いじめ防止、早期発見・解消へ 基本方針の再点検など要請 審議会報告書を踏まえ通知―道教委
(道・道教委 2017-04-20付)

 道教委は十八日付で、学校教育局長名通知「いじめの未然防止、早期発見・早期解消に向けた取組の一層の充実について」を発出した。道いじめ問題審議会がまとめた調査報告書の内容をもとに、記録の徹底や保管、面談手法などの「対応上の課題」を挙げた。また、「いじめ防止等のための取組の充実」に向けた事項として、「学校いじめ防止基本方針の見直し、実施状況の確認および指導」「学校いじめ対策組織を中核とした組織的な対応の徹底」など九点を提起。それらを踏まえ、自校の基本方針を再点検し、いじめの未然防止などの取組を一層充実させることを要請した。

 道教委では、道立学校の部活動において、いじめによる重大事態が発生した疑いがあるとの申立を、被害生徒とその保護者から受け、道いじめ問題審議会に調査・審議を要請した。

 同審議会は、調査等を行った結果、申立のあった八項目のうち、四項目を「いじめ」と判断。学校や道教委の対応上の課題や、それを踏まえた再発防止のための提言などを調査報告書に取りまとめた(十七日付1面既報)。

 各教育局長・道立学校長・市町村教委教育長(市町村立学校長)あての学校教育局長名通知では、調査報告書をもとに、学校などの「対応上の課題」と、提言を踏まえた「いじめ防止等のための取組の充実」に向けた事項を整理。

 「対応上の課題」として、「学校は、生徒の保護者から、相談があった後、関係生徒や関係教職員への聴き取りを行っているが、聴き取り結果について詳細な記録がなされておらず、記録の徹底や保管という点で課題がある」ことをはじめ、面談手法や部活動の運営など、六点を挙げた。

 また、「いじめ防止等のための取組の充実」では、①学校いじめ防止基本方針の見直し、実施状況の確認および指導②学校いじめ対策組織を中核とした組織的な対応の徹底③学校いじめ防止基本方針の見直し等の教職員に対する周知徹底④指導等の記録や情報管理の徹底⑤児童生徒に対する指導の在り方についての研修の実施⑥生徒指導等にかかる資料を活用した校内研修の実施⑦外部専門家の積極的な活用⑧部活動運営の在り方についての研修の実施⑨いじめの未然防止の取組の推進―の九点を掲げた。

 このうち、「学校いじめ防止基本方針の見直し、実施状況の確認および指導」では、「いじめの防止等の取組を体系的・計画的に行うための包括的な方針」「いじめの防止等のための取組、早期発見・早期解消、生徒指導体制、教育相談体制、校内研修等の内容」などの観点を踏まえて点検や見直しを行い、常に実効的なものになるよう努める必要性を示した。

 「学校いじめ対策組織を中核とした組織的な対応の徹底」については、「いじめが疑われるささいな兆候や懸念、児童生徒からの訴えなどを一人の教職員が抱え込むことなく、報告・相談できる体制」「組織に集められた情報は個別の児童生徒ごとに記録するなど、複数の教職員が個別に認知した情報を集約し共有できる体制」などの整備に努めることを求めた。

 通知では、これらの内容を十分踏まえ、「自校の〝学校いじめ基本方針〟を再点検し、いじめの未然防止等の取組を一層充実させ、児童生徒が安心して学校生活を過ごせる学校づくりに努める」ことを要請した。

◆いじめ防止等のための取組の充実―道教委

 道教委が、学校教育局長名通知「いじめの未然防止、早期発見・早期解消に向けた取組の一層の充実について」で示した「対応上の課題」と「いじめ防止等のための取組の充実」の内容はつぎのとおり。

【本事案における当該学校等の対応上の課題について】

1 当該学校は、当該生徒の保護者から、本事案について相談があった後、関係生徒や関係教職員への聴き取りを行っているが、聴き取り結果について詳細な記録がなされておらず、記録の徹底や保管という点で課題がある。

2 学校が当該生徒との面談を実施した際、教職員が一名で対応するとともに、長時間にわたり面談を実施するなど、生徒に配慮した面談を行っておらず、面談手法等に課題がある。

3 当該部活動の顧問は、生徒の自主性を重んじるばかりに、当該部活動の円滑な運営を行う上での管理等を十分行っておらず、部活動の運営という点で課題がある。

4 当該学校は、当該生徒の保護者から校長に対して面談等の要望があったにもかかわらず、保護者対応は教頭という認識のもと、要望に寄り添うことなく対応しており、校長の率先した行動があれば、当該生徒およびその保護者が重大事態の申立てを行う前に事案を解決するための効果的な方策等をとることができたのではないかという点で課題がある。

5 当該学校は、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーといった心理や福祉の専門家等の第三者を早期に活用しておらず、外部人材を活用した組織的な対応という点で課題がある。

