道議会決算特別委の質問・答弁概要(28年11月10日)
(道議会 2017-02-08付)

 道議会決算特特別委員会(二十八年十一月十日開催)における久保秋雄太委員(自民党・道民会議)の質問、および柴田達夫教育長、杉本昭則教育部長、村上明寛総務政策局長、岸小夜子学校教育局指導担当局長、加賀学施設課長(当時)、河野秀平教育政策課広報・情報担当課長、鈴木淳義務教育課長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆学校施設の維持管理

久保秋委員 学校は、子どもたちの学び舎であるとともに、地域コミュニティーの拠点ともなる。また、災害時には、地域住民の避難所として重要な役割を果たすことは、このたびの相次いだ台風災害であらためて認識させられ、学校施設の維持管理を適切に行うことは、極めて重要であると考える。

 そこで以下、学校施設の維持管理について伺う。

 会計検査院は、二十七年度に行った会計検査の結果に基づき、国庫補助事業で整備された公立学校施設の維持管理に課題があったことから、文部科学大臣に対し、改善の処置を要求した。

 会計検査院が実施した調査の概要について伺う。

加賀施設課長 会計検査院による調査の概要について。会計検査院では、効率性や有効性等の観点から、国庫補助事業によって整備された学校施設の維持管理が適切に行われ、児童生徒の安全確保等が図られているかなどに着目し、検査を実施したものと承知している。

 検査は、二十六年四月を基準として、二十府県の六百十六市町村から抽出した公立小・中学校八千四百八校を対象に、建築点検および消防点検の実施状況や改善が必要とされた施設の修繕等の状況などについて、点検実施にかかる調書を徴するとともに、現地の状況を確認するなどの方法によって実施された。

久保秋委員 「建築点検」および「消防点検」は、学校設置者である市町村のうち、一定の要件を満たす市町村に義務付けられているという。

 建築点検が義務付けられるのは、どのような市町村が該当するのか。また、義務付けられていない市町村の学校であっても、安全確保の観点から点検を行う必要があると考えるが、どのように行われるのか伺う。

加賀施設課長 建築点検等について。学校施設の管理者であるすべての市町村は、建築基準法において、学校施設の敷地、構造等を常時適法な状態に維持するよう努めなければならないと定められている。

 また、建築基準法では、建築主事を置く市町村においては百平方㍍以上、建築主事を置かない市町村では三階建てなど一定規模以上の学校について建築点検の義務があり、学校施設の損傷、腐食その他の劣化の状況など、国土交通省が定めた点検項目について、原則として三年以内ごとに、一級建築士等の有資格者による点検が義務付けられている。

 消防点検については、消防法に基づき、学校施設の管理者であるすべての市町村が、消火設備、避難設備等を政令に定める技術上の基準に従って設置・維持することとなっており、点検は、設備の種類等によって六ヵ月または一年ごとに実施することとなっている。

久保秋委員 会計検査院による検査の結果、学校の維持管理に課題があるとされた学校は、どのような状況だったのか伺う。

加賀施設課長 検査の結果について。検査は、二十一年度から二十四年度までを対象期間として実施され、建築点検については、建築基準法に定められている点検義務のある三百三十六市町村のうち、九市町では一部のみ実施、三十六市町村では実施されていなかった。

 また、点検を実施した三百市町村においては、天井の劣化などがあるのにもかかわらず、二十六年四月現在で修繕等が行われていないのは百九十二市町村二千五十二校で二万一千八百七十一ヵ所であり、その中で、三年以上の間、修繕等が行われていない個所は半数程度となっている。

 建築点検の義務がない二百八十市町村では、百八市町村で一部、または、すべての小・中学校で教育委員会が主体となって点検が実施されていたが、残りの百七十二市町村では点検が実施されていなかった。

 消防点検は、すべての小・中学校で実施されていたが、消火設備の劣化などがあるのにもかかわらず、二十六年四月現在で修繕等が行われていないのは三百五十三市町村三千三百九十二校で一万七千九百四ヵ所であり、その中で、三年以上の間、修繕等が行われていない個所は四割程度となっている。

