札幌市子ども議会本会議を開会 4テーマで施策提案 防災、SDGsなど(市町村 2019-01-09付)
札幌市子ども議会本会議が三十年十二月二十七日、市議会議場で開かれた。小学四年生~高校三年生の四十八人が子ども議員として出席。「防災への取組」「SDGsの普及」などのテーマで議論を重ねてきた四つの委員会が、自分たちができることを盛り込んだ施策を提案した。また、秋元克広市長や長谷川雅英教育長らと市政に関する意見交換を行い、より良いまちづくりに向けて理解を深めた。
未来を担う子どもたちに札幌のまちづくりについて考えてもらうことで、市政への理解・関心を促進するとともに、「子どもの最善の利益を実現するための権利条例」の意見表明権を体現してもらうことが目的。十三年度から実施している。
十八回目となる今回は、子ども議員が①災害半端ないって委員会②C’MON PEOPLE バス乗ろう!委員会③U.S.A.委員会④SDGs(札幌だってがんばるッス)委員会―に分かれ、約三ヵ月間、五回にわたって話し合いや市職員との勉強会を行い、提案をまとめた。
本会議の冒頭、札幌市議会の山田一仁議長が「札幌のまちをもっと良くしていくためにどうしたらいいか、一緒になって考えていきたい」とあいさつした。
続いて、各委員会が制作したポスターを提示しながら提案を発表した。
■防災
災害時に安全に避難する方法や防災対策について話し合った①は、子どもが防災について学び、大人に伝えていくことで市民全体の防災意識が高まるとし、「札幌防災検定」の実施を提案。市で起こり得る災害に関する問題を出題することで実用性が高まることや、避難所運営ゲーム(〓HUG)のような体験型の試験を取り入れることで、子どもが楽しみながら学べるということを説明した。
併せて、子どもが身近に防災について学べる子ども防災部をつくることを提案。子どもから防災の輪を広めていくため、市の支援を求めた。
秋元市長は「楽しみながら防災の知識を学んでいくことは重要」と述べ、子ども防災部の設立に向け子ども議員に「自ら動き始めてもらい、市としても全面的に応援していきたい」と答弁した。
■バス利用促進
バスの利用者を増加させる方法を考えた②は、バスの理想と将来として「バスが多くの人にとって楽しい場所になること」と発表。そのために「バス沿線の店紹介などを載せた冊子をバス停に置くこと」「季節ごとにバスの車内を飾り付けること」「車内に本を置き、貸し出しすること」を提案した。
車内の飾り付けのための装飾は子どもから募集することで、家族なども装飾を見るために乗車する可能性が高まることや、本の貸し出しは市民の寄付で行うことなどを説明した。
秋元市長は、バスの路線を維持していくために乗りたくなる工夫をする重要性にふれ、バス停に冊子を置くことを「大変有効なアイデアだと思う」と述べた。委員会の提案を「バス会社に伝えていき、公共交通を使ってもらう手立てとして、皆さんのアイデアを役立てていきたい」と話した。
■障がい者支援
障がいのある人とのコミュニケーションについて話し合った③は、障がいのある人を助けられる人が身に付ける「助けられますマーク」をつくることを提案。上段に「助けたい」という意思を示す共通のマーク、下段には手話など、特定の分野で助けられる障がいごとのマークを付けられるようにする考えを発表した。
マークがあることで、周囲の人がマークを付けている人と障がいのある人をつなげられるようになることを説明。多くの人が助け合うことで、差別もなくしたいとの考えを示した。
また、困っている人に話しかけやすい雰囲気をつくるためには、子どもが積極的にいろいろな人とあいさつをする必要性を強調した。
秋元市長は、助けられますマークや、あいさつなど「共生社会を実現していく上でも非常に重要な提案」と述べ「どうしたらお互いの意思疎通を図っていけるのか、市の政策の中でも考えていきたい」と答弁した。
■SDGs
持続可能な開発目標(=SDGs)の普及と実践に関して話し合った④は、SDGsの周知に向けて、カフェなどでSDGsと関連させた商品や弁当を販売することを提案。容器などは土に還る素材を使い、SDGsのゴールにも近づく商品とすることを説明した。
また、SDGsを達成できた未来と達成できなかった未来が描かれたクリアファイルを、学生を対象に配布することを提案。これらの取組を通し、市民全体のSDGsへの意識や知名度が上昇し、目標達成につながってほしいという考えを発表した。
秋元市長は、SDGsの取組を推進するために「多くの人に知ってもらい、身近な生活の中で行動してもらうことが必要」と話し、提案に関して「身近に感じてもらう手段として非常に興味深い」と述べた。
続いて意見交換を行った。はじめに、①の委員会が、北海道胆振東部地震で大変だったことや、市民に伝えたいことなどについて質問。中塚宏隆危機管理対策室長は、市内で一斉に約三百ヵ所の避難所が開設され、運営などが大変だったことや、停電によって情報収集・提供に「難しさを感じた」と振り返った。
市民には、地震の発生は予知できないことから「住んでいる人がみんなで助け合うこと、あらかじめ様々な備えをしておくことの大切さを一番伝えたい」と話した。
②の委員会は、外国人観光客に、気軽にバスに乗ってもらうための対応を質問。まちづくり政策局の中田雅幸都市計画担当局長は、市内の公共交通機関の運行時刻などを調べられる「さっぽろえきバスナビ」が多言語に対応していることなどを説明し「外国からの観光客にとって乗りやすい乗り物になるよう努力していきたい」と答えた。
③の委員会は、「市として、障がい者コミュニケーションという全国的な問題について、都道府県や市町村とどのようにかかわるのか」と質問。木下淳嗣保健福祉局長は、障がいのある市民が市外・道外を訪れる際に、手話や筆談をサポートしてもらう体制を構築したほか、市を訪れる人へのサポート体制があることなどを紹介。また、支援者の育成も「道と協力しながら進めていきたい」と話した。
④の委員会は、意識しているSDGsの目標や目標達成のために実践していることを質問。平木浩昭環境局長は、クリーンエネルギーや気候変動対策などを意識し、暖房を使い過ぎないようにするなど、身近にできることから取り組んでいることを説明した。
市からの質問では、秋元市長や岸光右副市長、長谷川教育長、可児敏章こども未来局長が質問。うち、秋元市長は子ども議会の取組をきっかけに新たに心がけるようになったことや、行動するようになったことを質問。②の子ども議員は「バスを前より多く利用するようになった」、④の子ども議員は「学んだことを学校やクラスで教えた」などと答えた。
長谷川教育長は、地震が登校時間などに発生した場合、「みんなが適切に行動していくためにどのようなことが大事だと思うか」と質問。①の子ども議員は「登校中に地震が発生したシミュレーション映像をつくっておけば、早く冷静になれる。普段から備えておくことが大切」と答えた。
このあと、子ども議員の松本桃花さんが各委員会の提案をまとめた提案書を秋元市長に手交。秋元市長は「皆さんが様々な視点でものを考えていることをあらためてうれしく思い、さっぽろの子どもたちに“良くやった”と思った」と感想を述べた。
子ども議長を務めた吉川すずさんは「学んだ経験を生かしていけるよう努めていきたい」と意気込んだ。
本会議に出席した長谷川教育長は、子ども議員について「市が抱える課題を深く研究し、具体的な解決策を分かりやすく伝えてもらったことを、教育委員会としてもうれしく思う」と述べ「今後の教育行政に生かしていきたい」と話していた。
(市町村 2019-01-09付)
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