29年度の根室管内教育推進の重点 確かで豊かな成長を保障 3ヵ年のテーマ、まとめの1年に―根室局公立学校長会議(道・道教委 2017-04-19付)
【根室発】根室教育局は十三日、根室市内の道立北方四島交流センターで管内公立学校長会議を開催した。蓑島崇局長が、本年度の管内教育推進の重点について、「主体的に課題を解決していくための確かな学力の育成をめざす」「生涯にわたって健康を保持増進するための健やかな体の育成をめざす」「人としてよりよく生きるための豊かな心の育成をめざす」「家庭や地域から信頼され、教育目標を具現化するための学校の総合力を高める」の四つの重点から説明した。
管内教育推進重点の概要はつぎのとおり。
【はじめに】
前年度は、根室で生まれ育った子どもの確かで豊かな成長を保障する教育の実現を目指して管内教育を推進してきたが、各学校においては、その趣旨を踏まえ、校長を中心に教職員が一致協力して家庭や地域から信頼される学校づくりを基盤に、子どもの健やかな成長に向けた創意工夫ある教育活動を展開していただいた。各学校の熱心な取組に敬意を表するとともに、道教委の施策等に理解、協力をいただき感謝申し上げる。
本年度も皆さんとの連携・協力のもと、管内教育の充実・発展に取り組んでいくが、教育の動向等を踏まえると二十九年度は一つの節目の年であると考えている。
国においては、次期学習指導要領の周知を図り、先行実施に向けた準備を始める一年に、道においては、「北海道教育推進計画」の目標年度であり、また、「北海道総合教育大綱」の対象期間における最終年度に当たり、各学校等におけるこれまでの取組状況や成果を検証し、次年度以降の改善につなげる一年になる。
さらに、管内においては、一昨年度に三年間の取組期間を設けて設定した管内教育推進のテーマ「確かで豊かな成長を保障する根室教育の推進」の締めくくりの一年となる。
こうした中、教育局としては、国や道の動向を注視するとともに、これまでの成果と課題を踏まえ、より実効性のある施策を展開する中で、各学校の個々の課題解決に向けた支援に全力を挙げて取り組んでいく。
【テーマ・重点について】
本年度管内教育推進の重点についての説明に先立ち、テーマである「確かで豊かな成長を保障する根室教育の推進」の趣旨について、あらためて確認する。
本テーマの「確かで豊かな成長」については、「確かさ」という量的側面と、「豊かさ」という質的側面から子どもの成長を目指すというとらえ方をする必要がある。
例えば、学力向上においては、「管内のすべての子どもが確かな学力を身に付けるといった量的な側面」「それらを用いて新たな価値を生み出していく力の育成といった質的な側面」、体力向上においては、「運動の機会を増やし、体力・運動能力の向上を図るといった量的な側面」「日常的に運動に親しみ、生涯にわたって健康な生活を送るために必要な資質・能力の育成といった質的な側面」、豊かな心の育成においては、「道徳的諸価値についての理解を図るといった量的な側面」「それらを基盤とした人間としての生き方や社会の在り方についての考えを深めるといった質的な側面」のように、子ども一人ひとりの発達課題や教育的ニーズをきめ細かく支える中で、量、質の両面から教育の成果を具現化していくことが大切である。
各学校において、こうした子どもの成長を保障するためには、個々の教員の資質・能力の向上はもとより、校内の組織力を高め、家庭、地域、関係機関が一体となったチームとしての学校を実現するなど、総合的な力を高める必要がある。
こうしたことから、本年度の重点については、確かな学力、健やかな体、豊かな心の育成を目指し、各学校で確実に取り組んでいただきたい内容や、目指す方向性についてより具体的に示すとともに、子どもの成長を保障する基盤として「学校の総合力を高める」を重点の一つとして新たに位置付けた。
それでは、四つの重点について、それぞれ説明する。
【重点1「主体的に課題を解決していくための確かな学力の育成をめざす」について】
まず、「主体的に課題を解決していくための確かな学力の育成をめざす」について申し上げる。
管内の各学校においては、学校改善プランの作成やそれに基づく取組の推進、校内研修を通した授業改善などに取り組み、子どもの学力の状況は改善の傾向にあるものの、依然として全国平均を下回っており、義務教育の機会均等を図る上で大きな課題となっている。
一人ひとりの子どもに、変化の激しい社会の中でも試行錯誤しながら問題を発見・解決し、新たな価値を創造していくための基盤となる力を育んでいくことが求められている中、各学校等における取組の成果が見られつつある学力の状況を、改善に向けて、あともう一歩、確実に推し進めていく必要がある。
具体的には、マネジメントの視点として、各学校の学校改善プラン等に基づく取組の適切な進行管理によって、学力にかかわる数値目標を確実に達成する。
また、授業改善の視点として、問題解決的な学習を基盤とした授業づくりを進める中で、子どもの学習意欲を高め、主体的・意欲的に学ぶ態度を育むとともに、言語活動の充実によって、思考力・判断力・表現力を高める。
さらに、知識基盤社会において必要とされる基礎的・基本的な知識・技能の定着を図るとともに、安心して学べる教育環境づくりのための学習規律の徹底や、目安とされている家庭学習時間の確保など、六項目に取り組んでいただきたい。
【重点2「生涯にわたって健康を保持増進するための健やかな体の育成をめざす」について】
つぎに、「生涯にわたって健康を保持増進するための健やかな体の育成をめざす」について申し上げる。