久保秋委員 会計検査院が検査結果を踏まえ、文部科学省に求めた改善措置の内容は、どのようなものだったのか伺う。

加賀施設課長 会計検査院からの改善処置などについて。会計検査院では、検査結果を踏まえ、文部科学省として、建築点検の義務がある市町村に対し、建築点検を実施して維持管理を適切に行うことの必要性やその手法について手引きを作成するなど一層の周知を図ること、是正事項を早期に是正することの必要性や是正事項の情報を一元的に管理し、適切に優先順位を設けて計画的に進めていくことの重要性を周知するとともに、手法等について具体的事例を示した手引きを作成し提供することなどの改善を求めた。

 また、建築点検の義務がない市町村に対して、学校施設の維持管理の一環として、教育委員会が点検を適切に実施するための具体的な方策を示すとともに、教育委員会が点検を実施することによって修繕等の必要がある施設を把握することの重要性を周知することを意見として示した。

久保秋委員 会計検査院の改善措置要求に対する文部科学省の対応について伺う。

加賀施設課長 文部科学省の対応について。文部科学省では、これまでも、外壁タイルの落下など老朽化に起因する事故や不具合が相当数発生している現状を踏まえ、市町村等に対し、学校施設の維持管理を徹底するよう繰り返し要請してきた。

 昨年十月、会計検査院からの改善処置要求等を受け、文部科学省では、あらためて、児童生徒の安全確保等に向け、建築基準法および消防法の根拠規定を示すなどして法定点検の確実な実施や早期に修繕することの必要性などを通知するとともに、学校施設の維持管理の手法や事例等の手引きを作成し、二十八年六月、市町村に配布した。

 また、文部科学省では、二十八年十月を基準として、公立学校を対象に学校施設の維持管理が適切に行われているのかを確認するため、法定点検の実施状況などの悉皆調査を行っている。

久保秋委員 道立学校については、道教委が責任をもって維持管理を行わなければならないものだと思う。

 道立学校の点検状況および点検結果に対する修繕等の状況はどのようになっているのか伺う。

加賀施設課長 道立学校の点検状況などについて。道教委では、建築基準法等を踏まえ、十八年度に所管する建築物等の適切な保全や、長期にわたる機能維持を図ることを目的として、点検・保守・修繕などに関する必要な事項を規定した「道教委建築物等保全規程」を定めた。

 この保全規程では、定期点検を実施するため、建築基準法に基づく調査項目や方法などを示した「点検シート」を作成することとしており、道立学校においては、この規程によって施設管理者である学校長の管理のもと、施設設備の日常的な点検はもとより、法令に基づき、建築物の維持保全に関し二年以上の実務経験のある事務長などの職員が定期点検を実施している。

 なお、技術的な専門知識を要する場合など、必要に応じて道教委の技術職員による点検を行っている。

 また、消防法に基づく消防設備等の点検については、毎年度、専門業者に委託して実施しており、こうした建築点検や消防点検の結果、補修などが必要な個所について、昨年度は二百四十六校、一千二百十一件の補修等を行っている。

久保秋委員 小・中学校の点検については、設置者である市町村が行うこととなるが、道内の市町村の点検実施状況はどのようになっているのか伺う。

村上総務政策局長 市町村における点検の実施状況について。道教委では、昨年度の文部科学省からの通知に基づき、学校施設の維持管理の徹底について指導してきたが、建築基準法等に定める法定点検の実施や修繕等の状況などについては、先ほど申し上げたとおり、現在、文部科学省において、法定点検等の実施状況の悉皆調査を行っている。

 道教委としては、この調査を通じて、道内小・中学校の状況を把握するとともに、年度内には公表される予定となっている調査結果を踏まえながら、市町村に対し、適切に指導助言していきたいと考えている。

久保秋委員 熊本地震やこのたびの台風による被害の状況をみると、学校施設の安全確保は重要な問題であり、道教委としても市町村の状況を把握し適切な指導を行う必要があるのではないかと思う。

 特に、このたびのアスベスト問題については、市町村のずさんな対応に対し、道民の厳しい批判がある。

 そうした状況をみると、今回の「学校施設の維持管理」についても、道教委として強い指導力を発揮すべきと考えるが、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 学校施設の維持管理における今後の取組について。学校施設は、児童生徒等の学習や生活の場であるとともに、災害時には避難所としての役割も担うことから、日常はもとより災害時においても十分な安全性や機能性を有することが求められており、学校施設が常に健全な状態を維持できるよう、法令等に基づいて定期的に点検を行い、必要な修繕等を的確に実施することが重要であると考えている。

