実施に支障が生じないよう努めている。
―意見―
勝部委員 弾力的な運用や追加配分を行って教育活動に支障が生じないよう、市町村教委や学校とも、さらに連携を密にしていただきたい。
勝部委員 教職員の旅費の執行状況を過去三年間について点検したところ、「管理運営旅費」と「校内研修促進費」に執行残がある。予算に対する道行政の執行残はあり得るが、二十七年度で、管理運営費は一億七千七百万円の予算に対して一千五百万円、約八・五%。校内研修費では二億三千八百万円に対して二千五百万円と一〇・八%の残額が出ている。
増額を求めてきた経過もあり、その考え方からすると、執行残が出ているというのは残念だと思う。うまく使えていないのか、あるいは、何か使い勝手の悪いことなどもあるのではないかと思うので、この執行残について、どのような見解をもっているのか伺う。
谷垣義務教育課教育環境支援担当課長 執行残について。学校においては、配分された旅費の残額が、一回の出張旅費に満たない額となり、結果として不用額となっている場合や、学校管理運営旅費については、年度末の急な事務打ち合わせなどに対応するため、一定額を留保し、最終的に不用額となっている場合などがあり、こうしたことが執行残の要因として考えられる。
厳しい財政状況が続く中、限られた予算を効果的に執行する観点からも、より計画的かつ効果的な旅費の執行に努めていきたいと考えている。
―意見―
勝部委員 もともと少ない予算なので、残額も道の全体の予算からみれば極めて少ない額である。しかしながら、少ない予算でも、効率よく執行するということはとても大事なことだと思う。
◇
勝部委員 校内の研修費は、教職員一人ひとりを対象とした自主的な研修に措置された予算なので、このような予算こそ効率的、効果的に執行されるべきだと思う。教職員の指導技術を高めるという意味では、非常に大事なものだと思うし、子どもたちの学力の向上や、生きていく力を付けるということで言えば、教職員集団全体の力量が上がることが非常に大事なことだと思うので、いろいろな研修はあるが、教職員が受けたいという研修やこういうことを知りたいということに、適時適切に対応できるような研修体制が非常に大事だと思っている。そのため、この自主研修の旅費が措置されていることが大事なのだが、残額があるというのは、非常に残念な話である。
道教委の研修に対する基本的な考え方について、聞かせていただきたい。
鈴木義務教育課長 教職員の研修について。学校教育の直接の担い手である教職員は、その職責にかんがみ、法令において、絶えず研究と修養に努める必要があることが規定されており、自律的に学ぶ姿勢をもち、教育委員会が主催する計画研修や、校内研修、個人研修など、あらゆる機会をとらえて、不断に、その資質・能力の向上を図ることが必要であると考えている。
こうした考えのもと、道教委では、主催する計画研修などの改善・充実に努めるとともに、各学校における自主的な校内研修や個人研修が促進されるよう、各学校が、組織的・計画的に設定する研究課題や地域の教育課題に基づく調査研究、個々の教職員が、自主的な研修テーマに基づき参加する、各種教育研究団体等が実施する研修などに、校内教職員研修促進費を措置している。
勝部委員 教職員の研修はとても重要で、自主的な校内研修や個人研修が促進されるよう取り組んでいるという趣旨の答弁があった。
しかしながら、教職員の自主的な研修の実態はどのようになっているのか。多忙すぎて自主的な研修に行く時間、精神的な余裕がなかなかないという声がある。積極的に研修に参加したいという思いはあるが、実際には、その時間がなかなか取れていないというのが実態ではないか。
教職員の多忙化は、道教委にとっても解決しなければならない大変大きな課題として、強い問題意識をもっていると思うが、なかなか有効な手立てがないというのが現状である。そのような中にあっても、あらかじめ計画を立て、予算の裏付けがあれば、先進校の研究会や、専門的な知識や技術を身に付けるための研修に参加したいと思っている教職員は決して少なくないと思う。道教委として、教職員の自主的な研修の実態についてどのように把握しているのか伺う。
鈴木義務教育課長 教職員の自主的な研修の把握について。道教委では、教職員が自主的に参加できる校外で実施される研修については、各種教育研究団体等が主催する国語や算数・数学、道徳など、教科等に関する研究会、各管内の教育研修センター等が実施する教育課程や生徒指導に関する研修会などが開催されていることは把握しているが、参加人数も含め、教職員一人ひとりの自主的な研修の取組状況については、把握していない。
