指導要領乗り越え取組を 道教組・川村委員長あいさつ概要
(関係団体 2018-03-09付)

道教組定期大会川村委員長
川村執行委員長は3点の課題にふれた

 道教組第三十一回定期大会における川村安浩執行委員長のあいさつ概要はつぎのとおり。

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 道教組の定期大会は、毎年三月十一日前後の開催が多く、私は、執行委員長のあいさつで、東日本大震災にふれることから始めてきた。ことし七年目を迎えるあの大災害と福島の原発事故は、決して風化させることなく語り継いでいかなければならない。

 以前にも大津波の被害にあった東北地方には「でんでんこ」という言葉が伝えられていた。津波のときは、おのおのが自分で判断してそれぞれで逃げなさいということ。危険にさらされたとき、自らの身を誰かに預けるのではなく、自らの知恵と経験をフル回転させて対処することが、わが身を守るための道だと伝えているのではないか。

 「命をほかのものに預けてしまう愚かさ」。あの大震災、大事故から我々が学ぶべきことの一つはこのことだったのではないだろうか。裏を返せば、多様性を発揮し合い、認め合う大切さなのではないか。それは日本国憲法の言う「個人の尊重」にほかならない。

 「自己責任」「説明責任」というストックフレーズ。「責任」という言葉には「失敗したら、誰々のせい」というニュアンスを強く感じる。しかし、私は「責任」という言葉を「確信をもった選択」という意味でとらえてみたい。そして「確信をもつ」ための営みが教育だと思っている。

 そんな視点で、今私たちが抱えている大きな三つの課題をとらえてみたい。

 まずは、憲法改悪を許さない取組。安倍政権は九条を本丸に、様々な手段を用いて憲法を変えようと画策している。憲法は「国民を守るために、権力をしばる」もの。であるから、権力をもつ者にとっては、憲法は身近なものでありうっとうしいものでもある。

 一方、私たち国民にとっては、平穏な暮らしが守られているのは憲法の恩恵だと分かりつつも、それは権力をコントロールすることで得られているので、「権力の向こう側にあるもの」ととらえがち。憲法についての取組を進めようとするとき、しばしば話題になる「憲法はちょっと遠い」という感覚はこんなところから生まれているのではないか。

 七年前の大津波は平穏な暮らしを一瞬で奪った天災。最大限の知恵や経験を駆使しても、逃げるしかない。しかし、平穏な暮らしを守ってくれている憲法を変えようとしているのは人災。逃げずにたたかうことで、平穏な暮らしを守ることができる。その武器は憲法三千万署名。この春が改憲の発議を許さないための正念場である。全道の道教組組合員のさらなる奮闘を期待する。

 二つ目の大きな課題は学習指導要領。小学校では、この四月から移行措置が始まる。「スムーズに遺漏なく切り替えていくため」というのが移行措置の趣旨とされているが、学校現場は大わらわ。

 「外国語」を例にとると、まず、三年生以上で最低十五時間、授業時数を増やさなければならない。職員会議をはじめ、放課後に先生方の会議も設定できないくらいぎゅうぎゅうに授業が詰め込まれている上に十五時間をどう増やすのか。その内容も、あれやこれやと本格実施のときまでやっておかなければならないからと、三冊の英語の教科書を並行して勉強しなければならないのではないかという話も出るほどの状況である。

 新学習指導要領の大きな特徴は、学習内容を規定するのにとどまらず、その方法、評価までも規定していること、そして、心のもちようまでもその対象に入れたこと。子どもたちが学び、成長するための働きかけすべてを細かく規定していこうというものである。

 学習指導要領に基づいて教科書がつくられ、その教科書が学習を進めていく上で大きな役割を果たしているという現状をみると、学習指導要領は基準であるという性質は変わっていない。基準である以上、そこからの拡がりは当然で、そのことで多様性が生まれる。ところが、基準が細かくなればなるほど、何から何まで基準に縛られ、多様性は奪われてしまう。

 私が特別支援を担当する中で学んだことの一つは「子どもを理解し、その成長をみとる基準は、その子の中にある」ということ。誰かがつくった基準をもって目の前の子どもを分かろうとする乱暴さに気づかせてもらった。

 この一年の中で、学習指導要領に関する学習会が旺盛に取り組まれた。私たちの教育活動が細かな基準に縛られ窮屈になってしまいそうな中で「確信をもった選択」をするための模索が学習会の要求となった。その成果はそれぞれの実践の中で多様に発揮されてくることと思う。その交流が学習指導要領を乗り越える教育につながっていく。学び合いが深まることを期待している。

 三つ目は教職員の働き方の問題。部活動指導がクローズアップされた超過勤務の問題は、喫緊の課題である。

 教職員の働き方を考えるとき、まず、勤務時間を問題にすることが重要である。これまで、子どものためと時間にとらわれず、働くのが半ば当然という意識だった教育現場。教員の勤務時間は、減ることなく増え続ける一方だった。その挙句、過労死ラインを超える勤務時間が常態化という事態にまでなってしまった。

 教職員の働き方には、時間だけではなく、その内容という課題もある。だが、今すぐ手を付けなければならないのは時間。それも「過労死ラインを超えなければよい」ではなく、「人間らしく働ける時間」である。それを変える方策は二つしかない。人を増やすか仕事を減らすかである。様々なレベルでその方向に動き出しているとは言える。どう実りのあるものにしていけるか、これからが正念場である。

 気を付けたいのは、安倍流働き方改革。安倍政権は日本を「世界一、企業が活動しやすい国」にすることをもくろんでいる。安倍首相が言う「働き方改革」はそのためのもの。「人間らしく働くルールづくり」ではなく「企業がもうけを上げるのに都合がいい働かせ方をルール化してしまえ」ということ。改革の方向性が全く違う。

 「先生方、大変だね」と心を寄せてくれている多くの人に「先生が人間らしく働ける学校が子どもも人間として成長していける学校」ということを語りかけていこう。

 また、教職員の働き方という課題は「学校とは何だ、教育とは何だ」と問いかけてもいる。そこには「時間がかかるか、かからないか、時間をかけられるか、かけられないか、時間が増えてしまうか、減らせるか」という視点だけではとらえきれない課題もあるように思う。

 戦後、高い理想を掲げてスタートした民主教育が、ときどきの政治によって変質させられてきた歴史は、学習指導要領の変遷をみても明らか。教職員の働き方が切り口となって、日本国憲法の理念にのっとった教育への道を取り戻す方向へ進むことも展望してみないか。

 この三つのほかにも、様々な課題が山積している。一つ一つの課題に取り組んでいく上で、多くの人の支えは不可欠。組織拡大が最重点であることは間違いないが、そのほか、多様な人たちとの力合わせも欠かせない。協力共同の取組を全道に広げていこう。

(関係団体 2018-03-09付)

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