 道教委としては、本年度、全道五ブロックで市町村を対象に開催した施設整備実務研修会等において、安全安心な教育環境等の確保が図られるよう、アスベスト対策も含め、点検実施の重要性や早期修繕等の必要性を周知したが、このたび、アスベストを含有する煙突用断熱材等の使用状況調査において、適切に点検が行われていなかった事案が明らかになったことについては大変重く受け止めている。

 今後においては、学校施設の適切な維持管理について、様々な機会を通じて周知徹底を図っていく。

 特に、現在、文部科学省が実施している点検状況調査や委員指摘のアスベストに関する特定調査の結果を十分踏まえながら、学校施設の安全確保が図られるよう、市町村に対し点検の確実な実施や必要な措置などについて、積極的に指導を行っていく考えである。

◆学校における教育の情報化

久保秋委員 文部科学省が毎年実施している、「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」の結果が十月に公表された。道内におけるICTの活用環境については、より一層の改善を図る必要があるのではないかと考える。そこで以下、ICTを活用した教育について、本道の実態および今後の取組等について伺う。

 文部科学省は、毎年、全国の学校のICT環境の整備状況について調査を実施しており、最新の調査は、二十八年三月一日現在のものと承知している。

 その調査結果では、本道のICT教育の環境は全国との比較で、どのような状況にあるのか伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 本道のICT環境の整備状況について。二十八年三月一日現在の国の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」では、児童生徒が使用する教育用コンピューターや、教員が使用する校務用コンピューターの整備率については、全国平均より高い状況にあるが、普通教室の校内LAN整備率や、電子黒板を設置している学校などの割合が全国平均より低い状況にあるなど、十分に整備が進んでいない現状にあるものと考えている。

久保秋委員 各都道府県の状況が公表されている調査項目は八項目あるが、北海道は「教育用コンピューター一台当たりの児童生徒数」と「教員の校務用コンピューターの整備率」の二項目で、かろうじて全国平均を上回っているものの、ほかの六項目はすべて全国平均を下回っている。

 これらの八項目について、それぞれをほかの都府県と比較した場合、北海道はどうか。調査項目ごとにみた場合、それぞれの整備率と全国で何番目になるのか伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 本道の状況について。項目別にみると、教育用コンピューター一台当たりの児童生徒数は全国平均六・二人に対し本道は五・四人で十七番目。普通教室の校内LAN整備率は八七・七%に対し八一・九%で三十七番目。普通教室の無線LAN整備率は二六・一%に対し二二・四%で二十六番目。超高速インターネット接続率は八四・二%に対し八一・二%で二十八番目。電子黒板のある学校の割合は七八・八%に対し六八・九%で四十一番目。普通教室における電子黒板整備率は二一・九%に対し一六・一%で三十番目。教員の校務用コンピューター整備率は一一六・一%に対し一二二・〇%で十九番目。校務支援システムの整備状況は八三・四%に対し六二・二%で四十四番目となっている。

久保秋委員 昨年の調査では、学校CIOいわゆる統括責任者を置いている学校の状況が厳しい状況であったと記憶しているが、そもそも学校CIOとはどのような役割を担い、誰が受け持つのが適当であるのか伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 学校CIOの役割について。学校CIOは、Chief Information Officerの頭文字をとったもので教育の情報化を進める上で、実際に統括的な責任をもって学校のICT化を進める役割を担うものとして二十二年十月に文部科学省が発行した『教育の情報化に関する手引』に示されている。

 この中で、学校の管理職が学校CIOとしてリーダーシップを発揮するよう求められており、校長、副校長または教頭がその任に当たり、情報主任や情報担当教員が学校CIO補佐官として、その補佐に当たることが望ましいとされている。

久保秋委員 今回の調査で学校CIOの設置状況はどのようであったのか伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 学校CIOの設置状況について。二十七年度の調査では、本道において学校CIOを配置している学校の割合は一七・二%となっている。

