小樽市の教育行政執行方針―林教育長説明 授業改善推進教諭を増員 教材『小樽の歴史』の編集推進(市町村 2017-04-11付)
小樽市教委・林秀樹教育長
【小樽発】小樽市教委の林秀樹教育長は、市議会第一回定例会で二十九年度教育行政執行方針を説明した。学力や体力の向上に向けた各種施策をはじめ、小樽の歴史、産業、伝統文化等を学ぶことや、グローバル化に対応した取組等を推進していく。また、生涯学習においては、幼児期からの家庭学習の充実を図るほか、子どもの読書活動を一層推進するとともに、幼児から高齢者まで自然科学や芸術等に親しむことのできる学習機会の提供などを進めていく。
執行方針の概要はつぎのとおり。
▼学校教育
小樽に住むすべての子どもたちが、社会で自立するために必要な学力を身に付けるため、「学習意欲の向上および基礎学力の定着を図る授業の改善」と「望ましい学習および生活習慣の確立」を両輪とする、つぎの取組を進めていく。
二十九年度は、小学校三年生以下のすべての通常学級に実物投影機を配備し、ICT活用研修講座の開催を通して、ICT機器を効果的に活用した授業の改善を行っていく。
「授業改善推進チーム活用事業」については、昨年度から、小学校三校に一人ずつ授業改善推進委員に指定した教員を配置し、その教員三人がチームとなって、一週間ずつ当該校の全学級をチーム・ティーチングで指導する事業を実施している。二十九年度は、さらに小学校三校に一人ずつ増員し、複数での指導や推進チーム同士の連携、共有を図ることで授業改善の取組を一層進めていく。また、全小・中学校で実施している標準学力調査を引き続き実施し、学力の状況を把握するとともに、日常の授業改善や補充学習等に結び付けることで、児童生徒の学力の向上を図る。
市の児童生徒は、全国と比べ、携帯電話やスマートフォンの利用時間が長く、学校以外での学習時間が短いことが、学力の状況に影響していると考えられる。昨年度に作成した、インターネット利用等に関する市のルール「おたるスマート七(セブン)」が継続的に順守されるよう、学校や市PTA連合会等との連携の強化を図りながら、児童生徒の望ましい生活習慣の確立と情報モラル教育の充実に努める。
「音読推進事業」について。それぞれ二十五年、二十六年から始めた「音読カップ」と「小樽こどもの詩(ポエム)コンクール」を引き続き実施し、家庭学習の充実を図るとともに、児童生徒の言葉に対する興味・関心を高めることで、国語力の育成を図る。
「樽っ子学校サポート事業」について。小樽商科大学の学生はもとより、市内の高校生にも広くサポートを呼びかけるなど、内容の充実を図りながら引き続き実施していく。
特別支援教育について。現在開設している通級指導教室を、発達障がいのある児童生徒も受け入れられるよう障がいの範囲を拡大し、児童生徒が生活や学習上の困難を改善・克服し、円滑に学校生活を送ることができるよう支援の充実を図る。また、小・中学校の通常学級に在籍する特別な支援を必要とする児童生徒や介護の必要な障害のある児童生徒の学習活動を支援するため、特別支援教育支援員を新たに中学校二校に配置する。
小樽教育支援センターの設置について。二十八年度から不登校児童生徒に対し訪問型の支援等を行う「不登校対策推進事業」を進めてきた。不登校児童生徒への登校支援および教育相談を一層充実させるため、教育委員会内に「教育支援センター」を新たに設置する、さらに、現在の適応指導教室を登校支援室「ふれあいルーム」と改め、さらに生涯学習プラザと市立小樽図書館に登校支援室「ふらっとルーム」を毎週火曜日から木曜日の三日間開設し、不登校児童生徒の個々の状況に応じた支援の強化を図る。また、児童および保護者等に対するきめ細かな教育相談を行うため、教育支援センターにスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを各一人配置するとともに、引き続き、稲穂小学校、長橋小学校、手宮中央小学校にスクールカウンセラーを一人配置するなど、教育相談機能の充実を図っていく。
