旭川市教委 不登校未然防止へ学校向け資料作成 初期対応のポイント示す 相談窓口も掲載 (市町村 2017-09-29付)
旭川市教委が学校向けに発行した資料
【旭川発】旭川市教委は、学校向け資料『どの子にとっても魅力ある学校に~“新たな不登校を生まない”未然防止と対応のポイント』(A4判、一八ページ)を作成し、市内の各学校へ配布した。初期対応の取組や相談窓口一覧などを掲載。市教委は、資料がさらなる支援のきっかけとなるよう期待を寄せている。
資料は、市教委が旭川市PTA連合会、旭川市小学校長会、旭川市中学校長会、旭川市小学校生徒指導連絡協議会などの教育関係者や専門家などを交えて作成。
旭川市の児童生徒の状況を踏まえ、より積極的な不登校の未然防止・早期解決を図るため「最初の三日間の対応」を重視した初期対応の取組や実践例を記載。また、教育委員会や子ども総合相談センターの支援に関する紹介や不登校にかかわる相談窓口一覧なども掲載している。
二十五日に市内の各学校へ配布。今後、十月二十四日に開催される教頭会の研修会や各種研修会などで説明する。また、保護者向けの資料の作成も検討しており、積極的に地域住民へ発信していくことも考えている。
担当した白石真教育指導課長補佐は「子どもの実態や背景などを見直し、支援などの方法に気づくきっかけになれば」と期待を寄せている。
山川俊巳学校教育部次長は「新たに不登校にならないことを願いを込めた資料。より一層、組織的な対応を図ってくれれば」と求めている。
『どの子にとっても魅力ある学校に~“新たな不登校を生まない”未然防止と対応のポイント』の内容はつぎのとおり。
▼はじめに
不登校については、児童生徒本人に起因する特有の事情によって起こるものがすべてではなく、取り巻く環境によってはどの児童生徒にも起こり得るものである。
そのため、児童生徒に対する理解を深め、不登校の未然防止、早期解決に向け、適切な支援を行う重要性について十分に認識する必要があることから、旭川市教委では、不登校に関する学校向け資料を作成した。
「新たな不登校を生まない」ための、より積極的な未然防止や、「最初の三日間の対応」などの初期対応という観点から、学校が組織的に取り組むためのポイントなどを中心に作成した。
各学校においては、資料を活用していただき、今後も不登校児童生徒への支援の充実を図るとともに、どの子にとっても魅力ある学校づくりに努めていただくようお願いする。
▼市の不登校児童生徒の現状
不登校児童生徒の出現率は、全国および全道の平均より下回るものの、全国および全道と同様の傾向で推移している状況がみられる。
▼不登校児童生徒への対応~考え方の転換
これまでは、現在、「不登校」の状態にある児童生徒の支援と「登校渋り」などの早期発見、早期対応の充実に努めてきた。
これからは「新たな不登校を生まない」ための、より積極的な未然防止の取組、「最初の三日間の対応」などの初期対応、現在「不登校」の状態にある児童生徒の支援の充実を図っていく。
▼新たな不登校を生まないために~魅力ある学校づくり
▽安心して通える学校
①担任だけではなく、学年所属の教員やスクールカウンセラーなどの大人と安心して話ができるなど、児童生徒が悩みや不安を訴えることができる環境づくり②いじめや暴力行為を許さないなど、問題行動に対する毅然とした対応
▽「居場所づくり」と「絆づくり」
①どの児童生徒にとっても落ち着ける場所づくり②児童生徒が日々の学校生活や学習・行事などで活躍したり互いに共働したりできる活動場面の設定
▽発達段階などに応じたきめ細やかな配慮
①児童生徒の特性に応じた指導・支援②体験入学やオリエンテーションなどによる入学時の不安解消など小中連携の促進
▽教職員の基本姿勢
①不登校やその傾向にある児童生徒の現状の理解②児童生徒・保護者に対する共感的な接し方・支援
▽分かる喜び、学ぶ楽しさを実感できる学習指導
①基礎・基本の確実な定着を図るきめ細かな指導②児童生徒の理解の状況や熟読の程度に応じた授業
▽学ぶ意欲の向上
①自己存在感、自己決定、共感的人間関係を実感できる授業②児童生徒が体験活動等を通して、自らの生き方や、将来に対する夢や目的意識について考えるきっかけとなる取組や指導
▼新たな不登校を生まないために~「最初の三日間の対応」