 なお、二十六年度調査では、一八・〇%であったことから、学校CIOの配置が進んでいない状況にあると認識している。

久保秋委員 先ほどの答弁にもあったとおり、教育の情報化の責任者である学校CIOについては、校長、副校長または教頭がその任に当たり、情報主任や情報担当教員が学校CIO補佐官として、その補佐に当たるということであるが、一七・二%という数字でもあるように、これまでの市町村や学校の認識が十分でなかったのではないかと考える。あらためて、道教委が周知し、管理職が体制整備を行い、実効性のある取組となるよう努める必要があると考えるが、見解を伺う。

村上総務政策局長 情報化推進体制の整備について。学校において、教育の情報化を進めるに当たって重要な要素となる、教科における児童生徒のICT活用については、教科の学習を深めるとともに、情報活用能力の育成を図る目的があることから、両者をバランスよく計画し、指導することが必要とされている。

 そのため、管理職は学校CIOとして、指導力の高い教員がICTを活用することによって、さらに授業の質が高められることに気づかせることや、教員が困ったときに相談に乗ったり、安心して指導に当たったりできるような環境をつくるなど、校内のリーダーシップを発揮することが望ましいと考えている。

 道教委としては、こうした学校CIOの趣旨を市町村教育委員会および学校にあらためて分かりやすく周知するなどして、学校における教育の情報化が組織的に進められるよう体制の整備を働きかけていく。

久保秋委員 ICTの整備状況について伺ってきたが、校務支援システムについては、先ほどあったとおり、全国で四十四番目という状況であると承知する。

 この校務支援システムは、ICTを活用することによって、教員の事務的な仕事などを軽減するものであり、本道は全国に先駆けて市町村に呼びかけ、公立学校で一斉に取り組むこととしたと承知している。しかし、理解が十分に図られていないため、市町村の整備は進んでいないようである。そこで、今回の調査における導入状況について伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 校務支援システムの導入について。校務支援システムは、校務の効率化や事務負担の軽減によって、時間外勤務の縮減や子どもと向き合う時間の確保を目的として、各学校で導入しているもの。

 昨年度においては、成績処理や出欠管理、保健管理、学籍情報等の機能を統合している統合型校務支援システムから一部の機能のみを有するシステムまでを含めると、すべての道立学校で導入しており、また、小・中学校については百三十六市町村九百五十三校で導入されている。

―再質問―

久保秋委員 校務支援システムには、成績処理や出欠管理、学籍情報などの機能を統合している統合型と一部の機能のみを有するシステムがあるが、その導入校の内訳と未導入校の状況について伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 校務支援システムの導入校等の内訳について。校務支援システムを導入している百三十六市町村九百五十三校のうち、統合型校務支援システムを導入しているのは、七十六市町村五百五十六校、一部機能を有する校務支援システムを導入しているのは、六十市町村三百九十七校である。また、未導入については四十三市町村七百五十三校である。

久保秋委員 導入数がまだまだ少ないと考える。そもそも校務支援システムは、校務の効率化や事務負担の軽減によって、教職員の負担軽減に非常に寄与するものがあると聞いている。そこで、本システムを導入することで、どのくらい効果が出るのか伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 校務支援システム導入効果について。石狩管内のモデル実践校の教職員に行ったアンケートによると、本システムを活用することで、通知表や指導要録の作成にかかる時間の短縮、グループウェアによる打ち合わせや会議の簡略化などによって、学級担任一人当たり年間平均で百十六・九時間に相当する校務負担が軽減された。

久保秋委員 校務支援システムは教職員の負担軽減に非常に効果があり、アンケートの結果で学級担任一人当たり年間平均で百十六・九時間に相当する校務負担が軽減されたということを今伺った。

 このことからも、教員の負担軽減とさらなる教育の質の向上のために、道内すべての学校に普及すべきと考えるが、見解を伺う。

杉本教育部長 校務支援システムの今後の普及促進について。システムの導入には、校務用パソコンや校内LANの整備が必要であること、また、運用に当たっては、継続して一定の経費負担が生じることなどの理由から、各市町村において、厳しい財政状況の中、システム導入の検討に時間を要していると認識している。

