【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.13数学科・中学校編①北海道算数数学教育会中学校部会(中山勝喜部会長)数学を学ぶことの良さを実感「個人思考と集団解決のポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-22付)
個人思考をもとに集団で解決させ、数学を学ぶ良さを実感させる
◆板書計画と実践記録を改善に活かす
【「考える力」を育てるために】
旭川市教育研究会算数数学部では、研究主題を『「考える力」を育てる学習活動の展開』、副主題を『問題解決的な学習の日常化と数学的活動の充実を目指して』と設定し、研究活動に取り組んできた。研究のねらいは問題解決的な学習を通して、基礎・基本の確実な定着を図るとともに、数学的活動の内容と方法を吟味しながら、「考える力」を育成することである。
そのため次の三点について研究を進めてきた。
1 数学科における「考える力」を育成するための数学的活動の工夫
2 個人思考や集団解決を効果的に行うための指導の工夫
3 問題解決的な学習における教師の働きかけの工夫
ただし、問題解決的な学習では、実際に指導を行う教師の指導力も求められる。よい問題を提示して、「まずは自分で考えてみよう」「みんなで交流してみよう」と投げかけても生徒の個人思考や集団思考が深まるわけではない。
研究会で見た素晴らしい授業を、指導案をもとに実践してみたが、うまくいかなかったという経験をした方も多いのではないだろうか。私自身もそうである。
今回はそうした課題を少しでも改善できるよう、前記2と3を中心に、個人思考や集団解決の場面における指導の工夫や教師の働きかけの工夫について、私自身が意識していることを紹介したい。
【個人思考の場面から】
ポイント1 個人思考は短く
数学が苦手な生徒にとっては、個人思考の時間をいくら与えても、問題の解決に結びつくとは限らない。むしろ長すぎる個人思考はやる気の低下につながる。そこで、長くても五分程度とする。また、その中では「机間指導」と「つぶやき」(詳細は下述)を目的をもって行い、生徒の意欲を持続させ、生き生きと考え続けることができるように工夫している。
ポイント2 机間指導で学習状況の把握を
効果的に個人思考を行う上で机間指導は欠かせない。まずは、本時の学習課題に対して、どの程度取り組めているかを把握する。問題の意図や教師の指示がうまく伝わっていない場合は再度説明する必要がある。また、既習事項をもとに考える学習では、その内容を理解していなければ問題に取り組むことができない。場合によっては、一度手を止めて、全体でつまずきの部分を共有した上で、その部分について確認し、再度個人思考の時間を取ることも必要である。また、つまずいている生徒が少数の時には個別に対応する。そして、集団解決のときの指名等の流れを構築することも忘れない。
ポイント3 効果的なつぶやき
一度手を止めて確認をしないにしても、机間指導において生徒が悩んでいる部分を教師のつぶやきを通して、全体で共有したり、手助けになる考えを机間指導中の生徒とのやりとりの中で全体に伝わるように話したりすると良い。
例えば、図形の問題であれば「そうか、補助線を引いて考えたのか!」などのように、問題に取り組む視点を与えることで、思考が進む生徒もいる。私は状況を確認しながら、効果的なつぶやきを取り入れる工夫をしている。
【集団解決の場面から】
ポイント1 取り上げる順番の意識
集団解決では、生徒の考えを、どの順番に発表させるかを大切にしたい。取り上げる順番によって、授業の雰囲気や理解度にも差が出る。
例えば、計算の有用性を感じさせるなら、面倒な計算から能率的な計算の順に取り上げると、苦労して計算した分、その有用性が伝わる。また、正しい答えのみを発表させるのではなく、あえて誤答を取り上げることで、間違いやすい部分に焦点をあて、なぜ間違えたのかを追求させることで、学習内容を深めることもできる。
ポイント2 考えの共有と深化
問題解決の過程において、生徒が一度説明しただけで、全員が理解できるわけではない。その際には、一人目の説明で理解できた生徒に再度説明させ、「理解の輪」を広げていきたい。
例えば「Aさんの説明でわかった人?」「まだ困っている人もいるようだから、もう一度Bさんが説明してくれる?」などのように進めていく。十分に理解できていなかった生徒も、再度説明を聞いたり、違う言葉で説明されたりすることでスッと内容が理解できることもある。また、説明をする生徒は自分の考えの要点をまとめたり、そう考えた理由を説明したりすることで考えが整理される。
このように集団解決の場面において、「教師対個人」「教師対全体」「個人対全体」という場面を意図的に組み込み、数学的な見方や考え方を働かせ、主体的・対話的で深い学びにつなげていく工夫をしている。
【授業の改善に向けて】
毎時間指導案を作る時間はないが、私は生徒とのやりとりを頭の中で想像しながら、板書計画を作成してきた。事前に準備することで、無駄を省くことができ、板書内容も整理できる。最終的に作成した板書計画に反省点や改善点を記入してファイリングすることで、次回同じ学年を指導する際に利用できる。授業後に板書の写真を撮り、記録を残してもよい。
また、普段から先輩教師の授業を見学するなど、常に学び続ける姿勢をもち、日々の授業実践に臨むことを大切にしたい。
(北海道算数数学教育会中学校部会第3ブロック 旭川市立永山中学校 教諭 小幡俊夫)
※次回は「深い〝教材研究〟のポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-22付)
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