「いじめ防止対策の推進」について。二十七年度に「いじめ防止対策推進条例」を施行し、「いじめ防止基本方針」のもと、いじめ防止に向けた意識の高揚を図ってきた。二十九年度も年二回のキャンペーンの実施や「いじめ防止サミット」の開催などを通し、児童生徒が安心して学習活動などに取り組むことができるよう努める。
道徳の教科化に向けて、望洋台小学校、潮見台中学校の二校を「道徳教育推進校」に指定するとともに、当該校において「道徳教育特別研修講座」を開催し、道徳の時間の公開授業などを通して、教員の指導力向上を図っていく。
「学校図書館の環境整備」について。読書活動を通して児童生徒の豊かな感性や表現力、創造力を育むため、現在市内に二人配置されている「学校図書館司書」を四人に増員。さらに市立図書館と連携しながら、市内全域の学校図書館の環境整備に努める。
「小学校体育科授業の工夫改善」では、奥沢小学校を「体力向上実践校」に指定し、指導方法の工夫改善に関する実践研究を行うとともに、公開研究会を開催し、その指導方法を広く市内の教員に還元する。また、体育専門教員を小学校に配置し、体育の授業をチーム・ティーチングで行う「体育専科教員活用事業」の実施を通して、道内の先進的な取組を取り入れた体育科の授業改善を図る。
「学校における体力向上」の取組については、各学校においては昨年度に作成した「体力向上改善プラン」の評価・検証を行い、調査結果を踏まえた新たな改善プランを作成。児童生徒の体力の状況に応じた具体的な取組を行っていく。また、二月に新たに設置した学校教育と社会教育の関係者で構成する「小中学校体力向上検討委員会」において、児童生徒の体力向上に向けた方策の検討に着手したところで、今後、授業改善に向けた指導資料等を作成することや、スポーツイベント等への参加促進に努めるなど、関係機関が一体となって、児童生徒の体力向上への取組を進めていく。
おたる潮まつりが五十周年を迎えた二十八年度は、市内全小・中学校が「潮ねりこみ」に参加した。引き続き、「潮音頭」の歴史的背景や振り付けを学ぶ機会を設定し、多くの児童生徒が「潮ねりこみ」に参加することを通して、地域社会に貢献する実践的な力の育成を図る。また、作成に向け調査研究を進めてきた、小学校高学年の総合的な学習の時間で使用する教材「小樽の歴史」の編集作業を行っていく。
昨年度は四人だったALTを六人に増員し、すべての中学校に隔週で派遣する。また、市内全小学校での活用を通し、英語を使って積極的にコミュニケーションを図ろうとする意欲と態度を育成する。さらに中学校五校を英語教育推進校として指定し、公開授業やアンケート調査等を通して、その実践の成果を広げていく。
三十二年度の小学校の英語教科化を見据え、これまで二校で実践していた小学校三、四年生の総合的な学習の時間で、英語に堪能な外部人材を活用した授業を行う「英語教育推進校」を三校に増やす。英語の指導教員を巡回指導教員として配置し、小学校九校において、チーム・ティーチングや校内研修の企画等を行う「小学校外国語活動巡回指導教員研修事業」を新たに実施する。このほか外部講師を招へいした「英語教育特別研修講座」及び「英会話スキルアップ講習会」の開催などを通して、教員の授業力と英語力向上を図っていく。さらに「小樽イングリッシュキャンプ」の内容の充実を図り、多くの児童生徒の参加を促すなど、多角的な施策を通して、英語教育の一層の充実を図る。
児童生徒が働くことや学ぶことの意義を主体的に考え、実践する力を育成するため、中学校一校を「キャリア教育実践指定校」に指定し、職場体験等の取組を充実するとともに、キャリア教育研修講座を通して、その成果を各小・中学校へ広げ、小樽の将来を担う人材の育成を目指すキャリア教育の充実を図っていく。また、「商大・能開大・高校等進路説明会」を通して、児童生徒が早い段階から自分の夢や目標をもち、進路について家庭の中で話し合うきっかけとする。
小・中学校が地域住民と目標やビジョンを共有し、地域と一体となって子どもたちを育む「地域とともにある学校」への転換を図る。そのため、先駆的な役割を担う市内小学校二校において、コミュニティ・スクールの導入に向けた推進委員会を設置するとともに、先進校視察や説明会を通じて推進環境を整えながら、順次導入を進めていく。
