函館市の教育振興基本計画 自立・共生・創造目指す 学校間を円滑に連携・接続(市町村 2018-05-25付)
【函館発】函館市教委は本年度から三十九年度までの十ヵ年を期間とした教育振興基本計画をまとめた。市の教育が目指す人間像として「自立」「共生」「創造」の三つを掲げ、実現に向けた基本目標には「変化する社会を生きる力の育成」「地域とともにある学校づくりの推進」「函館への愛着や誇りと未来へ飛躍する力の育成」など六つを設定している。
【函館の教育が目指す人間像】
▼自立―生涯を通じて学び続け、主体的に判断して変化する社会を生きる人
▽主体的・対話的で深い学びのスタイルを身に付け、生涯を通じて学び続けて個性・能力を伸ばすとともに、変化する社会にあっても自分の学びを生かし主体的に判断して行動することができる人
▼共生―寛容さと思いやりの心をもって、多様な人々と絆を結びともに支え合う人
▽個人や社会の多様性を尊重し、他者に対する思いやりと感謝の気持ちをもちながら、主体性をもって多様な人々と協働し、支え合うことができる人
▼創造―世界に目を向け、新たな価値をつくり、まちの魅力を高める人
▽世界に目を向ける広い視野をもって、自他の人生を豊かにする新たな価値を創り出し、函館への愛着や誇りを強く抱きながら、まちの魅力をさらに高めることができる人
【基本目標1 変化する社会を生きる力の育成】
▼施策1「確かな学力を育む教育の推進」
▽授業改善の推進
①標準学力検査や全国学力・学習状況調査の結果を詳細に分析し、授業改善や指導内容の重点化に活用する。
②「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」といった資質・能力の三つの柱をバランスよく育むことを目指し、各学校が教育目標や地域の実情を踏まえて学校全体で授業改善に努める。
③単元・題材など内容や時間のまとまりを見通しながら、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を推進する。
④学習評価を通じて学習指導の在り方を見直し、指導と評価の一体化によって、授業の改善・充実を図る
⑤児童生徒一人ひとりに応じたきめ細かな指導の充実を図るため、少人数指導、習熟の程度に応じた指導、放課後・長期休業期間などにおける補充学習を推進する。
▽学習の基盤となる資質・能力を育む活動の充実
①言語能力を育成するため、各教科などの特質に応じた言語活動や言語能力を向上させる重要な活動である読書活動の充実を図る。また、読書活動の中核を担う学校図書館の充実に努める。
②情報活用能力を育成するため、コンピューターや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用した学習活動の充実を図る。また、小学校におけるプログラミング的思考を育む学習活動を実施する。
③問題発見・解決能力を育成するため、児童生徒が横断的・総合的な探究課題に取り組むなど、身に付けた知識・技能を活用できる学習活動の充実を図る。
▽学習習慣の定着に向けた取組の推進
①児童生徒の興味・関心を喚起し、主体的に学習に取り組む態度を養う教育活動を推進する。
②主体的に家庭学習に取り組む態度の涵養や望ましい学習習慣の定着に向け、児童生徒の実態に応じた学習量や授業内容との関連などに配慮した家庭学習の取組を、家庭と連携を図りながら学校全体で推進していく。
▼施策2「豊かな心を育む教育の推進」
▽いじめの未然防止等にかかる取組の推進
①函館市いじめ防止基本方針に基づき、学校、家庭、地域、教育委員会などが連携を図りながら、いじめの未然防止などにかかる取組を推進する。
②家庭や地域、関係機関などとの連携・協力を密にすることによって、生徒指導の充実を図る。
③電話相談窓口の設置や市立小・中学校を巡回する相談員の配置などによって、児童生徒や保護者の不安を解消するための教育相談体制の充実を図る。
④児童生徒へのカウンセリングや教職員・保護者に対する助言・援助を通じて課題の解決を図るため、スクールカウンセラーを各学校に派遣する。
⑤児童生徒の情報通信機器を使用した問題行動の未然防止・早期発見・早期対応を図るため、インターネット上における不適切な書き込みなどの状況を確認する取組を実施する。
▽道徳教育の推進
①各学校において教育活動全体を通じて道徳教育が進められるよう、道徳教育推進教師を中心に全職員が役割を分担して組織的に取り組む。
②児童生徒一人ひとりが考え、議論する道徳の授業への質的転換を図るための指導の改善・充実に努める。