児童生徒の実態把握をするために、変化(サイン)に注目、専門家の見立て、前年度の状況等の情報収集、悩みなどの積極的把握を行う。
児童生徒が欠席したら「最初の三日間の対応」をする。チームで対応し、組織的な情報共有をすることで、児童生徒の不登校経験の有無、欠席日数や欠席パターン、現在の児童生徒の状況などについて共有する。その上で、児童生徒の状況等に応じた適切な登校アプローチ・支援を行い、不登校の未然防止を図る。
▽児童生徒の欠席に対して敏感に、かつ温かく対応
一人ひとりの児童生徒の欠席について、敏感に、かつ温かく対応することが大切である。「ちょっとした体調不良による欠席」の中には、不登校の兆候が隠れているかもしれない。欠席状況を複数の教職員で情報共有し、日常の学校生活の様子から、欠席した背景等を考えてみることも大切。
▼最初の三日間の対応が重要
児童生徒の状況によっては、休み始めのうちは「そっとしておく」ことが大切なときもあるが、登校に向けた働きかけが大切な場合もあるため、担任だけではなく組織で対応していく。
▽一日目「家庭に連絡し、児童生徒の様子を聞く」
児童生徒にとっては一日欠席しただけでも、登校に不安が生じる場合もある。安心して休み、また登校できるよう、学校から電話などで声をかけることも大切である。
病気欠席の連絡を受けた際は、症状や医療機関への受診状況等を把握することが大切。
▽二日目「家庭に連絡して様子を聞くとともに、欠席理由の再確認をする。必要に応じて家庭訪問を行い、児童生徒の状況を確認する」
本人や保護者に、担任等からの温かい声かけを行う。たとえ、病気であって不登校の心配がない場合でも、その後の良好な関係づくりにつながることがある。
友人関係や、学習、部活動等に何らかの悩みを抱えている可能性もある。「大丈夫?」などと、声をかけ、寄り添うことが大切である。
▽三日目「家庭訪問を行い、可能な範囲で児童生徒と面談をして様子を確認するとともに、保護者と最近の児童生徒の様子等について情報を共有する」
管理職に欠席理由や対応状況などを報告し、学校としての対応を検討する。
保護者に子どもの様子が心配であることを伝え、家庭での状況を聞く。担任など(できれば複数)で家庭訪問を行い、「あなたのことを心配している」「待っているよ」という気持ちを伝え、児童生徒が安心して登校できるよう支援をすることが大切である。
▼本市の小・中学校の実践例(学校訪問等の情報提供による)
▽実践例1「“最初の三日間の対応”など、未然防止に向けたチーム対応」
①月曜日や長期休業明け、宿題が重なった日、大きな行事の前後の時期に休みがちになるなど、児童生徒の欠席の傾向を把握する。
②児童生徒の欠席の状況について一覧を作成し、職員室の管理職の机上に置き、全教職員がいつでも確認できるようにする。
③欠席日数が三日続いた時点で、チーム(教頭、生徒指導主事、学年代表、学級担任、養護教諭等)で情報を共有し、児童生徒の状況に応じた対応を図る。
④スクールカウンセラー等による専門的立場からの見立てを参考に、児童生徒の状況に応じた適切な支援をチームで検討し、対応するとともに、対応等を記した支援用シートを作成する。
⑤不登校傾向の児童生徒の学校生活の様子や家庭訪問の状況等の確認など、週ごとにチーム会議を行い、組織的・計画的に取り組む。
▽実践例2「児童生徒の学習面のつまずきへの配慮」
不登校の要因の一つとして、学業の不振によるケースがみられることから、児童生徒の学習にかかわる実態把握に基づき、確実に基礎・基本の定着を図るとともに、「分かった」という充実感や達成感を味わわせる授業の工夫を行う。
①「めあて」と「まとめ」の提示
②授業の流れを黒板等に示すなどして、学習の見通しをもたせる工夫
③習熟度別授業や補充学習の充実
―など
▽実践例3「児童生徒の自尊感情や自己有用感の育成」
単純に良かった、悪かったと評価するだけの「褒める」では「自尊感情」を育むことはできても「自己有用感」を育むことにはなりにくいことから、行事に取り組む、学習に取り組む際などに、児童生徒自身に目標や工夫する点、努力する点などを考えさせておき、その基準に沿って、どこまで達成できたのかを「認める」ことを大切にしている。
(市町村 2017-09-29付)
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