【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.14数学科・中学校編②北海道算数数学教育会中学校部会(中山勝喜部会長)数学を学ぶことの良さを実感「深い〝教材研究〟のポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-25付)
相談・試行錯誤から深い思考への場面で、考える楽しさと難しさ、奥深さを知る
◆変わらない教師自身の学びを大切に
【教師自身が教材研究で学ぶ】
二種類の三角形を手にし、相談しながら試行錯誤をする子どもたち。時間が経つにつれ、教室の空気はしっとりと落ち着き、深い思考へ。相似な図形の相似比と面積比の関係を見出し、一般化していく授業で、教師と生徒が一体となり、考えることの楽しさと難しさと奥深さを知る。
平成二十八年度北海道算数・数学教育研究函館大会の公開授業は、周りからの多くの協力を得ながら授業をつくり上げることができた。これまでの経験はもとより、先の研究授業の実践を通し、私が考える数学科の授業づくりの基礎・基本は、数学的活動を軸にした「教材研究」であると考える。
昨今、「主体的・対話的で深い学び」と叫ばれているが、教師自身が主体的・対話的で深く「教材研究」という学びを行うことが何よりも大切だと考える。先にふれた公開授業をつくっていった経緯を紹介しながら伝えていきたい。
ポイント1 〝深い〟教材研究
私の今回の授業づくりでは、教科書比較から始めた。意外に差があるもので、例えば相似な図形の面積比を考えるときの相似比は1:kかa:bか、というところから違いが出る。それぞれの意図や理由、長所と短所などをよく検討し、自分はどう扱うかを決めていった。生徒の実態に合わせることはもちろん、前後の授業のつながり、そして、単元を通してどのように扱っていくかを慎重に考えていくことも必要である。また、教具として二種類の三角形を用いたが、その材質、色、大きさ、形…考えてもきりがないが、それでも妥協せずに考えた。普段なら、経験から直観的に授業のイメージをして準備を進めていくことが多いが、それでは深めることはできない。時間はかかるが、妥協せずに検討を重ね、多面的・多角的に教材を捉えるよう努力した。「この部分なら誰にも負けない!」と思えるほど深みのある理解、〝深い〟教材研究を目指したい。そうすることで、多様な授業展開ができるし、何より、その教材のもつ良さや面白さを生徒にうまく伝えることができるのではないか。
ポイント2 〝対話的な〟教材研究
私は先の授業をつくり上げるのに、函館市中学校数学教育研究会の先生方をはじめ、北海道教育大学函館校の教授や学生にも協力して頂いた。自分一人では到底つくり上げられるものではなく、周りの協力に対し、感謝してもしきれないくらいだ。大学生を相手にしたプレ授業では、五十分の授業に百分かけてしまったが、授業後の話し合いは尽きるところがなく、終わっても質問や意見をぶつけてくる学生たちもいた。そこから学んだのは、人としてのつながり、そして、一緒に学び考える仲間が大切だということだ。
例えば、面積比が相似比の二乗になることに気付き、それを一般化していく過程は多様だが、その人の経験や教材観によって授業が違ってくる。厳密に証明するべきだという主張がある一方で、帰納的に類推させることに重きを置くことで数学を学ぶ良さが体験できるといった主張もあった。それぞれが意見をぶつけ合い、〝対話的な〟教材研究を経て、教材が磨かれ、一つの授業が生みだされる。また、一方ではその対話を通し、別の授業展開を考えるという副産物を手にする。それを自分の学校で実践し、またそれを持ち寄って交流することで、私たちの教材研究は一層深みを増すことになる。決して独りよがりの教材研究ではあってはならない。
ポイント3 〝主体的な〟教材研究
私たちは、数学が好きで数学教師になったのだ。だからこそ、教師自身が授業を楽しみにし、ワクワクしながら授業づくりをするという姿勢でいることが最も重要であると考える。公開授業の前には、何度も何度も頭で授業のイメージをした。生徒とのやり取りを思い浮かべて、思わず笑みがこぼれてしまうこともあった。それくらい教師自身が楽しみ、授業をできることに幸せを感じながら教材研究を行っていくべきである。しかし、どんなに一生懸命に教材研究を行って準備をしても、思うようにいかず大失敗することもしばしばある。だが、私たちは、子どもたちから多くを学ぶのだ。だからこそ、生徒たちに一生懸命な姿を見せ、楽しそうに授業をしたり、時には失敗して浮かない表情を見せたりすることも必要であろう。私たちが"主体的な"教材研究という姿勢を生徒に見せていきたい。そうすれば、おのずと子どもたちはそれを感じ取り、教師と共に主体的に学んでいくだろうし、数学を学ぶ良さ、楽しさを味わうことができるのではないか。
【生徒からの返信を糧として】
「楽しい授業、ありがとうございました!」「先生、授業の準備、お疲れ様!!」…ワークシートに書かれた〝ご褒美〟は教材研究の証。
数学的活動を軸とし、主体的・対話的で深い教材研究を進めることは、これまでも、これからも変わることなく大切にしていきたい、数学の授業づくりの基礎・基本である。
(北海道算数数学教育会中学校部会 第三ブロック 函館市立五稜郭中学校 教諭 長田洋幸)
※次回は「指導力向上のポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-25付)
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