道教組第30回定期大会 真実を見つめ貫こう 川村執行委員長あいさつ(関係団体 2017-03-16付)
あいさつする川村委員長
道教組第三十回定期大会(十一・十二日、札幌市内道高校教職員センター)における川村安浩執行委員長のあいさつはつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
きょうは三月十一日。東日本大震災から六年である。震災で命を落とした方々のご冥福を祈り、今なお被害に苦しんでいる多くの方々に思いを寄せ、被災地の復興を心から願うことから、今大会を始めたいと思う。
▼子どもの学びをめぐって
今、子どもたちはどんな状況に追い込まれているだろうか。二つの視点からふれたいと思う。
一つは「子どもの学習権を守る」という視点。
日本を覆う貧困と格差の拡大は深刻である。とりわけ、子育て世帯の貧困率は一〇%以上となっている。所得の中央値の半分以下の所得層が「相対的貧困」と言われる。給食費の未払い、各種学校納付金の滞納、それらの中に相対的貧困が横たわっている。
道内の各自治体の中では、厳しい財政状況の中でも給食費や医療費の無償化などの子育て支援を充実させているところがたくさんある。私たちは、それらの取組を励まし、ほんの小さな一歩を踏み出したに過ぎない「給付制奨学金」の拡充を求める取組をはじめとした運動を前進させ、「お金の心配なく学び続けることができる」教育を国の責任で実現させなければならない。
もう一つは、「子どもたち一人ひとりの学びを保障する」という視点。
競争主義に染まっている「全国学力テスト」体制のもと、「チャレンジテスト」を押し付けられ、「学ぶことは点数を取ること」と追い立てられている子どもたちは、学ぶ喜びから遠ざけられてはいないだろうか。○○スタンダード、ゼロトレランスという言葉に代表される管理統制の強化は、子どもたちからのびのびとした笑顔を奪っている。
この「管理統制強化」は、「小学校から中学校へのスムーズな移行」や「授業の効率化による学力向上」など、一見もっともらしい言葉で学校現場に広がっている。見逃してはならないのは、その背景に、「教員の多忙化」があること。多忙化解消が、管理統制の強化に置き替えさせられてはいないだろうか。「画一性の強制」か「多様性の許容」か、学校のありようさえにもかかわる課題である。
子どもたち一人ひとりから出発し、子どもたち一人ひとりに返していく学びではなく、押し付けの学びを一層進めるのが次期学習指導要領。二〇〇六年、教育基本法が改悪された。その具体化、学校現場における全面展開をねらっているのが二月に公表された学習指導要領案である。
学習内容のみならず、方法や評価までも画一的に押し付けようとするものになっている。そのねらいは、日本を「戦争をする国」「世界で最も企業が活躍しやすい国」にしようとすることにあるのは明らかである。
学びの本質は何であるのか、学びの真実はどこにあるのかをしっかりと見通し、子どもたちの確かな学びと豊かな成長を守り抜こう。
▼教員の多忙化と学校
次期学習指導要領は、子どもたちの学びを統制するだけではなく、教員の多忙化をより深刻化させ、学校づくりにも大きく影響を与えるものになっている。
授業準備の量も質も大きく増えることが予想される上、二〇二〇年の本格実施で、小学校では外国語の教科化などで週一コマ増えることになる。その一コマをどう組み入れるか、文部科学省は、「各学校でのカリキュラムマネジメントに基づき、適切に実施すること」と丸投げである。学校では、どう対応するかの論議が始まっているのではないだろうか。土曜授業や休み時間、給食時間などの短縮、朝の打ち合わせの廃止も出てきている。
教員の多忙化と過密カリキュラムは、学校から合意形成の場を奪い、教職員から合意形成の力を奪う。学校運営が上意下達で済まされてしまう。そんな懸念が広がってきている。
そんな中で、私たちの「協力・共同の学校づくり」という運動は、一層輝きを増すものになる。子どもの発達を保障するということを中心課題に据え、そのためには、どう学校をつくっていくのか、学校づくりの真実を確かめ合おう。
ますます厳しくなる学校現場の労働環境。私たちの、超勤解消への粘り強い取組で、道教委交渉において、「長時間労働解消に向けて具体的で実効ある取組を行う」との回答を引き出した。四月からは、勤務時間の割り振り変更が可能な業務が拡大され、半日勤務二回で一日の振り替えが可能となった。超勤解消に向けては、まだまだ多くの課題が残ってはいるが、道教委とも同じ方向を向いて取り組める課題となっていることは確かである。
国政においても、国民世論は、安倍首相をして「働き方改革」を打ち出さざるを得ない状況にまで追い込んできた。しかし、国の責任で長時間過密労働への規制をかけるという「働き方改革」が、「繁忙期には百時間を超える時間外労働を労働者側が認めるかどうか」がカギであるかのように論点がすり替えられてきている。
▼真実を基盤とした政治そして教育を
このごろ、気になる言葉を耳にする。「ポスト真実」という言葉である。客観的な事実よりも、嘘やごまかしで感情をあおり多数を形成していく、事実に基づかない主張を繰り返し、信条・感情に訴える。端的に言うと「事実より感情」ということ。イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ政治の特質を示す言葉となっている。
対米追従のアベ暴走政治の特質も、「ポスト真実」である。今、最大の政治課題となっている「共謀罪」をめぐっても、適用範囲を際限なく拡大させていき、戦争への道を切り開いた「治安維持法」を彷彿とさせ、「一般市民には適用されない」と言われれば言われるほど疑念は膨らむ。
その中で、私が見逃せないのは、「高校教育の無償化のためには、憲法を変える必要がある」という、教育の無償化を改憲の突破口としようとする動きである。「義務教育は、これを無償とする」という二六条を持ち出し、高校も無償とするなら、「義務教育」という憲法上の文言を変えなければならないという主張は欺瞞でしかない。
毎年十一月に開かれている全道合研のテーマは「平和を守り真実をつらぬく民主教育の確立を」。事実を積み重ね、検証を重ねた真実こそが教育の基盤である。子どもたちの現実と真摯に向き合うこと、子どもたちの学びと成長を豊かに保障すること、その中に大きな喜びと誇りを感じることは、真実が仲立ちとなっているからこそである。多忙化や様々な攻撃の中で、私たちの目も曇らされがち。真実を見通す目は、意識して磨いていないと、その輝きを保つことはできない。
治安維持法のもとでの生活綴り方教師への弾圧事件。ある日突然、治安維持法違反容疑で逮捕され、教壇から姿を消した先生。戦後、長い時間が経って、同窓会でその先生と再会できたある女性がつぶやいた言葉、「黒板の前に先生が立ってくれているだけで、私はうれしい」。どんな時代にあっても、子どもにそんな風に思ってもらえる関係をつくれる教師に、私はなりたいと思う。
そのためにも、「教師は真実を見通す目をもち、子どもたちには真実を見抜く目を育てる」という立場を堅持したいと思う。そして、それが私たち教職員の責務であると自覚し、そのことを握って離さずに教育活動を進める先頭に立つのは、私たち教職員組合であり、その組合員である。
本年度は、組織建設三ヵ年計画の二年目だった。道教組共済会の加入者は現勢回復を達成し、組合加入も大きく進んだ。三ヵ年計画の最終年度を迎え、道教組を大きく強くすることはもちろん、道高教組をはじめ、多くの労働組合、民主組織、市民団体などとの共同を一層前進させよう。
(関係団体 2017-03-16付)
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