【伝えたい!授業づくりの基礎・基本】No.17体育科・小学校編 北海道学校体育研究連盟(小野寺正委員長)「課題解決授業のポイント」(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-01-10付)
◆個の問題意識・学びの状況から思考の見える化へ
◎成果と課題から新しい体育科の方向を見る
小学校学習指導要領解説体育編(文部科学省平成29年6月)によると、現行の学習指導要領の成果と課題は次のとおりである。
【成果】①運動やスポーツが好きな児童生徒の割合が高まった②体力の低下傾向に歯止めがかかった③スポーツとの多様な関わりの必要性や公正、責任、健康・安全等、態度の内容が身に付いている④子どもたちの健康の大切さへの認識や健康・安全に関する基礎的な内容が身に付いている
【課題】①習得した知識や技能を活用して課題解決すること②運動する子どもとそうでない子どもの二極傾向が見られる③体力水準が高かった昭和60年ごろと比較すると依然として低い状況④健康課題を発見し、主体的に課題解決に取り組む学習が不十分
これらの成果と課題を踏まえ、「運動や健康に関する課題を発見し、その解決を図る主体的・協働的な学習活動を通して、『知識・技能』、『思考力・判断力・表現力等』、『学びに向かう人間性等』を育成することを目標として示す」という改訂の基本的な考え方が示されている。
【6年生 ボール運動「ネット型」の実践より】
ポイント1 子どもの実態に応じた教材の準備をする
「課題を発見し、その解決を図る主体的・協働的な学習活動」の具現化を目指し、6年生のボール運動「ネット型」の授業づくりに取り組んだ。
本道の小学校高学年では、ソフトバレーボールが多く実践されている。また、児童の実態に応じ、ワンバウンドやキャッチを認める等、簡易化されたゲームを授業で扱う場合が多い。
今回は、信州大学教授の岩田靖氏らが考案した「アタックプレルボール」を基に、児童の実態に応じ、さらに簡易化した教材を準備した。
ポイント2 役割行動を生かすチーム2人のペアを作る
このゲームは、ソフトバレーボールよりも意図的な連携プレイを数多く出現させるための「役割行動」(=適切な判断に基づいたボール操作およびボールを持たない時の動き)が理解しやすく、相手の攻撃に応じた自分やチームの動き方の工夫に目が向きやすいゲームである。
第1触球者…2バウンド目の落下地点に入り、自コートの中央ライン付近にバウンドさせるようにレシーブする。
第2触球者…できるだけネット際でボールをキャッチし、真下に強く弾ませる。
第3触球者…相手コート内に手の平で打ちつける。
さらに、ネット型は1チーム3~4人で構成されることが多いが、今回は1チーム2人のペアで構成した。先ほど述べた「役割行動」がどの児童にも分かりやすいからである。
ポイント3 単元構成をステージ型からグループ型へ
ネット型の学習において、児童に身に付けさせたい技能は次のとおりである。
①ボールの方向に体を向けて、その方向にすばやく移動すること②味方が受けやすいようにボールをつなぐこと③片手、両手もしくは用具を使って、相手コートにボールを打ち返すこと
これまでの実践では、単元構成を計画する上で、各時間に教師が身に付けさせたい技能ポイントに迫るような学習課題を設定するものが多かった。
例えば、二時間目には安定したレシーブに着目させ、三時間目には効果的なトスについて解決させる等といった形である。このような単元構成は「ステージ型」と呼ばれることが多く、教師が児童に解決させたい順序で単元が進むようになっている。しかし、実際のところ、児童がゲームを通して感じる問題意識はそれぞれ異なる場合がほとんどである。ある子は、アタックの部分に問題を感じ、またある子は同じゲームを通して「安定したレシーブをするにはどうしたらいいのか…」と問題意識をもつのである。そこで、三時間分を「自分たちの課題を練習で解決して、チームを育てよう」という学習課題を大きな枠として設定するようにした。そして、学習の進行をグループで進めるようにした。
ポイント4 明確な個の課題をもとに仲間との協働で解決を
このような手立てをとることで、児童は自分の課題を明確にもちながら、解決のための方法をグループで試す姿が多く見られるようになった。つまり、学ぶべきポイントを単元構成上に「並列」という扱いで設定することは、個の学習課題を明確にし、その解決に向けた主体的・協働的な学習の実現へ近づけることができるということである。
ポイント5 学習カード等の利用で思考の見える化を図る
この学習課題が明確になり、解決のための練習を選択できるようになると、児童の学びはより生き生きとしたものになる。そのためには、個の学びの状況の把握が鍵を握る。
新しい体育科指導では、これまで以上に思考が見える学習カードの役割は大きなものとなるだろう。
(北海道学校体育研究連盟研究部小学校研究部長 札幌市立稲穂小学校 教諭 前田潤)
※次回は「武道(柔道)授業のポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-01-10付)
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