―指摘―
勝部委員 教職員の研修は大変重要であり、自主的な研修が促進されるよう研修促進費を措置しているが、その実態は全く把握されていないということ。その結果として、執行残も出てきているということである。予算を配分して執行している以上、地教委とも連携を密にとって、現場実態の把握に、ぜひ、努めていただきたいと思う。
教職員の自主的な研修なので、すべてを把握するということはなかなか難しいかもしれない。しかし、少なくとも、その研修に参加しづらい課題があるのであれば、しっかりと把握して、手立てを講じる必要があるのではないかと申し上げておきたい。
勝部委員 教職員は多忙だが、もう一つネックになるのは旅費だと思う。先ほど五千円から六千円の旅費と申し上げた。各学校で、例えば、二十人の教職員がいれば、全体でその二十倍の額になるが、それとて大きな額ではない。全員が、思い思いの研修を自主的に、どこかに行ってやるというだけの予算にはなっていないということだと思う。途中で執行状況を点検して、再配分したり、追加配分したりすれば、全体での残額を少なくし、やりたい研修に充てることができるのではないか。連携して工夫すれば、運用上できることではないかと思うが、そのことについての見解を伺う。
梶浦学校教育監 校内で行われる研修にかかわる旅費、いわゆる校内教職員研修促進費について。各学校が、組織的・計画的に設定する研究課題や地域の教育課題に基づく調査研究、加えて個々の教職員の自主的な研修活動を奨励・支援することなどを目的としており、毎年一割程度の執行残がある。
これまでも、予算が効率的に執行されるよう、各市町村教委や各学校に対して、通知などによって働きかけをしてきた。
道教委としては、本道の未来を担う子どもたちの教育に直接携わる教職員が、高い志で自らを研鑚し、実践的な指導力などを高めることは重要なことと考えており、厳しい財政状況の中ではあるが、引き続き、教職員の研修に資する経費の確保に努めるとともに、市町村教委と連携を図りながら、校内教職員研修促進費の効果的な活用事例などについて、情報提供するなどして、教職員の研修が一層充実するよう取り組んでいく。
◆特別支援教育支援員
勝部委員 特別な支援を必要とする児童生徒が年々増えている。それに伴い、国は特別支援教育支援員を各学校に配置し、教育環境の充実を図ろうとしている。制度が始まったのが十九年度なので、ことしでちょうど十年目を迎えることとなる。支援員の教育的効果や学校現場における活用状況などについて、特別支援教育が始まってから十年目の節目なので、十分検証する必要があると考える。
また、配置を望む学校に支援員を配置できないでいるという実態もあるので、どのように解消していくのかが今、大きな課題になっている。
そこで、特別支援教育支援員の配置の、国の基本的な考え方、教育的効果について、どのように道教委として受け止めているのか伺う。
山本特別支援教育課長 支援員の配置の考え方などについて。この制度は、小・中学校等に在籍する教育上特別の支援を必要とする児童生徒等に対し、障がいに応じた適切な教育を行うことを目的として、文部科学省が十九年度から地方財政措置を開始した制度であり、自治体において、小・中学校等に特別支援教育支援員を配置し、支援員が担任教諭や特別支援教育コーディネーター等と連携の上、「児童生徒等の食事や教室移動の補助」「発達障がい等のある児童生徒への学習支援」「周囲の児童生徒等への障がい理解の促進」など、学校教育活動上の日常生活の介助や学習活動上のサポートを行うものである。
また、配置による教育的効果としては、支援員が教諭等と連携しながら学校全体で取り組むことによって、児童生徒が、「授業において、分かることやできることが増え、意欲的に取り組むようになった」「学校行事等で、あきらめずに最後まで取り組むようになった」など、学習内容の理解が図られたり、意欲の向上がみられたりした。
勝部委員 支援員の役割としては、支援員が担任などと連携して学習活動の支援を行うものであり、教育的効果としても一定の成果があるとの認識が示さた。
そのようなことを反映してか、支援員の配置を希望する学校も増えてきており、十九年度は全道で三百九十七校五百六十五人だったものが、二十七年度には八百校を超える学校で、一千七百人以上の支援員が配置されているという状況である。