中一ギャップ問題の解消に向け、朝里中学校、朝里小学校、豊倉小学校を「小中連携教育実践校」に指定し、九年間を見通した教育課程の編成や出前授業の実施、児童生徒の交流等の取組を市内の小・中学校に還元。小中連携教育の充実を図るとともに、小中一貫型小・中学校の設置に向け、今後さらに道内外の先進校の実践の調査研究を進めるなど、小中一貫校の実現に向け取り組んでいく。
四年前から進めている秋田大学との共同研究では、市内の中学校二校を指定し、授業改善をテーマとした研究や公開授業など行う。研究や公開授業を通して授業の改善を図るとともに、引き続き先進的な教育実践を展開する「研究推進校および研究団体」を指定し、公開研究会等を通して各学校に還元することで教員の指導力向上を図っていく。
新しい学校づくりの着実な推進について。子どもたちが、集団の中で様々な考えにふれ、お互いを認めて協力し合い、切磋琢磨することを通じて一人ひとりの資質や能力を伸ばすとともに「生きる力」を育むため、学校再編を進めてきている。二十九年度は、四月に統合開校する北陵中学校において、保護者や地域などの協力を得ながら、地域の伝統文化を学ぶ取組や、部活動におけるスポーツ・文化活動等の振興に向けた取組に対する支援を行うなど、新しい学校づくりを進めていく。また、三十年四月の「中央・山手地区」および「南小樽地区」小学校の統合に向けて、「花園小学校・入船小学校」、「緑小学校・最上小学校・入船小学校」および「入船小学校・奥沢小学校・天神小学校」の各統合協議会で、新しい学校づくりや通学の安全確保、学校と地域との連携などの検討のほか、児童の事前交流を実施し、円滑な統合に向けた取組を進める。さらに「中央・山手地区」の中学校再編に向けて、二十七年度に示した西陵中学校と松ヶ枝中学校との統合についての考え方を、引き続き、保護者や地域住民へ説明し、理解を得た上で、小樽商業高校閉校後の学校施設の活用について、道教委へ要望する。
学校の施設整備について。三十年四月に開校する山の手小学校の校舎建設等工事が完了するほか、長橋小学校と高島小学校のトイレ改修工事を実施する。さらに、児童生徒用の机といすを三年間で計画的に更新するなど、教育環境の整備に努めていく。
▼社会教育
総合博物館では、実験教室や観察会などの自然科学体験講座を拡充するとともに、小・中学校へ学芸員を派遣する出前講座の実施、夏休みの「青少年のための科学の祭典」への協力など、学校や他機関とも連携して子どもたちの興味・関心を高めていく。
図書館では、スクール・ライブラリー便や学校図書館司書への支援など小・中学校と連携した取組を一層進めていく。また就学前の子どもたちが本に親しむため、幼稚園、保育園および関係団体などと協力して読み聞かせの体制づくりを支援するなど、幼児期からの教育環境の充実に向けた取組を行う。
生涯学習プラザを拠点に、「家庭教育支援事業」として二十七年度から地域の人材を活用した家庭教育支援チーム「小樽わくわく共育ネットワーク」を立ち上げ、子育て情報の発信、家庭教育講座、親子向けイベントなどを実施してきた。二十九年度は「家庭教育ナビゲーター養成」に力を入れるとともに、スキルアップ研修を実施し、保護者をはじめ、地域住民に交流や学び合いを促進するノウハウをもった人材を育成・強化し、子育てに悩みや不安を抱える保護者を地域の様々な場面でサポートする取組を一層推進していく。
子どもたちが、親子で琴・尺八などの邦楽、詩吟、生け花、日舞、茶道の日本の伝統文化を体験する「伝統文化親子体験教室」の開催を引き続き支援するなど伝統文化の継承にも努めていく。また、十月に開催される「日本PTA北海道ブロック研究大会」の大会運営を支援していく。
文化財の保存・保護について。地域の無形の文化財を学校等の拠点で子どもたちに体験させる「ふるさと教育推進事業」を推進していく。
手宮公園競技場に小学生用ハードルを整備し、陸上競技の普及を図るとともに、バスケットボールやフットサルのプロ選手を小学校に招いて、子どもたちのスポーツに対する意欲と夢を醸成する取組を進めていく。
(市町村 2017-04-11付)
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