【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.12算数科編④北海道算数数学教育会小学校部会(松村聡部会長)「板書とノートづくりのポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-20付)
◆子どもの言葉をもとに見える化を図る
【なぜ、板書やノートづくりをするのか?】
「黒板の上の中心に課題を書くのですか?それだとノートはどうなるのですか?」
ある研究会で質問が出された。その参会者が勤務する地域や学校には、決められた「型」があるのかもしれない。「型」を逸脱してはいけないと、縛られているのではないか。私にはそんな思いが湧いてきた。
算数での「板書」と「ノートづくり」には、本時のねらいに迫り、数学的に考える資質・能力を育む役割がある。
【板書・ノートづくりの役割】
板書の役割は三つある。一つ目は、「今、何が問題なのか?」をとらえられるようにし、自ら追究する子どもの姿を引き出すため。二つ目は、考えをつなげたり、組み立てたりするなどし、今まで見えなかったものを見えるようにするため。三つ目は、知識・技能の定着を図るためだ。
ノートづくりには、二つの役割がある。一つ目は、思考の広がりや深まりを生み出すため。二つ目は、伝えるため。この「伝える」とは、仲間に考えを説明したり、後でノートを見たときに学んだことが分かるようにしたりすることを指す。
授業後、学びのプロセスが表れている板書が必要だ。また、本時のねらいにかかわる内容の見える化が図られていることも欠かせない。
ノートには、思考のプロセスが表れていることが大切だ。
板書やノートづくりに、基本形があってもよい。しかし、その基本形が、教師や子どもの創造性や発展性を認めない「型」だとしたら、再考が必要だろう。
ポイント1 学びのプロセスが見える板書を創造する
六年「場合の数」の授業。
組み合わせについて追究する本時で、子どもたちの学びのプロセスが見える板書を教師と子どもとで創造する。
①板書を軸に、問題場面をとらえ、解決の見通しをもたせる
導入で、教師は、「赤色・青色・黄色・緑色のチームでバスケットの試合をします。試合の組み合わせは全部で何通りありますか」と問題を板書する。何について追究するのかを意識付けるうえで、ノートに問題を書くことは欠かせない。
前時まで順列を学習していた子どもは、「昨日の問題と違う!」と既習との違いに気付いた。そして、「固定して調べれば分かりそう」「樹形図は使えそう」などと、既習と関連付けた考えを出していく。
教師は、本時のねらいに迫るうえで、「鍵」になる言葉を板書し、吹き出しで囲む。この板書には、子どもの発言を認め、個の思いや考えを学級全体に広げる意味がある。
こうして、子どもは解決の見通しをもつ。
②見えなかったものを見えるようにする板書
子どもたちのノートには、順列で求めた十二通りと、組み合わせで求めた六通りの二つの考えがあった。
交流では、十二通りの考えから取り上げる。子どもの発言にあった樹形図を用いた考えを板書に位置付けた。六通りと考えた子どもから、「でも、このままだと二試合することになってしまう」「重なりが出てくるよ」など、異論が出される。
Aさんは黒板にある樹形図の重なりを消し、六通りになる考えを説明した。Aさんの考えにつなげて、他の子も別の図や表を用いた考え方を出していく。
教師は、子どもの発言やつぶやきを基に、それぞれの考えを矢印でつないだり、色分けをしたりするかかわりをしていく。
そうして、十二通りと六通りの考えの相違点がより鮮明に板書で見えるようにしていった。
ポイント2 学びのプロセスが見えるノートを創造する
ノートづくりでは、「何を、どのように考えたのか?」がわかる表現を求める。
六年「円の面積」の授業。
導入では、円が分解された図形を提示し、「色のついた部分の面積を求められるかな?」と問う。子どもから、「円の面積を求める公式を生かして面積を求められる」という考えが出た。そうして、課題を板書した。
Bさんは、公式が使える図形に変形して考えた。
子どもが解決のプロセスを書き表すことが、思考を広げたり深めたりするうえで欠かせない。
求積についての話し合いでは、実物投影機で図だけをテレビ画面に映す。そして、「どのように考えたか、わかる?」と発問し、読み取る場を設定して、友達の考えに働きかける子どもの姿を引き出し、読み取った考えを出し合うようにした。
実物投影機を用いた授業を見かけることが増えてきた。子どものノートにある考えの「部分を隠す」という手立ては、子ども一人ひとりの思考を保障するうえで有効だ。
本単元の学びの過程で、解決に行き詰まった子どもは、ノートの前のページを見ていた。以前に学習したことを生かせないか、考えていたのだ。
ノートは未来の自分に「伝える」という役割をもっている。
【子どもの言葉をもとにして】
授業で大切なことは、子どもが能動的に問題に働きかけ、思考を広げたり深めたりすることだ。子どもの思考は、言葉になって表れる。自分の言葉でつくられていくノート。子どもの言葉が位置付く板書。これらが重要なことだと言える。
(北海道算数数学教育会小学校部会研究部 札幌市立資生館小学校 教諭 須田祐右)
※次回は北数教中学校部会「個人思考と集団解決のポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-20付)
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