しかし、一方で、特別支援教育支援員の配置は、各市町村教委で行うものとなっており、実際に要望があっても配置できていないという実態もあると聞いている。また、一人の支援員が複数校を担当している実態もあって、十分に活用しきれていないという状況もあると聞いている。
道教委として、支援員の配置状況をどのようにとらえ、どのような課題があると認識しているのか伺う。
山本特別支援教育課長 支援員の配置状況等について。本年度、札幌市を除く道内の小・中学校のうち、教育上特別の支援を必要とする児童生徒等が在籍し、支援員を配置している学校数は、一人の支援員が複数の学校を担当している場合も含め、百六十三市町村、八百七十校、一千七百七十二人であり、一方、支援員の配置を希望しているものの未配置となっている学校は、配置している市町村と重複する十八の市と町で、六十七校という状況となっている。
配置上の課題としては、一部の市町村において必要とする学校に配置できていないケースがあり、その理由として、「支援員配置より優先的に予算措置しなければならない事業等がある」「支援員一人当たりの交付税措置が少ない」「適任な人材の確保が難しい」など、各市町村における財政事情や地域事情によるものと承知している。
―指摘―
勝部委員 六十七校で未設置ということで、この数は決して少ない数ではないと思う。
その主な理由としては、「支援員のなり手がいない」「国の基準どおりだと給料が安すぎてその地域の人材を確保することができない」、これは表裏一体の話かと思う。
市町村も各学校に配置したい、希望に応じたい、整備したいと思っても、財政的な負担がさらにかさむということもあって、これ以上配置できないというのが大きな理由になっているということである。
この制度による国の財政措置は、小学校で一校百九十八万六千円、中学校では一校百十五万七千円となっていて、市町村はこの額を基本に人材確保しようとするが、この金額では、アルバイト的にしか雇えず、人材を確保するのは非常に難しいということは頷ける。
子どもの教育に直接かかわる仕事なので、例えば、学習の支援、介助などのいろいろな生活の支援をする。中には、病弱な児童生徒がいたり、いろいろな障がいのある方がいるのだが、そうした方に日常的にかかわるということになると、相当な技術、知識、技能も必要になってくる。
そうした人材を確保するということになると、このような金額で本当に良いのかと思えてくる。本来、国の定数改善で対応していくべきだというのが私の考えだが、学校現場は支援員という今の形であっても活用していきたいというのが実は本音で、配置を望む学校が間違いなく増えている。本来的ではないと思うが、現状、この制度が動いているのだとすれば、道教委としても、責任をもった対応が必要になってくると思う。国に対して、引き続き、財政的な拡充を強く求めていかなければならないと思うし、支援員の確保に向けた情報提供など、道教委としても、市町村教委と連携しながら、積極的に取組を進めていくべきだということは指摘させていただく。
勝部委員 十年が経過して全道に一千八百人もの支援員がおり、学校における教育活動では、一定の役割を果たしている。しかしながら、一方では支援員の業務や役割がまだ明確ではなく、一般的な認知度が低いのも現状である。各学校現場からは、支援員とどのような役割分担をするのかなど、悩みの声が挙がっていることもあり、担任との十分な打ち合わせが本当は必要だが、なかなかもてないというような声も聞こえてきている。支援員の職をしっかりと確立していくことが必要だと思う。支援員の役割や業務を学校にしっかりと定着させ、学校全体として効果的な支援となるよう取り組んでいくべきと考えるが、道教委としては、どのように取り組んでいるのか伺う。
山本特別支援教育課長 支援員の業務や役割について。文科省が十九年度に発行した『特別支援教育支援員を活用するために』では、支援員の基本的な役割について、「学級担任等の補助をすること」と示されており、具体的には、特別な支援を必要とする児童生徒にかかわる「授業における教示や指示の補完・補充」「授業の準備や後片付けの援助」「学級環境の整備等の援助」などとされている。
また、支援員が、特定の児童生徒の単なる世話役としてではなく、学校全体の対応として、効果的な支援となるよう、学級担任等との連携した取組が重要であるとも示されている。
道教委では、こうした役割等を、二十一年度と二十六年度に発行した『特別支援教育支援員活用事例集』において、具体的な事例として示し、道内のすべての学校に周知した。