 道教委としては、校務の効率化や事務負担の軽減はもとより、校務の情報化によって教育の質の向上を図るため、昨年度から開催している教育の情報化セミナーなどの機会を活用して、モデル実践校の有効な活用事例を発信するとともに、市町村教育委員会や学校に対する研修会などを開催しながら、丁寧に本システムの効果を説明し、すべての学校に校務支援システムが導入されるよう、積極的に取り組んでいく考えである。

久保秋委員 率直に言って、施設・設備面の整備状況は、厳しく評価しなければならないと考えている。そのような中にあって、教員のICT活用指導力についても調査が行われているが、その結果はどのようになっているのか伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 教員のICT活用指導力の調査結果について。本調査の項目には、「教材研究・指導の準備・評価などにICTを活用する能力」「授業中にICTを活用して指導する能力」「児童生徒のICT活用を指導する能力」「情報モラルなどを指導する能力」「校務にICTを活用する能力」の五つが設定されており、全国平均と比較すると、「教材研究・指導の準備・評価などにICTを活用する能力」の項目で全国平均を〇・一ポイント下回っているが、ほかの四項目は全国平均を上回っている状況となっている。

久保秋委員 ICT活用指導力の各項目に関する研修について。二十八年第一回定例会の予算特別委員会においても、わが会派はこの問題を取り上げ、二十六年度に研修を受講した教員の割合は全国平均を下回る一九%にすぎないことを指摘し、どのように取り組む考えかを伺ったが、研修については、どのような実施状況となっているのか伺う。

河野教育政策課広報・情報担当課長 ICTに関する研修の実施状況について。道教委では、道立教育研究所等において、すでに計画されていた各教科等の研修講座の中に、できる限りICT活用の内容を盛り込むよう努めるとともに、さらに、ICT活用の事例を掲載した校内研修プログラムの全校種への配布などを通し、校内研修を促進しており、二十七年度の研修の受講率は、二十六年度の一九%から約四九%に増加し、受講した教員数は五千百九人から一万八千八百七十人と三倍以上に増加した。今後とも、こうした取組の充実を図りながら、引き続きICT活用指導力の研修の促進に努めていく。

久保秋委員 ICTを活用した様々な取組について改善した項目があるものの、環境整備などは厳しい状況に置かれていると認識している。

 ICTを活用した取組を具体化するためには、学校における施設・設備面から、ICT環境の整備を図っていくべきと考える。

 今後、どのように取り組み、ICTを活用した教育の充実を図る考えなのか、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 ICTを活用した教育の充実について。ICTの活用は、子どもたちの興味や関心を高めるとともに、教育の質の向上を図る上で有効であることはもとより、広域分散型の本道においては、どこにおいても同じ質の授業を行うことができる遠隔授業や勤務地の異なる教員に対する一斉の遠隔研修において、より大きな効果が期待できるものと認識している。

 このため、道教委では、現在、本道における教育の情報化にかかる指針の作成に取り組んでおり、この中で、ICTの効果的な活用方策はもとより、校務支援システム活用による校務の効率化や事務負担の軽減、さらには、教育の情報化を推進することの意義や効能などについて、分かりやすく丁寧に示すことによって、市町村におけるICT環境の整備を促すなどして、ICTを活用した教育の一層の充実に努めていく考えである。

◆理科教育について

久保秋委員 近年、知識や情報、技術をめぐる変化の早さは激しく、働き方や生活にも様々な影響を与えている。本道の未来を担う子どもたちが、夢いっぱいに北海道の豊かな自然等を大切にしながら、技術革新など、新たな価値を創造する分野にも積極的に挑戦するような資質・能力を身に付け、北海道を発展させることに貢献できる大人に成長してほしいと期待している。

 また、本年十月に、ノーベル賞を受賞した東京工業大学の大隅教授は「チャレンジすることが科学の精神であり、子どもたちには気づきを大切にし、科学の研究にチャレンジしてほしい」と述べている。

 こうした気づきを大切にするためには、小学校段階から、子どもたちが、理科の面白さや実験の楽しさを実感できるような理科教育の充実を図ることが重要と考える。以下、何点か伺う。

理科教育の重要性について、道教委の認識を伺う。 

岸学校教育局指導担当局長 理科教育の重要性について。科学技術が急速に進展し、その成果が社会の隅々にまで活用される中、学校教育においては、子どもたち一人ひとりに、生活にかかわる自然現象について、観察および実験を通じて、科学的に理解し、探究するなどの基礎的な能力を養う必要があると認識している。