③児童生徒の発達の段階を考慮しながら、自他を尊重する態度、人権に対する正しい理解、情報社会で適正に活動するためのもととなる考え方や態度を育む指導の充実に努める。
④児童生徒一人ひとりがよりよい人間関係を築き、自己有用感や自己肯定感を感じることができるような取組を推進していく。
▽体験活動の充実
①家庭・地域と連携・協働し、自然体験活動やボランティア活動などの体験活動の充実を図る。
②各教科における表現の場・活動の充実を図るとともに、社会教育施設を活用した鑑賞などの学習活動の充実に努める。
③生徒や教員の負担に配慮しつつ、地域や文化・スポーツ関係団体との連携・協働を図りながら、部活動を実施していく。
▼施策3「健やかな体を育む教育の推進」
▽学校保健・学校体育の充実
①健康や保健に関する諸調査の結果を分析し、児童生徒が健康の保持増進に必要な知識・能力や望ましい生活習慣・食習慣を身に付けるための指導の充実に活用する。また、学校生活を営む上で配慮を必要とする児童生徒への対応に努める。
②家庭との連携を図りながら、歯科保健教育を通じて児童生徒のむし歯予防に向けた取組を推進する。
③家庭や地域、関係機関などと連携を図りながら、性教育や薬物乱用防止に関する指導や取組の充実を図る。
④全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果を分析し、体育の授業における運動量の確保や運動技能の向上、体育的行事の活動内容の工夫など、基礎的な身体能力の育成や運動習慣の定着に向けた取組の充実に活用する。
▽学校給食の充実と食育の推進
①安全・安心な学校給食を提供するため、調理や配送などにおける衛生管理の徹底を図る。
②各学校が創意工夫をもって献立を作成するなどの取組の充実を図る。また、児童生徒が地域の食材に対し、興味・関心を高めて知識を深めることができるよう、地場産物の活用を推進する。
③栄養教諭を中心とした学校の教育活動全体での食育を通じて、児童生徒が健全な食生活を実践する力と望ましい食習慣を身に付ける取組を推進する。
④食物アレルギー対策を推進し、配慮を必要とする児童生徒への対応に努める
▽安全に関する教育の推進
①生涯を通じて安全な生活を送る基礎を培うため、児童生徒の発達の段階に応じた安全教育を推進する。
②家庭や地域、関係機関などと連携し、通学路の安全対策や災害・危機事象発生時などにおける児童生徒の安全確保のための取組を推進する。
▼施策4「幼児教育の充実」
▽幼児教育の質の向上
①幼児期における教育内容の充実を図るとともに、多世代・異年齢交流などの体験活動の実施や家庭教育・子育ての支援に努める。
②幼児教育に関する研修や教育相談などを行う幼児教育センター機能の充実に努める。
▽小学校教育との円滑な接続
①小学校教育のカリキュラムとの連続性を確保し、相互の理解と連携を一層深めるため、小学校の教職員との意見交換や合同研究のほか、園児と児童の交流や就学に向けた引き継ぎなどの取組の充実を図る。
▼施策5「多様なニーズに対応した取組の充実」
▽特別支援教育の充実
①教育上特別な配慮を必要とする児童生徒に対して、学校全体で支援する体制の充実を図る。また、関係機関などとの円滑な連携・協力を図りながら、児童生徒の実態や児童生徒と保護者の意向などを踏まえた計画的・継続的な支援に努める。
②特別支援教育サポートチームや特別支援教育巡回指導員が校内支援体制などについての助言を行う。また、特別支援教育支援員を引き続き各学校に配置する。
③関係機関などとの連携を図りながら、児童生徒にかかわる教育相談や適切な就学指導を実施する。
▽不登校児童生徒等への支援
①不登校および不登校の傾向がみられる児童生徒一人ひとりの状況に配慮した指導方法や指導体制の工夫改善に努める。
②適応指導教室および相談指導学級において、不登校児童生徒の学習活動を支援する。
③関係機関、フリースクールなどの民間施設、NPO団体などと連携を図り、専門家の助言または援助を得ながら、不登校児童生徒一人ひとりの状況に配慮した支援に努める。
④不登校に関する相談窓口の周知を図るとともに、不登校児童生徒とその保護者に対して、支援内容などに関する情報提供や相談対応を行う。
▽就園・就学に対する支援
①経済的な理由によって、就園・就学が困難な子どもの保護者に対して市立幼稚園保育料の軽減や就学援助などの支援を行う。
②地域住民などが実施する学習支援活動の促進・支援に努める。
【基本目標2 地域とともにある学校づくりの推進】
▼施策1「家庭・地域との連携・協働の推進」
▽家庭・地域と一体となった学校運営の推進
