【新春インタビュー 4種校長会長に聞く①】新学習指導要領の全面実施に向けて―道小学校長会会長 角野誠氏(関係団体 2018-01-10付)
道小学校長会会長 角野誠氏
―校長会としての新年の展望をお聞かせ下さい。
各学校においては、三十二年度から完全実施される次期学習指導要領の円滑な実施に向けて、社会に開かれた教育課程の推進、指導体制の整備、校内研修の充実等に取り組んでいるところです。子どもたちには、変化の激しい時代を生きていくために、基礎的な知識・技能を身に付けるとともに、それらを活用した思考力・判断力・表現力、主体的に学ぶ豊かな人間性などが求められています。
こうしたことを踏まえ、道小学校長会では、近年、本道教育の質の向上を目指す上で、時代の要請に応える「授業改善」が重要課題であると主張してきました。校長のリーダーシップのもと、教師一人ひとりが授業研究を通して研鑚を積み重ね、授業力の向上に努めていくことが大切です。
私たちは、変化の激しい時代といえども、長年にわたる授業実践の蓄積を踏まえながら、浮き足立つことなく、求められる授業像の実現を目指していきたいものです。不易と流行をしっかりと見極めていく必要があります。
その一方では、中学年の外国語活動や高学年での外国語科の導入によって、授業時間数が増加することとなります。各学校では、日課表の中にどのように増加する時間を組み入れるかについて頭を悩ませたことと思います。昨年十一月には、道教委から「小学校における時間割編成」と題して、授業時数増への対応の在り方を示す資料が提示されています。
そのような中、全道各市町村においても、取組の方向性が示されています。それらの内容については、地区の実情によって、かなりバラつきがあるようですので、今後とも理事研修会などを通して情報交換を行い、より効果的な運用を図っていかなければならないと考えています。
また「特別の教科 道徳」においては、考え・議論する道徳の授業実践を積み重ねるとともに、評価の在り方などにおいても指導要領の趣旨に沿った取組を進めていく必要があります。
最重要課題は教職員定数の改善
―校長会の抱える課題と対策をお願いします。
一つ目は、教職員定数改善についてです。
道小では、全連小との連携を大切にしながら、活動を行っていきたいと考えています。
その全連小では、教育活動を充実させていくために、関係機関への要望活動を行っています。昨年十二月十五日には、三十年度の予算要望活動として、全連小の役員と私を含めた全国の常任理事が、衆議院議員会館および参議院議員会館に出向き、「小学校教育の充実・改善に関する要望書」を提出してきました。
この要望書においては、教職員の長時間勤務改善や教員の定数改善など、人的措置が大きな柱となっています。教職員の多忙化解消や子どもと向き合う時間を確保していくためには、教職員定数改善が何よりも重要です。
このような中、財政制度等審議会財政制度分科会では、教職員定数についての財務省の考え方として、現在の法制度に加えて教職員の増加が必要か否かについては、エビデンスやPDCAサイクルの確立が前提だと述べています。
また、次期学習指導要領の時数増加への対応については、すでに標準時間を上回る授業を実施していることから、それを英語に振り替えて実施すべきだと述べています。
こうした財政審の次期学習指導要領の時数増加への対応に対して、全連小では「現状をよく理解していない机上の空論である」と強く反論しています。その中では「現在の日本の教育を維持できているのは、教員等による、授業時間のみならず、授業に臨む教材研究および教材準備、授業時間にはカウントされていない指導の時間、そして、何よりも各学校等による研究会・研修会の成果だと考えている」と述べています。
このやりとりからは、財政側と教育現場のギャップの大きさが伝わってきます。教育現場の私たちが、行政側の理解を求める活動を継続していかなければなりません。
二つ目は、「働き方改革」についてです。
昨年十一月下旬、教員の働き方改革を議論する中教審の会議で中間まとめ案が示され、おおむね了承されたという報道がありました。この案によりますと、学校や教員が担ってきた授業以外の仕事も仕分けしていくようです。
私の個人的見解としては、仕分けの難しい部分が多々あるように感じています。やはり、教職員の定数改善という根本問題は避けて通れない問題なのではないでしょうか。中間まとめでは「文部科学省が新たな業務を加えるような場合は、すでにある業務と調整する必要がある」ということも話題になったと聞いています。働き方改革が叫ばれる一方で、矢継ぎ早に教育改革の波が押し寄せてきますが、新しい施策と教員の働き方をセットで考えていただきたいものです。