勝部委員 支援員の業務や役割を確立していくことと併せて、普段、子どもたちとふれあう仕事なので、子どもとのかかわり方、支援に役立つ技術や知識など、支援員としての力量を高める取組も、道教委として、しっかりと取り組む必要があると思うが、どのように取り組んでいるのか伺う。
磯貝学校教育局特別支援教育担当局長 支援員の専門性向上について。道教委ではこれまで、特別支援教育振興協議会と連携して、毎年度、支援員の資質向上を目的とした研修会を開催しており、その中で、「発達障がいの特性の理解と支援の実際」「学級担任と支援員の連携の在り方」「保護者との協力体制づくり」など、支援員の専門性の向上に資する演習や研究協議を行っている。
今後においても、この研修会を通じて、「学校という組織の仕組みや学級担任等との協働の在り方」「成就感や達成感をもたせる子どもへの対応の基本」「子どもの気になる行動への対応」などの演習等を実施し、一人ひとりの教育的ニーズを踏まえた適切な支援の在り方について、支援員の理解が深まり、資質の向上につながるような取組を進めていく。
勝部委員 本来的には、国の定数改善で対応されるべきと考えている。
特別支援教育の教育環境を整備していくことは、子どもたちの可能性を引き出し、子どもたちに確かな力を身に付けさせていく上で非常に大切なことと考えている。
各学校で、特別な教育的支援を必要とする子どもたちの現状を踏まえると、支援員の制度は重要ではあるが、何よりも子どもたちを直接指導する教職員の定数改善を図ることが本来であると考える。道教委として、教職員の定数改善と支援員の配置の充実との関連について、どのように認識しているのか。
折しも、国の予算編成の議論の中では、特別支援教育の拡充を求めるという考え方を文科省は示している。こうした国の動きも踏まえながら、道教委として、国への要望を重点的に行うとともに、道単独の定数措置や支援員の配置を検討するなど、より積極的に取り組むべきと考えるが、特別支援教育の今後の在り方を含め、教育長の見解を伺う。
柴田教育長 特別支援教育の充実に向けた取組について。道教委では、学校において、教員が子ども一人ひとりにしっかりと向き合い、きめ細かで質の高い教育を実現するためには、教職員定数の改善充実が重要であると認識している。
今後さらに、支援を必要とする児童生徒への教育の充実を図るためには、委員から指摘のあった教職員定数のさらなる改善・充実に加えて、学級担任等を補助する支援員の配置が必要であると考えている。
道教委では、これまでも、教職員定数の改善・充実とともに、支援員の配置の拡充について、全国都道府県教育委員会連合会と連携して、国に要望してきた。こうした中、支援員の配置にかかる地方財政措置については、一定程度、増額が図られてきているが、市町村によっては、希望する学校に配置がなされていない状況もみられる。
このため、道教委としては、教職員定数の改善・充実はもとより、支援員配置にかかる財政措置のさらなる拡充に向けて、引き続き、国にしっかりと要望するとともに、市町村において、支援員の任用や配置、効果的な活用が図られるよう指導助言を行うなどして、教育上特別な支援を必要とするすべての児童生徒に対し、障がいに応じた適切な教育を行うことができるよう、特別支援教育の充実に努めていきたいと考えている。
◆教職員の配置について
勝部委員 教職員の配置にかかわり、臨時的任用の教職員がずいぶん多くなっていることに対して、本来は正式に採用された教職員が、安定した身分の中で教育活動に専念できることが望ましいと指摘し、その改善を求めてきた経過がある。
その後は、少しずつ改善されてきたと承知しているが、最近また、その臨時的任用教職員が増えてきている実態が見受けられる。
一方で、病気休職や産休・育休代替のための期限付きの配置も十分にされず、欠員が生じているとも聞いている。
必要な職員がいなければ、当然、その負担はほかの教職員にのしかかり、子どもたちに直接かかわる先生方の配置が不十分だとすれば、結果的に子どもたちにも影響を及ぼす。
このことには早急な手立てが必要と考える。
そのような意味から、年度当初の人事、教職員の新規採用の在り方、期限付き教職員の適切な配置などについて、以下、伺っていく。
まず、国の定数改善の方向性を、道教委として、どのようにとらえているのか、定数に対する基本的な考え方と併せて伺う。
桜井教育政策課長 教職員の定数改善について。学校において、教員が子どもたち一人ひとりにしっかりと向き合い、きめ細かで質の高い教育を実現するためには、教職員定数の一層の改善・充実が重要であると考えており、これまでも国に対して強く要望してきた。
