道高教組・道教組が配置計画案に対し声明 学習権脅かす計画案撤回を 地域の願いに基づく配置要望
(関係団体 2018-06-11付)

 道高教組(尾張聡中央執行委員長)と道教組(川村安浩執行委員長)は六日、道教委の公立高校配置計画案、公立特別支援学校配置計画案に対し「教育の機会均等、子どもの学習権を脅かす“高校配置計画案”の撤回を求める」とする声明を発表した。声明では「地域の高校の統廃合は、教育の機会均等を保障する観点からも決して許されることではない」と批判し、再考を求めている。

 声明の概要はつぎのとおり。

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1 はじめに

 道教委は六月五日、公立高校配置計画案(二〇一九~二一年度)と二〇一九年度の公立特別支援学校配置計画案を発表した。

 高校配置計画案では、二〇二一年度に南幌高校を募集停止するほか、女満別高校と東藻琴高校を統合し町立の新設校の設置、滝川高校など十六校十七学級の学級減、苫小牧工業高校定時制の学科再編を新たに示した。

 また、二〇一九年度に夕張高校と松前高校に地域連携特例校を導入すること、二〇二〇年度には深川東高校、函館工業高校など五校で学科を再編するなどを示した。

 特別支援学校配置計画案では、二〇一九年度に職業学科設置の知的障害高等部を道央圏で七学級五十六人の減、道南圏と釧根圏では五学級四十人の増、道全体では二学級十六人減とする一方、義務校に併置の高等部を五学級三十五人の増としている。

 今回の高校配置計画案で、新たに統廃合や募集停止の対象となったのは、いずれも地域の小規模校である。私たちは一貫して小規模校が地域に果たしている役割を訴え、その存続を求めてきた。

 地域の高校の統廃合は、そこで暮らす子どもたちの教育の機会均等を保障する観点からも決して許されることではない。私たちは高校配置計画案を撤回し、子どもや保護者・地域の願いに基づいた学校配置となるよう配置計画案の再考を求める。

2 道教委は、子どもや保護者・地域、学校現場声の声を聞いた高校配置計画を策定せよ

 四月から五月にかけて第一回地域別検討協議会が全道各地で行われた。自治体の首長や教育関係者、PTA関係者などから「地域の中に高校が存続することで町が活性化される」「高校生が市民を励ます存在となっている」「少人数だからできる取組もあり、地域の実情、地域のニーズに応えるということが、これからの高校づくりで大事なことではないか」など、高校が地域に果たす役割の重要性が訴えられた。しかし、これらの意見は配置計画案には全く反映されていない。

 道教委は、子どもや地域住民、学校現場の要望に耳を傾ける用意があるのか大変疑問である。学校がなくなることの地域に与える影響の大きさを、真摯に受け止めているとは到底思えない。

 これから第二回目の地域別検討協議会が開催されるが、子どもや保護者・地域、学校現場からあがる切実な要求に耳を傾け、これらの意見を盛り込んだ計画を策定することをあらためて強く求めるものである。

3 地域の高校の存続は道の責任。小規模校が地域に果たす役割を再認識せよ

 私たちは北海道教育キャラバンを通じ、道内自治体を訪問し、首長や教育長と懇談を続けている。

 懇談では「まちの子どもはまちで育てる」「高校生は地域の子どものリーダー」「まちづくりの担い手になる子どもたちの健全育成こそ命題」など、地域の中で高校や高校生が果たしている役割の大きさが語られた。

 今回、南幌高の募集停止が示されたが、南幌町は、南幌高存続のため、入学祝い金や通学費、資格取得や進学への補助、海外研修の補助など、厳しい財政状況をやりくりして子どもたちの教育を進めており、「学校はまちづくりの根幹として必要」と教育長は語っていた。

 女満別高・東藻琴高の統合校の町立移管は、厳しい町財政の中でも高校を残したいという町の信念の表れであり、本来道が責任をもつべき地域の高校の存続を、町が肩代わりしているという構造は否めない。

 さらに、地域連携特例校六校について、再編を「留保する」としているが、留保などという高圧的な姿勢ではなく、無条件で学校の存続を保障すべきである。

 また、松前高には次年度新たに地域連携特例校を導入し、函館市内の統合新設校を協力校にするとしている。

 しかし、函館・松前間は九十㌔㍍以上離れていることに加え、統合によって様々な課題が山積みの中での連携は、学校現場に余計な負担や混乱をもたらすものと言わざるを得ない。

 道教委は、高校や高校生が地域に果たす役割の大きさをあらためて認識し、住んでいる地域によって子どもの教育の格差が生じないようにすることはもちろん、高校の灯を消すことで、過疎化に一層の拍車がかかることがないよう、地域の高校の存続のために全力を尽くすべきである。

4 新設校の開校を含め、特別支援学校に十分な教育条件整備を

 法制上、特別支援教育がスタートして十一年、北海道における特別支援学校の在籍者数は約一千三百人増加し、道内の特別支援学校は六十二校から七十二校へと増設された。しかしながら、新設校の多くが寄宿舎やスクールバス運行のない単置の知的障害高等部であり、自力通学が可能、もしくは保護者の送迎を前提とした学校の設置ばかりである。一方、義務併置高等部は、在籍者が二倍近くに膨れ上がっているにもかかわらず、伏見支援学校一校のみの新設にとどまっている。

 学級増に対しては、校舎の増改築も行われているが、併設された小中学部に通う児童生徒の増加も加わり、深刻な教室不足となっている。一つの教室を間仕切って使用したり、特別教室を転用したりするなど、児童生徒の安全や教育の機会均等が脅かされる事態である。

 道教委は、今後の見通しとして、二〇一九年度は、旧函館稜北高校校舎を利用して、新設の特別支援学校を開校、釧路鶴野支援学校に三学級の増、二〇二〇年度に、道央・道北・オホーツク・十勝で学級増の見通しを示しているが、義務併置高等部の見通しについては、全く示されていない。早急に、義務併置校の教室不足を解消するとともに、これら学級増を行う上で十分な予算措置を講じ、新設校の開校を含め、生徒の実態に合わせた十分な施設設備改修など、教育条件整備を進めるべきである。

5 北海道の未来のため、教育の機会均等を実現する施策へ

 高校配置や特別支援学校の新増設は、教育予算の充実と密接にかかわる問題である。

 日本の教育の公的支出(対GDP比)はOECD加盟国の中で最低であり、道は国に対して教育予算増額を強く要望するべきである。また、必要な予算は国の動きを待たずに道独自で措置すべきだ。

 学校統廃合問題は、子どもたちの教育の問題であることはもちろん、北海道の未来を考える上で重大な問題である。そのためには、「一学年四~八学級を望ましい学校規模」とするこれからの高校づくりに関する指針を抜本的に見直し、全道一律の基準で統廃合を進めるのでなく、それぞれの地域の願いや実態に基づいた学校規模を考えるべきである。

 私たちは、教育予算の増額、国による少人数学級の実現、教育費無償化などを求める教育全国署名に全力で取り組むとともに、ゆきとどいた教育を求める全道的共同を一層広げ、大きく運動を進めていく決意である。

(関係団体 2018-06-11付)

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