【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.1社会科・小学校編(上)北海道社会科教育連盟(新保元康委員長)「教材研究のポイント」
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-11-29付)

第1回道社連・図
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 北海道通信日刊教育版で連載中の「伝えたい!授業づくりの基礎・基本」を道通ネットで公開します。

 わが国の学校では、経験豊富な先輩教員から若手・中堅教員へ知識・技能が伝承されることで資質・能力の向上が図られてきましたが、教員の大量退職やミドルリーダー層の減少など、大幅な世代交代によって、その伝承が難しい状況となっています。

 本連載は、道内の教育研究団体の全面協力によって、若手・中堅教員に向けての教育技術や指導法などをシリーズ化したものです。十八団体で約七十回の掲載を予定しています。研修資料としてもぜひご活用ください。

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◆教科書等の活用と取材・情報収集を

 立場上、若い先生から社会科の指導に関する相談を受けることがある。

 「教える内容が多すぎて時間内でなかなか収まりません…。」

 「どのように教えたらよいか今ひとつつかめません…。」

 このような悩みを解決するためには、教材研究において、指導目標や指導内容、指導方法に着目する必要がある。

ポイント1 指導目標と指導内容に着目【何を学ぶか】

 まずは学習指導要領(解説を含む)を読み、指導目標と指導内容を把握する。新学習指導要領は、「学びの地図」としての性質をもっているため、これまでよりも指導目標や指導内容が把握しやすくなっている。資質・能力の「三つの柱」に基づいての記述は、身に付けさせるべき知識や技能、育むべき思考力・判断力・表現力などが明確に示されている。

 つぎに学習指導要領と教科書を比較しながら読む。すると教科書の文章や用語・語句、資料の意図が伝わってくる。

 さらに教師用指導書に掲載されている「知識の構造図」を読む。名称は教科書会社によって様々ではあるが、単元で指導する知識や用語・語句を整理した上で構造的に示しているので、身に付けさせる知識を端的に把握することができる。

 これらを関連付けながら読むと、指導目標や指導内容を正確かつ端的に把握することができる。そのため、指導内容に根拠をもって軽重を付けることができるようになり、配当時数を超えることなく適切に指導することができるようになる。

 また、より効果的な資料を追加・変更することや、教科書とは異なる素材を軸に置いた授業づくりをすることなど、「創造的な社会科」を展開することも可能になってくる。ただし、その際には、再度、学習指導要領を熟読するとともに、関係施設等への取材や文献等の読み取り、新聞やテレビ、インターネットなどでの情報収集に基づく単元構成が必要になる。

ポイント2 指導方法に着目【どのように学ぶか】

 社会科は、単元のまとまりの中で学習問題を追究・解決する活動を通して資質・能力を育む学習である。中教審初等中等教育分科会教育課程部会「社会科・地理・歴史ワーキンググループにおける審議の取りまとめ」では、「①学習問題を設定する」「②見通しをもつ」「③調べる」「④考察・構想する」「⑤まとめる」「⑥振り返る」と一連の流れでの問題解決的な学習展開を例示している。現行教科書もほぼ同じ流れなので、この学習展開をベースに指導計画を作成する。ただし、①②④では、以下のことに留意する。

 ①「学習問題を設定する」学習場面では、学習意欲を高めるような社会的事象との出会いをさせる。 

 子どもたちにとって身近であるとともに、疑問が生まれるような資料を提示すれば、学習問題を自分ごととしてとらえることができる。そうすると子どもたちは学習問題を意識しながら主体的に追究活動へと向かう。

 ②「見通しをもつ」学習場面は軽視されがちであるが、大切にすべきである。学習問題に対する予想を立てることや追究方法を吟味すること、学習計画を立てることなどを通して、問題解決のための思考力・判断力・表現力を育んだり、主体的に調べたり考えたりしようとする態度を養う。また、⑥において自己の変容を振り返るときに効果的に働く。

 ④「考察・構想する」は、調べたことを基に社会的事象の意味や特色、相互の関連を考察する。考察にあたっては、「社会的な見方・考え方」を働かせて、調べたことを比較・分類・総合・関連付けをすることで、汎用性のある概念的な知識を生み出すことを目指す。つまり、単元における「主体的・対話的で深い学び」の集大成の場面である。

 また、学習内容によっては、社会に見られる課題を把握して解決に向けて構想する学習を行う。「未来を切り拓く子どもたちの資質・能力」を育むために、調べたことを基に考察・構想をする学習場面の充実を図ることを声を大にして伝えたい。

ポイント3 相談が一番の近道【迷ったら聞く】

 ほかにも、各学習場面における問い・発問・まとめの文言、資料の提示方法、板書計画、ノート指導については、丁寧に検討し、準備しておく。

 社会科指導に関わっての悩みがある場合、社会科を専門としている先生に遠慮なく「相談」してほしい。どの先生もあふれんばかりの指導と助言をしてくれるであろう。

 社会科を愛する一教員として、若い先生方が社会科への教材研究と向き合い、未来社会を担う北海道の子どもたちとともに、「おもしろく、学びがいのある社会科学習」を展開することを切に願う。

(北海道社会科教育連盟旭川地区 旭川市立陵雲小学校 主幹教諭 田村貴史)

※次回は「板書のポイント」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-11-29付)

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