こうした中、文科省が、二十九年度から三十八年度までの十ヵ年計画として示した「次世代の学校」指導体制実現構想においては、小学校における外国語や理科などの専科指導の充実や、発達障がい等の児童生徒への指導の充実のための定数改善などが盛り込まれた。
道教委としては、この計画が着実に実施されるとともに、様々な教育課題の解決に向けた教職員定数の改善・充実について、全国都道府県教育委員会連合会とも連携しながら、引き続き、国に対して強く要望していく考えである。
勝部委員 国が定数改善の一環として行っている加配の状況については、どのようになっているのか伺う。
桜井教育政策課長 教職員の加配について。教職員の配置については、いわゆる標準法に準拠するとともに、国の加配定数を活用して学校における様々な課題解決のための支援に努めている。
二十八年度の加配については、小・中学校では、少人数指導やチームティーチングなどの指導方法の工夫改善や、いじめ、不登校など特別な配慮が必要な児童生徒への対応、発達障がい等の児童生徒への特別な指導のための加配などがあり、約二千七百人の加配を行っている。
また、高校では、普通科における英語・数学等の少人数指導への対応や、職業系の類型・コースの開設によって、多様な教育を展開するための加配などがあり、約百九十人の加配を行っている。
勝部委員 年度初めに、臨時的任用教職員がずいぶん多くいるのではないかということについて問題意識をもっているが、臨時的任用教職員の実態はどのようになっているのか伺う。
また、年度当初で臨時的任用教職員が配置できずに欠員が生じている実態があることも大変な問題だと思うが、その実態および原因について伺う。
原教職員課長 年度当初の臨時的任用教職員の状況について。二十八年四月一日現在、札幌市を除き、道内の公立の小・中学校、高校および特別支援学校に一千五百四十一人の臨時的任用教職員を配置している。なお、年度当初において、七十九人の欠員が生じており、その要因としては、保護者の転勤等による児童生徒数の増に伴い、見込んでいた学級数を上回った際などに、教職員の任用が間に合わず欠員が生じた。
―再質問―
勝部委員 年度当初で臨時的任用教職員が多いという実態について、一千五百四十一人という答弁があったが、この数は非常に多いと思う。産休、育休や病気休職の代わりの臨時的な対応はやむを得ないと思うし、学級減等に対応する調整弁として、この臨時的任用教職員が役割を果たしているというのも理解する。しかし、その調整弁としての役割がこれほど多く必要なのかというと、決してそのようなことはない、本来の姿ではないと思う。新採用を取り過ぎて登録残となることをおそれ、安易に臨時的任用教職員を配置している実態があるではないかと思えてならない。
また、年度当初に七十九人の欠員が生じるというのも異常である。年度当初というのは、新年度の学級数と退職者数を差し引いた教職員の数をもとに新採用者を含めて人事を行うので、そこで足りなくなるということ自体がおかしいと思う。確かに四月一日直前に転勤などがあって、児童生徒数の変動に伴い学級数が変わるというのは現実の問題としてあるので、そのようなことに対応しなければならないというのは起こり得ると思うが、七十九人が欠員のまま年度をスタートするというのは、やはり異常な事態だと思う。そこで、このような状況を解決するために、来年度、当初人事が行われるが、新採用者数の決定が今ごろだと思う。二十八年度は八百八十人採用したということだが、来年度はことしよりも多く採用して、臨時的任用教職員の数を減らす、あるいは欠員が出ないようにするということに、今から対処すべきであると思うが、採用について、どのように考えているのか伺う。
原教職員課長 来年度当初の教職員の採用について。道教委としては、本年度末退職者の状況などの的確な把握に努め、各教育局等と十分協議して、来年度の採用予定者数を厳密に積算した上で、本年度より多い一千三人の採用候補者の登録を行ったが、今後、来年度当初において、産休代替や育休代替のための教職員や、やむを得ず期限付教員を任用する場合に備え、関係機関と連携し人材の情報を把握するなどして、必要な人材確保に努めていきたいと考えている。