6 当該学校は、当該生徒の保護者からのいじめの訴えに対して、条例で設置が義務付けられている道立学校におけるいじめの防止等の対策のための組織(学校いじめ対策組織)を中核とした対応ではなく、生徒指導部長や管理職を中心とした対応をしており、組織的な対応という点で課題がある。

【「北海道いじめ問題審議会」からの提言を踏まえたいじめ防止等のための取組の充実について】

1 学校いじめ防止基本方針の見直し、実施状況の確認および指導

 学校は、「学校いじめ防止基本方針」について、つぎの観点を踏まえ、点検や見直しを行い、常に実効的なものになるような取組に努めること。なお、基本方針を変更する場合には、基本方針がつぎの事項を踏まえたものになるよう留意すること。

 また、市町村教育委員会は、各学校で策定している「学校いじめ防止基本方針」の実施状況について、つぎの観点を踏まえて把握し、必要に応じて学校に対し、指導助言すること。

(1)いじめの防止等の取組を体系的・計画的に行うための包括的な方針

(2)いじめの防止等のための取組、早期発見・早期解消、生徒指導体制、教育相談体制、校内研修等の内容

(3)いじめの防止等の具体的な指導プログラム

(4)いじめの早期発見やいじめへの対処にかかる具体的な取組方法および計画

(5)いじめの対応にかかる教職員の資質・能力の向上に向けた校内研修の実施計画

(6)条例第二三条に基づいて設置する組織(学校いじめ対策組織)を中心としたPDCAサイクルによる点検、見直しの取組

2 学校いじめ対策組織を中核とした組織的な対応の徹底

 市町村教育委員会は、学校におけるいじめの未然防止、早期発見・早期対応に関する措置を適切に行うため、各学校で設置している「学校いじめ対策組織」を中核とした対応を進めるよう学校に対し指導助言するとともに、学校は、実効性のある組織となるようつぎに挙げるような体制の整備に努めること。

(1)いじめが疑われるささいな兆候や懸念、児童生徒からの訴えなどを一人の教職員が抱え込むことなく、報告・相談できる体制

(2)当該組織に集められた情報は個別の児童生徒ごとに記録するなど、複数の教職員が個別に認知した情報を集約し共有できる体制

(3)迅速に対応できるよう会議の在り方を機動的に運用できる体制

 また、学校いじめ対策組織の役割として、つぎのことを位置付ける。

ア 学校基本方針に基づく取組の実施や具体的な年間計画の作成・実施・検証・改善の中核としての役割

イ いじめの相談・通報の窓口としての役割

ウ いじめの疑いに関する情報や児童生徒の問題行動などにかかる情報の収集と記録、共有を図る役割

エ いじめの情報の迅速な共有、関係のある児童生徒への事実関係の聴取、指導や支援の体制・対応方針の決定、保護者との連携等の対応の中核としての役割

3 学校いじめ防止基本方針等の教職員に対する周知徹底

 上記1および2について校内研修等を実施し、いじめの防止等の基本的な方向性や具体的な対応指針にかかる教職員間の共通認識を徹底すること。

4 指導等の記録や情報管理の徹底

 生徒指導に当たって、校内の各種会議や事故等に関する指導事項(聴き取り調査等を含む)についての記録を、速やかに具体的な記述を念頭に作成する体制を確立すること。

 また、作成した記録については管理を徹底するほか、校長をはじめとした管理職および他の教職員に対し指導等を行う立場にある者による記録の正誤等の確認を徹底する体制も確立すること。

5 児童生徒に対する指導の在り方についての研修の実施

 つぎに挙げる事項に留意しつつ、児童生徒の心に響く教育相談・生徒指導を行うとともに、常に最新の生徒指導の動向や指導を受ける児童生徒の心身の状況を十分考慮した上で、児童生徒にとって最も適切と考えられる教育相談・生徒指導を行うため、指導の在り方についての研修を推進すること。

(1)いじめを訴えてきた児童生徒の心情に沿った面談の場づくりや対応を工夫すること。

(2)児童生徒の過度の負担とならないよう、面談や事情を聴き取る時間の配分・指導場所などを工夫すること。

(3)生徒指導を行う教職員間での情報共有を行うこと。

(4)必要に応じて面談に養護教諭等を加えるなど、指導に当たっての校内体制についても工夫・考慮すること。

(5)児童生徒の心の状況等を十分に把握しつつ、家庭の協力を得ながらきめ細かく対応するとともに、家庭・地域・関係機関等と連携を図ること。

6 生徒指導等にかかる資料を活用した校内研修の実施

 学校は、生徒指導や教育相談にかかる教職員の資質の向上を図るため、道教委で作成・配布した指導資料を活用するなどして、校内研修を実施すること。

7 外部専門家の積極的な活用

 学校は、実効的ないじめの問題の解決に資するため、必要に応じて、心理や福祉の専門家、弁護士、医師、教員・警察官経験者など外部専門家を活用すること。

 また、市町村教育委員会は、学校に対して、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、「いじめ問題等解決支援外部専門家チーム」の活用を促すため、各学校に対し普及啓発に努めること。

