少年の主張檜山地区大会 絶対は絶対にない 乙部中2年・板谷さん(道・道教委 2018-07-02付)
【江差発】少年の主張檜山地区大会が六月二十一日、乙部町公民館で開かれた。管内の中学校から十六人が参加。日ごろの思いや自身の考え、感情などを聴衆に訴えかけた。最優秀賞には、乙部町立乙部中学校二年生の板谷和奏さんの「絶対は絶対にない」が選ばれた。
板谷さんは昨年、剣道の大会に出場した際、決勝戦で優勝経験のあるチームと対戦することとなった。その際、「勝ちたい」気持ちと「絶対勝てるわけがない」という気持を感じながら、緊張に押しつぶされそうになってしまった。
しかし、試合中に戦国武将・織田信長が残した名言「絶対は絶対にない」という言葉を思い出し奮闘した結果、チームとして勝利することができた。この経験から、「絶対は覆るもの」と分かり、あきらめずに挑戦し、自分の可能性を広げることができるかもしれないと訴えた。
板谷さんの発表内容はつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
「絶対に勝てるわけない」
私はこの言葉の「絶対」について疑問をもった。絶対って何だろう。辞書で調べると「ほかに比較するもの、対立するものがないこと」と書いてあった。
では、本当に世の中には「絶対」と言えるものがあるのだろうか。
去年の秋、森町で剣道の大会があった。私はその大会の団体戦に、先輩と同級生と私の三人で出場した。渡島管内の大会だったので、強豪がたくさん集まる。「勝てるだろうか」そんな不安を抱えながら、団体戦が始まった。
一回戦、二回戦、三回戦、準決勝までくると、体だけでなく、心も疲れてくる。団体戦といっても試合会場では一対一。勝ち進んでいくと、当たり前だが強い相手が待ち構えている。
強い相手となると、簡単には打たせてくれない。しかも、強豪と呼ばれるチームは、人数自体が多い。応援もたくさんいて、その人たちの視線がグサグサと刺さり、私は心が苦しくなっていた。
準決勝、何とか勝つことができた。つぎの対戦相手がどのチームなのか、トーナメント表を見ると、決勝で待ち構えていたのは森町のチームだった。森町のチームは、とても強く全道規模の大会で優勝経験のある選手がいる。
私は、今までその人たちと戦って勝ったことが一回もなかった。せっかく決勝まで三人で来ることができたので「勝ちたい」と思ったが、一方で、「絶対勝てるわけない」と思ってしまっている自分もいた。
「正面に礼。互いに礼」
ついに決勝が始まった。私の相手はそれまで戦ったことのない選手だった。その人の強さがどれほどか、打ち合ってみるまでまったく分からない。試合会場の周りには、女子団体戦出場チームが取り囲んで見つめていた。押しつぶされそうになっているとき、私の脳裏にある言葉が浮かんできたのだ。
「絶対は絶対にない」
有名な戦国武将・織田信長の残した言葉である。「絶対に大丈夫なこと、絶対に不可能なことは絶対にない」という意味だそうだ。己の信念を貫き、度重なる逆境を跳ね返し、天下統一まであと一歩というところまで上り詰めた、私の尊敬する歴史上の人物の一人である。
私はこの言葉を自分に言い聞かせながら、覚悟を決めて「面!」と打ち込んだ。審判が「面あり!」と旗を揚げて言った。うれしくて泣きそうだった。
続く同級生は、数々の優勝経験を持つ強敵相手に粘り強く、果敢に攻め、最後まで耐え抜いた。先輩も鋭い面で一本を取ってくれた。
私たちは勝てたのだ。
このとき、私は初めて「絶対って覆るものなのだ」ということを知った。これ以来「絶対は絶対にない」という言葉が私を支えてくれている。
何事もやってみなければ、分からない。あきらめてしまえば、達成することさえできずにそこで終わってしまう。失敗を反省することすらできない。
まず挑戦しよう。挑戦することで、自分の世界にはなかった新しいことや自分の可能性を広げられるかもしれないのだから。
(道・道教委 2018-07-02付)
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