 とりわけ、理科を初めて学ぶ小学校段階においては、自然に親しみ、見通しをもって観察・実験などを行い、問題解決の能力と自然を愛する心情を育てるとともに、自然の事物・現象について実感を伴った理解を図り、科学的な見方や考え方を養うことが大切であると考えている。

久保秋委員 昨年度の全国学力・学習状況調査では、二十四年度から三年に一度のサイクルで国語、算数・数学のほかに理科の調査も行ったと承知しているが、あらためて小学校の理科の調査結果について伺う。

鈴木義務教育課長 全国学力・学習状況調査における小学校の理科の結果について。二十七年度の本道の理科の平均正答率は五九・三%で、全国と比べて一・五ポイント低いものの、二十四年度と比較すると、全国との差が〇・八ポイント縮まっている。

 特に、メスシリンダーや方位磁針等の実験器具の適切な扱い方など、観察・実験の「技能」に関する問題は、二十四年度は、全国と比べて一・三ポイント低かったのに対して、二十七年度は、全国を一ポイント上回るなど、改善の傾向がみられる。

久保秋委員 学力調査の結果は前回と比べて改善されてきているが、理科の学習についての理解を深めるためには、自然の不思議さや科学の面白さに気づくなど、理科の学習に対する興味・関心を高める必要があると考える。小学校の子どもたちの意識はどのようになっているのか伺う。

鈴木義務教育課長 小学校における理科の指導の状況について。全国学力・学習状況調査の児童質問紙調査における理科の学習に対する意識などに関する項目では、例えば、「理科の勉強が好き」と回答した児童の割合は、二十四年度は五三・六%で、全国と比べて二・一ポイント高く、二十七年度は五八・九%で、全国と比べて三・九ポイント高い状況である。

 また、「観察や実験を行うことが好き」と回答した児童の割合は、二十四年度は七〇・八%で、全国と比べて一・四ポイント高く、二十七年度は七一・七%で、全国と比べて〇・三ポイント高い状況である。

 こうした結果から、本道の小学生は、継続して理科に対する興味・関心などが高い傾向にあると考えている。

久保秋委員 自然や科学技術に対する興味・関心をさらに高め、実感を伴った理解を深めさせるためには、観察や実験などを一層充実させる必要があると考える。小学校の観察や実験などに関する指導の状況について伺う。

鈴木義務教育課長 全国学力・学習状況調査の学校質問紙調査の結果では、科学的な体験や自然体験をする授業をよく行った小学校の割合は、二十四年度は二二・三%で、全国と比べて四ポイント高く、二十七年度は二七・四%で、全国と比べて三・六ポイント高い状況である。

 一方、理科室で観察や実験をする授業を週に一回以上行った小学校の割合は、二十四年度は三一・六%で、全国と比べて二四・四ポイント低く、二十七年度は三七・五%で、全国と比べて二〇・七ポイント低い状況である。

―再質問―

久保秋委員 理科室で観察・実験をする授業の割合は全国と比べて極めて低い数字だと思う。このことをどのように受け止めているのか伺う。

鈴木義務教育課長 観察・実験を行う授業について。本道においては、理科室を活用して、観察や実験をする授業を行うことに課題がみられており、その要因としては、例えば、観察・実験の指導に苦手意識をもっている教員がいること、子どもが自ら観察・実験に取り組むことの重要性について、教員の理解が十分に図られていないことなどが考えられ、道教委では、理科室を活用して観察や実験をする授業の充実に向けて、教員の指導力の向上を図ることが大切であると考えている。

久保秋委員 本道の子どもたちは、理科の学習に対する興味・関心が高く、観察や実験を取り入れた授業を充実させることで、さらに子どもたちの科学に対する理解が深まるものと考える。

 道教委では、子どもたちの科学に対する興味・関心を高めることや、教師の観察や実験に対する指導方法の工夫改善を図ることをねらいとして、サイエンスカーを活用した「移動理科教室」を実施していると承知しているが、その取組の状況について伺う。

