【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.9算数科編①北海道算数数学教育会小学校部会(松村聡部会長)「思考が深まる交流のポイント」
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-15付)

伝えたい第9回、北数教小学校部会第1回目
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【実態から見る交流に関する課題】

 平成二十九年度の全国学力・学習状況調査では、札幌市の約八〇%の子どもが「話し合う活動をよく行っていたと思う」と回答している。

 一方、「話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり、広げたりすることができていると思う」と回答した子どもは約六五%にとどまっている。

 このことから、授業の中で子どもが一見活発に話し合っているように見えても、話し合うことの価値を十分に感じていないという課題が読み取れる。

 他者の多様な考えにふれることで、自分の思考が深まるということこそ、算数科における交流する価値である。

【「思考が深まる交流」を生む教師の手だて】

 交流に関する課題の原因はどこにあるのだろう。その一つに、正誤がはっきりしているという算数科の特性が挙げられる。正答を求める子ども同士の交流は、解決方法の教え合いや答えの確認に終始してしまいがちなのではないだろうか。

 子どもが交流する価値を感じられるようにするために、教師が次の三つの手だてを講じる必要があると考える。

(1)交流する必要感を生む

(2)交流の中で数量や図形の仕組みや性質が見えてくるようにする

(3)交流する価値の実感を生む

【二学年「九九の表」実践から見る「交流」】

ポイント1 交流する必要感を生む

 他者との交流の中で、思考が深まるには、子どもが問いをもち、主体的に学びに向かっていることが前提である。

 例えば、数の関係に着目してきまりを見いだす力を育むことをねらいとした二学年「九九の表」。

 もし、授業で「きまりはないかな?」と教師が尋ねても、子どもの「考えたい」という思いは高まらない。子どもが自ら数の関係に着目し、「きまりがありそうだ」「面白いきまりを見付けた」という思いが生まれた学びの先に、「伝えたい」「分かってほしい」などと、交流する必要感が生まれるのである。

 そこで、本実践では九九表に3×3マスのカードを置き、○と△の数値を尋ねた。このとき、○と△の数が同じになる場所にカードを置いた=図①=。子どもは「反対のきまりが使えるよ」「5×3=15と3×5=15だ」と、九九表に置いたカードの数から反対のきまりの関係を明らかにしていった。そのとき、ある子どもがつぶやいた。「でも反対のきまりが使える場所と、使えない場所があるよ」。

 子どもの中に「カードをどこに置けば、反対のきまりが使えるのだろう」という問いが生まれているのである。その問いを共有していくことで、子どもは自ら交流に臨んでいった。

ポイント2 交流の中で数量や図形の仕組みや性質が見えてくるようにする

 九九表にカードを置きながら追究していた子どもが、「カードを置く場所にきまりがあるよ」とつぶやいた。ここで、この子どもが最初から最後まできまりを説明しても、学級全員の子どもの思考の深まりは生まれない。そこで、教師は、子どものつぶやきや発言を取り上げ全体へ広げていくようにする。どの子にも見えなかったきまりが少しずつ見えてくる過程を保障するのである。

 例えば、「きまりがある」という子どもの発言に対して、「○○さんの気持ちが分かるかな?」「どういうことかな?」と読み取りを促したり、「きまりは表のどこに見えるかな?」と、図・表・式などの異なる表現と関連付けたりする関わりが考えられる。

 その結果、「○の数同士、△の数同士を結んだ線が2列になっているよ」「斜めになっているよ」と、どの子も○の数と△の数の並びのきまりを見いだしていった=図②=。

ポイント3 交流する価値の実感を生む

 交流を通して見えてきた九九表の並びのきまりに着目して、再度九九表を見つめた子どもに、新たな気付きが生まれた。

 「カードが大きかったり、小さかったりしたら他にもきまりが使えるよ」。

 この声をきっかけに、子どもたちは「他の場所にも反対のきまりが使える数があるのかな」と問いを変化させ、学びを広げていった。

 そして、「斜めの線で表を折ったら、反対のかけ算の答えが重なるよ」「斜めの数は、同じ数同士のかけ算だから、反対のきまりが使えないよ」と、九九表全体の対称性を明らかにした=図③=。

 このように子どもが「もっと~」「だったら~」と学びを広げるとき、自分の思考の深まりから、他者と交流する価値を実感することができる。教師がそのための教材の仕組みをつくることも大切である。

【意図的に「思考が深まる交流」の場を】

 学級全員の子どもが活発に発言をつなげ、思考が深まる交流の場を授業の中につくりたい。教師なら誰もが抱いている思いだろう。そのためには、教師が意図をもたずに子どもの発言に委ねるのではなく、ねらいを明確にし、思考の深まりを生むための手だてを意図的に講じることが必要なのである。

(北海道算数数学教育会小学校部会研究部 札幌市立幌南小学校 教諭 園部穂)

※次回は「〝問いの連続〟実践のポイント」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-15付)

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