①すべての市立小・中学校にコミュニティ・スクールを導入し、保護者や地域住民などの学校運営への参画を促進する。また、コミュニティ・スクールは、地域の実情に応じ、中学校区内における小・中学校間の連携を図りながら運営していく。
②家庭・地域・学校が目指す子ども像や教育目標、学校運営の基本方針を共有し、学校評価などを通じて学校運営の工夫改善を図る。
③教育活動について積極的に保護者や地域住民などに対して情報発信し、教育活動への参画を促進する。
④地域と学校をつなぐ人材の発掘・育成に努めるとともに、家庭・地域・学校が連携・協働して行う活動の実施やその運営を担う組織づくりを促進していく。
▼施策2「学校における指導体制等の充実」
▽校務運営および指導体制の工夫改善
①校長のリーダーシップのもと、教育目標の実現に向けて教職員が適切に役割を果たすとともに、相互に連携しながら教育活動に取り組むことができるよう校務運営の改善・充実を図る。
②児童生徒、学校および地域の実情を踏まえた教育課程を編成し、組織的かつ計画的に実施するとともに、学校評価などを活用して教育活動の質の向上を図る。
③豊かな知識・経験をもつ専門家などの外部人材を教育活動に活用するとともに、関係機関・企業・高等教育機関などと連携し、指導体制の充実を図る。
▽業務改善に向けた取組の推進
①教員の勤務実態などを踏まえながら、学校における業務改善に向けた取組を推進する。
▽教職員の資質・能力の向上
①教職員のキャリアステージに応じた研修を実施するほか、授業改善、特別支援教育や情報モラル教育など今日的な教育課題に対応した研修を実施する。
②授業公開などを中心とした実践的な研究を通じて教育実践の改善・充実に努めるとともに、南北海道教育センターにおける事業の充実を図る。また、優れた実践事例については学校間で共有を図っていく。
③児童生徒への適切な支援を教職員が行う上で必要となる児童福祉などに関する知識を深める機会の充実に努める。
▼施策3「学校間の連携・接続」
▽学校間の縦の連携・接続
①子どもの学びの連続性を踏まえた教育課程を編成するなど、学校間の円滑な連携・接続を図る取組を推進していく。
②中学校区内における小・中学校において、目指す子ども像の共有を図り、児童生徒に必要な資質・能力を育む取組を推進するとともに、義務教育九年間を見通した小中一貫教育に進展する取組を推進する。
③教育上特別な配慮を必要とする子どもに関する個別の教育支援計画などを学校間で円滑に引き継ぐ。
▽学校間の横の連携
①教職員の情報交流・研究協議会・授業公開などの取組の充実を図る。
【基本目標3 函館への愛着や誇りと未来へ飛躍する力の育成】
▼施策1「函館への愛着や誇りを育む教育の推進」
▽地域資源を活用した教育活動の推進
①豊かな地域資源を教材として活用し、函館のまちの良さを感じることができる教育活動を推進する。
②授業や課外活動などにおいて、芸術家、スポーツ選手、研究者などの様々な専門家から直接指導を受ける機会の充実を図る。
▽地域に貢献する教育活動の推進
①地域行事・ボランティア活動などを通じて社会に参画する態度を育む教育活動を推進する。
②地域住民や企業などとの連携を図りながら、地域課題の解決に取り組む学習機会の充実を図る。
▼施策2「未来へ飛躍する力を育む教育の推進」
▽豊かな国際感覚を育む教育活動の推進
①諸外国の生活や文化を理解・尊重し、国際的に協調して取り組む重要性について考える国際理解教育の充実を図る。
②外国語活動および外国語の授業などを通じて児童生徒が異文化を理解し、協調する態度やコミュニケーション能力を育む教育活動の充実を図る。
③海外派遣事業、海外留学事業、国際交流活動など外国人との交流機会の充実を図る。
▽キャリア教育の推進
①児童生徒が社会的・職業的自立に向けて望ましい職業観・勤労観などを身に付けるために、発達の段階に応じたキャリア教育を推進する。
②様々な企業などと連携を図りながら、児童生徒の興味や適性に応じた、職場見学、職場体験活動、インターンシップなどの取組を推進する。
▽科学技術への関心を高める教育活動の推進
①科学技術の基礎となる理科、算数・数学に対する関心を高めるため、観察、実験などの教育活動の充実を図る。また、実生活との関連がある課題や科学的な体験などを取り入れた授業の充実を図っていく。
②科学技術への関心を高めるため、学術研究機関などと連携し、教育活動の充実を図る。
(市町村 2018-05-25付)
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