勝部委員 そういう対応をして、来年度当初、欠員で学校の運営に支障の生じることがないよう、ぜひ十分な対応をしていただきたいと思う。併せて、教員志望者の減少によって、志願者が減少しているとのことである。本年度の受検者は五千二百人くらいということで、多いときに比べると半減しているというのは事実だと思う。そのうち、本年度は九百人くらいが合格して、一千五百人くらいが臨時的に任用されているという。必ずしも受検者とイコールだとは思わないが、相当数不合格であった人が学校現場で働いているということになる。この臨時的任用教職員の置かれている状況にも目を向ける必要があるのではないかと思う。つまり、臨時採用で仕事をしていると、非常に多忙でなかなか受験勉強もできない。そのようなこともあって、臨時的任用教職員として応募しないという方も増えていると聞いているので、臨時的任用教職員として勤務することが、つぎの受検に生かされていくような優遇措置等も検討することによって、臨時的任用教職員の数を確保するということなども検討する必要があるのではないかと思うが、見解を伺う。
原教職員課長 教員採用選考検査への対応について。地方公務員法で、「臨時的任用は、正式採用に際して、いかなる優先権をも与えるものではない」と規定されていることから、臨時的任用者も新規大学卒業者も同様の選考検査を受検し、一般教養や専門的知識などの検査に加え、個別面接に模擬授業を取り入れるなど、教員としてふさわしい資質および能力を備えた人物かどうかを総合的に判断し、採用している。
また、二十年度実施の選考検査からは、登録にならなかった方で一定水準の成績を取得した方について、翌年度実施する選考検査の一次検査を免除することとし、受検者の負担軽減を図っているほか、意欲ある人材を確保する観点から、本年度実施した選考検査から、受検資格を緩和して年齢の上限を五十九歳に引き上げた。
道教委としては、今後とも、選考検査については大学や市町村教委、校長会などの代表者で構成された公立学校教員採用協議会の意見を伺うなど、不断に見直しを行い、選考検査の方法や内容の充実に努め、教員としてふさわしい資質や能力を備えた人材の確保に努めていきたいと考えている。
―再質問―
勝部委員 「臨時的任用は、正式採用に際して、いかなる優先権をも与えるものではない」と規定されているので、簡単にいうとできないという答弁だと受け止めたが、他府県では、いろいろ工夫して取り組んでいる事例があって、調べると相当数ある。新卒者を合格させることも大事だと思うが、例えば、経験者枠を設けて、臨時的任用者として頑張ってきた先生方の技術や経験を現場で生かすということも大事だと思うので、そうしたことを配慮していく工夫をぜひすべきだと思う。
他府県の事例をぜひ検討してほしいと思う。例えば、三年間勤務した人は第一次検査の免除、一般教養や専門検査などの筆記検査を免除する、あるいは小論文を免除するということで、面接だけ実施という県もあるようだ。いろいろなやり方を研究して、生かせるものは取り入れて、頑張っている臨時的任用者が地域にも出かけて経験を積もうというインセンティブを与えるということをぜひ検討していただきたいと思うが、再度、見解を伺う。
原教職員課長 教員採用選考検査について。教員採用に当たっては、公平公正で透明性の高い選考検査の実施が求められており、これまで、検査内容について不断に見直しを行ってきたが、道教委としては、教員としてふさわしい資質や能力を備えた人材を確保するため、他都府県における内容や方法を把握するなどして、選考検査の充実に努めていきたいと考えている。
勝部委員 ぜひ検討して、現実的な対応していただきたいと思う。
教職員の配置にかかわっては、できる限り正規の教職員を配置することが望ましいという認識は、おそらく道教委と同じだと思う。そのためには、教職員の適切な配置に向けて、しっかりとした見通しをもつことが必要だと思う。教員志望者が減少している問題や臨時的任用に応募する数が減って、欠員が慢性的になっている現状にしっかりと対応するために、臨時的任用教職員の配置や新採用教職員の採用の在り方などを検討する必要があると考えるが、今後、どのように対応していこうと考えているのか、教育長の見解を伺う。
柴田教育長 教職員の配置について。道教委としては、安定的な学校運営を図る上で、できる限り正規の教職員を配置することが望ましいと考えており、退職者などの欠員の状況等を的確に把握するなどして、期限付教諭の配置を見直し、正規の教職員の配置などに努めている。
今後とも、市町村教委と十分連携し、退職者などの欠員の状況を的確に把握するほか、翌年度以降の学級編制や学校の統廃合の状況をより一層厳密に見極め、計画性をもって教職員の採用に努めることはもとより、教職員定数の改善・充実を国へ強く要望するなどして、学校における教育活動の一層の充実に向けて取り組んでいく考えである。