鈴木義務教育課長 「移動理科教室」について。サイエンスカーによる「移動理科教室」については、昭和四十六年から、へき地の小学校および中学校の児童生徒を対象に実施してきており、平成二十五年度から二十七年度の直近の三年間では、実施した市町村数は、札幌市を除く百七十八市町村のうち四十二市町村で、へき地の学校として指定されている小・中学校六百三十六校のうち六十校を対象として実施した。

 また、参加した児童生徒数は、一千四百三十四人となっている。

久保秋委員 サイエンスカーによる「移動理科教室」を体験した子どもたちの感想や、研修に参加した教員の感想はどのようなものがあったのか伺う。

鈴木義務教育課長 参加者の感想について。これまで、サイエンスカーによる「移動理科教室」に参加した子どもたちからは、これからも理科が生活に役立っていることをもっと知りたいと思った、実験がとても面白く、理科が前よりも好きになったなど、理科が役に立つことや、楽しいといった声が多く寄せられており、また、「移動理科教室」の前日に実施する研修に参加した教員からは、どのような視点で子どもたちに観察・実験をさせたらよいのかについて、理解することができた、すぐ使える実験の方法を学ぶことができたなど、具体的な観察・実験の方法が参考になったという声が多く寄せられている。

久保秋委員 私の地元であるオホーツク管内でも、サイエンスカーを活用した「移動理科教室」を過去三年間で、四校程度の小学校を巡回したと伺った。道内の札幌市を除く小学校約八百六十校という数を考えると、オホーツク管内の三年間で、四校程度の巡回というのは大変少ないものだと思う。

 オホーツク管内はもとより、他管内においても、より多くの学校を巡回するべきと考えるが、サイエンスカーの活用について伺う。

鈴木義務教育課長 サイエンスカーの活用について。「移動理科教室」については、実施要項において、原則、へき地の学校として指定され、児童生徒数が六十人以下の小・中学校を対象としており、また、実施期間については、児童生徒が屋外で実験や自然観察などの体験ができること、訪問対象校への移動に際し、計画的な運行が期待できることなどを考慮して、路面凍結や積雪がない時期に実施している。

 今後においては、指導に当たる職員の確保に努めながら、サイエンスカーのさらなる活用が図られるよう、工夫改善していく。

久保秋委員 もっと多くの学校を巡回するためには、学校の先生方にサイエンスカーについて知ってもらうことが大切であると考える。聞くところによると、二十八年度当初に、サイエンスカーが新しくなったとのことである。どのような部分が新しくなり、その新しくなったサイエンスカーについて、どのように学校側に周知してきたのか伺う。

鈴木義務教育課長 新しいサイエンスカーについて。二十八年度から使用しているサイエンスカーは、老朽化した車体本体を更新したほか、車体後部に実験装置の昇降機を整備して、搭載している実験装置についても車から下ろして、体育館などの広い場所で公開できるようユニット型にした。

 さらに、児童生徒が災害の発生を疑似的に体験学習できる「3D防災シアター」や、自然現象を体感できる「人工オーロラ発生装置」など、十二種類の新しい実験装置を搭載した。

 また、新しいサイエンスカーの学校等への周知については、二十八年四月に、各管内で実施している校長会議等で年間の教員研修計画と併せて紹介したほか、五月には、道立教育研究所において、サイエンスカーの公開式を行うとともに、道立教育研究所のWebページに掲載するなど、積極的な周知に努めている。

久保秋委員 3D防災シアター、人工オーロラ発生装置など十二種類の新しい装置が搭載された新しいサイエンスカーであるから、もっと多くの学校への巡回が必要だと思う。サイエンスカーの今後の活用の仕方や教員研修の充実など、本道の理科教育の一層の充実に向けて、どのように取り組んでいくのか、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 理科教育の充実に向けた取組について。子どもたちに科学に関する基礎的な資質・能力を養うためには、各学校の理科の授業において、観察・実験や科学的な体験などを充実させることが重要であり、そのためには、観察・実験などを行う教員の指導力の向上を図ることはもとより、子どもたちの科学への興味・関心を高めるためのサイエンスカーを活用した取組の工夫改善などを図る必要があると考えている。

 このため、道教委では、教員のニーズに応じた理科教育に関する研修の充実や高校の理科の教員を小学校に派遣し、教員に対し観察・実験等の実技指導などを行う「小学校理科校内研修支援事業」などに継続的に取り組むとともに、サイエンスカーの派遣期間を延長することなどによって、訪問する学校数の拡充を図るなどして、本道の理科教育が一層充実するよう努めていく。