管内のほとんどの学校においては、新体力テストを全学年で実施し、その結果を活用した体育授業の改善などに取り組み、運動が好きと回答した子どもの割合が全国平均以上となるなど、運動に親しむ態度が育まれ、体力も改善の傾向がみられる。
しかし、依然として体力合計点が全国平均を下回っており、また、家庭生活を含めた望ましい生活習慣の育成に課題がみられる。
健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの実現を目指した教育の充実が求められている中、各学校等において、子どもの体力の向上を図ることはもとより、主体的に運動に取り組む態度や、食生活をはじめとする望ましい生活リズムの定着を図るための取組を一層進めていく必要がある。
具体的には、マネジメントの視点として、各学校の体力向上プラン等に基づく取組の適切な進行管理によって、体力にかかわる数値目標を達成する。
また、授業や全校での取組の改善の視点として、新体力テストの結果を全教職員で分析し、体育授業や一校一実践の一層の改善を進め、課題がみられる種目の運動能力の向上を図るとともに、自ら進んで運動する意識を高める。
さらに、家庭や地域との連携を図った取組によって、日常的に運動に親しみ、規則正しい生活を送る習慣を育む環境づくりやネット依存の改善など、六項目に取り組んでいただきたい。
【重点3「人としてよりよく生きるための豊かな心の育成をめざす」について】
つぎに、「人としてよりよく生きるための豊かな心の育成をめざす」について申し上げる。
管内の各学校においては、「いじめ防止基本方針」に基づき、いじめの未然防止に努めるとともに、生徒指導に関する研修や、道徳教育推進教師を核とした道徳の時間の授業改善に取り組み、子どもの落ち着いた学校生活の実現に成果を上げているものの、自己肯定感や将来の夢・目標をもっている子どもの割合が全国平均と比べ、低い状況にある。
高い倫理観をもち、人間としての生き方や社会の在り方について、よりよい方向を模索し続けるために必要な資質・能力を育むことが求められている中、各学校において、恵まれた自然環境や人材など、地域の教育資源の活用を図り、豊かな人間性を育むとともに、自らの生き方を主体的に考えることができる力を育成する取組を継続し、一層、発展させていく必要がある。
具体的には、子どもの主体性を重視した活動や、体験活動の充実によって、いじめの未然防止に資する望ましい人間関係を構築するとともに、自尊感情を高める。
また、子どもの内面に耳を傾ける教育相談等の充実を通した信頼関係の形成や、道徳的価値についての理解および生き方についての考えを深める道徳の時間の充実に努める。
さらに、関係機関等との連携を図る中で、組織的・系統的なキャリア教育やふるさと教育を推進し、発達の段階に応じた基礎的・汎用的能力を育むとともに、地域に対する愛着と誇りを深め、もって、地域が活性化していく取組を進めるなど、六項目に取り組んでいただきたい。
【重点4「家庭や地域から信頼され、教育目標を具現化するための学校の総合力を高める」について】
つぎに、「家庭や地域から信頼され、教育目標を具現化するための学校の総合力を高める」について申し上げる。
学習指導要領の改訂をはじめとした教育改革が急速に進められている中、保護者や地域の期待に応え、重点1から重点3に示した子どもの姿を具現化するためには、これまで以上に管理職がリーダーシップを発揮し、マネジメントを十分に機能させながら学校運営を行い、基盤となる教育環境を整えるなど、学校全体の力を高めることが重要であり、各学校においては、つぎの二つの視点についての取組を推進し、成果を確かなものにしていく必要がある。
具体的には、視点1「教職員の組織力を向上させ、信頼関係を築く」として、地域とともにあるコミュニティ・スクールやチームとしての学校づくりの推進、発達や学びの系統性・連続性に配慮した校種間連携の推進など、五つの目標指標について、視点2「教職員の資質・能力を向上させ、指導力を高める」として、社会に開かれた教育課程の具現化に向けた体制整備や環境づくり等の推進、日常の授業に確実に結び付く研修や、若手教員を対象としたメンター方式の研修等、教職員の資質・能力の向上を目指した校内研修の改善・充実など、五つの目標指標の実現に向け、取り組んでいただきたい。
【おわりに】
以上、本年度の重点について説明した。
校長の皆さんには、本重点に基づき、家庭、地域、関係機関等と一体となった学校経営を推進し、管内教育の一層の充実に向け、取り組んでいただきたい。
私は、教育に携わる者は、誰しもが教育に対する熱い情熱を有していると考えている。その情熱を各学校の職員室や教室はもとより、地域全体に満ちあふれさせ、専門性に裏打ちされた質の高い教育が、管内すべての学校において行われたとき、根室の教育はさらに大きく前進するものと確信している。
校長の経営ビジョンを微細なところまで浸透させ、一人ひとりの教員の情熱を引き出す中で、子どもが感じた喜びを生きるエネルギーに変え、直面する様々な課題を自らの力で克服できる強さを育む学校経営を推進していただきたい。
教育局としては、管内の子どもの健やかな成長に向け、市町教委や学校との連携を一層強めながら各種指定事業に対する支援や学校経営・学校教育指導訪問の充実、さらには、教職員研修の質的向上等に全力を挙げて取り組んでいく。
校長の皆さんの理解と協力を重ねてお願いする。
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