【リポート】東神楽町教委の共同学校連携事務室 事務効率化で多忙解消へ 全道発の設置 校内業務を整理、統合
(市町村 2018-06-08付)

 【旭川発】「法改正で、共同学校事務室制度ができたから研究しておいてほしい」。昨年四月、東神楽町の事務職員全員が出席した学校間連携会議で水野和男教育長はそう求めた。出席していた東神楽中学校の坂田淳哉事務主幹らは、法改正を承知していたが、「自ら設置に携わることになろうとは想像していなかった」。しかし、事務室設置によって教員の多忙化解消を図ろうとする教育長の思いはすぐに読み取れた。坂田事務主幹らは、設置の申請に向けた研究に取りかかった。ことし四月、道内初の共同学校事務室を設置した東神楽教委。実現までの軌跡をリポートする。

◇小規模校では管理職も事務を

 約一万四百人が暮らす東神楽町には、五つの小・中学校があり、約一千人の児童生徒が在籍。事務職員は、道費で六人、町費で四人配置している。

 五校のうち、山村留学特認校となっている小規模校の志比内小学校では、全国各地から留学してきた十二人の児童が学んでおり、町費の臨時事務職員一人が事務を担当している。しかし、繁忙期に入ると、管理職や教職員などの協力を得て、事務作業を進める状況となっていた。昨年までの業務について、当時校長を務めていた内村めぐみ校長(旭川市立雨紛小学校)は「他校の事務職員や町教委などからのサポートを受けながら、道費にかかわるものは、管理職が受けもっていた。皆さんには、とても感謝している」と、町の支援があったことを振り返る。

 こうした状況を把握していた水野教育長は、共同学校事務室に関する国の制度改正を知ったとき「これを活用しない手はないと感じた」。坂田事務主幹らに文部科学省への申請に向けた研究を進めるよう依頼したことについては「この事業は、教職員、事務職員の働き方改革にもつながるものであり、必ず応えてくれると思った」。

 坂田事務主幹らは、水野教育長の依頼を受けたあと、改正法令や文部科学省の事務次官通知などを読み込み、研究。通常の業務をこなしながらの研究は「決して楽ではなかった」(坂田事務主幹)と振り返るが、学校間連携会議などを通じて、仲間と意見交換をしながら知識を深めていった。

◇時間を生み出し教職員サポートへ

 研究の成果を申請書に取りまとめ、昨年十月ころに文科省へ提出。ことし四月、道内初の共同学校事務室を東神楽中に設置した。名称は「東神楽町共同学校連携事務室」。設置に伴い事務職員一人が加配され、同校の事務職員は二人体制から三人体制となった。東神楽中以外の学校は“連携対象校”という位置付けとなり、東神楽中の事務職員と連携を密にしながら、事務を進めていく。

 事務室が受けもつ主な業務は、従来、各校で実施していた現金会計監査や、教材費等の徴収、小規模校のサポートなど。様々な業務があるが、共通しているねらいは、教員の多忙化解消につなげること。例えば、徴収業務は、これまで各校で保護者への通知、振込等手続き、未納者催促などを行っていたが、これを事務室の業務に一本化。これによって各校の事務職員に生まれた時間を新たな校内業務に充て、さらなる教職員のサポートを目指す。

 事務室を立ち上げ後、さっそく志比内小から依頼が届いた。四月に転任してきたばかりの校長や教職員などの旅費に関する手続きで、事務室が受けもって完了させた。志比内小の原田康校長は「年度が変わって大変忙しい時期だったので、とても助かった」と話す。事務室の効果が早くも発揮された形となった。

◇丁寧な説明が鍵に

 しかし、制度はまだ始まったばかり。様々な事務の進め方を全学校で統一するために試験的に実施しているものも多くあり、地域住民や教職員に取組への理解を図らなければならない。

 坂田事務主幹は、事務統一化の成功の鍵は「教職員・保護者への丁寧な説明とコンセンサスの構築にある」とみている。そのため、『教職員版』と『家庭版』をそれぞれ発行する『事務室だより』を重要なツールととらえている。『教職員版』は毎月一回、『家庭版』は年五~六回のペースで発行し、様々な取組への理解促進を目指す。

 また、町が小中一貫教育を進め、コミュニティ・スクールを導入していることから「町内の教育組織が将来的に統合した際の事務業務を担うことも可能になるのでは」と話す。

 今後も研究を重ね、町教委とともにさらなる事務体制の強化を目指していく。

◆東神楽町共同学校連携事務室の取組

【徴収事務の町内共通化】

 東神楽中学校、東神楽小学校は、教材費・PTA会費・スポーツ振興センター掛金などの口座振替徴収を実施済みで、本年度から東聖小学校でも振替徴収を開始した。一方、小規模校の忠栄小学校と志比内小学校については、現在も現金で徴収している。そのため、個人情報漏洩や金銭事故の防止などを図ることから、全小・中学校における徴収業務を事務室で一括して行うことを検討している。

 また、各校の会計処理について、事務室と各校の事務職員が相互に監査し、さらなる適正化を図ることも目指している。

 これらを実施することで、各校の事務職員の業務負担が軽減され、その時間を活用して事務職員が校内業務分担を見直すことが可能になるとみている。また、小学校入学時に登録した口座を九年間通して利用できることから保護者にとっても利点があると考えている。

 将来的には、学校における徴収金を公費化することも視野に入れている。保護者負担のさらなる軽減に向け、町との調整を図りながら検討を進めていく。

【共同事務室だより】

 各学校が発行する『学校だより』とは別に、事務室から、教職員や保護者向けに『事務室だより』を発行している。『教職員版』は毎月発行。四月発行分は、年度当初の変更事項確認や異動者手続き、五月は手続き済み手当確認および注意喚起、六月は期末勤勉手当・児童手当現況確認などについて情報を提供した。

 一方、保護者向けの『家庭版』は、年五~六回の発行を予定。四~五月発行分は共同学校事務室の概要、学校予算の周知、六~七月は徴収金関連、八~九月は学校予算アンケート、十~十一月は本年度購入教材備品など紹介、一~三月は予算要求内容・就学援助・遠距離通学など、事務手続きに関連する内容を取り上げ、分かりやすく周知を図っていく予定。

【文書・物品廃棄サイクルの町内共通化】

 各校の文書・物品については、東神楽町立学校備品管理規定に基づいて管理している。公文書や保管期限切れの重要文書は、規定に基づき、各校でシュレッダー処理している。また、老朽化・破損した備品などの廃棄は各校の環境整備員(用務員)が個別に対応している。

 そのため、三十~四十人の職員に対してシュレッダーが一台しかない大規模校では、使用時期が集中すると処理が滞ることがあった。一方、小規模校では大型機材廃棄時の人員確保が困難となっていた。

 こうした状況を踏まえ、本年度からは、事務室と各校の環境整備員が連携し文書廃棄と物品廃棄の協業化を図る。

 具体的には、廃棄にかかわる統一分類表を再検討し、廃棄対象を再確認。その上で、事務室が各学期末に廃棄期間を設定するなどして、処理作業を分散化させる。さらに、事務室と環境整備員が連携して廃棄作業に当たる。廃棄時期は、長期休業中を予定している。

(市町村 2018-06-08付)

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