―意見―

久保秋委員 本道の子どもたちは、理科の学習に対する興味・関心が高いわけであり、実験指導の苦手意識や、子どもたちが自ら取り組む重要性について、先生方があまり理解していないということであれば、子どもの科学の精神であるチャレンジ精神の芽を摘んでしまうことにもつながってしまう。

 今、答弁いただいたとおり、研修支援事業に引き続き取り組んでいただくとともに、教育長からサイエンスカーの積極的な活用についても答弁をいただいた。魅力のある実験装置を搭載した新しいサイエンスカーが、それぞれの管内の学校を訪れたときの子どもたちの喜ぶ様子が目に浮かぶようである。

 子どもたちの笑顔の輪が広がり、科学の研究にチャレンジする子どもたちの最初の一歩を踏み出す機会となることを大いに期待する。

(道議会 2017-02-08付)

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(2017-02-09)  全て読む

道議会文教委(29年2月7日) 定時制高校生の求人確保への取組 梶浦学校教育監が答弁

 梶浦仁学校教育監は、定時制高校生の就業先確保について、高校就職促進マッチング事業などの取組を継続するとともに、「本年度から道が全管内で実施している〝じもと×しごと発見フェア〟への生徒の参加...

(2017-02-09)  全て読む

道議会文教委(29年2月7日) 自主夜間中学への支援 協力者拡充へ関係団体に情報提供

 七日の道議会文教委員会では、自主夜間中学への支援について、質疑が行われた。  岸小夜子学校教育局指導担当局長は「学習を希望する方々の幅広いニーズへの対応など、自主夜間中学の教育活動の充実...

(2017-02-09)  全て読む

道議会文教委(29年2月7日) ネイパルの利用拡大へ 自治体等と連携し、利用者層を開拓

 道議会文教委員会が七日に開かれ、ネイパルの利用促進について質疑が行われた。梶浦仁学校教育監は、施設の利用拡大に向け、「各種施策への活用、地域活動等での利用など、新たな利用層の開拓について、...

(2017-02-09)  全て読む

道議会決算特別委の質問・答弁概要(28年11月10日)

 決算特別委員会(二十八年十一月十日開催)における勝部賢志委員(民進党・道民連合)の質問、および柴田達夫教育長、梶浦仁学校教育監、磯貝隆之学校教育局特別支援教育担当局長、桜井康仁教育政策課長...

(2017-02-09)  全て読む

道議会文教委の質問・答弁概要(28年11月1日)

 道議会文教委員会(二十八年十一月一日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、川澄宗之介委員(民進党・道民連合)、佐野弘美委員(日本共産党)の質問、および杉本昭則教育部長、村上明寛総...

(2017-02-02)  全て読む

道議会各会派が知事に対し要請 本道経済に資する人材を 29年度予算編成に向け

 道議会各会派は二十七日、高橋はるみ知事に対し、二十九年度当初予算編成などに関する申し入れを行った。教育関係では、本道経済の発展に資する人材育成、学力・体力の向上、いじめ・不登校問題への対応...

(2017-01-31)  全て読む

道議会文教委の質問・答弁概要(28年11月1日)

 道議会文教委員会(二十八年十一月一日開催)における丸岩浩二委員(自民党・道民会議)、田中英樹委員(公明党)、佐野弘美委員(日本共産党)、川澄宗之介委員(民進党・道民連合)の質問等、および梶...

(2017-01-27)  全て読む

道議会文教委の質問・答弁概要(28年11月1日)

 道議会文教委員会(二十八年十一月一日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、佐々木恵美子委員(民進党・道民連合)の質問、および梶浦仁学校教育監、磯貝隆之学校教育局特別支援教育担当局...

(2017-01-26)  全て読む

道議会文教委の質問・答弁概要(28年10月6日)

 道議会文教委員会(二十八年十月六日開催)における田中英樹委員(公明党)、丸岩浩二委員(自民党・道民会議)、川澄宗之介委員(民進党・道民連合)の質問、および杉本昭則教育部長、梶浦仁学校教育監...

(2017-01-24)  全て読む