【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.4社会科・中学校編(下)北海道社会科教育連盟(新保元康委員長)「資料活用のポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-06付)
◆「未知から既知」、見方・考え方を引き出す
【資料は授業の命】
社会科授業では、教師の問いと子どもの答えをつなぐものが資料である。したがって、資料なしに社会科授業を創ることはできない。
社会科授業で用いられる資料にはどのような種類があり、どのような役割を果たしているのだろうか。資料を活用する際の留意点とともにまとめてみたい。
日常の授業で使用する資料は、「現物資料」「視聴覚資料」「統計資料」「文字資料」に分類できる。
1 現物資料
現物資料とは、実物、標本、模型のことである。
実物は、自然や社会そのものであり、現在や過去の事実を示す資料となる。
標本は、昔の生活用品などを実物に似せて作ったものや、実物の一部で、鉱物や製品の標本などがある。
模型は、実物の形・性質を模倣したものである。
現物資料を社会科授業で用いる意義は二つ考えられる。
一つ目は、子どもの学習意欲の高まりである。現物の提示による強い印象はそれだけで子どもたちの興味・関心を引くものになる。
二つ目は、事実を具体的にとらえさせることができることである。現物を提示することで、より正確な社会的事象の理解につながり、子どもにとって距離が遠かったり過去であったりして、触れることが難しいものでも観察が可能になるのである。
留意したい点は、できる限り子どもの体験的な活動場面で資料を活用させるということ。また、複数の現物資料を組み合わせたり、意図的・計画的に単元の学習に位置付けたりすると効果的である。
2 視聴覚資料
視聴覚資料には、地図、絵、図、写真等の視覚資料と映画、動画等の聴覚も加えた資料がある。
視聴覚資料を社会科授業で用いる意義は二つ考えられる。
一つ目は、子どもたちへ具体的で豊かなイメージを提示できるということである。
二つ目は、短時間で多くの子どもに効率的に情報を伝えることができるということである。どちらもまさに百聞は一見に如かずと言える。
留意点は、具体的で豊かなイメージであるが故に誤った情報とならないように、資料に対する思い込みや見過ごしに注意をすることである。また、資料作成者の意図や誤解がないかを確かめ、理解したうえで提示したい。
3 統計資料
統計資料は、数値が整理されて提示される表が中心であり、子どもが客観的に社会事象をとらえる上で根拠となる重要な資料と言える。
統計資料を社会科授業で用いる意義は二つ考えられる。
一つ目は、問題を解決する際の予想や仮説の検証である。数値を正しくとらえることは、正しく問題解決をするための有力な根拠となる。
二つ目は、社会に対する多様な見方や考え方を可能にすることである。統計資料は物事を多面的・多角的に考察し、公正な判断へと導いてくれる。
注意する点は、資料の統計元、統計年月日、統計データの分析方法等の確認を必ず行うことである。信頼性の低い統計資料の提示が、誤った問題解決につながってしまうことは避けなければならない。
4 文字資料
文字資料とは、論評、新聞記事、雑誌、詩や小説などの一部を利用する資料である。
文字資料を授業で用いる意義は二つ考えられる。
一つ目は、各種分野を代表する著名な文人たちの考えを知ることができるということである。
二つ目は、様々な書き手の考えを知ることで、子どもの将来への希望を生むきっかけとできることである。
ただし、文字資料は、〝書き手の思い〟が入った加工された情報であることを理解することが大切である。その思いによって、子どもの社会認識に偏りが生じないようにしなければならない。そのために、複数の文字資料を用意し、事実を比較することが大切である。
【資料で問いと答えをつなぐ】
これまで述べてきたが、社会科の授業において資料を活用する意義は二つにまとめられる。
一つは、子どもが見る・聞く・読むことにより、今まで知らなかった社会を知ることができるということ。
もう一つは、他者の考えを取り入れることにより、子どもが多様な見方や考え方を引き出すことができるようになるということである。そして、すべての資料は作成者によって加工されていることも忘れず、複数の資料を比較することによる正しい事実の認識と、資料の特徴を授業者、学習者が共通に理解することを行う必要がある。
資料は最初から資料として存在しない。授業の問いが何かによってはじめて資料となる。問いが変われば資料から引き出される情報は変わり、問いが多様化すれば、資料の選択も多様化する。
今一度述べるが、問いと答えをつなぐものが資料であり、資料なしに社会科授業は構築されないのである。
(北海道社会科教育連盟釧路地区 釧路市立鳥取中学校 教諭 林祐史)
※次回は道国語教育連盟「言語活動のポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-06付)
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