道教委においても、「学校における働き方改革〝北海道アクションプラン〟」の構想が立てられています。現場の実態を少しでも反映していただけるよう期待しています。
三つ目は、要望活動についてです。
毎年春に「要望書」および「提言書」を道教委に提出しています。
本年度の提言書では、「今求められている教育の実現に向けた教育条件の整備についての提言」として、内容を「次期学習指導要領の趣旨を生かした授業構築に向けた教育条件整備への提言」「チームとしての学校の実現に向けた教育条件の整備への提言」の大きく二つにまとめました。来年度も、未来を担う子どもたちの教育内容を充実させていくための提言を行いたいと考えています。
「北海道文教施策・予算策定に関する要望書」については、毎年、各地区からいただいた要望をまとめ、次年度に向け、道中・道公教とともに、道教委に要望しています。八月に行われる文教施策懇談会・各課懇談会にも活用されるものなので、すでに各地区への働きかけを始めているところです。
四つ目は、組織改革についてです。
二十七年度から二十八年度の「組織の在り方検討委員会」の最終報告を踏まえ、事務局構成が変わりました。この組織改革は、「チーム道小」を一層推進していくためのものです。
事務局幹事の総数は従前より二人減りましたが、地区幹事の人数を三人増やして五人としました。その五人は、距離または交通機関の利便性を踏まえ、比較的負担の少ないと思われる①石狩②空知③後志・小樽④胆振⑤上川・旭川―から選出しています。
また、五役の一人である事務局次長も、地区から選出することとなりました。本年度は、旭川市の事務局幹事が、この任に当たりました。
このような事務局構成の改革によって、情報交流がこれまで以上に盛んになるなど、活性化が図られています。
全連小北海道大会(函館市)の成功を
―新年度の重点的取組を伺います。
ことし十月四日(木)・五日(金)の両日、第七十回全国連合小学校長会研究協議会北海道大会を函館市で開催します。
北海道大会では、これまでの研究成果と課題を踏まえ、大会主題のさらなる追究を目指すため、副主題を「ふるさとの地から世界を見つめ 新しい社会の形成に向けて挑戦する子どもを育てる学校経営の推進」と設定し、学校経営の責任者である校長の果たすべき役割と指導性を究明していきます。
分科会においては、高知大会、佐賀大会の成果を受け継ぎ「分科会の充実こそが最大のおもてなし」という理念のもと、準備を着々と進めています。道小学校長会では、これまで、分科会の充実を図るために工夫を重ねてきましたが、本大会においても参加型から参画型の分科会となるように努めていきます。
シンポジウムでは「ふるさと」「挑戦」「未来創造」の三つをキーワードとして、これからの教育の在り方を参会者の皆さんとともに考えていきます。グローバル化が進む中、子どもたちに「ふるさと」の文化を理解し尊重する態度を育成することは、国際社会における異文化を理解しようとする豊かな人間性を涵養することにつながると考えています。社会が急激な変化を遂げ、先行き不透明な状況にあっても、「挑戦」する意欲をもち続けることを大切にしていきたいものです。様々な違いを乗り越えながら、一人ひとりが手を携えて「未来を創造」していくことも、今求められています。
大会まで、残すところ半年余りとなっています。函館市小学校長会と一体となりながら大会を成功に導きたいと考えています。
「チーム北海道」を掲げて活動の充実を
―新年度の重点的な取組をお聞かせください。
ことしも、ここ数年と同様に「チーム北海道」という言葉を掲げて、活動を進めていきます。道中学校長会、道公立学校教頭会はもちろん、道教委や各市町村教育委員会等の教育関係諸機関とも連携を図りながら活動することが、困難と思われる教育課題の打開につながるものと考えています。
(かくの・まこと)
昭和55年道教育大札幌分校卒業。昭和55年の札幌市立平岸西小を振り出しに、59年札幌市立平岸高台小、63年札幌市立みずほ小、平成5年札幌市立美しが丘小、11年札幌市立幌南小、13年札幌市教委指導主事、19年札幌市教委人事担当係長、22年札幌市立美しが丘緑小教頭、24年札幌市立美しが丘緑小校長、27年から現職の札幌市立幌南小校長。
昭和32年4月21日生まれ、60歳。宮城県塩釜市出身。
(関係団体 2018-01-10付)
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