【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.5国語科・小学校編①北海道国語教育連盟(齋藤昇一委員長)「言語活動」指導のポイント(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-08付)
日常的にタブレット等のICT機器を活用する子どもたち
1 主体的な学びと指導事項
次期学習指導要領のキーワードの一つである「主体的な学び」を充実していく上で、国語科「話すこと・聞くこと」領域の担う部分は大きい。
「話すこと・聞くこと」領域の学習では、自分の考えを効果的に伝え、相手の話を的確に聞き取り、意欲的に話し合い、よりよい対話へとつなげていくことを指導のねらいとして進めていくことが重要である。このスキルを、国語科の他領域、そして他教科の学習へと広げていき、子どもたちが主体的に話す、聞く、話し合うことができる、真の「生きて働く言葉の力」へとつなげていくことが大切である。
そのためには、低学年では、話すことに抵抗感をもたせないことや、相手の話に耳を傾けられることを重視して指導し、中学年では、相手意識や目的意識をもたせながら話したり、聞いたりできるよう指導していく。その上で、高学年では、低・中学年で培われた能力を発揮して、主体的に話し合う活動へとつなげていきながら、評価意識をもたせ、児童相互に高め合えるよう指導していく。
2 単元計画と言語活動
次期学習指導要領では、「話すこと・聞くこと」領域において、言語活動①「話し手がまとまった話をしたり、聞き手が感動や意見を述べたりする活動(低・中・高学年)」、言語活動②「情報を収集したり、発信したりする活動(中・高学年)」、言語活動③「目的に沿って話し合うことを通して、互いの考えを共有したり、生かし合ったりする活動(低・中・高学年)」の三つの言語活動例が示されている。これら三つの言語活動例から主体的な学びを充実させるポイントを考察する。
(1)言語活動①について
二学年「あったらいいな、こんなもの」は、自分が考えた理想の便利道具を紹介し合う学習である。よりよく話すため、聞くための「書く」活動を重視することが考えられる。思いを文字に変えて書き留めることで、話すことに抵抗感がある児童も話すことができる。また、友達が話したことは、聞いたことを「書く」ことで記録し、他者評価へとつなげ、次時以降の学習に生かすようにする。ただし、この発達段階の児童の定着場面においては、「話す」活動、「書く」活動のフォーマットを提示し参考にさせることも学習活動を充実させる手立てとして有効である。
(2)言語活動②について
三学年「つたえよう、学校生活」は、三年生が学校生活のよさを調べ、低学年に紹介する学習である。グループでの発表場面や情報を収集するインタビューの場面では、タブレット等のICT機器を活用することが考えられる。録画した映像を全員で見て、良い点や改善点を可視化し、学級全体で共有する。そして、児童の発言をもとにした相互評価により、互いに高め合える内容へとつなげていく。
(3)言語活動③について
六学年「学級討論会をしよう」は、立場を明確にして主張し合い、考えを広げる討論をする学習である。討論は、「立場を決め」、「考えに沿って意見を述べ」、「主張と根拠の違いを明確に」等、話す相手や今日の学習の目標を意識させながら活動に取り組ませる必要がある。
また、自分の立場に合致した資料を選び、「読み取る」活動も重要である。主張には、明確な根拠が必要であり、自分なりに正しいと判断した適切な資料を選んで考察することで、話し合う内容が深まり、話し合うことの有用感を実感させることができる。
3 言葉を学ぶ実感
「話すこと・聞くこと」領域の学習は、「相互理解のための学習」であり、「他者とよりよい関係を構築していくための学習」であると考える。学習指導の全活動で「話す・聞く」ことは必須の行為であり、数多くの場面で見ることができるが、よりよい話し方と聞き方には程遠い場合が見受けられる。そのような現状を踏まえたとき、「話すこと・聞くこと」領域の限られた指導時数の中で、低・中・高学年のねらいを確実に達成させることが何よりも求められる。
「書くこと」「読むこと」領域の学習と関連をもたせ、「話す意欲」と「聞く優しさ」をもって意図的・計画的に「話すこと・聞くこと」領域の学習を進めたい。低学年段階で「話したい」「聞きたい」という意欲を十分にもたせ、中学年で相手や目的を意識して取り組み、高学年で「分かりやすく」「的確に」話す、「話題の要点を押さえて」聞く、「多様な意見をもとに、自分の考えをまとめて」話し合う能力をどの児童も自覚できるよう指導していくことが肝要である。
このような学習を積み重ねることこそが、言葉を学ぶ実感へとつながっていく。
(北海道国語教育連盟旭川地区 旭川市立北光小学校 教諭 岡栄樹)
※次回は「深い学び」のポイントを掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-08付)
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