また、教員養成課程をもつ大学や市町村教委などの関係機関と連携して、教育の直接の担い手である教員としてふさわしい資質や能力を備えた人材の確保を図り、適切な教職員配置に今後とも努めていきたいと考えている。
―指摘―
勝部委員 質問の中で道単独の配置についてもふれたが、そのことについては具体的な答弁はいただけなかった。道財政が厳しい折、道が単独で加配するのがなかなか難しい状況にあることは理解している。しかし、今から三十年くらい前には、おそらく道単独で三百から四百くらいの加配定数をもっていた時代もあったというように思う。道教委としても、そのくらいの意気込みをもって教育条件整備に当たることができるようになればと願っており、いずれにしても、いくつか指摘をさせていただいた点については、しっかりと取り組んでいただきたい。
(道議会 2017-02-09付)
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道議会決算特別委員会(二十八年十一月十日開催)における佐々木恵美子委員(民進党・道民連合)、山崎泉委員(北海道結志会)の質問、および柴田達夫教育長、梶浦仁学校教育監、北村善春学校教育局長、...(2017-02-14) 全て読む
道議会文教委(29年2月7日) 就学援助制度で質疑 市町村等へ適切な対応など働きかけ
七日に開かれた道議会文教委員会では、就学援助制度について、質疑が行われた。 道教委の市町村への対応について、岸小夜子学校教育局指導担当局長は「児童生徒の就学に支障が生じないよう、市町村...(2017-02-09) 全て読む
道議会文教委(29年2月7日) 定時制高校生の求人確保への取組 梶浦学校教育監が答弁
梶浦仁学校教育監は、定時制高校生の就業先確保について、高校就職促進マッチング事業などの取組を継続するとともに、「本年度から道が全管内で実施している〝じもと×しごと発見フェア〟への生徒の参加...(2017-02-09) 全て読む
道議会文教委(29年2月7日) 自主夜間中学への支援 協力者拡充へ関係団体に情報提供
七日の道議会文教委員会では、自主夜間中学への支援について、質疑が行われた。 岸小夜子学校教育局指導担当局長は「学習を希望する方々の幅広いニーズへの対応など、自主夜間中学の教育活動の充実...(2017-02-09) 全て読む
道議会文教委(29年2月7日) ネイパルの利用拡大へ 自治体等と連携し、利用者層を開拓
道議会文教委員会が七日に開かれ、ネイパルの利用促進について質疑が行われた。梶浦仁学校教育監は、施設の利用拡大に向け、「各種施策への活用、地域活動等での利用など、新たな利用層の開拓について、...(2017-02-09) 全て読む
道議会決算特別委の質問・答弁概要(28年11月10日)
道議会決算特特別委員会(二十八年十一月十日開催)における久保秋雄太委員(自民党・道民会議)の質問、および柴田達夫教育長、杉本昭則教育部長、村上明寛総務政策局長、岸小夜子学校教育局指導担当局...(2017-02-08) 全て読む
道議会文教委の質問・答弁概要(28年11月1日)
道議会文教委員会(二十八年十一月一日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、川澄宗之介委員(民進党・道民連合)、佐野弘美委員(日本共産党)の質問、および杉本昭則教育部長、村上明寛総...(2017-02-02) 全て読む
道議会各会派が知事に対し要請 本道経済に資する人材を 29年度予算編成に向け
道議会各会派は二十七日、高橋はるみ知事に対し、二十九年度当初予算編成などに関する申し入れを行った。教育関係では、本道経済の発展に資する人材育成、学力・体力の向上、いじめ・不登校問題への対応...(2017-01-31) 全て読む
道議会文教委の質問・答弁概要(28年11月1日)
道議会文教委員会(二十八年十一月一日開催)における丸岩浩二委員(自民党・道民会議)、田中英樹委員(公明党)、佐野弘美委員(日本共産党)、川澄宗之介委員(民進党・道民連合)の質問等、および梶...(2017-01-27) 全て読む
道議会文教委の質問・答弁概要(28年11月1日)
道議会文教委員会(二十八年十一月一日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、佐々木恵美子委員(民進党・道民連合)の質問、および梶浦仁学校教育監、磯貝隆之学校教育局特別支援教育担当局...(2017-01-26) 全て読む