8 部活動運営の在り方についての研修の実施

 生徒指導の視点に立った部活動運営に努めるとともに、部活動が顧問任せにならないよう顧問会議を定例化するなど顧問間の連携を図る体制を構築すること。

 また、部活動の計画や活動状況など保護者会やその他の機会をとらえて適切に伝えるなど、より開かれたものにし、保護者等に対して、活動に対する理解を得るように日ごろから努めること。

9 いじめの未然防止の取組の推進

 学校は、いじめの未然防止にかかる研修を実施したり、「いじめ未然防止モデルプログラム」を活用したりするなどして、計画的にいじめが起こりにくい学校づくりの取組を進めること。

(道・道教委 2017-04-20付)

その他の記事( 道・道教委)

9つのポイント提示 よりよい学校づくりへ資料作成―日高局

日高学校づくり資料作成  【浦河発】日高教育局は、「日高管内の全ての子どもたちの夢をかなえる、未来を創造する日高の学校づくり9つのポイント」をまとめ、十九日に開催した日高管内公立学校長会議の中で提示した。  日高...

(2017-04-24)  全て読む

29年度後志管内教育推進の重点 未来切り開く教育を 組織的・計画的に取組推進―後志局公立小中校長会議

後志教育推進重点  【倶知安発】後志教育局の原光宏局長は十九日、後志合同庁舎で開催した二十九年度管内公立小・中学校長会議で管内教育推進の重点を説明した。原局長は「社会で活きる実践的な力の育成」「豊かな心と健や...

(2017-04-24)  全て読む

道教委が高校進路指導対策会議 基礎学力や学び方習得を 札幌大谷大・平岡教授講演

高校進路指導対策会議  道教委は十九日から二日間、札幌市内の北農健保会館で二十九年度高校進路指導対策会議を開いた。初日は、札幌大谷大学社会学部地域社会学科の平岡祥孝教授が「高校の学びとキャリア形成」と題して講演。...

(2017-04-21)  全て読む

29年度宗谷管内教育推進の重点 5つの柱で教育を創造 キーワードは〝連携・協働〟―宗谷局公立学校長会議

宗谷管内教育推進の重点  【稚内発】宗谷教育局は十一日、宗谷合同庁舎で管内公立学校長会議を開催した。小・中・高校、特別支援学校の校長六十三人が出席。野﨑弘幸局長が宗谷管内教育推進の重点について説明した。本年度の教育...

(2017-04-21)  全て読む

全国学力・学習状況調査 小・中1530校で実施 道内実施状況―道教委まとめ

 道教委は十八日、二十九年度全国学力・学習状況調査の道内実施状況を発表した。この日、調査を実施したのは、公立小・中学校(義務教育学校前期課程・後期課程、特別支援学校小学部・中学部、中等教育学...

(2017-04-20)  全て読む

29年度空知管内教育推進の重点 未来見据え、教育発展を 協働・共育・共生で学びの質向上―空知局管内公立学校長等会議

空知管内教育推進の重点  【岩見沢発】空知教育局は十四日、岩見沢市内の自治体ネットワークセンターで二十九年度空知管内公立学校長等会議を開催した。小山茂樹局長が本年度の管内教育推進の重点を説明した。キーワード「協働・...

(2017-04-20)  全て読む

29年度上川管内教育推進の重点 上川らしい取組を展開 学力・心・体、バランスよく育成―上川局管内公立小中学校長会議

上川管内29年度教育推進の重点  【旭川発】上川教育局は十四日、上川合同庁舎で二十九年度管内公立小中学校長会議を開いた。中島康則局長が本年度の管内教育推進の重点を説明。基本的な考え方について、「確かな学力、豊かな心、健やか...

(2017-04-20)  全て読む

29年度桧山管内教育推進の重点 未来をつなぐ人づくりへ 家庭や地域と一体で教育推進―桧山局公立学校長合同会議

檜山管内教育推進計画  【江差発】桧山教育局は十三日、桧山合同庁舎で二十九年度管内公立学校長合同会議を開催した。河野秀平局長が本年度の教育推進の重点を説明。昨年度設定した「ふるさと桧山に誇りをもち、互いに支え合い...

(2017-04-19)  全て読む

道教委29年度新規の授業改善等支援事業 上砂川中など41校指定 指導主事訪問、大学教授が助言等

 道教委は、二十九年度新規事業の授業改善等支援事業の指定地域・拠点校を決定した。「ほっかいどう学力向上推進事業」の一環。指定地域は上砂川町など十九市町、拠点校は上砂川中学校など四十一校。教育...

(2017-04-19)  全て読む

29年度の根室管内教育推進の重点 確かで豊かな成長を保障 3ヵ年のテーマ、まとめの1年に―根室局公立学校長会議

管内教育推進の重点  【根室発】根室教育局は十三日、根室市内の道立北方四島交流センターで管内公立学校長会議を開催した。蓑島崇局長が、本年度の管内教育推進の重点について、「主体的に課題を解決していくための確かな学...

(2017-04-19)  全て読む