【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.7国語科・小学校編③北海道国語教育連盟(齋藤昇一委員長)「授業改善のポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-12付)
◆俯瞰した単元構想と学習過程が基本
ポイント1 国語科における資質・能力を考える
新学習指導要領では、国語科を要として各教科等の特質に応じて、児童の言語活動を充実させていくことが求められている。
そのため、児童の思考力の基盤を形成する言語能力を育てていくことが、これまで以上に国語科の役割として期待されている。
国語科で育成すべき言語能力、つまり、国語科における資質・能力が、他の教科や実の場においてどのように生かされていくのかを想定しながら授業づくりを進めていくことが肝要である。
ポイント2 指導事項と言語活動を考える
では、国語科において育成すべき資質・能力とは一体何だろうか。それは、学習指導要領に示されている各学年の「指導事項」である。それぞれの学年における指導事項を確実に児童に身に付けさせ、また、その力を系統的に積み上げていく必要がある。
そこで教師は、一年間の学習を見通した「国語科の単元デザイン」を構想しておく。どのような教材、言語活動を用いて各指導事項を児童に身に付けさせていくのかを考え、指導事項の偏りと漏れが出ないようにする。
さらに、前後学年の教材間の関連についても考慮して、児童の言語能力を系統的に育てていくようにする。カリキュラム全体を俯瞰して単元構想を練っていくことは、これまでと同様に国語科授業づくりの基本となる。
次に、一単元の学習の組み立てについて述べる。
単元は、以下の三つの視点を基に構成する。①単元において重視する指導事項。②単元目標に掲げた力が、確実に身に付く言語活動。③言語活動を支える一単位時間の学習活動。
①では、指導事項を「単元の目標」として整理しておくとよい。どのような力の獲得を目指していくのか、教師と児童が共有できるようにするためである。
②では、児童が必要性を感じながら単元目標に向かって学習を進められるような言語活動を位置付けるようにする。言語活動を設定する際には、教科横断的な視点や実の場との関連も大切にしたい。
③の言語活動を支える学習活動は、単元の最終ゴールに到達するために学習のゴールを細かく設定し、それを一つ一つクリアしていくというようなイメージに近い。
また、一単位時間の学習で身に付く言語能力についても明らかにしておくことにより、児童は言語活動を進めていく上で必要な力を、単元を通して自覚し続けるようになる。それは、児童の主体的な学習を導くことにもつながっていく。
ポイント3 新たな学習過程で授業改善を考える
新学習指導要領国語科「思考力、判断力、表現力等」では、各領域の学習過程が詳細に示されるようになった。例えば「読むこと」領域では、「①構造と内容の把握②精査・解釈③考えの形成④共有」の四つの学習過程に整理された。それに伴い、これからの国語科の授業づくりも大きく変わっていくことが予想される。
実際の学習場面で考えてみる。
「世界遺産白神山地からの提言」(教育出版5年下)という教科書教材がある。現在でも、この教材を用いて文章中の事実と感想、意見の関係をとら捉えたり、意見文の構造を把握して、論理的な文章の組み立て方について精査したりする学習が行われている。さらに、「書くこと」領域と融合させた言語活動を設定することによって、児童が自らの考えを付加しながら意見文を再構成していく学習も展開されている。新たな学習過程では、このような学びのプロセスが一層重視されることになるだろう。
「書くこと」領域の学習でも考えてみたい。
例えば「はじめ」、「中(①、②…)」、「終わり」の各段落を執筆する度に対話的な学びを取り入れて、互いの文章の内容、表現を詳細に吟味し合いながら書き進めるようにする。それによって、単元の最後「共有」の学習場面において、児童は自他の文章の書き振りに注目して、よいところを評価し合うことに集中できるようになり、自らの力の高まりを実感するようになる。
もう一つ、すべての領域で「考えの形成」が学習過程の中に位置付けられたことも特筆すべき点である。思考力の基盤としての言語能力を育成していこうとする意図がより鮮明になったと言える。
各領域の指導事項でも、「考えをもつ」「考えを広げる」「考えをまとめる」といった言葉が多く見られることから、今後「(自分の考えをまとめるために)随筆を書く」、「(自分の考えを広げるために)討論会を企画する」というような、自らの考えの形成をねらいとした言語活動が多く設定されるようになるだろう。
このように、新たな学習過程は、これからの国語科における重要な授業改善の糸口になる。
(北海道国語教育連盟釧路地区 釧路市立鳥取西小学校 教諭 関本裕介)
※次回は「対話的に学ぶ授業のポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-12付)
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