【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.15数学科・中学校編③北海道算数数学教育会中学校部会(中山勝喜部会長)数学を学ぶことの良さを実感「指導力向上のポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-26付)
研究会仲間と授業づくりで率直に学び合い、力量を向上させる
◆輪を広げ、自らを成長させる環境に置く
【研究会で学び続ける環境を】
今こそ研究会のよさを確認したい。児童生徒の数が減り、それに伴い学校の規模も縮小してきている今だからこそ、研究会に所属し学校の枠をこえて学び続けることが重要である。
研究会に所属することによって個々の教員の力量が向上するだけでなく、その地域の算数数学教育も発展していく。これこそが研究会のよさであり、多くの仲間に伝えたいことである。
私は初任者の頃からオホーツク管内算数数学教育研究会(略称OTM:Okhotsk Teachers of Mathematics)に所属し、仲間とともに授業実践を中心とした研究を続けている。
OTMでは、毎年一月に小・中両方の授業を公開するとともに、北海道教育大学旭川校の相馬一彦教授や釧路校の早勢裕明教授をお招きし、助言や講演をしていただき研修を深めている。
算数・数学が系統性の強い教科であることは言うまでもないが、現実的な問題として中学校の教員が小学校の授業を見る機会は少ない。逆もまた然りである。小学校算数と中学校数学の両方を同じ日に公開することで、異校種の授業を参観し、学びやすい環境となっている。
また、OTMでは毎年、北海道数学教育研究会(以下、北数教)で研究発表を行っている。小中一人ずつ発表することとし、発表前には必ず小中合同で協議を行い、研究発表の質の向上に努めるとともに、会員相互の研修を深める機会としている。
ポイント1 研究会の公開授業・研究発表で力を付ける
このように、研究会に所属し公開授業や研究発表にかかわることで、授業づくりにかかかわる実践的なことを学ぶことができる。私も、問題解決的な学習を実践する中で多くの悩みがあったが、OTMの仲間がいたからこそ、授業の冒頭で提示する問題や子どもの考えの取りあげ方、指導と評価についてなど具体的な実践例を交えながら語り、改善策を見出していくことができた。それと同時に、自分の授業実践に対して客観的な視点から指摘してもらうこともできた。自分一人では気づくことが難しい課題に気づくことができたのも、身近に研究会の存在があったからといえる。
ポイント2 ともに授業をつくる経験で力を付ける
このような活動を続けている中で、平成二十六年には北数教の全道大会をオホーツクで開催することができた。このことはOTMにとって貴重な経験となった。全道大会を開催することはもちろん参加者のためであるが、それと同時に、開催地の算数数学教育の発展につなげることも大切である。
全道大会の準備期間は多忙であったが、算数数学について仲間と考え合い、共に授業をつくったり研究発表資料をつくったりしていく過程は、多忙感以上の充実感を味わうことができた。充実感は、授業改善や授業研究等の意欲につながり、日々の授業づくりや授業改善の原動力となる。
「この問題を提示したら生徒はどんな反応を示すかな」「この部分は多様な考えを比較・検討させたい」「次の時間は少し展開を変えてみよう」などという気持ちになり、教室に行くのが一層楽しくなる。これはまさに「主体的・対話的で深い学び」を教師自身が実践・体験しているといってよいだろう。目的意識をもち、仲間とともに課題(授業づくりにかかわる)の解決策を話し合い、具体的に実践を通してその解決策を検証していく力は、新学習指導要領で子どもたちに身につけさせたい力そのものといえる。
ポイント3 研究の輪を広げて活動の質を向上させる
最近では、オホーツク管内にとどまることなく、釧路管内や根室管内の算数・数学の教員とのつながりも生まれ、研究会の輪が広がってきている。具体的には、釧路算数数学教育研究会が主催する研究会にオホーツクや根室から数名ずつ参加したり、逆に、OTMが主催する研究会に釧路から参加してくださったりしている。
授業ビデオを持ち寄っての研究会を行うと、自分たちの地域では気づかなかったことに気づく場合がある。研究会の活動を充実させたり、拡大させたりするアイディアに触れることもできる。研究会の輪が広がることで活動の質も向上してきているといえる。
ポイント4 身近な研究会に参加して仲間づくりを
北海道では、その地域性から数学の教員が一校に一人という学校も少なくない。児童生徒数の減少が続く中、この流れは簡単に止められるものでもない。だからこそ、学校の枠をこえて、算数数学教育について共に学び合う仲間のいる研究会の存在意義は大きく、今後ますます大きくなると考える。
まずは、身近な研究会に参加してほしい。そして、そこからつながる算数・数学の仲間との出会いを大切にし、自分自身を成長させることのできる環境に身を置くことから始めてほしい。「こんないい授業ができた」と紹介し合ったり、「授業がうまくいかなくて困っている」といった悩みを率直に語り合ったりしながら、学び続ける教員が増え、北海道の算数数学教育が益々発展していくために。
(北海道算数数学教育会中学校部会 第4ブロック 北見市立光西中学校 教諭 中野正博)
※次回は「授業デザインのポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2017-12-26付)
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