【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.2社会科・小学校編(下)北海道社会科教育連盟(新保元康委員長)「板書のポイント」
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-04付)

伝えたい・道社連第2回板書
5年版書。中央の工業地帯と右の円グラフは、児童に実物投影機で拡大して提示し、その後、黒板に提示した(クリックすると拡大表示されます)

◆黒板を解決の足跡が表れる舞台に

 板書の役割として、①子どもの見方や考えを問題解決過程に位置付ける②板書された自分や仲間のよさをとらえさせる③子ども自身に授業の履歴(内容)を俯瞰させることで探究的な学びに役立たせることなどがある。

ポイント1 見て分かる社会科の板書五か条

①学習問題は必ず書く

 教室には学年目標や学級目標、時には子どもが書いた生活や学習の目標などが貼られている。

 子どもは常に目標を目にすることで学習や生活を振り返り、また取り組もうと意識するようになる。

 社会科の学習問題についても同じことが言える。学習問題をきちんと板書することで、子どもたちは「何を学習しているか」を意識することになり、追究の方向が逸れてもまた戻ることができる。そのためにも学習問題は、はっきりわかるように板書する必要がある。ポイントは次の二つである。

・少し大きめの太めの字にする

・色チョークで上下にラインを

引いたり囲んだりする

②キーワードを板書する

 黒板には、子どもの発言をそのまま書く必要はない。すべての発言を書く必要もない。

 例えば、5学年の工業の学習で、「工業のさかんな地域はどのようなところだろう」という学習問題の場合、引き出したいことは、「工業地域は太平洋ベルトに多く、内陸部にも増えてきている」ことがわかることである。つまり、「太平洋ベルト(海沿い)」と「内陸部」という二つのキーワードにつながるように、意見を整理したり、板書をしたりすると良いのである。

 「よく気付いたね!」「そうか!」など、教師や友達から評価されれば、すべて板書する必要はない。そのためにも、学習のキーワードは何か、意見をどう類型化し、どう関係付けるかについてあらかじめ考えておく必要がある。

③発言を整理し構造化する

 類似した意見は束ね、共通する項目を付けることでいくつかに類型化することができる。それらを見ながら子どもたちは共感したり意見を交わしたりすることで追究を深め、問題を解決していく。それらを黒板上で関係付けることで板書は構造化されていく。そのために、次のことを意識したい。

・キーワードで表現する

・図や表、イラストを活用する

・矢印や線、囲みを色チョーク

で効果的に表現する

④黒板を授業の舞台にする

 黒板は教師と子ども、子ども同士の追究により明らかになってきた解決の足跡が表れる舞台でありたいと考える。

 そこで、黒板を三分割して板書計画を立てる。

 「左側」は、前時までに学んだことを確認したり、子どもに揺さぶりを生む中心資料を貼ったりする場とする。

 「中央」は、上に学習問題、下には子どもの意見を類型化して囲み、矢印でつなぐことで、比較したり関係的に見たりする力を養う場とする。

 「右側」は、視点を切り替え、今日の学びを振り返ったり新たな見方や考え方を獲得したりする場とする。また、黒板を左から右に見ることもできる。例えば漁業の学習で、魚を釣り上げている写真を左端に、食卓で魚を食べる写真を右端に貼ることで、その「間」を考えさせる。子どもは写真を入れ替え話し合う中で、漁業に携わる人が早く届ける工夫をしていること、多くの人が関わっていること、輸送や費用などについても考えていくようになる。

 実物投影機等で使用した資料は、文字は小さくなっても掲示する必要がある。板書を生かして、子どもを一層意欲的にさせるために、チョークで文字を書かせたり、製品カードを黒板上で分類させたりするなど、板書に子どもを参加させるよう工夫することも考えられる。

⑤学習のまとめも必ず書く

 学習問題を書くように、一時間の授業のまとめも必ず書くようにする。

 前記でも述べたが、黒板の右側は、学びを振り返ったり新たな見方や考え方を獲得したりする場となる。子どもは子どもであるが故に、学びを振り返り、新たな知識や技能、見方や考え方が身に付いたのかを具体的にとらえたり自覚したりすることは難しい。黒板にしっかりと学習のまとめを位置付けることで、身に付いた力を意識させ、学ぶことの喜びや自分の成長を実感させることが大切である。

ポイント2 社会科的チョークの活用法

 社会科の板書では、「キーワード」は大きく太く、「漢字」はひらがなよりもやや大きめに書くなどの工夫をしたい。統計資料の棒グラフなど図形を書くような場合は、チョークを倒し、幅の広い線を引く方法を活用する。途中からチョークの色を変えることで、変化を分かりやすくしたり、幅を広くすることで資料の中に統計の数値を書き込んだりすることもできる。

 「色」にも理解が必要である。現在、最も使われている黒板は、白・黄が一番見やすいようになっている。赤・緑・青は見にくい子どももいるので配慮し、仕様を限るか、色覚対応のチョークを使用すると良い。

 ノート指導とも共通し、子どもとの約束事として色によって役割を決めることも有効な手立てである。このようなことを踏まえ、社会科の学習の流れに応じた色の使い分けを工夫することも大切である。

・白…文字

・黄…キーワード

・赤…まとめ

・緑…矢印

・青…囲み

(北海道社会科教育連盟札幌地区 札幌市立盤渓小学校 教諭 近井祐介)

※次回は「習得・活用のポイント」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-04付)

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